三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

葦の紙の障子

2009年07月04日 04時43分06秒 | Weblog



先日のブログでも触れた「板倉工法」の家です。
木造工法のさまざまな可能性を追求する設計者の探求心が
随所に感じられる住宅なワケですが、
この障子。ごく普通の障子と思っていたら、
さにあらず、紙は北上川の河口地帯でいまでも取れている
「葦」を漉いて和紙にした紙なんだそうです。
北上川河口の葦は、東北地方でも最大の産地であり、
伝統的に屋根材として使われてきた素材です。
現代にこの葦で、葺いた屋根を再生させようと運動している人たちもいて、
設計者の佐々木さんは、そういった運動にも関わっている。
建築材料としての葦は、まさに自然材料そのものであり、
グラスウールという、現代の断熱素材が提供されていない時代で考えたら、
もっとも断熱性能のある自然素材だったのではないかと思っています。
なんといっても植物繊維素材であり、
内部に空気を保留する素材なのですね。
断熱は静止空気層を保つことで、その効果が発揮されるので、
伝統的な草葺きの屋根って、性能的にも効果が高いと言える。
先人たちの慧眼に、まさに目からウロコの思いがする材料。
しかし、そういう素材を現代に甦らせるためには、
さまざまな市場価値を創造しなければならない。
そういった努力の一環として、
こういった葦原料の和紙、というような挑戦も行っているのでしょう。
このように使われることで現物としての風合いをユーザーに見せて、
その質感でファンを獲得していきたいと考えているのでしょう。
佐々木さんとしては、このような在来木造工法の持っていた
伝統的な素材を現代に継承させるための
やらなければならない産業復興まで志向しながら、
家づくりに取り組んでいるのだなぁと、思い至らされた次第です。

こういう活動は、奇抜な空間デザインを生んだりする方向ではないので、
評価者のしっかりした目線がなければ、
「普通っぽい」というような評価にしかならないでしょう。
しかし、永い日本人の木造との付き合いという見方からすると、
誰かがこうして取り組んでいてくれることが大切だと考えます。
とくに、東北の人々にとって、
こういった味わいの家づくりは、
地域が育ててきた空間的感受性に大きく関わっていると思います。
そういうものこそが、本物のデザインだ、と思います。




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