最近の北海道の住宅では、ほとんど本格的な和室が見られない。
いわゆる床の間というものを造作する数自体が少ない。
なので、「床柱」という木にこだわりを持つという文化は
どんどん消滅に向かっていると言えるのでしょうか。
そのような「日本的」決まり事からは自由になって、
むしろインターナショナル的な方向に向かっているとも言える。
日本海岸の増毛にある商家の古民家、といっても
相当の成功者の家なんですが、
明治の初年に建てられた住宅に見る床柱です。
鉄刀木、と書いてタガヤサンと読むのだそうですが、
どうもよくわかりません。
黒檀、紫檀、と並んで唐木三大銘木と呼ばれるものだそうです。
原産地はタイ、ミャンマー、ベトナム、カンボジアなどということなので、
この時代に、それも北海道の北の地域で
こういった床柱を使用するのは、大変贅沢なことだったことでしょう。
北前船の便に乗せて運ばれてきたものでしょうが、
北海道では、まことに希少な材料使いだったことでしょう。
現在では、流通が良くなっているのでしょうから、
比較はできませんが、40~50万円程度の価格のようです。
木材の重くて硬いさまが、
まるで「鉄の刀のようだ」ということから「鉄刀木」の漢字が当てられるそうです。
腐りにくいことから、家が長く続くということに掛けて
床柱には、縁起がいいと言うことなのでしょう。
南洋材がこういう北海道の果てまで流通していたということが
旺盛な日本の建築需要を表現しているでしょうね。
それにしても、住宅建築の中のこういう一部分にこだわりを持つ文化性って、
日本建築のなかのどういう出自を背負っていることなのか、
いつも不思議な思いを感じます。
こういう部分に世界性を表現しようなどと考えるのは
「舶来」に対する強烈な日本人の憧れを表したものでしょう。
茶の湯でも、その茶碗に世界性を求めることが流行した
そういうものと通底するようなことなのでしょうか。
現代の住宅で、こういう日本文化的な部分が
もっと進化していくとしたら、
さて、どういうような領域にこだわりが向かうものか。
いろいろ発想は湧いてくるのですが、
北海道的なとらえ方の世界では、まことに興味をそそられる部分です。
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