歴史的に建設業を探究してくると、当然木材のことが知りたくなる。
日本ではたくさんの木造建築が作られ続けてきたけれど、
その材料である木材は当然、国内から伐り出された。
北大の「北方資料データベース」を見ていたら「官材川下之図」と題された
「飛騨山中における伊勢神宮造営用材の切出し、造材、益田川の川下し、
白鳥湊からの積出しなどを詳細に画き説明した美麗な絵巻物」
を発見することが出来た。大学というのはすばらしい勉強の宝庫ですね。
巻物の形式で描かれているので、製材の流れに沿って理解が進む。
最初から最後まで読みこなすのはなかなか至難の業。
本日触れるのはその作業最初の「杣小屋〜そまこや」の場面からであります。
杣というのは「そま。山から切りだした材木」という一般名称で
いわば木材生産の最初期作業、その人々ということになる。
説明文が楷書ではなく崩し書体なのでところどころ立ち止まる。
疲れるのですが、慣れてくると理解出来たときの喜びも大きい(笑)。
ただ、時間が掛かるので困りますね。
その最初の記述に「杣人一組凡そ十五六人」と記されている。
で、林業の要諦の第一番に「水の事を第一の要として」と書かれています。
日本の国土は森林面積が大半であり、その森林はヒマラヤを出発する
偏西風が日本海を渡って大量の雨を降らせるので豊かな自然林ができる。
その条件下に急峻な火山列島地形があるので、
当然、ほとんど「滝」だといわれる豊かな水流が存在する。
それがやがて大河となって物流と産業形成、市街形成に至るけれど、
それらの流通経路として水運が一番の要だと書かれている。
森林資源産業もこの水運流通を大前提にすることが事業の条件だという。
この杣小屋もそういった条件を慧眼をはたらかせて選び取り、
そこに15-6人単位の作業員を集結させるのですね。
絵画の掲載順番は上下逆にしました。
上の方が小屋内観図で、下の方が外観というか周辺環境図です。
この上の職人さんたちの居住状況がなんとも見覚えがある・・・。
北海道西部海岸にはたくさんの歴史的漁業建築「番屋」がありますが、
その作業員たちの生活状況とまったく同じように描かれているのです。
わたしは住宅雑誌をやっているので人間がどのように暮らすか、
ということに強い興味があるのでその最低限、立って半畳寝て一畳ぶりが
同じようにしつらえられていることに深く共感を覚える(笑)。
ここでは詳細までは描かれていないけれど枕とおぼしきものは、
たぶん竹で編まれた「行李」だっただろうと思います。
今日で言えば身の回り品を納めた「スーツケース」。
それ一丁を担いでこの「杣小屋」に集結してきたのだろうと思われる。
自在鉤から鍋が下げられて食事が提供され、浮かれて踊っている人物までいる。
きっと「親方」から酒の支給もあったのだろうと想像できる。
盛大に煮炊きの火が焚かれて楽しげな食事の様子が伝わってきます。
現代社会では働き方改革が叫ばれていますが、
江戸期までの職人さんたちのこういう状況って、さて不幸だったかどうか?
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