7月末にチャリティ上映会があり、「この世界の片隅に」二回目を観て来ました。
地元のデイケアセンター主催で市が後援してる催しで、チャリティといっても立派な市民ホール上映です。映画館と同じような料金。
上映30分前にはもう、年配の男女客でいっぱい。平日だからか若者は少なかったです。
私は、母がニュースで関心を示していたので、いつか観せたいと願っており、これ幸いとばかりに足を運びました。
母は、主人公の「すず」さんより五年下になりますから、終戦の年は15歳。女学生です。
二回目だったけどやっぱり素晴らしかった!
日本いや世界の歴史遺産として残して欲しい傑作。
繊細で可愛く(笑える場面が多々あり)、でも物語は骨太。時代考証もしっかり。
ラブストーリーとしても、家族の物語としても、戦争の記録としても、見応えがあります。
見る人に感動を強要しない。「泣ける1本です!」とか、声高に叫ばないところがいい。
広島で、家業の海苔作りを手伝いながら、三人兄妹の真ん中でのびのび育ってきた「すずさん」。
絵を描くことが大好きでマイペースのおっとり屋さんですが、座敷わらしにスイカをあげたり…優しい女の子です。
すずさんは19歳になり、数駅離れた「呉(くれ)」に嫁ぐことになりました。軍港として有名な町です。坂の急斜面にへばりつくように畑があり民家があり、そこからいつも、広い空と白い雲、海原と船が見えます。
旦那さんになる若者に見初められ求婚されたのですが、会って二回目にはもう祝言。
自宅に親戚を呼んで開くささやかな宴会が、ウチの母の結婚時の写真とソックリ。
母は戦後だったから、やはり食べ物がなかったことでしょう。
すずさんが嫁ぎ先の住所がわからず「ここって何番地ですかのう?」なんてお姑さんに聞くところとか、水汲みのてんびん棒でご近所の人をブチ倒してしまったりとか、天然ボケっぷりが面白く、終始笑いが起きます。
段々戦争色が濃くなり重苦しくなっていくのに、すずさんの可愛らしさと、呉の自然の描写が美しくて、暗い気持ちになりません。
夫婦は仲睦まじく、舅姑も優しい。出戻りのお義姉さんがキツい人設定で、この辺ちょっと朝ドラっぽい(笑)。
義姉さんの一人娘のはるみちゃんが、すずさんと気が合い、二人は大の仲良しになるのですが、空襲はますます激しく。。。
最初に観たとき真っ先に思ったことは、「これが実写で作れない日本の映画界って何?」でした。
完璧なんです。原作は漫画だけれど、脚本も演出もテンポも人物設定も…実写と変わらない。美術もとても美しいし。
なのになんでアニメなんだろ?
アニメにした方が作りやすいのか、観客が入っていきやすいのか…実際、私もアニメじゃなかったら見なかったかも?
戦争の悲惨さが、アニメだとエグくなくて、「ほのぼの」のオブラートに包まれるから良いのかもしれない。
でも、物語自体はかなり残酷で、戦争への怒りもしっかり描かれています。
「難しいことをどう易しい語り口にするか」という観点から、アニメにしたのかもしれません。それでも、生きた人間が演じた映画があっても、いいじゃないかと思いました。
母に感想を聞いてみたら、意外な返答が返ってきました。
「話はよくわかるよ。でも空襲はあんなもんじゃなかった。もっと恐ろしかった」
「お話以前にまず、アニメっていうのが自分には受け入れられない。私らの世代の人ならそうだと思う。“アニメは子供が見るもの”だから。感情移入のしようがない」
…とまあ、散々でありました。
それ以外の感想は、「無し!」です。
自分の少女期と重ね合わせて泣くだろうな…と思ってたのに。
「母と暮せば」の時は時折ハンカチで目を抑えていたのに、アニメ=子供マンガは、受け入れられなかったようです。
連れていった私は目論見が外れ、プチ・ショック!
私よりかなり若い世代は、マンガやアニメが当たり前で、実写を見なくなってるように思います。アニメに比べると場面転換が遅くて画面が地味だからでしょう。
母達の世代と若い世代のちょうど中間地点にいる私は、なんとも複雑な思い。
アニメでこんなハイレベルな映画が作れるんだ!ってのは喜びですが、「実写があくまで一番」とも思ってる。
「君の名は」「この世界の片隅に」と続けて観て、「これを実写でやってください!」と、もどかしい思いも抱え込んでしまってます。
まあ、実写で作れないのは、主に資金面の問題だとは思いますが。。。
子供の頃、田舎で「おくどさん」に薪を放り込んで、大きなお釜でご飯を炊いたことがあります。
「火吹き竹」に息を吹き込むコツがあって、やたら吹くだけだと灰が舞いあがって一向に燃えない。一回炊くだけで大変でした(面白かったけど)。
あれを毎日毎日やるのって、どんだけ大変なんだろう~~~~。
三度三度のご飯の合間に洗濯して、薪割って畑耕して縫い物して。
ご近所付き合いをして、配給のわずかな食材を工夫して。
すずさんは淡々と日々の暮らしを送っていたけど、私はあんな時代に二度と戻りたくないなあ。。。もう、家事だけで人生が終わってしまう。
戦争はごめんだ。つらいことしかないのだから。
「悲しくて悲しくて〜とてもやりきれない〜」という主題歌が、いつまでも耳に残ります(この、主題歌を歌うコトリンゴは最高です!)
エンディングで、クラウドファウンディングに参加された方達全ての名前が流れ、いっそうの思いの深さが胸に刻まれました★
地元のデイケアセンター主催で市が後援してる催しで、チャリティといっても立派な市民ホール上映です。映画館と同じような料金。
上映30分前にはもう、年配の男女客でいっぱい。平日だからか若者は少なかったです。
私は、母がニュースで関心を示していたので、いつか観せたいと願っており、これ幸いとばかりに足を運びました。
母は、主人公の「すず」さんより五年下になりますから、終戦の年は15歳。女学生です。
二回目だったけどやっぱり素晴らしかった!
日本いや世界の歴史遺産として残して欲しい傑作。
繊細で可愛く(笑える場面が多々あり)、でも物語は骨太。時代考証もしっかり。
ラブストーリーとしても、家族の物語としても、戦争の記録としても、見応えがあります。
見る人に感動を強要しない。「泣ける1本です!」とか、声高に叫ばないところがいい。
広島で、家業の海苔作りを手伝いながら、三人兄妹の真ん中でのびのび育ってきた「すずさん」。
絵を描くことが大好きでマイペースのおっとり屋さんですが、座敷わらしにスイカをあげたり…優しい女の子です。
すずさんは19歳になり、数駅離れた「呉(くれ)」に嫁ぐことになりました。軍港として有名な町です。坂の急斜面にへばりつくように畑があり民家があり、そこからいつも、広い空と白い雲、海原と船が見えます。
旦那さんになる若者に見初められ求婚されたのですが、会って二回目にはもう祝言。
自宅に親戚を呼んで開くささやかな宴会が、ウチの母の結婚時の写真とソックリ。
母は戦後だったから、やはり食べ物がなかったことでしょう。
すずさんが嫁ぎ先の住所がわからず「ここって何番地ですかのう?」なんてお姑さんに聞くところとか、水汲みのてんびん棒でご近所の人をブチ倒してしまったりとか、天然ボケっぷりが面白く、終始笑いが起きます。
段々戦争色が濃くなり重苦しくなっていくのに、すずさんの可愛らしさと、呉の自然の描写が美しくて、暗い気持ちになりません。
夫婦は仲睦まじく、舅姑も優しい。出戻りのお義姉さんがキツい人設定で、この辺ちょっと朝ドラっぽい(笑)。
義姉さんの一人娘のはるみちゃんが、すずさんと気が合い、二人は大の仲良しになるのですが、空襲はますます激しく。。。
最初に観たとき真っ先に思ったことは、「これが実写で作れない日本の映画界って何?」でした。
完璧なんです。原作は漫画だけれど、脚本も演出もテンポも人物設定も…実写と変わらない。美術もとても美しいし。
なのになんでアニメなんだろ?
アニメにした方が作りやすいのか、観客が入っていきやすいのか…実際、私もアニメじゃなかったら見なかったかも?
戦争の悲惨さが、アニメだとエグくなくて、「ほのぼの」のオブラートに包まれるから良いのかもしれない。
でも、物語自体はかなり残酷で、戦争への怒りもしっかり描かれています。
「難しいことをどう易しい語り口にするか」という観点から、アニメにしたのかもしれません。それでも、生きた人間が演じた映画があっても、いいじゃないかと思いました。
母に感想を聞いてみたら、意外な返答が返ってきました。
「話はよくわかるよ。でも空襲はあんなもんじゃなかった。もっと恐ろしかった」
「お話以前にまず、アニメっていうのが自分には受け入れられない。私らの世代の人ならそうだと思う。“アニメは子供が見るもの”だから。感情移入のしようがない」
…とまあ、散々でありました。
それ以外の感想は、「無し!」です。
自分の少女期と重ね合わせて泣くだろうな…と思ってたのに。
「母と暮せば」の時は時折ハンカチで目を抑えていたのに、アニメ=子供マンガは、受け入れられなかったようです。
連れていった私は目論見が外れ、プチ・ショック!
私よりかなり若い世代は、マンガやアニメが当たり前で、実写を見なくなってるように思います。アニメに比べると場面転換が遅くて画面が地味だからでしょう。
母達の世代と若い世代のちょうど中間地点にいる私は、なんとも複雑な思い。
アニメでこんなハイレベルな映画が作れるんだ!ってのは喜びですが、「実写があくまで一番」とも思ってる。
「君の名は」「この世界の片隅に」と続けて観て、「これを実写でやってください!」と、もどかしい思いも抱え込んでしまってます。
まあ、実写で作れないのは、主に資金面の問題だとは思いますが。。。
子供の頃、田舎で「おくどさん」に薪を放り込んで、大きなお釜でご飯を炊いたことがあります。
「火吹き竹」に息を吹き込むコツがあって、やたら吹くだけだと灰が舞いあがって一向に燃えない。一回炊くだけで大変でした(面白かったけど)。
あれを毎日毎日やるのって、どんだけ大変なんだろう~~~~。
三度三度のご飯の合間に洗濯して、薪割って畑耕して縫い物して。
ご近所付き合いをして、配給のわずかな食材を工夫して。
すずさんは淡々と日々の暮らしを送っていたけど、私はあんな時代に二度と戻りたくないなあ。。。もう、家事だけで人生が終わってしまう。
戦争はごめんだ。つらいことしかないのだから。
「悲しくて悲しくて〜とてもやりきれない〜」という主題歌が、いつまでも耳に残ります(この、主題歌を歌うコトリンゴは最高です!)
エンディングで、クラウドファウンディングに参加された方達全ての名前が流れ、いっそうの思いの深さが胸に刻まれました★