金子みすゞのまなざし
「金子みすゞ記念館」館長の矢崎節夫さん
童謡詩人・金子みすゞの詩は1996年から小学校の教科書に載り、
現在、世界11言語にも翻訳されているという。
金子みすゞを世に送り出した童謡詩人の矢崎節夫さんに聞いた。
(抜粋しました)
みすゞさんの詩は三世代が共有できる文学です。
みすゞさんほど、まなざしの深い詩人もいません。
だから、詩を読む人の人生観や宗教観、宇宙観が深まるほど
内容の素晴らしさに気付くのです。
みすゞさんの詩は懐が深いので、どんな読み方をしても
ストンと心の中心に落ちるようになっている
小学校に講演に行くと、みすゞさんの詩を大好きだっていう子がほとんどですね。
聞きたくても誰も言ってくれなかった言葉を、みすゞさんは言ってくれている。
例えば「みんなちがって、みんないい。」
「私は好きになりたいな、何でもかんでもみいんな。」
詩人というのは、いわゆる心の目で物事が見えるのです
『星の王子様』でも「大切なことは目にみえない。心で見なければいけない」
と言うでしょう。
心で見るというのは相手側から見ること。
自分側から見ていたのを、相手側から見たときに、
初めて真理が見えるのです。
その時、科学や哲学を超えて、詩人は物事を語れるのです。
金子みすゞという人は、そういうことを分かりやすい言葉で書いた
まれに見る詩人です。
詩人が多いイランでも翻訳されている。
イランで翻訳した人が「金子みすゞさんの詩は人間のうただ。
だから国境を越える」と言いました。
その「人間のうた」というのは何かというと、
「私とあなた」ではなくて「あなたと私」のことです。
テレビで「こだまでしょうか」の詩が流れたときに、
日本人の多くがやっと気付いたのですよ。
「遊ぼう」っていうと / 「遊ぼう」っていう。
私一人で生きていなかった、って。
「遊ぼう」っていうためには返事をしてくれる「あなた」が必要です。
「あなた」がいて初めて私が成り立つのです
「私と小鳥と鈴と」にも書いてあることなのです。
「みんなちがって、みんないい。」の一行前は、
「鈴と、小鳥と、それから私」の順序になっている。
つまり、「あなたと私」になって初めて、「みんなちがって、みんないい。」が成り立つのです。
ー 私たちの視点を深いところで転換させるわけですね。
例えば、子どもが生まれてくれて親にしてくれたのですから、
子がしてくれた親なのですよ。だから「親と子」でなく、「子と親」。
対人関係でも、「私とあなた」でなく、「あなたと私」という見方をする。
会社でも、部下がいないと社長は成り立たない。
学校でも、生徒がいてくれるので先生です。
お医者さんだってそうですよ。それを「医者と患者」だと思うから、
「先生、ちょっと風邪ぎみなのですが」
「それは私が決めます」となってしまうのです(笑い)。
金子みすゞの詩集を持っています。
銀座のデパートで金子みすゞ展が開催された時も行きました。
すごい人気で混みあっていました。
ひとことで言うと、心が洗われるということでしょうか。
ストンと心の中に落ちるのですね。
先日、NHKでみすゞの特集を放送したので、録画しましたが、
まだ、見ていません。じっくり見たいと思います。
当たり前だった時代なので悲しいことの多い人生でした。
素晴らしい詩を残してくれたことに感謝したいですね
でも、矢崎さんによって、私たちも、みすゞさんのことを知ることができて、これも必然の気がします。初めて目にした時はこの様な詩人がいたと驚きました
「今日はさんまが大漁だ、海の中ではさんまの葬式だ」という内容の詩が記憶に残っています。さんまの葬式って、衝撃でした。
ご本人は、幸薄く、若くして亡くなられていますが、今、これほどたくさんの人たちに「詩」が愛されていることを知らせてあげたいです。
亡くなる前は、好きな詩を書くことすら夫に止まられ、小さい娘の言葉を書き留めていたとのことです。
一度、ちゃんと「詩」を読んでみたいです。