中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

菓子パン

2010-06-10 09:34:43 | 身辺雑記
 近頃はパン屋やデパートのパン売り場に菓子パンや惣菜パン、調理パンなどさまざまなパンが並んでいるが、中でも菓子パンの種類は多い。デパートのパン売り場では1人でいくつも菓子パンをトレイに載せているのを見かけるが、菓子パンは人気があるらしい。

          

 私が子どもの頃は菓子パンと言えば、あんパン、ジャムパンそれにクリームパンくらいではなかったかと思う。子どもだから無論菓子パンは好きだった。この3種のパンは今も売られているが、デニッシュなどの西洋系のものに比べると甘さの点では太刀打ちできないようだ。

 この日本の菓子パンの中でも歴史が古いのはあんパンだ。これは日本独特の菓子パンで、明治7年(1874)に初めてつくられたというから、130年くらいも前のことだ。私が子どもの頃はパンと言えば「キムラヤ」を連想するほどだったが、その木村屋の創業者と息子が考案して銀座の店で売り出し、明治天皇にも献上した。それであんパンも木村屋の名も全国的に有名になった。木村屋の創業者は元士族というから、「士族の商法」も成功した例だろう。明治7年と言えば維新後間もない頃で、まだまだハイカラなパンなどは庶民の口からは遠かっただろうが、それを饅頭のように餡を入れるという日本人の好みに合わせたところがグッドアイディアだった。当時はパン酵母ではなくて酒饅頭のように酒種を使って発酵させたという。表面には今ではケシの実を散らしているのがあんパンのトレードマークのようになっているが、初めは塩漬けの桜の花を乗せたと言うからあくまでも和菓子風である。
 
 私はあんパンよりも甘みが強いジャムパンが好きだったと思う。あんパンは丸いが、ジャムパンはあんパンと区別するために木の葉形につくられ、今も楕円形として継承されていることが多いようだ。ジャムパンも木村屋の創作で、3代目が考案して明治33年(1900)に発売された。私の幼少時代の昭和10年代頃まではアンズジャムが使われているのが普通で、イチゴジャムが一般的になるのは昭和20年代後半あたりからだそうだが、アンズジャムのパンは記憶にはない。
 
 クリームパンはあんパンやジャムパンに比べるとモダンな感じがするが、これも明治の菓子パンで、老舗の「新宿中村屋」で知られる中村屋が考案して発売したのが明治37年(1904)で、私の父が生まれる1年前のことだ。創業者がシュークリームの旨さに感じ入って製造したのが元祖だとされている。クリームパンは普通グローブ形をしているが、焼く時に中身に空洞が出来やすいので、空気を抜く為にグローブ型の切れ込みを入れたとか、切れ込みから中身が判るようにする為とか言われているようだ。私は今ではクリームパンが一番口に合うが、子どものころに食べた記憶がない。食べたのだろうが、あんパンやジャムパンの方をよく覚えている。
  
 日本のパンは美味しいと、前に日本に来ていた米国人が言ったのを聞いたことがある。特にさまざまな菓子パン類は好まれるだろうが、日本の伝統的なあんパンなどは好みに合わないかも知れない。やはりこれは日本人好みのものではないか。あんパンもジャムパンもクリームパンも皆100年以上の歴史があり、日本人に親しまれてきた。今では西洋系の菓子パンに押されているようだが、これからも息長く親しまれていくのではないかと思う。