中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

キレル三十男

2010-06-20 10:21:50 | 身辺雑記
 先日、同じ日に2つの事件の記事があった。一つは静岡県富士市で37歳の会社員の男が小学生の男児に対する傷害の疑いで逮捕されたことだ。その日の夕刻、この男は自宅近くの路上で遊んでいた近所の小学5年生と、4年生の男児の顔を素手で殴り、軽傷を負わせた。酔って側を通りかかった時に男の子達にふざけて敬礼されたことに腹を立てたらしい。小学校4、5年生の男の子と言えば腕白盛りだ。だから酔っている男を見てちょっと冗談をしたくなったのだろう。それを殴るとは酒の上でのこととは言え愚かなことだ。「やあ」とでも言って敬礼を返してやればよかったのにと思う。元来子ども好きではなかったのかも知れない。

 もう一つは愛媛県松山市であったことで、36歳の男がコンビニで店長に暴行した容疑で逮捕された。その日の正午過ぎに店の床の上に誤って商品のプリンを落とした。そのまま棚に戻そうとして50代の店長に、買うか弁償するかしてほしいと言われて腹を立ててプリンを投げつけ、店長の服をプリンまみれにした。プリンのような軟らかいものを落としたら壊れるだろうから店長の言い分は当然だろう。言われるまでもなく、自分から申し出て金を払うと言えばよかったのだ。それに対して腹を立ててプリンを投げつけるとは何とも短絡的で子どもじみた行為だ。

 この2つの出来事の容疑者は、どちらも36歳、37歳と同じような年齢だ。30も半ばを過ぎたら年齢的には分別ができ、社会的にもそれなりの目で見られる年だろう。それがこのような思慮浅く、暴力的な行動に出るとは情けない。誰でも腹を立てることはあるが、年相応にそこは抑えて分別ある態度を取ることが普通ではないか。一般化はできないだろうが、今時の30代というのはこのような精神面で未成熟な者が少なくないのだろうか。どちらのケースもおそらく微罪として処理されるのだろう。それにしてもプリンを投げつけて暴行容疑とはと思うが、議論の分かれるところかも知れない。

 このようなことは中国人にはちょっと理解ができないのではないだろうか。中国は死刑の多いことで知られていて、それが反中国の言論人の中国攻撃の種にもなっているのだが、他方では軽度の犯罪行為は問題にならないようだ、王雲海『日本の刑罰は重いか軽いか』(集英社新書)を見ると、著者が犯罪容疑で逮捕された中国人と面接したり、相談を受けたりすると、しばしば彼らは日本の警察は些細なことでも逮捕する。これは中国人差別で、日本人は未だに過去を反省していないと罵るらしい。いささか盗っ人猛々しい感もあるが、彼らの言う軽いこととは、例えば「外国人登録証を持っていなかっただけ」とか「警察の職務質問のときに、警察官とぶつかっただけ」、「たいした金額でもない万引きをしただけ」などだそうだ。王氏が「日本人であっても同じことをしたら、逮捕、起訴されて裁判にかけられることもよくある。かつて3個の石鹸を盗んで有罪が宣告され、30数万円の罰金刑を言い渡されたケースもあった」などと事例を挙げて説明すると一応は納得するが、日本人も小さいことで逮捕、起訴され、裁判にかけられることがあるのには驚くそうだ。

 例えば、中国で窃盗罪になるのは、盗んだ金額が比較的大きい(500~1000人民元ー約7000~14000円ー、ほぼ公務員の月収額)か、数回窃盗を繰り返した場合だけだそうだ。少し物を盗んだからと言って、犯罪として大騒ぎになることがないようだ。日本人からするとずいぶん甘いようだが、何しろ巨大な人口の国だから、キメ細かく網を張りめぐらせることは難しいのだろう。だから現実にはコソ泥、万引き、引ったくりなどが横行するのも当然だ。前に西安の友人の李真は携帯電話で話しながら歩いていたら、後ろから来た男に携帯電話をひったくられたことがある。その場合もどちらかと言うと李真が迂闊だとされたようだ。暴力行為にしてもちょっとくらいでは警察が介入することはないようで、西安の友人の袁毅の夫君は、前にレストランで近くの席の客とトラブルになり、数人に袋叩きされて顔が腫れあがるようなかなりひどい目にあったらしい。店は警察を呼ばなかったのかと尋ねたら袁毅は、呼びもしないし、呼んでも警察は何もしないと言った。重傷を負うか、死にでもしない限り犯罪ではないのだろう。

 子どもをちょっと殴ったり、プリンを投げつけただけで警察沙汰になるような日本は、中国人からすれば住みにくいと思うだろうが、それで治安上ではあちらとは比較にならないほど良好に保たれていることは良いことなのではないか。