中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

「ドブスを守る会」

2010-06-29 07:33:29 | 身辺雑記
 「卑劣な『ドブスを守る会』」という見出しの記事を見た。この見出しを見た時には「ドブス」の意味が分からなくて、「ド」にアクセントを置いたものだから、そういう名前の人物なのかと思った。記事を開いてみると、この「ド」は関西地方でよく使われる「ど阿呆」などの人を罵り卑しめたり、「ど真ん中」、「ど根性」のように程度が強いことを表したりする接頭語だということが分かった。「ブス」は容貌の醜い女性の蔑称だ。

 首都大学東京のシステムデザイン学部4年の22歳と23歳の男子学生2人が「ドブスを守る会」と称して、街頭で通りすがりの女性に「雑誌の撮影」などと声をかけて写真を撮った後、会の名称を名乗り、それを聞いた女性たちの反応まで収めた動画を公開していたと言う。記事によるとこんな遣り取りだったようだ。

「写真撮らせてもらえますか?」
「…なんか雑誌ですか?」
「ハイ」
「(撮影が終わり)ありがとうございました。タイトルはドブスを守る会です」
「…写真、消してもらっていいですか? 私は自分のことブスとは思ってないし、そんなふうに使う んだったら最初から言うべきだと思います」
「ありがとうございます。やっと、こういった反応が撮れました」

 動画には、彼らの一人らしい青年が道行く女性に「スナップ写真を撮らせてもらえないか」と声をかけ、女性は「急いでいるから」とか「写真を撮られるような容姿ではないから」と断るのだが、青年は「ドブスの写真を撮りたい、あなたはピッタリだ」と食い下がったりしている場面があるようだ。

 まったく失礼極まりない人を食った連中だが、彼らは会をつくった動機について、「ドブスが絶滅の危機に瀕している。わが国から消えゆくドブスの姿を収めた写真集を作り始めた」などと説明したらしい。写真を撮られた女性は分かっているだけで6人で、そのうち少なくとも2人の動画が公開されていたそうだ。公開して非難が殺到してもまったく反省することもなかったらしいが、他人の人格の尊重ということなどを意に介さない呆れた輩だ。彼らはこのほかにも身体障害者の女性と健常者の女性の反応を比較することまで計画していたらしいが、「ドブスの会」の問題が発覚したために実行されなかった。また彼らは、経営難にあえぐ70代の男性洋品店主に対し、インタビューと称して「今日の昼ご飯は?」「趣味は?」など無意味な質問を繰り返したあげく、「ここ絶対つぶれますね」と吐き捨てる動画も撮影していたと言う。若気の至りとは到底言えない実に反社会的で不愉快、傲慢な連中だ。

 彼らは大学側の調査に対して「不道徳なものから生じるおかしみを追求することで、何かしらの表現ができると思った」と話しているという。物は言いようだが、彼らをこのような行動は、彼らが所属するシステムデザイン学部のある教官の考え方にも影響されていたようで、この教官はツイッターなどで「嫌われることをする人を僕は信頼している。嫌われることをするのは芸術家の役割」とか、「倫理性とか道徳性とか世の中一般の尺度と照合してダメとされるもの。ARTはそれを『美なるもの』としてすくい上げる」などと言っているようだ。この教官の考えも門外漢の私にはよく理解できなくて、何か芸術家ぶった独り善がりのようにも思えるが、件の学生達はそれを鵜呑みにして不消化のまま行動に表わしたのだろう。彼らはかつて「ニセ街頭募金」も行っていたようで、その動画を見たその教官は「素晴らしい」と称賛していたと言う。こういうしたり顔の「大人」の有りようが、未熟な学生達を無分別な行動に走らせるのだろう。

 学生達は退学処分になった。「彼らを非難するのは表現の自由を損なう」とする例によって例のごとき擁護論もあるようだが、人の人格を傷つけて、何が「表現の自由」「アート」か。大学4年生にもなって社会人になるのも間近いと言うのに、他人の心を傷つけて芸術家気取りでいるこの愚か者達には、この世の中はそれほど甘くないという薬になったのではないか。