平成27(し)149
弁護人に対する出頭在廷命令に従わないことに対する過料決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件
ある人が刑事事件で逮捕され、裁判所に行くのに手錠でつながれて連行されるのは苦痛に耐えないと主張。この被告人が出廷を拒否したところ、その国選弁護士がそれに同調して出廷しなかった。「裁判ができない!いい加減にしろ!」ということで、裁判所が出頭命令を出した。
しかしそれもこの国選弁護人は無視して出頭しなか
ったことについて、裁判所が刑事訴訟法278条の2第2項に基づいて、弁護士に罰金命令を出しました。
これについて弁護士は、弁護士懲戒請求でやればいい話で罰金刑はおかしいと主張しました。
弁護士は、刑事訴訟法278条の2第3項 (前二項の規定による命令を受けた検察官又は弁護人が正当な理由がなくこれに従わないときは、決定で、十万円以下の過料に処し、かつ、その命令に従わないために生じた費用の賠償を命ずることができる。)を知らなかった?いろいろ推測がつきませんが、まあ、なんともしょうもない事で揉めましたねとしか言いようがない話です。
しかし、こんな事で最高裁まで行く弁護士というのはどうなんでしょうか。何人も裁判を受ける権利を有する(憲法32条)はありますが、これは権利の乱用じゃないですかね。弁護士は懲戒請求すればいいじゃないかと開き直ったわけですが、国といっても裁判所が懲戒請求を弁護士会に対して行うというのはおかしいでしょう。強制力は裁判所の方があるわけですし、弁護士会なんぞに文句を言わずに処罰できるわけですから。
当然、裁判所は棄却しているわけですが、その理由として刑訴法278条の2第1項による公判期日等への出頭在廷命令に正当な理由なく従わなかった弁護人に対する過料の制裁を定めた同条の2第3項は,訴訟指揮の実効性担保のための手段として合理性,必要性があるといえ,弁護士法上の懲戒制度が既に存在していることを踏まえても,憲法31条,37条3項に違反するものではない。としています。
第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
第三十七条 ○3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
要するに、弁護人の主張は裁判中であっても手錠腰縄等の拘束は可笑しいのであり、被告人と弁護人の関係は依頼することができるにすぎないのだから、国で別な人をつけろという主張でした。これについては、過去の判例上その主張は認めないとしています。判例主義ですからその主張になるでしょう。
さらに最高裁は、弁護士会の懲戒制度の欠陥について述べています。裁判所は,弁護士である弁護人に対して同項の過料決定をしたときは,同条の2第5項により,当該弁護士の所属する弁護士会又は日本弁護士連合会に通知し,適当な処置をとるべきことを請求しなければならないとされているものの,同請求を受けた者は,何が「適当な処置」であるか自ら判断することができ,法令上の懲戒処分等の懲戒措置をとることを義務付けられるわけでもないと。
ということで全員一致で抗告理由なしの判決になりました。
今回の裁判官 第三小法廷
裁判長裁判官 大谷剛彦
裁判官 岡部喜代子
裁判官 大橋正春
裁判官 木内道祥
裁判官 山崎敏充
ごもっともだと思いますよ、裁判所の判断は。所詮互助会に毛の生えたレベルの弁護士会ですから、そんなところに公正で法に基づいた懲罰を下す能力があるかと言えば、無いと断言できます。実際、弁護士会に懲戒請求を出しても弁護士会ごとにその懲戒内容に差が出るのは有名な話です。
まあ、裁判所は判例と弁護士会の懲戒能力について問題を指摘しているわけですが、それについては私も同意します。しかし、裁判所が問われていないのに暗に弁護士会の問題点をつつくというのは、いささか趣味が悪い気がします。私なら、むしろ訴訟権の乱用として棄却します。
弁護人に対する出頭在廷命令に従わないことに対する過料決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件
ある人が刑事事件で逮捕され、裁判所に行くのに手錠でつながれて連行されるのは苦痛に耐えないと主張。この被告人が出廷を拒否したところ、その国選弁護士がそれに同調して出廷しなかった。「裁判ができない!いい加減にしろ!」ということで、裁判所が出頭命令を出した。
しかしそれもこの国選弁護人は無視して出頭しなか
ったことについて、裁判所が刑事訴訟法278条の2第2項に基づいて、弁護士に罰金命令を出しました。
これについて弁護士は、弁護士懲戒請求でやればいい話で罰金刑はおかしいと主張しました。
弁護士は、刑事訴訟法278条の2第3項 (前二項の規定による命令を受けた検察官又は弁護人が正当な理由がなくこれに従わないときは、決定で、十万円以下の過料に処し、かつ、その命令に従わないために生じた費用の賠償を命ずることができる。)を知らなかった?いろいろ推測がつきませんが、まあ、なんともしょうもない事で揉めましたねとしか言いようがない話です。
しかし、こんな事で最高裁まで行く弁護士というのはどうなんでしょうか。何人も裁判を受ける権利を有する(憲法32条)はありますが、これは権利の乱用じゃないですかね。弁護士は懲戒請求すればいいじゃないかと開き直ったわけですが、国といっても裁判所が懲戒請求を弁護士会に対して行うというのはおかしいでしょう。強制力は裁判所の方があるわけですし、弁護士会なんぞに文句を言わずに処罰できるわけですから。
当然、裁判所は棄却しているわけですが、その理由として刑訴法278条の2第1項による公判期日等への出頭在廷命令に正当な理由なく従わなかった弁護人に対する過料の制裁を定めた同条の2第3項は,訴訟指揮の実効性担保のための手段として合理性,必要性があるといえ,弁護士法上の懲戒制度が既に存在していることを踏まえても,憲法31条,37条3項に違反するものではない。としています。
第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
第三十七条 ○3 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。
要するに、弁護人の主張は裁判中であっても手錠腰縄等の拘束は可笑しいのであり、被告人と弁護人の関係は依頼することができるにすぎないのだから、国で別な人をつけろという主張でした。これについては、過去の判例上その主張は認めないとしています。判例主義ですからその主張になるでしょう。
さらに最高裁は、弁護士会の懲戒制度の欠陥について述べています。裁判所は,弁護士である弁護人に対して同項の過料決定をしたときは,同条の2第5項により,当該弁護士の所属する弁護士会又は日本弁護士連合会に通知し,適当な処置をとるべきことを請求しなければならないとされているものの,同請求を受けた者は,何が「適当な処置」であるか自ら判断することができ,法令上の懲戒処分等の懲戒措置をとることを義務付けられるわけでもないと。
ということで全員一致で抗告理由なしの判決になりました。
今回の裁判官 第三小法廷
裁判長裁判官 大谷剛彦
裁判官 岡部喜代子
裁判官 大橋正春
裁判官 木内道祥
裁判官 山崎敏充
ごもっともだと思いますよ、裁判所の判断は。所詮互助会に毛の生えたレベルの弁護士会ですから、そんなところに公正で法に基づいた懲罰を下す能力があるかと言えば、無いと断言できます。実際、弁護士会に懲戒請求を出しても弁護士会ごとにその懲戒内容に差が出るのは有名な話です。
まあ、裁判所は判例と弁護士会の懲戒能力について問題を指摘しているわけですが、それについては私も同意します。しかし、裁判所が問われていないのに暗に弁護士会の問題点をつつくというのは、いささか趣味が悪い気がします。私なら、むしろ訴訟権の乱用として棄却します。