最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

税関職員の郵便物抜き打ち検査は憲法違反ではない

2017-02-05 09:12:17 | 日記
平成27年(あ)第416号 覚せい剤取締法違反,関税法違反被告事件
平成28年12月9日 第三小法廷判決



ある人が麻薬を郵便で密輸しようとしました。税関が異変に気づき、開けてみたところ麻薬をであることが判明しまし、受取人が逮捕されました。
ところが、郵便物を本人の同意なし、また裁判所から令状もなしに中を開けられ、裁判で証拠として取り上げたことは違法であるとして訴えました。

これについて毎日新聞は以下のように報道しています。
裁判所の令状がなく、税関職員が国際郵便の中身を調べたことが憲法違反にあたるかが争われた刑事裁判の上告審判決で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は9日、「検査は合憲」との初判断を示した。その上で、覚せい剤取締法違反(輸入)などに問われたルーマニア人の女の被告(45)の上告を棄却した。懲役12年、罰金600万円とした1、2審判決が確定する。
 女は2012年8月、仲間と共謀しイランから覚醒剤約2キロを輸入したとして起訴された。1、2審判決によると、東京国際郵便局(東京都江東区)にある東京税関出張所の職員が、イランからの郵便物を関税法に基づいて検査し、覚醒剤を発見。女は輸入に関わったと認定された。
 弁護側は上告審で「裁判所の令状がなく検査は憲法に反する」と主張。小法廷は「国際郵便物に対する税関検査は国際社会で広く行われ、国内郵便物と異なり内容物のプライバシーへの期待が低い。相当な限度での検査にあたり、憲法に反しない」と判断した。【島田信幸】


違法行為によって得られた証拠は、証拠として採用してはならないという原則があるので、無罪を主張しようとしたようです。現行犯逮捕は例外ですが。
根拠条文は、日本国憲法第33条は「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」とする。

日本国憲法第35条第1項は「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」とし、第2項は「捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。」とする。
同意・承諾があっても令状によらない身柄の拘禁や抑留は許されないが、権利者の同意・承諾があれば捜索や押収は許される例外があります。

となると、密輸した犯人は捜査そのものが違反であり、逮捕が無効であるという事になります。ここだけ見ればそうなのですが、厄介なことに改正前の関税法76条で調査を求めるよう定めています。
ただし、税関長は、輸出され、又は輸入される郵便物中にある信書以外の物について、政令で定めるところにより、税関職員に必要な検査をさせるものとする。
これが憲法違反であるから、法律そのものが無効であると主張するのです。

そこで裁判所は続けます。
ところで,憲法35条の規定は,主として刑事手続における強制につき,司法権による事前抑制の下に置かれるべきことを保障した趣旨のものであるが,当該手続が刑事責任追及を目的とするものではないとの理由のみで,その手続における一切の強制が当然に同規定による保障の枠外にあると判断することは相当でない。

そして結論は。
裁判官の発する令状を得ずに,郵便物の発送人又は名宛人の承諾を得ることなく,本件郵便物検査を行うことは,本件各規定により許容されていると解される。このように解しても,憲法35条の法意に反しないことは,当裁判所の判例(最高裁昭和44年(あ)第734号同47年11月22日大法廷判決・刑集26巻9号554頁,最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁)の趣旨に徴して明らかである。


なんだかなぁという感じです。麻薬の密輸はとんでもない悪ですが、憲法と矛盾することを平気で言うのはどうかと。結論として、過去にこういう判例があるからという責任逃れ的な感じがします。
釈然としない判断を裁判官のせいにするだけでなく、憲法を全面的に改正する必要がありますね

裁判長裁判官 大谷剛彦
裁判官 岡部喜代子
裁判官 大橋正春
裁判官 木内道祥
裁判官 山崎敏充