最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

今一つ判決:諫早湾干拓 漁業権は復活する可能性があるから未来永劫を縛る結論は出せない

2019-09-15 11:19:46 | 日記
平成30(受)1874  請求異議事件
令和元年9月13日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄差戻  福岡高等裁判所

共同漁業権から派生する漁業行使権に基づく開門請求の認容判決確定後,前訴口頭弁論終結時に存在した共同漁業権から派生する漁業行使権に基づく開門請求権が消滅したことのみでは当該確定判決に対する請求異議事由とはならないとされた事例

随分長引いた裁判です。2015-02-16の記事諫早湾矛盾判決に対する裁判です。前回の最高裁判所の判断は、正直本来の紛争解決目的を放置したトンデモ裁判でしたが、今回はどうでしょうか。
諫早湾干拓事業が発端となってこの裁判に至りました。

産経新聞の報道です。
 排水門をめぐっては、漁獲量減少などを理由に漁業者側が求める「開門」と、塩害を懸念する営農者側が求める「非開門」という相反する司法判断が併存する「ねじれ」状態が続いてきた。判決は開門の是非に触れなかったが、開門を命じた確定判決の無効化もあり得ると示唆し、将来的には「非開門」での解決の方向性を示したといえそうだ。
 第2小法廷は、2審判決が「漁業者の共同漁業権は更新期限を過ぎたことで消滅し、開門請求権も失われた」としたことについて、「漁業権が消滅しても、同じ内容の漁業権が与えられることを前提としている」と判断。開門請求権を認め、2審判決を破棄した。
 その上で、長い時間が経過し、事情が変わったことで、漁業者が国に開門を求めることが「権利の乱用」となるかどうかなどについて、高裁でさらに審理を尽くすよう求めた。


では事実認定から見ていきましょう
(1) 上告人らは,佐賀県有明海漁業協同組合大浦支所,島原漁業協同組合又は有明漁業協同組合の組合員である。
(2) 上告人らは,被上告人に対し,本件各組合の各共同漁業権の範囲内において各自が有する漁業法8条1項の漁業を営む権利による妨害排除請求権又は妨害予防請求権等に基づき,主位的に本件潮受堤防の撤去,予備的に本件各排水門の常時開放を求めるなどする訴訟を佐賀地裁に提起した。
(3) 本件各確定判決が認定した前訴の口頭弁論終結時における本件各組合の各共同漁業権は,いずれも平成15年9月1日に免許がされたものであり,その存続期間は同日から平成25年8月31日までであった。
本件各組合は,平成25年9月1日,漁業種類,漁場の位置及び区域,漁業時期等が本件各漁業権1と同一内容であって,存続期間を平成35年8月31日までとする各共同漁業権(以下「本件各漁業権2」という。)の免許を受けた。

平成25年8月31日の経過により消滅したから,本件各漁業権1から派生する権利である上告人らの各漁業行使権に基づき本件各排水門の開放を求める請求権(以下「開門請求権」という。)も消滅した。


要するに、平成25年で漁業権が消滅したのであるから、訴えそのものが無効であると高裁は判断したのです。

本件各確定判決は,平成20年6月及び平成22年12月にされたものであり,かつ,その既判力に係る判断が包含されることとなる主文は要旨「判決確定の日から3年を経過する日までに開門し,以後5年間にわたって開門を継続せよ」というものであるから,本件各漁業権1の存続期間の末日である平成25年8月31日を経過した後に本件各確定判決に基づく開門が継続されることをも命じていたことが明らかである。

漁業権が切れたから訴えの資格がないからあの判決が出たのであって、漁業権が再び認められたらそうとは限らないと言っているのです。

本件各確定判決を合理的に解釈すれば,本件各確定判決は,本件各漁業権1が存続期間の経過により消滅しても,本件各組合に同一内容の各共同漁業権の免許が再度付与される蓋然性があることなどを前提として,同年9月1日頃に免許がされるであろう本件各漁業権1と同一内容の各共同漁業権(本件各漁業権2がこれに当たる。)から派生する各漁業行使権に基づく開門請求権をも認容したものであると理解するのが相当である。
以上によれば,本件各確定判決に係る請求権は,本件各漁業権1から派生する各漁業行使権に基づく開門請求権のみならず,本件各漁業権2から派生する各漁業行
使権に基づく開門請求権をも包含するものと解されるから,前者の開門請求権が消滅したことは,それのみでは本件各確定判決についての異議の事由とはならない。


未来永劫にわたって閉門するわけではないと言っています。
これって解決になるのでしょうか?当然のように意見が出てきました。

裁判官菅野博之の補足意見
判例上,確定判決に基づく強制執行が権利の濫用に当たるとして請求異議訴訟でその執行力を排除する余地が肯定されており(最高裁昭和35年(オ)第18号同37年5月24日第一小法廷判決・民集16巻5号1157頁,最高裁昭和59年(オ)第1368号同62年7月16日第一小法廷判決・裁判集民事151号423頁等),権利濫用に当たるか否かを判断するに当たっては,当該債務名義の性質,同債務名義により執行し得るものとして確定された権利の性質・内容,同債務名義成立の経緯及び同債務名義成立後強制執行に至るまでの事情,強制執行が当事者に及ぼす影響等諸般の事情を総合考慮することとなる(前掲昭和62年7月16日第一小法廷判決)。


ただ書いただけのような・・・もう少し解説が必要じゃないでしょうか。最高裁昭和35年(オ)第18号と最高裁昭和59年(オ)第1368号を読んでも、この事件とどう関係するのか分かりません。民事で民間人同士の争いと国を相手にした場合と同列に論じる?公共性の度合いが全く異なりますよね。

第1に,本件各確定判決が漁業行使権に基づく開門請求を認める判断の前提とした諸事情(漁獲量の減少の程度,本件潮受堤防の災害防止機能の必要性等)は,自然環境や社会環境にも関わる本来的に可変的,流動的な性格を有するものである。
こうした事情は,時の経過により変動する可能性があるが,本件各確定判決は,上記事情について前訴口頭弁論終結時における予測に基づいて,将来時点における妨
害排除・予防請求を認容するものとなっているため,その判断は相当の不確実性をはらんでいるといえる。


この裁判官が根拠とした2つ判断結果は、土地の境界線で利害関係が明確であるのに対して、この事件は漁獲量に差が出るような曖昧な条件下であり、ここでの訴えは災害予防の訴えだとして別物とすべき?と言っているのでしょうか。

第2に,上記妨害排除・予防請求の可否に係る判断は,被侵害利益と対立する諸利益との総合的な利益衡量の下にされたものである。このような諸利益には経済的な利益から生命・身体の安全に関わる利益に至るまで様々な性格のものがあるが,上記第1として述べたとおり,これらの諸利益の前提となる自然環境や社会環境は変動していく性質を有するものであるから,これらの諸利益の有り様も必然的に変動するため,総合的な利益衡量の結果が口頭弁論終結時のものと異なるものとなることもあり得るところである。

なんだか煮え切らないですね。

開門の時期を判決確定の日から最大で「3年」猶予したことに関し,本件各確定判決は,その理由中において,本件潮受堤防が果たしている洪水時の防災機能及び排水不良の改善機能等を代替するための工事(以下「対策工事」という。)に3年程度要することを考慮したとしている。これは,本件潮受堤防に防災機能があることを踏まえ,判決確定後直ちに開門を命ずることとすれば周辺住民の生命・身体に関する利益が損なわれるおそれがあることから,上記の期間中に対策工事が行われるであろうことを考慮に入れて総合的な利益衡量をしたものと解される。

工事に必要な期間としての3年であると推測されるのであるから、裁判やり直しは当然といいたいのでしょうか?

開門期間を「5年間」に限ったことに関しても,本件各確定判決自体,その理由中において,前記土地干拓事業が諫早湾ないし有明海の環境に及ぼす影響が全て解明されたとはいえず将来的に請求権の成否及び内容を基礎付ける事実関係が変動する可能性があることを認め,そのことや,開門による干潟生態系の変化とそれを受けての調査に要する期間等を考慮して,開門期間を5年間に限って請求を認容し,その余は理由がない旨判示している。

5年で環境の変化の原因を特定できるとは思えませんけどね。

で彼の結論
諸事情を総合的に衡量し,本件各確定判決が暫定的な特殊な性格を有することを十分に踏まえた上で,本件各確定判決に基づく強制執行が事情の変動により権利の濫用となるに至っているか否かにつき,判断されるべきであると考える


何じゃこれ?意見ですらなく、もっと慎重に検討すべきだと?これでは、何も言っていないのと同じです。意見を書くならばもっと方向性を明確にすべきじゃないですか?

裁判官草野耕一の意見
1 一般論としていえば,物権的請求権の一形態である妨害排除請求権は,妨害行為によって生じている権利侵害がもたらす損害が全額塡補されたからといって当該請求権の行使自体を否定すべきものではない。・・・これと同視し得る事態が生じている(例えば,債務者が損害全額の弁済を行おうとしたのに債権者がその受領を拒絶したために債務者が当該金額の弁済の提供を行った事態などがこれに当たるであろう。)とすれば,それにもかかわらず妨害排除を強制することは,あえてそれを認めるべき別段の事由がない限り,権利濫用の法理によってこれを抑止することが相当であると思料する。

妨害排除請求権の一環として、門を閉じろと判決を出してもらい、漁業者に賠償金を払おうとしたら受け取り拒否をしている。その状況で強制排除請求するのは権利の濫用だとの主張のようです。
それが認められるようであれば、裁判所はなんの存在意義があるのでしょうか?

仮に,①被上告人が本件各確定判決を履行するために支出しなければならない金額が,被上告人がこれを履行したことによって発生を回避し得る上告人らの損害の合計額を上回り,しかも,②被上告人の本件各漁業権に対する侵害行為によって上告人らが被った損害を全額弁済しているか,あるいは,それと同視し得る事態が発生しているとすれば,それでも本件各確定判決の履行を強制すべき別段の事由がない限り,これを強制することはもはや権利の濫用に当たると解すべきである。


は?!仮の話をここでしますか?だったら調停でまとめてくださいよ。さもなくば強制してくださいよ。

第二小法廷判決
裁判長裁判官 菅野博之 訳わからん
裁判官 山本庸幸 今一つ
裁判官 三浦 守 今一つ
裁判官 草野耕一 訳わからん


一連の諫早湾の問題はなんの解決にもなりません。本来政治で何とかしろよという話の類を司法に押し付けている感がありますが、それでも持ち込まれたらそれなりに裁判所は結論を出さなければなりりませんし、それを期待されています。
なんだか敵前逃亡感がぬぐえません。