最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

自賠責で払ったから民間保険は払わんでよろしいということにはならない

2023-12-30 13:43:27 | 日記
令和4(受)648  損害賠償請求事件
令和5年10月16日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄自判  東京高等裁判所

ニュースでは出てこないので、事実認定を見ていきます。

(1)ア Aは、平成28年5月2日、車道上に横臥していたところを被上告人Y1運転の普通乗用自動車によりれき過され、更にその約8分後、その場に横臥していたところを被上告人Y2運転の普通乗用自動車によりれき過されて、その後、死亡した。

私もありますが、道路で寝ている人っているんですよね。酔っぱらっているのかどうかわかりませんが、引きそうになって慌てて急ブレーキを踏みましたよ。この状態でひき殺したところで、ヨーロッパであれば寝ているとが悪いということで無罪になります。何でこんな当然のことが日本では認められないのか、実に不思議です。これは高速道路で道の真ん中を歩いているのを轢いても、日本では有罪。おかしいですよね。

イ 上告人X1は、Aの配偶者であり、上告人X2、同X3及び同X4は、いずれもAの子である。

(2)本件事故によりAに生じた損害の額は、合計8285万2813円であり、上告人X1が2分の1、上告人子らが各6分の1の各割合で、Aの被上告人らに対する損害賠償請求権を相続した。上告人らの固有の損害の額は、上告人X1につき、350万円であり、上告人子らにつき、各100万円である。本件事故におけるAの過失割合は3割であることから、上記割合により過失相殺をすると、上告人らが被上告人らに対して賠償請求することができる損害金の額(弁護士費用相当額を除く。)は、上告人X1については3144万8484円となり、上告人子らについては各1036万6161円となる。

(3)保険の内容は以下の通り
ア 被保険自動車の運行に起因する事故等に該当する急激かつ偶然な外来の事故により、被保険者が身体に傷害を被ることによって被保険者又は配偶者若しくは子等に生じた損害に対して、人身傷害保険金を支払う。
イ 人身傷害保険金額を限度として、本件約款所定の算定基準に従い算定された損害額から、人身傷害保険金の請求権者に対して自賠責保険によって支払われた金員等の既払額を差し引いた額とする。
ウ 損害が生じたことにより人身傷害保険金の請求権者が損害賠償請求権その他の債権を取得し、その損害に対して参加人が支払った人身傷害保険金の額がその損害の額の全額に満たない場合には、上記債権の額から、人身傷害保険金が支払われていない損害の額を差し引いた額の限度で、上記債権は参加人に移転する


まあよくある契約ですね。

人身傷害保険金を支払う義務を負うところ、本件保険契約における人身傷害保険金額は、3000万円であり、本件約款所定の算定基準に従い算定される損害の額は、上記人身傷害保険金額を超えるものであった。

無いよりはいいでしょうが、対人無制限にしておかないとこういう時大変ですよ。

ア 参加人は、平成28年9月6日、上告人らに対し、8640円を支払った。また、参加人は、同年12月15日、上告人X1から、「保険金のお支払についての仮協定書」を受領し、同月28日、上告人らに対し、2999万1360円を支払った。

所謂免責のための支払いですね。何でこんな制度があるのかよく分かりませんが。

イ 平成29年5月24日、本件事故について、被上告人Y1との間で自賠責保険の契約を締結していた保険会社から、損害賠償額の支払として3000万円を受領した。

これもよく分かりませんが、保険会社から直接払ってくれれば手続きがさっさと住むのですが、保険加入者にいったん渡されることになっています。

ウ その後、上告人X1から、「保険金のお支払についての仮協定書」を受領し、平成29年11月17日、上告人らに対し、3000万円を支払った。
①参加人により支払われる保険金の合計が3000万円であり、これは自賠責保険の保険金額を含む旨、
②今回支払われる保険金を受領することにより、本件事故を原因とする上告人らの被上告人らに対する損害賠償請求権が上記保険金の額を限度として参加人に移転することを承認する旨、
③参加人が自賠責保険への精算を行った後に、精算額を限度として最終協定を行うことを認める旨の各記載があった。


この後保険加入者は3000万円を受け取って、交通事故の被害者の妻と子供に1500万円と500万円ずつ支払いました。ですが、

(5)上告人らと参加人は、本件仮協定書1及び本件仮協定書2に記載された最終協定を締結していない。

これはまずい状態です。何で仮のままだったのでしょうか。

参加人は、上告人らに対し、自賠責保険からの損害賠償額の支払分を含めて参加人が一括して支払をすることとして本件各支払金を支払っており、その合計額(6000万円)は本件保険契約における人身傷害保険金額(3000万円)を超えるものであることに加え、参加人が自賠責保険から損害賠償額の支払として本件各支払金の合計額と同額の6000万円を受領したことや、参加人における内部処理の状況を考慮すれば、本件各支払金は、人身傷害保険金としてではなく、自賠責保険からの損害賠償額の支払の立替払として支払われたものと認められる。

最高裁は
(1)本件約款によれば、人身傷害条項の適用対象となる事故によって生じた損害について参加人が保険金請求権者に支払う人身傷害保険金の額は、保険金請求権者が上記事故について自賠責保険から損害賠償額の支払を受けていないときには、上記損害賠償額を考慮することなく所定の基準に従って算定されるものとされている。・・・・上記の場合には、保険金請求権者としては上記保険会社が給付義務を負う人身傷害保険金が支払われたものと理解するのが通常であり、人傷一括払合意をしていたということだけで、上記金員に自賠責保険からの損害賠償額の支払分が含まれているとみるのは不自然、不合理であり(最高裁令和2年(受)第1198号同4年3月24日第一小法廷判決・民集76巻3号350頁参照)。


したがって、本件支払金1・2については、上告人らの被上告人らに対する損害賠償請求権の額から、参加人が本件支払金1・2の支払により保険代位することができる範囲を超える額を控除することはできないというべきである。



裁判長裁判官 安浪亮介
裁判官 山口 厚
裁判官 深山卓也
裁判官 岡 正晶
裁判官 堺 徹

何だかなぁという感じです。要するに、死亡事故をやって仮払いで慰謝料を払ったけども、一部保険金が下りなくて支払いが滞った。その遅延損害金と残りを払えというものですが、自賠責で払ったから民間保険は払わんでよろしいということにはならないということになったようです。