10月22日の鳥羽水族館ツアーで、ジュゴンの飼育と保護にながくたずさわってこられた浅野副館長さんのお話を聞きました。以下その概要です。(講演の際のメモをもとにしたものです。内容の責任はSDCCにあります) ☆じゅごん
○鳥羽水族館では1977年にジュゴンの飼育を始めた。それ以来30年間ジュゴンの飼育を続けてきた。
○まず海牛類について
海牛類
☆ジュゴン科 ジュゴン
海牛 ステラカイギュウ
☆マナティー科 アメリカマナティー(フロリダ・アンテリアン)
アマゾンマナティー
アフリカマナティー
ジュゴン科 海牛のステラカイギュウは1741年にベーリング海峡で発見され、その後わずか27年で絶滅。
ラッコハンターに食べられたり油を燃料にされたりした。
発見当時は1500頭ほどいたという。指の骨がなく歯がない。
日本の北海道滝川市で発見された「タキガワカイギュウ」もステラカイギュウに似た骨格を持っている。
アメリカマナティはフロリダマナティとアンテリアンマナティに分かれる。フロリダ沖の海は海流が強くそれで区切られている。頭の骨が少し違う。
アフリカマナティは西アフリカにいる。アマゾンマナティはお腹に白い模様があるのが特徴。鳥羽水族館にいるのはアフリカマナティ。沖縄の美ら海水族館にはアンテリアンマナティがいる。熱川バナナワニ園にはアマゾンマナティーがいる。
○ジュゴンについて
・ジュゴンは世界に10万頭ぐらい。オーストラリアの西海岸。ペルシァ湾(バーレーンなど)に多くいる。アフリカ東海岸、マダガスカルなどにもいるが。しかしケニア、モザーンビークでは2年間に1/10になるなど、厳しい状態がある。
・ジュゴンの骨格
上がジュゴンで下がマナティー
ジュゴンの骨格 指の骨があります。「骨盤」のなごりもあります。
上あごの骨が曲がっていて、海底にへばりついて海草を食べやすいようになっている。大人になると歯が2本になる。歯とは別に咀嚼板があり、海草をすりつぶして食べる。牙には年輪があり、牙の断面をみると年齢の推定が可能である。
・マナティとの違い
マナティは上あごの骨がまっすぐ。歯は8本あるが、抜けると新しいのが次々死ぬまではえてくる。マナティは歯の断面を見ても年齢の推定はできない。
ジュゴンは尾びれが二また。マナティはウチワ形。ジュゴンは胴が紡錘形。マナティは扁平。ジュゴンのむなびれ(前足)はひじの関節が胴体の中に埋もれている。マナティのむなびれはひじから外にでている。マナティは浅い川でも生活しており、そういう場所に適した体。ジュゴンは海の生活に適した体になっている。
・ジュゴンの体の中
解剖すると大腸小腸の見分けがつきにくい。どちらも長くて太い。
胃は大きくて内容物でいつもいっぱい。ジュゴンは1日30kgの海草をたべる。栄養価が低くかさのあるものをたくさん食べて生きている動物である。飼育するときもこの性質を踏まえることが基本。また野生のジュゴンの保護を考えるときも、よい餌場を保全することが一番大切になる。
鳥羽水族館でジュゴンが一日でたべるアマモ30kg
○ジュゴンの飼育について
・1950年 アメリカでまず飼育され45日間生きた。
・その後オーストラリアで17日間。1978年沖縄の海洋博海中水族館で33日間。
・1977年5月より鳥羽水族館で飼育開始。現在に至る。飼育当初は2日に1回は鳥羽湾内で、餌の海草を採取していた。水族館職員総出で、ジュゴンの飼育にあたった。
○フィリピンのジュゴン保護について
・ジュゴンを脅かすもの
魚網 ダイナマイト漁 人間生活による生息環境の悪化 密漁
・漁民、地域住民への教育宣伝活動が保護の基本
魚網にかかった場合の保護 餌場の保全 密漁の中止
・ジュンイチ、セレナはフィリピンからやってきた。保護された直後は授乳や運動スペースの確保など、物資機材がない中でフィリピン現地で様々な試行錯誤をして育て、日本にやってきた。
・ジュゴンは運動しないとだめ。マナティは狭い場所でも平気で飼育もできる。
(質疑応答)
Q.ジュゴンは色の識別はできるのですか?
A.テストはしたがまだよくわかりません。
Q.亀吉くんについて聞かせてください。
A.今の亀吉は3代目。1代目はジュンイチといっしょにいれていた。セレナがやってきて水槽にいれたとき、あまり運動せず状態がよくなかった。ジュゴンは運動しないと元気がなくなる。そこで亀吉をいれるとよく遊んで運動し、状態がよくなった。
亀吉とセレナ
Q.ジュゴンは鳴くのですか?
A.子どものころは「ピヨピヨ」とヒヨコのような鳴き声。大人になるとこするような「キュー」という声。水族館が静かな時間は水槽の外からもよく聞こえる。
Q.ジュゴンは目や耳はよいのですか?
A.耳はとてもよいし、目もよく見える。水面の上のものも見えている。音と視覚で危険を感じ身を守っている。
Q.野生のジュゴンはどれくらいもぐれるのですか?
A.30mぐらいはもぐることができる。オーストラリアのジュゴンは35mぐらいもぐったという記録もある。野生のジュゴンが沖にいったとき、どうしているかはまだはっきりわかっていない。
Q.セレナが鳥羽水族館に来て20年。ウェディングの見通しは?
A.9歳ぐらいで繁殖できる。でもセレナは人間との生活が長いので、ジュゴンより人間が好き。だからセレナにわざと接触しないようにした時期もある。発情期がきたらジュンイチと同じ水槽にいれ、今後も様子を見たい。
Q.ジュゴンに人間以外の天敵はいますか?
A.まずサメ。ジュゴンの尾びれにかみついて泳げなくしてしまい食べる。ウミヘビも天敵といわれているが、かまれても死ぬことはないのではないか。
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浅野さんのジュゴンへの愛情が伝わってくる素敵なお話でした。
浅野さんのお話については今年3月の大阪セミナーの際のお話もおすすめです!
第4回ジュゴンセミナー概要
浅野さん、鳥羽水族館のみなさま、セレナちゃんとジュンイチくんに感謝です!
○鳥羽水族館では1977年にジュゴンの飼育を始めた。それ以来30年間ジュゴンの飼育を続けてきた。
○まず海牛類について
海牛類
☆ジュゴン科 ジュゴン
海牛 ステラカイギュウ
☆マナティー科 アメリカマナティー(フロリダ・アンテリアン)
アマゾンマナティー
アフリカマナティー
ジュゴン科 海牛のステラカイギュウは1741年にベーリング海峡で発見され、その後わずか27年で絶滅。
ラッコハンターに食べられたり油を燃料にされたりした。
発見当時は1500頭ほどいたという。指の骨がなく歯がない。
日本の北海道滝川市で発見された「タキガワカイギュウ」もステラカイギュウに似た骨格を持っている。
アメリカマナティはフロリダマナティとアンテリアンマナティに分かれる。フロリダ沖の海は海流が強くそれで区切られている。頭の骨が少し違う。
アフリカマナティは西アフリカにいる。アマゾンマナティはお腹に白い模様があるのが特徴。鳥羽水族館にいるのはアフリカマナティ。沖縄の美ら海水族館にはアンテリアンマナティがいる。熱川バナナワニ園にはアマゾンマナティーがいる。
○ジュゴンについて
・ジュゴンは世界に10万頭ぐらい。オーストラリアの西海岸。ペルシァ湾(バーレーンなど)に多くいる。アフリカ東海岸、マダガスカルなどにもいるが。しかしケニア、モザーンビークでは2年間に1/10になるなど、厳しい状態がある。
・ジュゴンの骨格
上がジュゴンで下がマナティー
ジュゴンの骨格 指の骨があります。「骨盤」のなごりもあります。
上あごの骨が曲がっていて、海底にへばりついて海草を食べやすいようになっている。大人になると歯が2本になる。歯とは別に咀嚼板があり、海草をすりつぶして食べる。牙には年輪があり、牙の断面をみると年齢の推定が可能である。
・マナティとの違い
マナティは上あごの骨がまっすぐ。歯は8本あるが、抜けると新しいのが次々死ぬまではえてくる。マナティは歯の断面を見ても年齢の推定はできない。
ジュゴンは尾びれが二また。マナティはウチワ形。ジュゴンは胴が紡錘形。マナティは扁平。ジュゴンのむなびれ(前足)はひじの関節が胴体の中に埋もれている。マナティのむなびれはひじから外にでている。マナティは浅い川でも生活しており、そういう場所に適した体。ジュゴンは海の生活に適した体になっている。
・ジュゴンの体の中
解剖すると大腸小腸の見分けがつきにくい。どちらも長くて太い。
胃は大きくて内容物でいつもいっぱい。ジュゴンは1日30kgの海草をたべる。栄養価が低くかさのあるものをたくさん食べて生きている動物である。飼育するときもこの性質を踏まえることが基本。また野生のジュゴンの保護を考えるときも、よい餌場を保全することが一番大切になる。
鳥羽水族館でジュゴンが一日でたべるアマモ30kg
○ジュゴンの飼育について
・1950年 アメリカでまず飼育され45日間生きた。
・その後オーストラリアで17日間。1978年沖縄の海洋博海中水族館で33日間。
・1977年5月より鳥羽水族館で飼育開始。現在に至る。飼育当初は2日に1回は鳥羽湾内で、餌の海草を採取していた。水族館職員総出で、ジュゴンの飼育にあたった。
○フィリピンのジュゴン保護について
・ジュゴンを脅かすもの
魚網 ダイナマイト漁 人間生活による生息環境の悪化 密漁
・漁民、地域住民への教育宣伝活動が保護の基本
魚網にかかった場合の保護 餌場の保全 密漁の中止
・ジュンイチ、セレナはフィリピンからやってきた。保護された直後は授乳や運動スペースの確保など、物資機材がない中でフィリピン現地で様々な試行錯誤をして育て、日本にやってきた。
・ジュゴンは運動しないとだめ。マナティは狭い場所でも平気で飼育もできる。
(質疑応答)
Q.ジュゴンは色の識別はできるのですか?
A.テストはしたがまだよくわかりません。
Q.亀吉くんについて聞かせてください。
A.今の亀吉は3代目。1代目はジュンイチといっしょにいれていた。セレナがやってきて水槽にいれたとき、あまり運動せず状態がよくなかった。ジュゴンは運動しないと元気がなくなる。そこで亀吉をいれるとよく遊んで運動し、状態がよくなった。
亀吉とセレナ
Q.ジュゴンは鳴くのですか?
A.子どものころは「ピヨピヨ」とヒヨコのような鳴き声。大人になるとこするような「キュー」という声。水族館が静かな時間は水槽の外からもよく聞こえる。
Q.ジュゴンは目や耳はよいのですか?
A.耳はとてもよいし、目もよく見える。水面の上のものも見えている。音と視覚で危険を感じ身を守っている。
Q.野生のジュゴンはどれくらいもぐれるのですか?
A.30mぐらいはもぐることができる。オーストラリアのジュゴンは35mぐらいもぐったという記録もある。野生のジュゴンが沖にいったとき、どうしているかはまだはっきりわかっていない。
Q.セレナが鳥羽水族館に来て20年。ウェディングの見通しは?
A.9歳ぐらいで繁殖できる。でもセレナは人間との生活が長いので、ジュゴンより人間が好き。だからセレナにわざと接触しないようにした時期もある。発情期がきたらジュンイチと同じ水槽にいれ、今後も様子を見たい。
Q.ジュゴンに人間以外の天敵はいますか?
A.まずサメ。ジュゴンの尾びれにかみついて泳げなくしてしまい食べる。ウミヘビも天敵といわれているが、かまれても死ぬことはないのではないか。
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浅野さんのジュゴンへの愛情が伝わってくる素敵なお話でした。
浅野さんのお話については今年3月の大阪セミナーの際のお話もおすすめです!
第4回ジュゴンセミナー概要
浅野さん、鳥羽水族館のみなさま、セレナちゃんとジュンイチくんに感謝です!
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