
彼女の庭にはほとんどラグビーのボールの様に育った
金色のズッキーニの実がぶる下がっていた。
秋の日の種交換会にの為に一つだけ育てていたらしい。
苦労して切った実からたくさんの種が現われて小分けに袋に収められ、
たくさんの庭に散っていった。
こんなに育ってしまった実はまさか美味しくは無いだろうといいながらも、
食い意地と興味から四分の一ほど持ち帰って鶏肉と一緒に煮込むと
思ったよりもなかなか美味しかった。
植物を食べてみる事については私の好奇心もかなりなものである
と思っているが、彼女の好奇心もそれに劣らない。
私たち2人共に「食べる事」「どうやったら面白く、美味しく食べる事ができるか」を妄想するのが大好きなので会えばつい食べる話をしている。
彼女と一緒にある女性の庭を訪ねた。


入り組んだ迷路のような小道を通って辿り着いた庭の中でその女性は蜂を飼っている。
昔は5箱ほど飼っていたが、寒さに弱いミツバチの世話がなかなか厄介で、
今では2箱になった。
白魔女のような彼女は皺だらけになった両手に緑の親指を持っているので、
庭の植物は生き生きと茂り、実を結んでいる。
庭の中心に半分うずもれるように作られた庭小屋を一人で作ってしまう強者でもあり、それは庭の中に生えてきたかの様な小屋だった。
まるで指輪物語に出てくるホビットがドアを開けてくれるのではないかと言う様子をしている。
中にはあちらこちらを旅行した時の土産や、彼女の蜂蜜の壜が並び、
薄暗い中に咲き残った金連花が小さなポットの中で艶っぽく光っていた。
