今夜も本をまくらに。

山歩きが好き、落語が好き、おいしい物が好き、中島みゆきが好き、
でもやっぱり活字がなければ生きていけない私。

星と祭り

2023年02月19日 | 「本」のひきだし

ブクログより



主人公の架山は貿易会社の社長。
健全な良識を備え、相応の地位を築きあげてきたが、結婚には失敗し一人娘のみはるは母親のもとに。時々会いに来てくれるのを楽しみにしていたが、17歳の時、琵琶湖でボートが転覆して遭難してしまう。
一緒に乗っていた大学生の親共々、捜索を見守ってきたが遺体は上がらず、捜索は打ち切られ、宙ぶらりんの気持ちを整理できず、苦悩する。

ある年、ヒマラヤで月を見るというトレッキングに誘われ出かけることにした。ヒマラヤで、みはるのことをじっくり考えるために。雄大な白い山々に心癒され、現地の素朴な人々に安らぎを覚え、タンボチェの僧院で見る10月の満月。
ずっと鬱屈していた架山の心も少しは癒えたようだ。

帰国してから、一緒だった大学生の父親に誘われて、観音様を訪ね歩くようになる。
琵琶湖沿いにたくさんの観音様がおられて、全て琵琶湖を向いて立っておられるという。
最初はみはるの供養になればという気持ちで、訪ね歩いていた架山だが、いつしか自身の安らぎとなっていた。

自分たちの観音様、という感じで大切に守り祀られている湖北の方々とのふれあいの様子や、観音様の詳しい描写など、読んでいて引き付けられます。
湖北の観音様は、白洲正子さんも折に触れて紹介されていて、ぜひ訪ね歩いてみたいと思います。

本作は昭和46年から47年にかけて新聞連載されました。
今回、舞台となった琵琶湖の北部の有志によって編纂されたものです。

そうしてもう一つ発見、新聞に連載時、挿絵を担当したのは生沢朗さん。作中のヒマラヤ遠征旅行の画家のモデルでもいらっしゃるらしいのですが、この生沢さん、もとレーシングドライバーの生沢徹さんのお父様です。

生沢徹さんが出てくると、浮谷東次郎と連鎖的に出てきます。「俺様の宝石さ」懐かしい。



星と祭り / 井上靖

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