できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

これってほんとうにいいの?

2008-09-07 12:01:20 | アート・文化

昨日あたりから新聞各紙が伝えているので、すでにご存知の方も多いかと思うのだが、大阪府の国際児童文学館の職員の仕事ぶりなどを調べるために、橋下大阪府知事が私設秘書にビデオカメラをもたせて、「隠し撮り」をさせていたとか。

そのことは、たとえば今朝の朝日新聞大阪版のネット配信記事は「そこまでするか」という見出しをつけて報じていたし、産経新聞関西のネット配信記事ははっきりと「盗撮」と見出しに書いています。他にも、読売新聞(関西)のネット配信記事は「隠し撮り」、毎日新聞(大阪)のネット配信記事も「隠し撮り」と出ています。

それで、このニュースを見て思ったのは、「児童文学館職員もこんなことまでされたら、たまらんやろうなぁ。統廃合がとりざたされるだけでも、相当ショックが大きいのに」ということ。また、「私設秘書を使って」というあたりで、橋下知事は「幹部級職員を含めて府職員を信用していないのかな?」とも思うし(本当に信頼しているのなら、府職員の誰かを視察に行かせればいいわけだし)、「予算の執行状況や職員の勤務状況がそれほどまで気になるのなら、どうして自分が休みの日にお子さんをつれてふらっと見てくるとか、知事として抜き打ち視察をするとか、そういう方法を使わないのだろうか?」と思ってしまいます。(ちなみに、府知事とは立場がちがうのでいっしょにはできませんが、私も気になる子どもの公共施設があれば、自分の娘を連れて行くことがありますし、そこでのイベントや活動に娘とともに参加することで、そこでの取り組みの良し悪しを実感してくることもしばしばあります。)

また、これらの記事を読む限り、橋下知事は「来館した子どもがマンガばっかり読んでる」ことをさも悪いようにいいますが、実は京都市内には「国際マンガミュージアム」という、マンガ専門の博物館があります(ご存知のとおり、ここは京都市とうちの大学の共同運営施設です)。ここに行ったら、来館者は朝から夜まで、入館料を払った上で、時には芝生に寝そべったりしながら、自由にマンガを読んでますけど。来館者が自由に児童文学館においてあるマンガを読む、このことに何か、問題はあるんでしょうかね? いっそ、児童文学館を「大阪国際マンガミュージアム」にして、華々しく広報活動をして、来客者を増やすくらいのこと、府知事として訴えてみたらどうなんでしょうか? (廃止や統廃合の方針をぶちあげるよりも、まだそういう提案をしたほうが、きっと、児童文学館職員も「やる気」になって、何か、新しい取り組みを考えるかもしれません。)

他にも、誰とはいいませんが、アキハバラに集まるアニメファンに人気の政治家とか、マンガやアニメといった日本の文化を世界に向けて情報発信するような、そんな構想をぶちあげているような政治家だっているでしょう。マンガ学部やアニメーション学科のようなコースが日本の大学に設置されるような状況下で、「子どもらがおちついてマンガ文化に触れることのできる、そんな公共文化施設」を大阪府が設置・維持するというのは、けっして悪いものだとは思わないのですが。(まぁ、千里・万博公園内という立地条件の問題で、国際児童文学館にいくらマンガをおいても、平日だとそう簡単に大阪府下の子どもがアクセスできないところが難点ですが・・・・。)

さらに、もう一度「隠し撮り」をいう手法にもどりますが、これって、児童文学館職員の働きぶりを撮影しただけでなく、文学館でマンガを読んでる子どもたちの様子も「隠し撮り」したんですよね? だからこそ、橋下知事はそのビデオを見て、「子どもらがマンガばっかり読んでる」といって、児童文学館の対応を批判するわけですよね? 

でも、よく考えてみたら、「隠し撮り」で撮影された子どもたちって、橋下知事の私設秘書なる人が誰かわからないし、その人がどんな形で撮影していたのかも知らないわけでしょ? それってやっぱり、問題が多いんじゃないでしょうか? こういう手法って、撮られた子どものプライバシーの侵害にならないのでしょうか? 少なくとも私が児童文学館の利用者であったり、あるいは、そこに娘を通わせて本やマンガに触れさせている保護者であれば、「その撮影されたビデオがなんに使われるかわからないし、とっても不愉快だ」といいたくなります。

ちょっとここで考えてほしいのですが、もしも見ず知らずの誰かが、かばんの中に隠し持ったビデオカメラで、駅や学校、公共施設などで、撮られる側にないしょで、気に入った誰かの映像を取りまくってたら、不愉快な気分になりますよね。だいたい、防犯目的で各地に設置されている監視カメラに対してですら、「個人のプライバシー侵害だ」という批判があるくらいです。ビデオ撮りには、撮られる側への説明とか、公開に際しての配慮とか、そういったことが必要不可欠ではないのでしょうか?

そう考えると、やっぱり、府知事が私設秘書を使って、廃止対象施設の様子をビデオで隠し撮りしてくる・・・・って、こんな対応って、まずはその施設職員に対してというより、利用者である府民に対して、まずいでしょう。そして、この撮影したビデオを府議会での予算審議に出すとか出さないとか、橋下知事は新聞記事によると言っているようですが、撮られた子どものプライバシー侵害の危険性も高いようなビデオを府議会に出すこと自体、「どうなんでしょ?」といいたくなりますね。今後の大阪府議会やマスメディア、そして、府民のみなさんの見識に期待したいところです。

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