もうすぐ6月議会、開始。
議長就任に伴い、一年ほどお預けを食らっていた一般質問を実施すべく、現在、精力的に調査・調整を進めています。
というわけで今日はその中から、目をつけていたものの没になってしまった事案についてご紹介。
少し前に、日本経済新聞社発行の「無駄だらけの社会保障」を読了しました。
興味深い話が複数あったのですが、今日、取り上げるのは前立腺がん検診にまつわる話です。
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前立腺がん検診について、この本に記載されていた内容をまとめると
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●がんは、日本における死亡原因の第1位
→診断と治療の進歩により、一部のがんでは早期発見・早期治療が可能となりつつある
→がん検診には利益と不利益があり、正しい方法を正しく行うことが重要
●こうした考えのもと、国は自治体に対して、胃・大腸・肺・乳房・子宮頚部の5つの部位に対するがん検診を推奨している
→これら以外の部位のがん検診は、当該検診を受けることによる合併症や過剰診断等の不利益が利益を上回る可能性があるとして、取りやめるよう求めている
→前立腺がんは進行が遅く、放置しても生命にかかわらない場合が多いとされ、発見しても治療せず様子を見るだけにとどめることが少なくない。
→とりわけ多くの自治体が実施しているPSA検査は国際的にも過剰診断が問題視されている。
→例えば、米国予防医学作業部会は55~69歳以外については、検診でPSA検査を受けることを推奨していない。
●限られた財源を投じる以上、利益が不利益を上回る事業を実施することが重要
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ということになろうかと。
個人的には「なるほどなぁ…」と、強く思いまして。
で早速、確認してみたところ
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●西宮市も前立腺がんの検診を実施している
→検査方法は名指しで批判されているPSA検査
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ということが分かりました。
本当に検診を受けることによる合併症や過剰診断等の不利益が利益を上回るなら、やめるべきですよね。
ところが、よくよく調べてみると、どうにも話がはっきりしないんですよね。
例えば、国の「がん検診の在り方に関する検討会」における中間整理(令和元年度版)には
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●国の指針のもとになる各がんに関する「有効性評価に基づく検診ガイドライン」は最新の研究成果をタイムリーに更新できていないとの指摘がある
●前立腺がん検診は、現時点で死亡率減少という利益が明らかにされておらず、検査の擬陽性や偶発症、過剰診断による不利益が利益を上回る可能性が否定できない(推奨グレードI)と評価されている
→利益と不利益との差が同等または極めて小さい(推奨グレードC)、不利益が利益を上回る(推奨グレードD)との評価ではない
●死亡率減少効果が明らかにされていない検査方法は、研究により科学的根拠の集積が重要である
→これらの取組を踏まえつつ、市町村は科学的根拠に基づいたがん検診の適切な実施に努め、都道府県は、管下市町村のがん検診実施状況を踏まえ、市町村に対して必要な指導。助言等に努めるべきである
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という記載がありました。
結局のところ、
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●国として、前立腺がん検診を推奨したいのか、やめさせたいのか
●不利益が利益を上回るのか、上回らないのか
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といったあたりが、どうにも判然としないんですよね…
西宮市の各種がん検診は、国の定める指針に準拠して実施しており、こうした状況も踏まえて、今後も前立腺がん検診事業は継続していくとのこと。
説明を聞き、更にもろもろ調べるにつけ、それはそれで一定、納得できる考え方やわなぁ…と思うに至りました。
というわけで、この話、一旦お蔵入りにすることにしました。
とはいえ厳しい財政状況の下、医療制度の持続性を守るためには重要性の低い(あるいは、むしろ悪い影響さえある)部分については、適宜見直していくという姿勢を持つことが重要だと思っています。
そうした観点から、引き続き、こうした分野にも、しっかりアンテナを張っていきます。
それでは今日のブログは、これにて失礼いたします。