参院選公示 一層の劣化許さぬ選択を 民主の「現実路線」を見極めよ
http://sankei.jp.msn.com/politics/election/100624/elc1006240328001-n1.htm
日本の劣化をこのまま放置するのか、それとも食い止めることができるのか。民主党が政権を獲得したあと、初の本格的な国政選挙として公示される第22回参院選の最大のポイントである。
劣化をもたらしているのは、鳩山由紀夫前政権下で繰り返された数々の迷走と失政にとどまらない。民主党がマニフェスト上に並べてきた子ども手当や農家への戸別所得補償などに象徴される、利益誘導や選挙至上主義の色彩が濃い政策なのである。
前政権を引き継いだ菅直人首相は、消費税を争点化するなどしているものの、東アジア共同体構想や地球温暖化対策の温室効果ガス25%削減目標など、鳩山前首相が重視した基本路線を継承する考えも鮮明にしている。これらで国益を守ることができるのか。
≪依存心招くばらまき≫
実体が不明な東アジア共同体構想に幻惑されたため、鳩山前首相は胡錦濤国家主席との会談で中国海軍による海上自衛隊への軍事威嚇に触れることができなかったのではないか。25%削減目標も企業に負担増を強いて海外脱出を促すことになっていないか。
日米同盟を空洞化し、日本の企業の活力を生かさないことが、この国を劣化させていることを認識しなければならない。
菅政権がうたう「現実路線」への転換が本物かどうか。さらなる劣化を起こさない政治の枠組みはどうあるべきか。有権者の見極めに日本の未来がかかっている。
懸念するのは、財源の裏付けなく、ばらまき政策を実施しようとする政権与党の無責任さだ。参院選向け公約では、子ども手当の満額実施を見送るなどの修正を加えたが、基本的な考えは変わっていない。こうした政策の多用は、国民の政府に頼ろうとする依存心を強め、自立心を損なっている。政府と国民の関係だけでなく、国のあり方も変質させかねない。
前政権以来、もっとも注目を集めたともいえる事業仕分けが、将来を見据えた国家戦略に基づくものでなかったことは、小惑星探査機「はやぶさ」帰還と、それをめぐる政府の対応が示している。
後継機となる「はやぶさ2」の平成22年度開発予算は、概算要求時点の約17億円から政権交代時の歳出見直しと事業仕分けを経て3千万円に縮減された。仕分けにあたった蓮舫行政刷新担当相は、今になって仕分けを再検討する可能性に言及しているが、科学技術における国際競争力強化への関心のレベルを物語っている。
≪自民は存在感足りぬ≫
争点として避けられてきた消費税引き上げを、首相があえて打ち出したこと自体は政策論争を深めており、評価したいが、消費税の使途や10%という税率の根拠などを明確に示すべきだ。社会保障を負のイメージではなく、成長分野に位置付けるのであれば、産業化の具体的姿を示す必要がある。
民主党政権がムダの排除を掲げ、消費税増税を否定する公約を反故(ほご)にしたことの説明も不十分だ。民主党は国家公務員の総人件費2割削減を掲げたが、積極的な取り組みは見られなかった。国会議員の定数削減も、衆院選で掲げた衆院比例代表80の削減は未着手だ。新たに参院で「40程度」削減する方針を示したが、本気度はわからない。
いくら財政の危機的状況を訴えても、「わが身を切る」姿を政府や政治家が実践してみせなければ、負担を求められる有権者の心に届かない。消費税論議と同時に定数削減についても与野党で合意しておくことが必要だ。
沖縄全戦没者追悼式に出席した首相は「沖縄のみなさんと真摯(しんし)に話をしていきたい」と米軍基地が集中する負担の軽減に努める考えを示す一方、「日本の安全だけでなく、東アジアの状況の中で前政権が合意したことをきちんと引き継ぐ」と語った。日米合意に基づき、8月末までに普天間飛行場の移設先の位置や工法を決定する考えを示したものなら妥当だ。
米側には、参院選や9月の代表選などの政治日程を抱える民主党政権が、日米合意を完全履行できるのか懐疑的な見方もある。再び同盟空洞化を招くことのない外交姿勢が問われている。
自民党は野党として臨む党再生をかけた選挙で、与党過半数を阻止し、現政権継続に歯止めをかけるとしている。だが、その重要性について国民への訴えかけは不十分だ。民主党政治の問題点をさらに具体的に突き、受け皿としての存在感を示す必要がある。
http://sankei.jp.msn.com/politics/election/100624/elc1006240328001-n1.htm
日本の劣化をこのまま放置するのか、それとも食い止めることができるのか。民主党が政権を獲得したあと、初の本格的な国政選挙として公示される第22回参院選の最大のポイントである。
劣化をもたらしているのは、鳩山由紀夫前政権下で繰り返された数々の迷走と失政にとどまらない。民主党がマニフェスト上に並べてきた子ども手当や農家への戸別所得補償などに象徴される、利益誘導や選挙至上主義の色彩が濃い政策なのである。
前政権を引き継いだ菅直人首相は、消費税を争点化するなどしているものの、東アジア共同体構想や地球温暖化対策の温室効果ガス25%削減目標など、鳩山前首相が重視した基本路線を継承する考えも鮮明にしている。これらで国益を守ることができるのか。
≪依存心招くばらまき≫
実体が不明な東アジア共同体構想に幻惑されたため、鳩山前首相は胡錦濤国家主席との会談で中国海軍による海上自衛隊への軍事威嚇に触れることができなかったのではないか。25%削減目標も企業に負担増を強いて海外脱出を促すことになっていないか。
日米同盟を空洞化し、日本の企業の活力を生かさないことが、この国を劣化させていることを認識しなければならない。
菅政権がうたう「現実路線」への転換が本物かどうか。さらなる劣化を起こさない政治の枠組みはどうあるべきか。有権者の見極めに日本の未来がかかっている。
懸念するのは、財源の裏付けなく、ばらまき政策を実施しようとする政権与党の無責任さだ。参院選向け公約では、子ども手当の満額実施を見送るなどの修正を加えたが、基本的な考えは変わっていない。こうした政策の多用は、国民の政府に頼ろうとする依存心を強め、自立心を損なっている。政府と国民の関係だけでなく、国のあり方も変質させかねない。
前政権以来、もっとも注目を集めたともいえる事業仕分けが、将来を見据えた国家戦略に基づくものでなかったことは、小惑星探査機「はやぶさ」帰還と、それをめぐる政府の対応が示している。
後継機となる「はやぶさ2」の平成22年度開発予算は、概算要求時点の約17億円から政権交代時の歳出見直しと事業仕分けを経て3千万円に縮減された。仕分けにあたった蓮舫行政刷新担当相は、今になって仕分けを再検討する可能性に言及しているが、科学技術における国際競争力強化への関心のレベルを物語っている。
≪自民は存在感足りぬ≫
争点として避けられてきた消費税引き上げを、首相があえて打ち出したこと自体は政策論争を深めており、評価したいが、消費税の使途や10%という税率の根拠などを明確に示すべきだ。社会保障を負のイメージではなく、成長分野に位置付けるのであれば、産業化の具体的姿を示す必要がある。
民主党政権がムダの排除を掲げ、消費税増税を否定する公約を反故(ほご)にしたことの説明も不十分だ。民主党は国家公務員の総人件費2割削減を掲げたが、積極的な取り組みは見られなかった。国会議員の定数削減も、衆院選で掲げた衆院比例代表80の削減は未着手だ。新たに参院で「40程度」削減する方針を示したが、本気度はわからない。
いくら財政の危機的状況を訴えても、「わが身を切る」姿を政府や政治家が実践してみせなければ、負担を求められる有権者の心に届かない。消費税論議と同時に定数削減についても与野党で合意しておくことが必要だ。
沖縄全戦没者追悼式に出席した首相は「沖縄のみなさんと真摯(しんし)に話をしていきたい」と米軍基地が集中する負担の軽減に努める考えを示す一方、「日本の安全だけでなく、東アジアの状況の中で前政権が合意したことをきちんと引き継ぐ」と語った。日米合意に基づき、8月末までに普天間飛行場の移設先の位置や工法を決定する考えを示したものなら妥当だ。
米側には、参院選や9月の代表選などの政治日程を抱える民主党政権が、日米合意を完全履行できるのか懐疑的な見方もある。再び同盟空洞化を招くことのない外交姿勢が問われている。
自民党は野党として臨む党再生をかけた選挙で、与党過半数を阻止し、現政権継続に歯止めをかけるとしている。だが、その重要性について国民への訴えかけは不十分だ。民主党政治の問題点をさらに具体的に突き、受け皿としての存在感を示す必要がある。