読書日和

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「波のうえの魔術師」石田衣良

2008-06-27 22:57:12 | 小説
今回ご紹介するのは「波のうえの魔術師」(著:石田衣良)です。

-----内容-----
あの銀行を撃ち落とせ!
謎の老投資家が選んだ復讐のパートナーはフリーターの<おれ>だった。
マーケットのA to Zを叩き込まれた青年と老人のコンビが挑むのは、預金量第三位の大都市銀行。
知力の限りを尽くした「秋のディール」のゆくえは……。
新世代の経済クライムサスペンスにして、連続ドラマ化話題作。

-----感想-----
ひと月ほど前に八王子へ行ったとき、書店でこの本が目に留まりました。
内容欄の文章が壮大なドラマを予感させました。
そして先日読んでみたのですが、想像以上に中味の濃い経済サスペンスでした。

この小説では「株」と「復讐」が重要なキーワードになります。
ある日、フリーターの「白戸則道」(しらとのりみち)が謎の老投資家「小塚泰造」(こづかたいぞう)に声をかけられ、そこから壮大な経済サスペンスが始まります。
波のうえの魔術師というのは、小塚泰造のことです。
小塚泰造は、まつば銀行という大都市銀行へ復讐をしようとしています。
まつば銀行はバブルのころ、生命保険会社と手を組み「融資つき変額保険」という悪質な融資を行っていました。
銀行が狙ったのは資産のある年寄りたちです。
相続税対策といって収入のない年寄りを丸めこみ、不動産を担保に巨額の押しかけ融資をおこなうというものです。
そして融資されたお金はすぐに生命保険会社の口座に全額移されてしまいます。
生命保険会社はその金で株を運用して、配当を出すというのですが、これは株価が上がり続ければの話。
バブルが弾けた現在、残されたのは不良債権の山と自分の住む家屋敷を競売にかけられるのを待つだけの老人たちになってしまいました。
銀行側としては、不動産を担保にしているのだから、債権回収のために競売にかけるのは当然という言い分なのですが、元々この融資が押しかけで無理やり契約したようなものなので、年寄りたちは銀行に相当な恨みを持っています。
同じ境遇の人たちで作った被害者の会もあり、小塚泰造はその会の顧問をしています。
こういった背景から、小塚泰造はまつば銀行の株価を暴落させ、復讐をしようと考えます。
そのパートナーとして選んだのが、フリーターの白戸則道というわけです。

小説の舞台は1998年で、この年は実際に銀行や証券会社が倒産に追い込まれた年だったので、かなり現実感のある話でした。
二人は「秋のディール」に向けて、準備を進めていきます。
相手は総資産53兆円、日本で第3位の大手都市銀行。
こんな巨大な相手とどうやって戦うのか、興味深く読んでいきました。
経済の難しい話も出てきますが、ストーリーがスリリングで魅力的だったので、抵抗なく読むことが出来ました。
まつば銀行の社員たちにも色々な人がいて、みんながみんな悪い人ではないのも、この小説の人間ドラマをより面白くしていたと思います。
「秋のディール」に向けて、有益な情報をくれる人もいました。

そして始まった「秋のディール」は、壮大なスケールの戦いでした。
まつば銀行へ総攻撃をしかけます。
本当にとてつもない経済サスペンスだったと思います。
小塚泰造と白戸則道がどんな結末を迎えるのか、先の展開が気になってどんどん読み進んでいきました。
石田衣良さんの小説は「4TEEN」以来1年ぶりに読みましたが、やっぱり面白いなと思いました。
機会を見て他の作品も読んでみようと思います。

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