今回ご紹介するのは「鎌倉香房メモリーズ」(著:阿部暁子)です。
-----内容-----
人の心の動きを香りとして感じとる力を持つ、高校二年生の香乃(かの)は祖母が営む香り専門店『花月香房』に暮らしている。
香乃のよき理解者、大学生の雪弥(ゆきや)さんと共に『花月香房』は今日もゆるり営業中。
そんなある日、店を訪れた老婦人の”消えた手紙”を一緒に探すことになって!?
鎌倉を舞台に、あの日の匂いと、想いも……よみがえる。
ほっこり、あったか香りミステリー。
-----感想-----
舞台は鎌倉。
各種お香、香木(こうぼく)、香道具、薫香(くんこう)ひと揃えをとり扱う『花月香房』は、杉本寺や報国寺などの古刹(こさつ)が点在する金沢街道の一角にあります。
古刹とは由緒ある古いお寺のことです。
花月香房のように香りを専門に扱うお店は見たことがなく、珍しいなと思いました。
物語は以下の4話で構成されています。
第1話 あの日からの恋文
第2話 白い犬は想いの番人
第3話 恋しいひと
第4話 香り高き友情は
祖母の咲楽三春が営む香り専門店『花月香房』を手伝う香乃には「人の心の動きを香りとして感じとる」という特殊な力があります。
その人が怒っていれば怒っている香り、悲しんでいれば悲しんでいる香り、嘘をついていれば嘘をついている香りを察知することができます。
便利な力かと思いきや、知りたくもないのに他人の感情を次々と察知してしまうことで香乃は随分と苦悩したようです。
特に子供の頃はそれが普通のことだと思っていたため、人の心の動きを香りとして感じ取れることを口にしてしまい、両親からは「嘘をつくな」と嘘つき呼ばわりされていました。
祖母が営む香り専門店『花月香房』で暮らしているのも香乃の特殊な力を気味悪がった両親が自分達のもとから遠ざけたからでした。
香(こう)について、以下のように書かれていました。
遠く響く音色にじっと耳をかたむけるように、ささやきかけるような繊細な香気を、全身をかたむけて感じとる。
その一心さから、香は『聞く』と表現されるようになった。
香りについて「聞く」という表現を使うのは意外で驚きました。
ただなるほどなと思うような表現で奥の深さも感じました
香乃と一緒に働く岸田雪弥(ゆきや)は大学一年生で19歳。
普段働いている時は気の良い好青年ですが、失礼な客が相手だと態度が一変し、毒舌キャラが姿を現します。
しかも頭が良く色々な蘊蓄も知っているため、理詰めの毒舌で相手をやっつけていきます。
言葉は丁寧でも毒舌ということで、どことなく「謎解きはディナーのあとで」の影山が思い出されました。
雪弥は本当に色々なことを知っていて、「あの日からの恋文」や「白い犬は想いの番人」では香木についての蘊蓄を並べ立てて相手を圧倒していました。
”基本的に雪弥さんは礼儀正しい平和主義者だが、雪弥さんの内なるボーダーラインを侵した者には容赦がなくなるのだ。”とのことで、相手の失礼ぶりが一定ラインを越えるとキャラが激変します。
鎌倉が舞台なので江ノ電の長谷駅や長谷寺、光則寺、御霊神社など、知っている場所が出てきました。
これらの場所は紫陽花散策の時に訪れています。
長谷寺の紫陽花
長谷寺を散策
光則寺 アジサイと土牢
御霊神社 江ノ電と紫陽花の共演
他にも鎌倉文学館や川端康成旧居、甘縄神明宮など、まだ行ったことのない観光スポットの名前が出てきて興味を持ちました。
大仏様で有名な高徳院は小学校の修学旅行で一度行っていますが、これもまた見てみたいなと思いました。
LANDという、LINEがモデルと思われるスマートホンのアプリも出てきました。
これを見て、時代は流れているなと思いました。
ツイッターや、ツイッターがモデルのアプリが小説に登場したのに続き、LINEも登場するようになったかと思いました。
「恋しいひと」では香乃に敵意を示す女性が花月香房に来店します。
香乃は感情を香りとして感じ取れるので、自分に敵意が向けられていることも察知できるのです。
また、この話では雪弥が通う大学も登場。
横浜にある国立大学に通っていて、経済学部国際経済学科に在籍しています。
投資サークルに所属していて、この話ではそこの人達と関わっていくことになります。
香乃はこの大学に雪弥には内緒でキャンパスツアーに行きます。
また、この話ではそれまでの前2話では頼りなかった香乃が鋭い推理力を発揮していて少し驚きました。
「香り高き友情は」では妹の香凜(かりん)が花月香房に泊まりに来ます。
高校二年生の香乃に対して香凜は中学三年生です。
香凜は何かを心に決めていて、その決意の感情に香乃は気づいていました。
小野アサトという、「あの日からの恋文」に登場したツンツン頭で態度のでかい子も再登場。
この子も香凜と同じく中学三年生です。
香凜との喧嘩腰でのやり取りはなかなか面白く笑ってしまいました。
そしてこの話では萩ヶ谷(はぎがやつ)学園というお嬢様学校に転校した香凜の友達、堀沢真奈の最近の様子が変ということで、香乃達も協力して解決に乗り出すことになります。
この話では「二階堂の隠れ家めいた和カフェ」というのが出てきて、二階堂の隠れ家とは何だろうと興味を持ちました。
ネットで調べてみたら鎌倉市二階堂という地域名があり、そこにある隠れ家のような和カフェのことでした。
諦め、疲れ、敵意、嘘、決意など、色々な感情が香りとして登場していました。
それを感じ取れる香乃が、相手にはそのことを言わないようにしながらも、その感情を解決するために方法を考えていました。
香乃本人が「相手にとっては余計なお世話かも知れない」「関わらないほうがいい」と分かっていながらも関わっていってしまうのは興味深かったです。
目の前の人の感情の香りが口にしている言葉とは全く違うものだったりした場合、やはり気になるんだろうなと思います。
ただ、こんな力があっても便利だとは思えないので、私も香乃と同じく戸惑うだろうと思います。
※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。
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-----内容-----
人の心の動きを香りとして感じとる力を持つ、高校二年生の香乃(かの)は祖母が営む香り専門店『花月香房』に暮らしている。
香乃のよき理解者、大学生の雪弥(ゆきや)さんと共に『花月香房』は今日もゆるり営業中。
そんなある日、店を訪れた老婦人の”消えた手紙”を一緒に探すことになって!?
鎌倉を舞台に、あの日の匂いと、想いも……よみがえる。
ほっこり、あったか香りミステリー。
-----感想-----
舞台は鎌倉。
各種お香、香木(こうぼく)、香道具、薫香(くんこう)ひと揃えをとり扱う『花月香房』は、杉本寺や報国寺などの古刹(こさつ)が点在する金沢街道の一角にあります。
古刹とは由緒ある古いお寺のことです。
花月香房のように香りを専門に扱うお店は見たことがなく、珍しいなと思いました。
物語は以下の4話で構成されています。
第1話 あの日からの恋文
第2話 白い犬は想いの番人
第3話 恋しいひと
第4話 香り高き友情は
祖母の咲楽三春が営む香り専門店『花月香房』を手伝う香乃には「人の心の動きを香りとして感じとる」という特殊な力があります。
その人が怒っていれば怒っている香り、悲しんでいれば悲しんでいる香り、嘘をついていれば嘘をついている香りを察知することができます。
便利な力かと思いきや、知りたくもないのに他人の感情を次々と察知してしまうことで香乃は随分と苦悩したようです。
特に子供の頃はそれが普通のことだと思っていたため、人の心の動きを香りとして感じ取れることを口にしてしまい、両親からは「嘘をつくな」と嘘つき呼ばわりされていました。
祖母が営む香り専門店『花月香房』で暮らしているのも香乃の特殊な力を気味悪がった両親が自分達のもとから遠ざけたからでした。
香(こう)について、以下のように書かれていました。
遠く響く音色にじっと耳をかたむけるように、ささやきかけるような繊細な香気を、全身をかたむけて感じとる。
その一心さから、香は『聞く』と表現されるようになった。
香りについて「聞く」という表現を使うのは意外で驚きました。
ただなるほどなと思うような表現で奥の深さも感じました
香乃と一緒に働く岸田雪弥(ゆきや)は大学一年生で19歳。
普段働いている時は気の良い好青年ですが、失礼な客が相手だと態度が一変し、毒舌キャラが姿を現します。
しかも頭が良く色々な蘊蓄も知っているため、理詰めの毒舌で相手をやっつけていきます。
言葉は丁寧でも毒舌ということで、どことなく「謎解きはディナーのあとで」の影山が思い出されました。
雪弥は本当に色々なことを知っていて、「あの日からの恋文」や「白い犬は想いの番人」では香木についての蘊蓄を並べ立てて相手を圧倒していました。
”基本的に雪弥さんは礼儀正しい平和主義者だが、雪弥さんの内なるボーダーラインを侵した者には容赦がなくなるのだ。”とのことで、相手の失礼ぶりが一定ラインを越えるとキャラが激変します。
鎌倉が舞台なので江ノ電の長谷駅や長谷寺、光則寺、御霊神社など、知っている場所が出てきました。
これらの場所は紫陽花散策の時に訪れています。
長谷寺の紫陽花
長谷寺を散策
光則寺 アジサイと土牢
御霊神社 江ノ電と紫陽花の共演
他にも鎌倉文学館や川端康成旧居、甘縄神明宮など、まだ行ったことのない観光スポットの名前が出てきて興味を持ちました。
大仏様で有名な高徳院は小学校の修学旅行で一度行っていますが、これもまた見てみたいなと思いました。
LANDという、LINEがモデルと思われるスマートホンのアプリも出てきました。
これを見て、時代は流れているなと思いました。
ツイッターや、ツイッターがモデルのアプリが小説に登場したのに続き、LINEも登場するようになったかと思いました。
「恋しいひと」では香乃に敵意を示す女性が花月香房に来店します。
香乃は感情を香りとして感じ取れるので、自分に敵意が向けられていることも察知できるのです。
また、この話では雪弥が通う大学も登場。
横浜にある国立大学に通っていて、経済学部国際経済学科に在籍しています。
投資サークルに所属していて、この話ではそこの人達と関わっていくことになります。
香乃はこの大学に雪弥には内緒でキャンパスツアーに行きます。
また、この話ではそれまでの前2話では頼りなかった香乃が鋭い推理力を発揮していて少し驚きました。
「香り高き友情は」では妹の香凜(かりん)が花月香房に泊まりに来ます。
高校二年生の香乃に対して香凜は中学三年生です。
香凜は何かを心に決めていて、その決意の感情に香乃は気づいていました。
小野アサトという、「あの日からの恋文」に登場したツンツン頭で態度のでかい子も再登場。
この子も香凜と同じく中学三年生です。
香凜との喧嘩腰でのやり取りはなかなか面白く笑ってしまいました。
そしてこの話では萩ヶ谷(はぎがやつ)学園というお嬢様学校に転校した香凜の友達、堀沢真奈の最近の様子が変ということで、香乃達も協力して解決に乗り出すことになります。
この話では「二階堂の隠れ家めいた和カフェ」というのが出てきて、二階堂の隠れ家とは何だろうと興味を持ちました。
ネットで調べてみたら鎌倉市二階堂という地域名があり、そこにある隠れ家のような和カフェのことでした。
諦め、疲れ、敵意、嘘、決意など、色々な感情が香りとして登場していました。
それを感じ取れる香乃が、相手にはそのことを言わないようにしながらも、その感情を解決するために方法を考えていました。
香乃本人が「相手にとっては余計なお世話かも知れない」「関わらないほうがいい」と分かっていながらも関わっていってしまうのは興味深かったです。
目の前の人の感情の香りが口にしている言葉とは全く違うものだったりした場合、やはり気になるんだろうなと思います。
ただ、こんな力があっても便利だとは思えないので、私も香乃と同じく戸惑うだろうと思います。
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