読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
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西日本へ

2015-04-20 22:35:02 | ウェブ日記
4月は出会いや別れ、新生活などで慌ただしくなる時期です。
私も西日本に転勤することになりました。
今日は引っ越しの日で、朝に業者が来て荷物を持って行きました。
そして私は新幹線「のぞみ」に乗って西日本に移動しました。
山陽地方へとやってきました。

そんなわけでここ数日は慌ただしく、引っ越しの準備に追われていました。
無事に荷物を送り出すことができたのでまずは一安心です。
後は明日、新しい部屋で荷物を引き取ることになります。
明後日からはさっそく業務が始まるので荷物の整理はすぐに必要なものだけやるようにしようと思います。

ある程度の期間西日本に滞在するのは2007年以来となります。
せっかくなので楽しもうと思います。
特に広島は厳島神社などがあるし、散策していきたいと思います♪

「有頂天家族 二代目の帰朝」森見登美彦

2015-04-20 15:21:02 | 小説
「小説」カテゴリーの節目となる通算300レビュー目
今回ご紹介するのは「有頂天家族 二代目の帰朝」(著:森見登美彦)です。

-----内容-----
TVアニメ化され、累計30万部を突破の大ベストセラー『有頂天家族』。
森見史上、最も壮大で、最も愛の溢れるあの物語の第二幕が、7年半の時を超え、ついに開く-。

狸の名門下鴨家の三男・矢三郎は、親譲りの無鉄砲で子狸の頃から顰蹙ばかり買っている。
「面白きことは良きことなり」という父の教えを胸に、誰もが恐れる天狗や人間にちょっかいを出しては、愉快に過ごしていた。
そんなある日、老いぼれ天狗・赤玉先生の跡継ぎである”二代目”が英国より帰朝。
狸界は大混迷し、平和な街の気配が一変する。
しかも、人間の悪食集団「金曜倶楽部」は、恒例の狸鍋の具を懲りずに探している……。
阿呆の誇りを賭けて、尊敬すべき師を、愛する者たちを、毛深き命を守れ!
阿呆の道よりほかに、我を生かす道なし。
待ちに待った毛玉物語、再び。
愛おしさと切なさで落涙必至の感動巨編。

-----感想-----
※「有頂天家族」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。
※「有頂天家族」再読レビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。

というわけで、待ちに待った「有頂天家族」の第二部です!
昨秋に再読レビューを書いた時、そろそろ第二部が出るのではと見ていましたが、そこからもうしばらく待つことになりました。
待望していただけにかなりワクワクしながら読んでいきました。

冒頭から矢三郎と赤玉先生の懐かしいやり取りが見られました。
赤玉先生は如意ヶ嶽薬師坊(にょいがだけやくしぼう)という名前を持ち、かつては如意ヶ嶽一円を支配する大天狗でしたが、鞍馬天狗たちとの陣取り合戦に敗北を喫して、老いぼれた今は出町商店街裏のアパート「コーポ桝形」に逼塞しています。
天狗なのに空も飛べなくなり辻風も起こせなくなるとは寂しいものです。

弁天は豪華客船に乗って世界一周クルーズの旅に出て今はイギリスにいるとのこと。
「有頂天家族」第一部を盛り上げたキャラクター達の近況が徐々に明らかになっていきます。

今作では「天狗つぶて」という現象が登場。
空から珍しい品物が降ってくる現象のことで、これは天狗のいたずら、あるいは落とし物です。
数日前からモダンな天狗つぶてが洛中に降っていて話題になっていました。
ピカピカ輝く銀食器、音楽家が使いそうな年季の入ったヴァイオリン、金の脚のついたバスタブ、空でも飛びそうなペルシア絨毯などが降ってくるのです。
第二部のサブタイトルが「二代目の帰朝」で、二代目は長い間イギリスに行っていました。
そして空からモダンな天狗つぶてが降ってきたということで、何となく展開は予想されました。

矢三郎が弟の矢四郎とツチノコを探しにきて、鞍馬天狗の悪口を言っている時の場面は面白かったです。

「だいたい如意ヶ嶽一帯はそもそも我らが赤玉先生の縄張りだ。天狗の陣取り合戦で追い落とされたけれども、先生は鞍馬の連中より偉いんだ。鞍馬天狗なんて赤玉先生に比べればちんちくりんさ」
「ちんちくりんかあ」
「ほーうほう」
「生意気なことを言うやつめ。おまえはどこの狸だ?」
「これはこれは鞍馬天狗様。ご機嫌麗しゅう」

突然の鞍馬天狗の登場に態度が一変するのが面白く、今作も楽しい展開がたくさんありそうだなと予感させてくれました。
その鞍馬天狗達、今作では構成メンバーについて詳しく書かれていました。
鞍馬山僧正坊(そうじょうぼう)を総帥とし、その配下に十天狗がいます。
そのうちの五人の名前が明らかになり、霊山坊、多聞坊、帝金坊、月輪坊、日輪坊とのことです。
帝金坊は第一部でも弁天と一緒に登場していました。

やがて姿を現す二代目。
その姿は英国紳士然としていました。
話し方もとてもクールなのですが、父の赤玉先生のことになると物騒なことを言ったりもします。

「ところで父はどこにいるのかね?」
「出町商店街の裏だ。薄汚いアパートで狸の世話になっている」
「ならば私がとどめを刺してやろう。では諸君、失敬する」

矢三郎の「この天狗親子の百年の時を超えた確執」の言葉が示すように、やはり二代目と赤玉先生には激しい確執があるなと思いました。
そして赤玉先生からの「果たし状」により、因縁の親子の決闘が行われることになりました。
今や伝説となっている百年前以来の戦いです。
どちらが勝つのか、かなり興味深かったです。

そもそも天狗というものは、傲慢山の急峻から森羅万象を見下す者である。
天狗だからこそ偉いのであり、偉いからこそ天狗なのである。
この向かうところ敵なしの天狗論によれば、狸なんぞは毛玉にすぎず、人間なんぞは裸の猿にすぎず、自分以外の天狗たちでさえ所詮は張り子の虎である。
天地間で偉いのはただひとり我ばかり―それが天狗というものだ。

矢三郎が解説する、天狗の特徴。
まさに「あいつは天狗になっている」を地で行く傲慢ぶりだなと思います。


今作では矢一郎に恋の話が沸き起こります。
相手は南禅寺玉瀾(ぎょくらん)という、下鴨家とも仲の良い家の狸です。
玉欄は将棋の達人で、矢一郎とも将棋にまつわるエピソードが展開されます。
矢一郎はある時を境に将棋を指さなくなっていました。
矢一郎がなぜ将棋を指さなくなったのか、その理由がやがて明らかになります。
そして矢三郎たちの父、下鴨総一郎がかつて愛用していた「将棋の部屋」がどこにあるのか、その謎にも迫っていきました。


怪人「天満屋」なる謎の幻術師も登場。
この時、寺町通アーケードの商店街を悩ませる「天満屋問題」が起こっていました。
矢三郎が頼まれてこの問題を調べるのですが、何と矢三郎は天満屋に「化かされて」しまいます。
化けるのが得意な狸が人間に化かされるというまさかの事態。
矢三郎の敗北は狸界にまたたく間に広まり、金閣銀閣のお馴染み阿呆兄弟が「人間に化かされるなんて狸の恥さらしだよね、まったく!」「いやもう、まったく!」などと嬉しそうに言いふらしているとのことでした。

今作では「金曜倶楽部」に対抗する「木曜倶楽部」なるものが登場。
忘年会に狸鍋を喰らう秘密結社「金曜倶楽部」は洛中に名高いが、この悪食集団に対抗するために淀川教授によって設立されたのが「木曜倶楽部」であった。
メンバーは教授と私(矢三郎)の二名だけである。

二人で金曜倶楽部の会合に「狸鍋断固反対!」と印刷したビラを投げ込んだりしたものの、今のところ効果はないようです。

天満屋が作った「山椒魚鍋」には驚かされました。
「豆乳鍋」「狸鍋」など、森見さんの作品には鍋がよく出てくるなと思います。
そして鍋の具の山椒魚が特別天然記念物のオオサンショウウオなのではないかについてのやり取りも面白かったです。

「これはオオサンショウウオじゃありませんぜ、淀川教授」
「これはオオサンショウウオだよ、君」
「いやいや。これはあくまで大きな山椒魚であってね」
「だからさ、大きな山椒魚がすなわちオオサンショウウオなんだよ」
「そんな単純な話があるもんですか。分からん人だな、先生も」
「君こそ分からん人だねえ、天満屋さん」
ちなみに山椒魚鍋、美味しいらしいですが私は食べたくはないです。

天満屋はかつて金曜倶楽部の頭領である寿老人の手先をしていました。
そして寿老人の逆鱗に触れ、「地獄絵図の中の地獄」に落とされていました。
そこはまさしく地獄で、随分酷い目に遭ったようです。
その一件には弁天が絡んでいるらしく、天満屋は弁天に物凄く怒っていました。
赤玉先生が失墜したのも弁天が原因だし、ほんとにあちこちにトラブルを巻き起こす人だなと思います。

その弁天もやがて豪華客船での旅行から帰ってきます。
弁天が帰ってくるとついに役者が勢揃いというわけで、物語は益々面白くなっていきました。

第一部が終わった時の第二部の予告に「弁天と二代目の対決」とあったように、やはりこの二人はぶつかることになりました。
弁天が一方的に仕掛けていくのですが二代目は弁天を恐れていないし構いもしません。
弁天はこれが面白くないようで、珍しく今までのような余裕がなくなっていました。


今作では矢二郎の活躍が増えていて、納涼祭のために空飛ぶ偽叡山電車に化けたりしていました。
相変わらず納涼祭は第一部と同じく大荒れになり、夷川家の阿呆兄弟、金閣・銀閣と空中でドンパチやり合うことになりました。
この時の玉欄の金閣銀閣に対する言葉が面白かったです。

「金閣も銀閣もいいかげんにしなさい」
「さっきから聞いていれば、あなたたちは本当に失礼なことばかり言うのね。
今すぐ謝りなさい。
小さな毛玉の頃には可愛いところもあったのに、いったい何を食べたらそんな憎たらしい阿呆に育つのかしら。
可愛げのない阿呆に何の意味がありますか


相変わらず森見さんの作品の会話は特徴的で面白いなと思います(笑)

ちなみに淀川教授は木曜倶楽部を旗揚げして金曜倶楽部に対抗しているだけに、金曜倶楽部からは様々な手法を駆使した嫌がらせや懐柔策がきます。
矢三郎が教授を救うために有馬温泉に乗り込んだりしていました。
そして淀川教授が金曜倶楽部を追放されたことにより、倶楽部には「布袋」の席に空きができています。
この席に誰が就くのか興味深かったです。
さらには第一部で逃走した夷川早雲が再び暗躍し始め、物語は佳境に向かっていきました。

金曜倶楽部の頭領・寿老人の叡山電車の乗り物も登場。
「夜は短し歩けよ乙女」にも登場した乗り物で、ここに倶楽部のメンバー、矢三郎、淀川教授、天満屋などが集結するとなれば、波乱が起きないはずはありません。
面白い展開が待っていました。

金閣と銀閣に兄がいるのは予想どおりでした。
金閣が呉二郎、銀閣が呉三郎なので呉一郎がいるはずと前作で思いました。
その呉一郎が今作で登場し、早雲や金閣銀閣とは全然違う静かな僧侶だったので驚きました。

やがて物語は12月を迎えます。
金曜倶楽部が忘年会で狸鍋を食べる時期です。
激動の12月、今作でも色々なことが起こりました。
まず矢二郎の旅立ちに驚きました。

「矢三郎、これは矢二郎の考えなのだ」
「……矢二郎兄さんは京都から出ていくつもりなんだな?」
「行かせてやろうと俺は思う」
「そんなの俺は反対だぞ」

「行かないでくれよ、兄さん」
「おまえは俺に甘えているんだよ、矢三郎」
「そうして俺たちはみんな矢一郎に甘えているんだよ」

前作では「蛙の姿になって井戸に引き籠っているうちに元に戻れなくなってしまった」という驚きの登場をし、常に世を捨てた感じで覇気のない矢二郎の旅立ちにはしみじみとしました。

化け術に長け、そう簡単には「化けの皮」が剥がれない矢三郎の化けの皮があっさり剥がれてしまう意外なものも明らかになりました。
これはすごく腑に落ちるもので、「そうか、だからああだったのか!」と納得しました。

クライマックスではとある狸による「一世一代の大化け」に驚かされました。
まさかのどんでん返しで、やはり一筋縄ではいかないなと思いました。
シリーズ完結編となる第三部「天狗大戦」が今から楽しみです


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