読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
好きな小説は青春もの。
日々のできごとやフォトギャラリーなどもお届けします。

ゴールデンウィーク

2015-04-30 22:30:52 | ウェブ日記
最も早い人は4月25日からゴールデンウィークという人もいるかと思います。
私は昨日からゴールデンウィークに入り、5月6日まで8連休となります。
昨日は広島に出掛けて「もみじ饅頭」や「瀬戸田レモンケーキ 島ごころ」など、帰省のお土産を買いました
もみじ饅頭は知っていましたが、瀬戸田という地域と瀬戸田が日本一のレモン生産量を誇ることは最近まで知りませんでした。
かなり美味しいレモンケーキで気に入っています^^

そして今日は朝5時に埼玉県の実家に向けて出発しました。
まず広島駅まで行って、そこから6時台の新幹線「のぞみ」に乗りました
こんなに早い時間帯の新幹線に乗るのは初めてだったので何だか新鮮でした。
約4時間乗り、10時20分過ぎに東京駅に到着。
そこからさらに2時間ほどかけて地元の駅へと帰っていきました。
アパートを出てから実家に着くまで8時間はかかっていて、なかなかの大移動になりました。
ただ朝早く出ただけあって東京に居た頃と同じ時間に実家に着くことができました。

実家では近所を散歩したり読書をしたり、ブログを書いたりしながらゆっくり過ごすつもりです。
まず今日は早く寝て旅の疲れを取るとします。

「純喫茶トルンカ」八木沢里志

2015-04-30 07:23:55 | 小説
今回ご紹介するのは「純喫茶トルンカ」(著:八木沢里志)です。

-----内容-----
「純喫茶トルンカ」は美味しい珈琲が自慢のレトロな喫茶店。
東京の下町にひっそり佇む店には、魔法をかけられたようなゆっくりとした時間が流れ、高校生の看板娘・立花雫の元気な声が響く。
ある日バイトの修一と雫が店に出ていると、女性客が来店。
突然「あなたと前世で恋人同士だったんです」と修一に語りだし……。
孤独や悲しみを抱えた人々の心がやわらかくドリップされていく……。

-----感想-----
「東京の下町」という言葉が興味を惹き、手に取ってみた一冊です。
物語は以下の三編で構成されています。

日曜日のバレリーナ
再会の街
恋の雫

「日曜日のバレリーナ」の語り手は奥山修一。
大学三年生で、トルンカでアルバイトをしています。
季節は冬で冒頭では年末を迎えています。
トルンカのマスターは立花勲。
その娘の雫は高校生で、「トルンカの看板娘」を自称しています。

そんな年末のある日、雪村千夏という女性客がトルンカにやってきます。
注文の品を修一が運びに行った時、修一の姿を見るなり「やっと会えた」と言う彼女。
「現世でお会いするのははじめてですが、私たちは前世でお会いしてるんです」
「私たち、前世で恋人同士だったんです」
と仰天するようなことを言ってきます。
当然戸惑う修一。
前世で恋人だったと言ってくるのは重い気がしますが、雪村千夏の話がコミカルになっていたのは良かったです。
「会いたかった、シルヴィー(前世での修一の名前、前世では女だった)」など、真剣な様子でぶっ飛んだことを言っているのは面白かったです。

読んでいくと、修一は谷中(やなか)銀座商店街の近くに住んでいることが分かります。
私は谷中を歩いたことはないのですが、日暮里(にっぽり)の近くらしく、日暮里は歩いたことがあるので何となく想像がつきました。
日暮里駅も何度か作品内に登場しています。
ちなみに純喫茶トルンカも谷中にあります。
修一がかつて恋人と谷中銀座商店街に来た時の回想によると、「昭和的雰囲気が色濃く残っている道幅の狭いにぎやかな通りは、歩いていると懐かしいような、新鮮なような不思議な感じがした」とのことです。

やがて年が明けます。
雪村千夏は毎週店にやってくるようになりました。
前世のことを語る千夏に修一は以下のような印象を持っていました。
そう、彼女の話はいつでもこんなちょうしで、夢見がちな、聞いているだけで胸やけしそうなものだった。
まるで思春期の少女が、こうだったらいいな、こんな出会いがあったらいいな、と空想しそうな夢物語。
それがさらにエスカレートして、現実と妄想の境がとうとうわからなくなってしまった、そんな印象だった。

こんな感じで夢見がち少女という印象を持たれている千夏ですが、実は24歳で修一より年上だったりします。

「店のナプキンで折ったバレリーナ」というのが登場しました。
千夏がトルンカに来るたびに折っていくのです。
「お客さんがいなくなったあとのテーブルに残されていることがある」とあったので、喫茶店に来る人はたまに折るものなのかなと思いました。

本庄絢子という、近所の生花店で働いている26歳の女性もトルンカの常連客として登場。
世にあふれる格言をノートに書き留めるのが趣味で、なにかにつけ格言を引用してくる格言マニアです。
何となく伊坂幸太郎さんの作品の登場人物がよく偉人や学者、ミュージシャンの言葉を引用しているのが連想される人でした。

ある時、千夏の様子が変ではないかと雫が気に止めます。
何かあったのか、気になるところでした。
やがて千夏の驚きの秘密が明らかになります。


「再会の街」の語り手は沼田弘之という男。
男はトルンカに三十数年ぶりに来ました。
かつて男が通っていた頃は「ノムラ珈琲」という、別の人がやっている店でした。
沼田はトルンカに行くと絢子がやってくるのを待っています。

途中から男が自分の人生の失敗について、胸中を吐露していきます。
男のこの三十年は過ちの連続でした。
最初に過ちを犯したのは21の時とあったので、現在は51歳のようです。
もっと上に行きたいという野心から早苗という恋人と別れ、他の人と結婚し、その結婚生活が上手く行かず、仕事にもかつてほど気持ちを注げなくなり、やがて毎日酒をたくさん飲むようになってしまいました。
アルコール中毒です。
絵に描いたような転落人生で、野心は自業自得とはいえちょっと哀れでした。
こんな人物がなぜ絢子を気にかけているのか、やがて明らかになります。
ちなみに絢子が沼田との会話で引用した以下の格言は印象的でした。

成し遂げんとした志を、ただ一回の敗北によって捨ててはいけない

シェイクスピアの格言とのことで、これは良いなと思いました。
絢子は「要は、一回ミスったからって、簡単に諦めんなよって意味だよね」と言っていました。
たしかにたった一回の敗北で何もかも終わってしまうわけではないのだし、簡単に諦めてはいけないなと思います。


「恋の雫」の語り手はトルンカの看板娘・雫。
雫は喫茶店の娘ではありますが、コーヒーが全く飲めません。
小学校に入学して間もない頃にコーヒーを飲んで眠れなくなりさらに悪夢を見て以来、苦手意識があるようです。

この話での季節は7月下旬の夏。
最初の「日曜日のバレリーナ」からは半年以上経っています。

雫は17歳。
「ねえ、信じられる?わたし、お姉ちゃんの年に追いついちゃったんだよ」とあり、お姉さんが17歳で亡くなっていることが分かりました。
お姉さんの名前は菫(すみれ)と言います。

そんな夏の日、雫は姉のかつての恋人、荻野和彦に遭遇。
何となくその存在が気になり、小さな頃から一緒に育った幼馴染みの浩太に相談していました。
雫はここ数年、8月の終わり、姉の命日になると体調が崩れてしまいます。
心と体がうまく機能しなくなり、頭痛や吐き気に襲われ、ひどく神経質になり、なんてことない場面で泣きだしてしまったりするとありました。
浩太はそれを心配していました。

「栞」の語源は興味深かったです。
菫によると「もともとは山なんかを歩くときに木の枝を折って道しるべにしていたのが語源で、そこから意味が変わって、本に挟んで目印にするものを栞と呼ぶようになった」とのことです。
なのでもとの漢字は枝を折るで枝折り(しおり)ともあり、なるほどと思いました。

久しぶりに会った荻野さんと何度か話すうち、自分が荻野さんに抱く不思議な気持ちが恋心だと気付いた雫。
どうにかして荻野さんの気を引きたい雫は、かつて荻野さんと付き合っていた姉の服を借りることに。
この姿を見て幼馴染みの浩太が言った「じゃあせめて、いつものおまえで勝負しろよ」は印象的な言葉でした。
たしかに見かけだけ取り繕ってもそれは本当の姿ではないです。
浩太に核心を突かれた雫がどうするのか、喧嘩になり気まずくなってしまった浩太とは仲直りできるのか、興味深く読んでいきました。

東京の下町と聞くと浅草のイメージが断トツなのですが、谷中もあるのだなと興味を持たせてくれる作品でした。
この作品、続編もあるようです。
登場人物たちのその後の展開が気になるところなので、そちらも読んでみようかなと思います。


※続編の「純喫茶トルンカ しあわせの香り」のレビューをご覧になる方はこちらをどうぞ。

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