読書日和

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「罪のない嘘 ~毎日がエイプリルフール~」三谷幸喜

2020-07-12 17:25:51 | ウェブ日記


(写真はネットより。以下同じ。)

今回ご紹介するのは舞台「罪のない嘘 ~毎日がエイプリルフール~」(作:三谷幸喜、演出:モトイキシゲキ)です。

-----内容-----
<嘘>も方便。
物事をうまく進めるためには、ちょっとした<嘘>は必要なもの・・・。
ある日の午後、高級マンションの1室。
以前この部屋の持ち主だった鏑木(かぶらぎ)が、テレビの修理屋を装ってやってくることから始まる。
彼は妻子と別れ、今は愛人と暮らしているが、娘が婚約者を連れてくることに。
そこで、4日前まで住んでいたこのマンションで会うためにひと芝居=<嘘>をつくことを思いついたのだ。
ところが、今の居住者の鴨田夫妻が留守の時間帯を調べて入り込んだはずなのに、次々に夫妻が帰宅してきてしまう。
そのうえ、マンション自治会の副会長夫妻や不動産屋、鏑木の前妻や愛人、ついには娘の婚約者の両親までが、入れ替わり立ち替わりやってきて……。
ちょっとした<嘘>のはずが、繕えば繕うほどに、いつの間にか”おおごと”に・・・。
絶体絶命のピンチ!
さあ、どうする鏑木研四郎!?
三谷幸喜が劇団東京ヴォードヴィルショーに書き下ろした不朽の名作喜劇が令和の新春に装いも新たに蘇る!
個性豊かなキャストが勢揃い。
令和初の新春に、老若男女すべての皆さんに贈る抱腹絶倒の初笑い!

-----感想-----
2月18日、広島県広島市のJMSアステールプラザ大ホールで舞台「罪のない嘘」を観ました。
新型コロナウイルスの問題でいよいよ何もかもが自粛になる、少し前のことでした。

私が「罪のない嘘」を知ったのは、出演者の一人の菅原りこさんがきっかけでした。
菅原りこさんは、昨年1~5月にかけて大々的に全国放送のテレビ番組などでも取り上げられ、世間の注目を集めたアイドルグループNGT48の山口真帆さん暴行事件において、一貫して山口真帆さんに味方して暴行事件を山口真帆さんのせいにしたい人達と戦ってくれた人です。
最終的に、暴行事件被害者なのに半ば追い出される形でグループを卒業することになった山口真帆さんとの友情・義を貫き、自らのアイドル生命が絶たれることになっても一緒に卒業する道を選びました。
戦いの舞台が新潟県だったこともあり、その姿からは義に厚い戦国大名”越後の龍”上杉謙信が思い浮かぶくらい大変感銘を受けました。
昨年5月18日の卒業後はエイベックス・マネジメントという事務所に移籍し、アイドルから女優・タレントに転身して活動することになりました。
その菅原りこさんが「罪のない嘘」でお芝居のお仕事をすると知り、実物の菅原りこさんがどんな雰囲気なのか、またどんな演技をするのか、それらに興味があり舞台を見に行こうと思いました。
私にとって初めての舞台観劇となりました。

「罪のない嘘」には「アパッチ砦の攻防より」という付記があり、これは大元の作品が「アパッチ砦の攻防」ということで、私は当初アパッチ砦とはどんな砦なのだろうと漠然と気になっていました。
やがて「罪のない嘘」が始まると、舞台になっているマンションの名前が「アパッチ」で、その一室でかつての居住者と今の居住者を中心にした攻防が繰り広げられるから「アパッチ砦の攻防」なのだと分かりました。
作中の舞台は終始マンション「アパッチ」の一室で、ずっと同じ場所で話が進むのに小さな世界感にならず大きな世界のように感じるのが凄いと思いました。
脚本の力と演じる役者の力の両方が揃って初めて作れる世界観だと思います。
内容欄に「抱腹絶倒の初笑い」とあるように、様々な人物が入れ替わり立ち替わり登場して次々と笑わせてくれました
三谷幸喜さんと言えば「喜劇」なのが強く意識される楽しい作品です。



(演技をする、左から菅原りこさん、佐藤B作さん、鈴木杏樹さん、片岡鶴太郎さん)

物語は、婚約者を連れて来る娘のちよみ(菅原りこさん)のために、以前住んでいたマンションに今も住んでいることにして見栄を張りたい鏑木研四郎(佐藤B作さん)と、今の住人である鴨田巌(片岡鶴太郎さん)・まち子(鈴木杏樹さん)夫妻の攻防を中心に進んで行きます。
夫妻は物凄く曲者感のある巌と物凄く天然感のあるまち子の凸凹コンビぶりがかなり面白かったです。
テレビの修理屋のふりをしながらどうにかして誰もいない状態にしてちよみを迎えたい研四郎ですが、夫妻以外の人達も次々現れどんどん事態は悪化していきます。
その場を誤魔化すために苦し紛れの嘘をつきますが、やがてその嘘とは矛盾する展開になってしまったりもして、次々訪れる大ピンチに四苦八苦しながらも誤魔化そうとする様子が面白かったです。
巌が曲者感たっぷりな言い方で「どういうことなんだ」的な突っ込みを研四郎に入れる場面などは特に印象的で、片岡鶴太郎さんは曲者役をやらせたら随一な気がします。
また佐藤B作さんは大ピンチの連続で焦っている役回りなので終始焦った雰囲気の演技をしていましたが、その焦りの中に巧みに笑いを入れて来たり、最後の方では一転してしんみりとした演技をしたりもして、流石に上手いなと思いました。

終始笑いに包まれた作品で、休憩を挟んで約3時間に及んだ上演時間のうち半分以上は観客席から笑いが起きていた気がします。
笑いにはアドリブと思われるものもあり、私は片岡鶴太郎さん、佐藤B作さん、あめくみちこさん(研四郎の元妻・若宮サダ役)のアドリブ的立ち回りが印象的でした。
本人達も笑いながら台詞を言っていた場面があったのが印象的で、笑いに包まれっ放しの会場の雰囲気を楽しみながら演技をしているのが分かり、ベテランならではの余裕、貫禄を感じました。
特に片岡鶴太郎さんが舞台のセットとJMSアステールプラザの床面との境界線をもじり、「ここより先はもう舞台セットの外じゃないか」のようなことを面白おかしく言っていた場面が印象的で、よく台詞が出てくるなと思いました。

不自然にならない場面で、台詞の中でもみじ饅頭などの御当地ネタを出してくれたのは嬉しかったです。
どの地域にも名産品はあるもので、他の地域の上演でも御当地ネタを出してくれたのではと思います。
これは各地を回りながら上演する舞台ならではの良さだと思います。

研四郎の愛人のビビアン(小林美江さん)が日本語を勉強中で怪しい片言を話すのですが、「明日は明日の風が吹く」などの格言を絶妙なタイミングで、絶妙な言い方で言っていたのは面白かったです。
周りの人を勇気づけているようにも茶化しているようにも見え、何か言うたびに客席から笑いが起きていました。
終盤になると驚愕の正体も明らかになり、そこでも笑いが起きました。

鴨田まち子役の鈴木杏樹さんは広島公演の前に不倫スキャンダルが報じられました。
ちよみが劇中でまち子の気の迷いを凄い勢いで怒る場面があり、まち子が演技ではない雰囲気で気まずそうにどんどん小さくなっていきリアルに落ち込んでいるのが面白かったです。
まさか劇中のまち子と実際の鈴木杏樹さんが同じような境遇になるとは驚きで、不倫は駄目ですがこの場面はかなり笑われていました。



(演技をする菅原りこさん)

ちよみは「いちず」「まっすぐ」という言葉が思い浮かぶような、何事にも勢い良く突き進んでいくタイプの人でした。
ちよみが登場すると場の雰囲気が明るくフレッシュになり、そういった役回りなのだと思います。
また、佐藤B作さんと片岡鶴太郎さんは二人とも1997年の大河ドラマ「毛利元就」に出演しており、菅原りこさんがそういった人と共演するところまで来たのが私は嬉しかったです

菅原りこさんは現在19歳で、今年20歳を迎えます。
アイドルから女優・タレントに転身してまだ日も長くなく、お芝居の分野では駆け出したばかりの存在です。
なので演技力ではさすがに先輩方には及ばない印象を受け、ベテラン勢の演技には「変幻自在」「緩急自在」といった言葉が思い浮かび、そこに差を感じました。
今後に向けて、役の幅を広げていくには緩急も重要になる気がします。

菅原りこさんと似た立場で女優として活躍する人では、松岡茉優さんが思い浮かびます。
元々は「おはスタ」という朝の子供向けバラエティ番組を中心に活動していましたが、番組卒業後は女優として活躍していきます。
私は「ちはやふる」という青春映画で本格的に松岡茉優さんの演技を見ることになり、その演技力の高さがかなり印象的でした。



(「ちはやふる」で主人公のライバル役を演じる松岡茉優さん。当時まだ21歳でしたがこの貫禄です。)

現在では演技力の高い若手女優として益々名を轟かせており、今後もさらに飛躍していくと思います。
こういった途中から女優に転身しての大成功例もあるので、菅原りこさんも努力次第で高い演技力を身に付けることが出来るのではと思います。

また、ちよみを演じる菅原りこさんを見て、声が透き通っていてよく通るのが印象的で舞台に向いていると思いました。
そして元アイドルということもあり細身でスタイルが良く、上背も伸びてきているようで雰囲気がとてもステージ映えします。
この高い素質があるので女優として成功する可能性は大いにあると思います。
これからどのように活躍していくのか、注目して見て行きたいと思います


私が「罪のない嘘」を観たのは、広島での1回だけでした。
しかし笑いの絶えないとても面白い舞台で、観終わってからもう一度観たいなと思いました。
初めて観た舞台が楽しい舞台になったのも嬉しく、これを機に気になる舞台があれば観に行くのも良いかなと思いました



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広島公演出演

佐藤B作
辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)
小林麻耶
菅原りこ
あめくみちこ
黒田こらん
小林美江
山本ふじこ
中西良太
まいど豊
佐渡稔
梅垣義明
鈴木杏樹
片岡鶴太郎
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-----菅原りこさん出演作品、コンサートの感想記事-----
辰巳真理恵 菅原りこ 追川礼章 SPECIAL CONCERT
「PERSONA5 the Stage #3」(主演:猪野広樹)


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