読書日和

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「あいるさん、これは経費ですか? 東京芸能会計事務所」山田真哉

2014-12-20 12:43:52 | 小説
今回ご紹介するのは「あいるさん、これは経費ですか? 東京芸能会計事務所」(著:山田真哉)です。

-----内容-----
モデルを目指し上京した竜ヶ水隼人。
しかし、ある勘違いから東京芸能会計事務所―芸能人のみをクライアントとする会計事務所で働くことになり、美人だが暴走する所長・天王洲あいるにこき使われる日々を過ごしている。
ゴーストライターを見破る方法とは?
毒舌タレントが突然税理士を変えた理由は?
業界の謎を、アイドル税理士と天然青年コンビが解き明かす!
楽しく学べる超実用的エンタテインメント、始動!

-----感想-----
山田真哉さんの小説を読むのは「女子大生会計士の事件簿」のシリーズ以来となります。
あの時は「公認会計士」を題材にしていましたが、今回は「税理士」の世界が舞台です。

物語の語り手は竜ヶ水(りゅうがみず)隼人。
鹿児島県出身の19歳です。
モデルを目指しているのですが、ある勘違いから税理士事務所で働くことになりました。
その勘違いとは、「芸能事務所」と「芸能会計事務所」を間違えたこと。
烏山千歳(からすやまちとせ)という憧れのアイドルを追いかけて乗ったエレベーターで(ストーカーみたいですね)竜ヶ水は芸能事務所を見つけました。
そしてそこに飛び込んでみると、何とそこは芸能人専門の会計事務所、「芸能会計事務所」だったというわけです。
竜ヶ水が遭遇したのは所長の天王洲あいる。
りんかい線、東京モノレールの天王洲アイル駅のパロディとしか思えない名前です
商業高校出というところを天王洲あいるに目を付けられ、竜ヶ水はそのまま東京芸能会計事務所で働くことになりました。
ちなみに東京芸能会計事務所は従業員30人、抱えるクライアントは500人でなかなか大所帯とのことです。

物語は以下のようになっていて、一話簡潔の短編~中編で構成されています。

1曲目 ここは東京芸能会計事務所 職業・アイドル
2曲目 芸能界は奥深い 職業・タレント
3曲目 文学新人賞の秘密 職業・新人作家
BGM1 始まりのゴーストバスターズ
4曲目 ”言葉使い”にご用心 職業・作詞家
BGM2 クリスマスの会計事務所

各話で竜ヶ水と天王洲あいるがクライアントから税務の依頼を受け、そしてそこにある謎を解き明かしていきます。
この一話完結のスタイルは「女子大生会計士の事件簿」の時と同じで、今回は会計トリックが税務トリックに変わります。
確定申告書のことなどが出てきて、読むと税務のことにちょっとだけ詳しくなれるような小説です。


1曲目は「KEIO☆1000」というアイドルグループのことがよく出てくる話でした。
「KEIO☆1000」とは国民的アイドルグループで、桜上水芦花(ろか)と烏山千歳(竜ヶ水の憧れのアイドル)が人気を二分していたとのことです。
「KEIO☆1000」はAKB48をモデルにしているのだと思います。
この話のクライアントは烏山千歳だったのですが、終盤で名前しか出ていなかった桜上水芦花の意外な正体も明らかになりました。

また、この話では東京芸能会計事務所の使命についても言及がありました。
「所属事務所すら知らないようなプライベートも、すべて抱え込む。そして、クライアントを全力で助ける。これが、芸能人を専門とする会計事務所の使命、プロフェッショナル・ビジネスなのよ」

天王洲あいるの言葉ですが、たしかに込み入った事情を抱え込むこともあるんだろうなと思います。
烏山千歳にも世間には決して言えない秘密がありました。


2曲目はプラーザ多摩という毒舌タレントの話。
私は毒舌タレントと聞くと有吉弘行さんやマツコ・デラックスさんが思い浮かびます。
プラーザ多摩にはもともと世話になっている税理士がいたのですが、余程腹の立つことがあったらしくその税理士を替え、東京芸能会計事務所の世話になりたいと言ってきました。
そこで天王洲あいるが興味深いことを言っていました。

「税理士を替える理由には、大きくふたつあるの。ひとつは、顧問料が高いとか、対応が遅いとか、サービス面での問題」
「そして、もうひとつは会計処理に対する意見の食い違いやそもそもの節税感覚の違い、つまり経理面での問題。こっちだった場合は、税理士が替わってもまた同じ壁にブチ当たることが多いから、できれば引き受けたくないのよ」


これはなるほどと思いました。
後者の可能性が高いと見た天王洲あいるはプラーザ多摩の依頼を引き受けるのに乗り気ではありません。
そして竜ヶ水はプラーザ多摩のことを調べる特命係に任命され、どんな経緯で前の税理士、宮前平税理士を替えることになったのか調べていくことになります。
この竜ヶ水の調査の過程がギャグ的なノリで面白かったです。

「ほ、本当に、前の税理士に直接会いに行ったのお!?」
「なにか問題でも」
「い、いやー……別に問題じゃないけど、フツーしないかなあ。お客さんを奪い取っちゃうかもしれない相手なわけだしさあ」
「マナー違反でしたか?」
「マナー違反じゃないけど…先方に嫌がられなかった?」
「いいえ、別に。ただ、『お宅の所長はどういう教育しているんだ』とは言ってました」

この後竜ヶ水はプラーザ多摩の所属事務所「カントリーシティライン」の溝口社長にも会いに行くのですが、その後に上記と全く同じ展開が繰り返されていました(笑)
ほんと、ギャグ的なノリでテンポよくサクサク読めて面白かったです


3曲目は文学新人賞を受賞した新人作家の話。
アルピコ=シンシマーシマー=松本という音楽業界から転身した変わった名前の新人作家が「長野出版社ミラクル新人賞」という賞を受賞。
その賞金額は何と3000万円
クライアントが大出世して顧問料も大幅に高くできるということで天王洲あいるも喜びます。
しかし問題が発生。
年内に出すと言っていた受賞作の単行本は出ず、さらには賞金も1円も払われません。
出版社が意図的に、悪意を持って払わずにいると確信した天王洲あいるは竜ヶ水とアルピコを連れて長野出版社の姥捨(うばすて)社長のところに乗り込んでいきます。

この話では文学賞に対する税金の額の違いが興味深かったです。
ノーベル文学賞の場合は「社会への貢献が大きい」という理由で非課税。
芥川賞、直木賞、本屋大賞などの場合は「すでに世に出ている作品に対する賞金だから、偶発的」という理由で「一時所得」という扱いになり、税金は(収入-経費-50万円控除)×1/2 で算出されます。
江戸川乱歩賞、すばる文学賞、電撃小説大賞などの場合は「まだ世に出ていない作品なので、賞金は『著作に対する直接の対価』に含まれる」ことになり、税金は収入-経費で算出されます。
芥川賞、直木賞、本屋大賞のような既発表の作品が賞をもらった場合は馬券や落し物と同じ”一時所得”になり税金は安く済みますが、江戸川乱歩賞、すばる文学賞、電撃小説大賞のような公募文学賞の場合は賞金をもらうために書いて応募しているのだから、賞金をもらうことには「対価性」があり、通常と同じ税金、”事業所得”がかかるとのことです。

また、この話の中で「ちんどん屋はなぜ潰れそうなのか?」という本が出てきました。
会計本で初めてのミリオンセラーとのことで、これはどう見ても山田真哉さんの著書「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」のパロディだと思います。
「女子大生会計士の事件簿」のシリーズでヒットした後に出し、会計本で異例のミリオンセラーとなった本です。


BGM1、4曲目、BGM2はゴーストライター問題の話。
最初のBGM1でニセ作曲家のゴーストライター問題が出てきて、「楽譜が読めないのに作曲家だったなんて、ヒドイ話ですよねえ」とありました。
これは佐村河内守氏が新垣隆氏をゴーストライターにしていた問題のことだと思います。

「ゴーストライター問題に脱税はつきもの」というのは印象的でした。
ゴーストライターに支払った代金の源泉徴収漏れで、不納付加算税と延滞税を含めた追徴課税を受けることになるようです。
ゴーストライターを雇った側も源泉徴収をきちんとしなければ脱税になってしまうということです。
ただ竜ヶ水が「でも、『ゴーストライター代です』と税務署に申告する人って、いるのかなあ……」と疑問に思っていたように、正直に申告する人はなかなかいないのではと思います。
そんなわけでゴーストライター問題が発覚すると税務署が動き、税務調査が入ったりもするようです。

4曲目の依頼人は高幡百草(もぐさ)という人。
新規のお客で、職業欄に「言葉使い」と書いている謎の人物です。
この人物が天王洲あいるを前にした途端激怒します。

「―天王洲あいる。正体は、桜上水芦花」
「えっ」
「ああ、もしかして昔のファン?一応変装をしているつもりなんだけれど、あなた、なかなか鋭いわねっ」
「―フッ、お気楽なものね」
「え?」
「チッ、この裏切り者ッ!」

ものすごい怒りで、二人にどんな因縁があるのか気になりました。
しかもお金にがめつい天王洲あいるが高幡百草の依頼をタダで引き受けていて、やはり二人の因縁が興味を惹きました。
竜ヶ水との会話では以下のことを言っていました。

「そ、そんな。たしかに、天王洲さんは人形みたいに綺麗ですらっとしてて元アイドルで頭がいいけど……」
「―そうね。その通りよ。魅力ある女性よね」
「でもね。卑怯で、裏切り者で、人の夢や希望を平然と潰すような”最低の女”でもあるのよ」

またこの話では「KEIO☆1000」のことがよく出てきました。
「KEIO☆1000は創設期の頃はグループとしての人気はなかなか出ず、芦花ちゃんら一部のメンバーが露出する程度だった」とあり、やはりAKB48をモデルにしているなと思いました。
AKB48も最初は前田敦子さんら一部のメンバーが露出する程度でした。


どの話も展開が早く、ギャグ的なノリでサクサク読めました。
ただ「―」を多用するなど、文章表現力は純粋な作家さんと比べると見劣りします。
これはもともとが公認会計士・税理士なので仕方ないところです。
楽しくサクサク読めて会計、税務のことにもちょっと詳しくなれる本だと思います。
続編が出るようなのでそちらも楽しみにしたいと思います


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感性

2014-12-18 00:17:23 | ウェブ日記
pitocoさんのブログで、私を「しなやかな感性が魅力的」と紹介してくれています。
私はかつてこれを見て、この感性こそが自分自身の強みなのだと確信しました。
他の人からの言葉で自分自身の強みに気付くことってあると思います。

しかしここ最近はこの感性がなりを潜めがちになっていました。
日常のちょっとしたことを言葉にして日記にするのは私の好きなスタイルなのですが、そのための感性のアンテナが弱まっていました。
外を歩いていて何か目に留まるものがあればブログに書いていましたが、それができるのは周囲に興味を持ってアンテナを張っているからです。
周囲に興味を持つ心の余裕がない状態では難しいなと思います。

それでも目白のフォトギャラリーを作った時、感性自体は鈍ってはいないと感じました。
そして「沈む葉っぱと浮かぶ葉っぱ」の記事で紹介したように、子どもの感性の鋭さにハッとさせられるようなこともありました。
そんなわけで私も感性について改めて考えることになりました。

感性という私の強みは、精神状態に大きく左右されます。
疲れている状態ではなかなか発揮できません。
どうやら今は新生活の生活リズムも掴めてきて、再び発揮できる状態になりつつあるようです。
ブログも自分の思ったこと、感じたことを書く比率を以前と同じくらいに戻したいなという気持ちが湧いてきています
そしてそう思えているのなら特に何もする必要はなく、普通に日常を過ごしていれば自然と気になるもの、これはブログに書きたいなと思うものがどんどん出てくると思います。
それこそが感性であり、私が大事にしてきたものです。
これからも大事にしていきたいと思います。

寛永堂の特製善哉

2014-12-16 22:00:38 | グルメ


目白駅前にある寛永堂。
正式には「京都三条 菓子司 寛永堂」の、目白本店とのことです。
吉永真奈さんのコンサート「雪月花」の後、駅に行く前にここに寄っていきました。
最初に目白駅に降り立って目白庭園目指して歩いた時、このお店が目に留まり、店の前のショーウインドウで紹介されていた「特製善哉(ぜんざい)」が気になっていました
滅多に訪れない目白ですし、せっかくなので食べていこうと思いました



こちらが特製善哉です。
名前は善哉ですが、私の目にはお汁粉に見えました。
調べてみると、関西では粒あんで作ったものを善哉、こしあんで作ったものをお汁粉と呼んでいるとのことです。
寛永堂はもともと寛永七年(1630年)に京都で創業したお店なので、粒あんのお汁粉を「善哉」と呼んでいるのだと思います。
そして寛永七年から384年も続く老舗の和菓子屋さん、素晴らしいですね

お汁粉は粒の大きい小豆を使っていました。
粒が大きいためそれほど煮崩れしておらず、箸で簡単に掴めたのが印象的でした。
程よい甘さで、かなりの美味しさでした
餅はこんがりきつね色に焼けていて、中は柔らかかったです。
もともとお汁粉が好きな私には絶品でした^^
また目白を訪れた際にはぜひもう一度食べてみたいと思います

沈む葉っぱと浮かぶ葉っぱ

2014-12-15 23:34:39 | ウェブ日記


写真は吉永真奈さんのコンサート「雪月花」の待ち時間に目白庭園で撮ったものです。
もみじなどの葉っぱが庭園の池の水にたゆたっていました。
その時、小さな女の子と父親の親子が通りがかりました。
そして女の子が父親に言っていました。

「どうして沈む葉っぱと浮かぶ葉っぱがあるの」

これはハッとする興味深い視点でした。
私は最初に写真を撮った時、これは考えていませんでした。
水にたゆたう葉っぱに風情があって良いなと考えていました。
コンサートにゲストで出演していた生田流箏曲演奏家の身崎有希子さんもトークの時に水にたゆたうもみじの葉っぱの風情について語っていました。

冒頭の写真を見て水にたゆたうもみじの葉っぱの風情に着目するか、どうして沈む葉っぱと浮かぶ葉っぱがあるのかに着目するか、これは感性の違いなのだと思います。
そして思ったのが、違う感性の持ち主が集まると色々な意見が出て相乗効果が生まれるだろうということです。
きっと音楽にも言えることだと思います。
それともうひとつ、やはり子どもの感性は新鮮だなということです
大人があまり気にしなくなったことを、子どもは疑問として聞いてきます。
私も常に感性を澄まして色々なものを見ていきたいと思います。

穏やかな目白

2014-12-14 22:02:37 | フォトギャラリー
吉永真奈さんのコンサート「雪月花」を見に行った時、入場開始までの時間を使って目白の街を少しと目白庭園の散策をしていました。
やはり穏やかな街で、ひとつ隣の池袋とは全く違う雰囲気でした。
絶好の冬晴れの中、気分爽快に散策を楽しむことができました


------------- 穏やかな目白 -------------


目白駅で降りるのは今回が初めてです。


目白といえば学習院大学ということで、ちょっと様子を見に行ってみました。
こちらは西門です。


学習院大学沿いの通り。
12月中旬ですがまだイチョウの黄葉が残っていてくれました


通りには川村学園もありました。


学習院大学の正門。


秋篠宮佳子内親王殿下が見切りをつけたことで凋落が顕著になっています。
中退して他の大学に入り直すのは重い決断で、決断するからにはそれなりの理由があるものです。


住宅街の中を通る道路。
目白庭園へと続いています。


狭い道路ですが、歩いていたら何度か引っ越しや宅急便のトラックが通っていきました。


「花よろず」という花屋とカフェの店。


住宅の庭から道に顔を出して咲いていた花。
綺麗な花ですね
何という名前なのか気になるところです。




間近で見る西武池袋線。


何だか風情がありました。


ここから目白庭園です。


正面に見えているのは赤鳥庵(せきちょうあん)。
ここで吉永真奈さんのコンサート「雪月花」が行われました。


マンリョウ。
ウィキペディアによると漢字では「万両」と書き、冬に熟す果実が美しいので栽培され、特に名前がめでたいのでセンリョウ(千両)などとともに正月の縁起物とされるとのことです。


枝垂桜の枝。
春になれば綺麗な花を見せてくれることでしょう


雪除けの施された松。
冬の装いです。




ススキが風になびいて種子を飛ばしていました。


逆光が降り注いでいます。
雪除けの施された松はクリスマスツリーのようにも見えますね


太陽の光を浴びる松。




この石を渡って池の向こうに行けます。
バランスを崩すと落ちそうですね
ちなみに水にたゆたうもみじの葉について印象的なことがあったので、後で記事を書こうと思います。




静かな流れ。
風流だなと思います。


小さな滝のようになっている場所もあります。


その下には徳島県、鳴門海峡の渦潮が思い浮かぶような水の泡立ちがありました。


ボケの花。
昔祖父がこの花の植木を作っていたのを思い出しました。


鯉。
一番左の鯉は何だかチャーミングですね^^


というわけで、良い散策になりました
目白の街のほうはもう少し歩いてみたかったので、また行く機会があればぜひ歩いてみたいと思います


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吉永真奈さんコンサート「雪月花」

2014-12-13 21:19:53 | ウェブ日記


目白庭園「赤鳥庵(せきちょうあん)」にて行われた吉永真奈さんのコンサート「雪月花」、見に行ってきました
コンサートは以下の6曲で編成されていました。

1、Leap「飛躍」  水川寿也作曲

2、さくら~箏独奏による主題と六つの変奏~  藤井凡大作曲

3、氷華二題  吉崎克彦作曲

4、上弦の曲  沢井忠夫作曲

5、琴線幻夜  D・A・I作曲

6、雪月花によせて  吉崎克彦作曲

このコンサートでは吉永真奈さんの東京藝術大学の同級生である身崎有希子さんと小湊昭尚さんもゲストとして登場していました。
身崎有希子さんは吉永真奈さんと同じく生田流箏曲演奏家、小湊昭尚さんは琴古流尺八演奏家です。



写真左から吉永真奈さん、身崎有希子さん、小湊昭尚さん。
アンコールの時に写真撮影がOKになったので、写真はその時に撮ったものです。

それとこの6曲の後にアンコールでの「クリスマスメドレー」がありました。
ジングルベルやきよしこの夜など、和楽器によるクリスマス音楽も良いものです
アンコールでは尺八の小湊さんが突然クリスマスのトナカイの帽子を被っていてウケました(笑)



コンサートはまず三人が登場してすぐに一曲目の『Leap「飛躍」』の演奏が始まり、いきなりの演奏に惹き込まれていきました
「雪月花」という名前が表すように、雪、月、花をテーマにしたコンサートでした
曲にもそれが表れていました。
「氷華二題」では雪、「上弦の曲」では月、「さくら~箏独奏による主題と六つの変奏~」では花が表されていました。
そして「雪月花によせて」という曲も存在していて、和楽器の演奏家にはかなり人気のある曲とのことでした。



このコンサートは和室で座布団に座って聴くというスタイルでした。
目白庭園「赤鳥庵」は外を見れば庭園の景色が飛び込んでくる風流のあるお部屋で、和楽器のコンサートだけにこれはとても合っていて良いと思います
今日登場した楽器は箏(こと)、十七絃(じゅうしちげん)、尺八の3つです。
間近で見る演奏はやはり素晴らしかったです
生の音色はよく響いていました。



演奏の合間には吉永真奈さんを中心にトークもありました。
それによると、箏はもともと今回の赤鳥庵のような部屋で弾くために作られた楽器で、音もそれほど大きくはないとのことです。
ただ間近で聴く演奏は音が大きく伸びやかに響いていて、とても聴きやすかったです。
やはり自然の音色に勝るものはないと思います。
疲れ気味の私にはかなり良い気分転換になりました

コンサートの後にはお茶菓子まで出して頂きました。
「銀座 六雁(むつかり)」という超美味しい日本料理屋で注文販売でのみ作っているという「白いマカロン」です。
普通にお店に行ったのでは手に入らない代物とのことで、珍しいお菓子を食べられてラッキーでした。



吉永真奈さんのトークの中で「藝大(東京藝術大学)を卒業した後、周囲からの和楽器に対して持たれているイメージに違和感があった。おじいちゃんおばあちゃんが演奏するような楽器というイメージ」というのがありました。
「そんなことはない、若い人にも箏のことを知ってほしいという思いからRin’というグループで活動したし、またずっとそういう活動を続けてきた」ともおっしゃられていました。
今日見た限りでは私と同じかそれより若い人の姿もありましたし、活動の成果は出ているのではと思います。
私はもともとgooブログの「今日の一押しブロガー」で吉永真奈さんのブログが紹介されていたのがきっかけでその存在を知り、和楽器の演奏に興味を持ちました。
それまでは琴による曲を箏曲(そうきょく)と呼ぶことも知りませんでしたし、ほとんど縁がありませんでした。
若い人はネットをやっている人が多いですし、ブログ、ツイッター、フェイスブックなど色々とあるツールを使って箏のことを広め、興味を持ってもらったり生の演奏を聴いてもらうきっかけを作ったりしていくのはそれなりに効果があるのではと思います。



というわけで、とても楽しいコンサートでした
2010年のブルースアレイジャパン以来、久しぶりにコンサートに行って生の演奏を聴くことが出来て本当に良かったです
またチャンスがあればぜひ行きたいと思います

箏のコンサート

2014-12-13 09:51:09 | ウェブ日記
今日はこれから生田流箏曲演奏家、吉永真奈さんのコンサート「雪月花」を聴きに行ってきます。
場所は目白庭園「赤鳥庵」。
JR池袋駅のひとつ隣、目白駅から徒歩6分くらいの場所にあります。

山手線には何度も乗ってきましたが、目白駅で降りるのは今回が初めてになります。
目白と言えば、学習院大学と高級住宅街が思い浮かびます。
比較的落ち着いた雰囲気という印象があります。
目白庭園「赤鳥庵」は吉永真奈さんのブログによく登場していて、私も一度行ってみたかった場所です。

吉永真奈さんのコンサートに行くのは2010年1月のブルースアレイジャパン以来となります。
※その時の記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。
なかなか行けない日々が続いていたのですが、今回は久しぶりに行けそうです。
ブルースアレイジャパンの時とはまた違った曲が登場するようなので楽しみです。
見て聴いてコンサートを楽しんできたいと思います♪

笑顔

2014-12-07 14:55:52 | ウェブ日記
埼玉県に引っ越してきてからよく行くスーパーに、笑顔が印象的な人がいます。
レジでの応対が常に自然な笑顔で好印象です。
笑顔はその場の雰囲気を柔らかくしてくれて良いなと思います。

やはり接客業のように人と人が向き合う場合、自然な笑顔は大事だと思います。
買い物をしてレジに来る時というのは、後は会計をして帰るだけで、去り際のようなものです。
その去り際の印象がよくなると、またその店に来ようという気になります。
反対に去り際の印象が悪いと、自然とその店からは足が遠のきます。
実際に過去、去り際の印象が悪くてしばらくその店から足が遠のいたことがあります。
そんなわけで笑顔の大事さを感じました。

普段人と話す時も、ずっと笑顔とはいかないまでも、自然な明るさは保つようにしたいものです。
殺伐としていたのでは雰囲気が悪いですし、接しやすさは大事なことだと思います。

「あかりの湖畔」青山七恵

2014-12-06 20:54:28 | 小説
今回ご紹介するのは「あかりの湖畔」(著:青山七恵)です。

-----内容-----
湖のほとりにある「お休み処・風弓亭」の三姉妹。
次女の悠は女優を目指し、高校生の花映も外の世界に憧れ、一人長女の灯子だけが、生まれ育ったこの場所でいつまでも変わらぬ生活を望んでいた。
ある日、姉妹の前に一人の青年が現れる。
「運命を変える」出会いが、封じられた記憶を揺さぶって―
大切な家族だからこそ、打ち明けられない秘密がある。
人生の小さな分岐点を丹念に描き、心を静かにふるわせる傑作長編小説。

-----感想-----
今年の春から読みたいと思っていたこの作品、ついに今回読むことになりました。
冒頭の季節は梅雨が明けて、夏が始まる頃。
湖と緑の描写が良かったです。

湖に落ちる日の光は水の上に跳ね、いくつもの細かなイガの形となって躍っていた。
湖面が凍っていなければそれは特別珍しい景色でもないのだけれど、雨が終わったあとのこの濃い緑の季節にだけ、灯子はそこに音楽を聴く心地がした。
大きく息を吸うと、肺の中で緑に染まった細かな音符が弾け、なめらかな旋律が体に広がっていくようだった。

水のほとりで緑に囲まれて日の光を浴びながら、リラックスして深呼吸している様子が凄く上手く表現されていると思いました。

三姉妹の長女、久米灯子は26歳。
湖畔で食堂を営むお休み処、風弓亭(ふうきゅうてい)の主として働いています。
そして風弓亭は灯子たち家族が住んでいる場所でもあります。
次女の悠は髪も短くしていて活発なタイプ。
短大を出て数年とあったので23歳前後のようです。
三女の花映は高校二年生。
三姉妹の父は源三と言います。
従兄弟の俊介は三女の花映と同い年の高校生で、よく花映をからかったりからかい返されたりしています。

案内所の事務員になってからの源三は、毎日自分でアイロンをかけた白いワイシャツに細かい格子柄のネクタイをきっちりと締めて、朝の食卓に現れた。
仕事が終わって帰宅すると、すぐに自室で昼間の服を脱いでしまい、夕食にはくたびれた寝巻姿で出てくる。
朝に見送ったいかにも事務員らしい格好の父が、夜はそんなふうにちんまり落ち着いているのを見るにつけ、なんだか新札の千円が百円玉十枚になって座っているようで、灯子はときどき笑ってしまうのだった。

この「新札の千円が百円玉十枚」の表現は面白いなと思いました。
春から初夏にかけて何冊か作品を読んだ時にも思いましたが、青山七恵さんはやはり表現力が抜群に高いと思います。
同年代の作家さんということでよく引き合いに出す綿矢りささんを上回っているかも知れないとまで思いました。

灯子は風弓亭に執着を持っています。
序盤でただ「執着しているのは自分だけだ」とあり、なぜ執着しているのか気になりました。

源三の妹で三姉妹の叔母の芳子は毎日風弓亭を手伝いに来ています。
従兄弟の俊介は芳子の息子です。
淳次という人もよく出てきます。
淳次と灯子は同い年で小さい頃から仲が良く、血はつながっていないが親戚です。
作中である人物を除くとただ一人灯子のことを「トト」と幼い頃の愛称で呼ぶ人でもあります。

木曜日は灯子の定休日です。
風弓亭に定休日はないですが、木曜日だけはいつもは街で働いている悠が灯子の代わりに店番をしてくれます。
木曜日になると灯子は温泉街まで下りて親友の清(きよ)に会いに行きます。
この描写から、風弓亭は山のほうにあることが分かります
ネットで調べてみたら、どうやら群馬県の榛名山、伊香保温泉、高崎市の辺りがモデルになっているようです。
風弓亭があるのは榛名山で、温泉街は伊香保温泉のことだと思います。
また、清が中居として住み込みで働く丹下楼(たんげろう)という旅館の描写では、箱根の温泉街が思い浮かびました。
清が灯子を引っ張り出してきた合コンの場で灯子のことを「天上の人」と言っていたように、ごみごみとした俗世間から隔絶された場所に居ることが分かります。

東京からやってきた橋本辰生という青年の出現は、やがて灯子たち家族の日常に変化をもたらします。
辰生は東京には帰らずにひいらぎホテルというところで働くことになります。

灯子は悠の彼氏の隆史と顔を会わせることはめったにないとありました。
何かがあるなと気になりました。
読んでいくと灯子は悠の彼氏の隆史が好きで、しかしその気持ちに蓋をしていることが分かります。

夏が終わる頃、花映が17歳になりました。
そこで灯子が思う花映についての描写がありました。

若い花映が家の中でのびのび生きているというだけで、灯子はこの一家がずいぶん救われているという思いがした。
油断するとすぐに家じゅうに忍び込もうとする、形のない不安も寂しさも、そのすっと気持ちよく伸びた腕や足で、軽やかに蹴散らされる気がする。
花映は一家の薬箱に残された最後の特効薬のようだった。


何だかこの一家が随分疲れているようで、なぜそうなっているのか、原因が気になりました。

悠には東京に行って女優になるという夢があります。
年が明けたらすぐに隆史とともに上京し、劇団の研修生になるとのことです。

灯子たちの母親は消息不明になっています。
これも過去に何があったのか気になりました。

ある時、灯子は辰生から悠が湖の近くにある山荘の前で泣いていたと聞かされます。
普段活発で泣くところのあまり想像できない悠がなぜ泣いていたのか灯子は気になっていました。
辰生はひいらぎホテルで働き始めてから、風弓亭によく来るようになっていました。

またある時、花映が男の人と二人で歩いているのを清が見ていました。
灯子はそれを聞いて胸騒ぎがします。
本当なら学校にいるはずの時間だったし、相手の人も花映が話していた人とは全然違う人だったからです。
このことでやがて花映と口論になります。

「わたしが誰と付き合ったってお姉ちゃんに関係ないでしょ?わたし、お姉ちゃんみたいにはなりたくない。こんな山奥で、なんにもしないで、一日中ぼんやりしてる人になんか、なりたくない」

灯子、悠、花映の三姉妹を中心にそれまでの日常に少し変化が起き、徐々に波紋を広げていきます。
悠が泣いていたという山荘、灯子はその山荘に秘密があります。

やはりいつかはここに戻ってこなくてはいけないのだ、それが、きっと、運命というものなのだ…

灯子が一家の疲弊を心境吐露していたのにもつながっているであろうこの秘密、気になるところでした。
そしてそれは消息不明になった母親にも関係することでした。

終盤は父の秘密、さらには辰生の秘密も明らかになり、驚きの展開でした。
ゆったりとしていた物語に緊張が生まれていました。
純文学らしい繊細な表現とミステリアスさが合わさった面白い作品だと思います。


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