唯識:コスモスからのメッセージ

2006年02月01日 | 心の教育

 「唯識(ゆいしき)」は、『解深密経(げじんみっきょう)』や『大乗阿毘達磨経(だいじょうあびだつまきょう)』などを元に、さらに体系化された大乗仏教の理論です。

 「識=心」へのくわしい洞察があり、しかも心の無意識の領域・深層心理のみごとな解明がなされているので、私は「大乗仏教の深層心理学」だと評しています。

 ここで、「あ、ムズカシソウ」と引かないでください。

 大丈夫です。これまでの学生の感想にもあったとおり、がんばれば、ポイントは必ずわかります。

 学問としての唯識は、理論としては確かに難解であり、膨大な文献もあるのですが、私たち自身の心がどうなっているのかを知るためのヒントとしてのポイントは、そんなにむずかしくはありませんし、膨大な知識は必要ありません。

 私の授業では、詳細・緻密・難解な唯識学全体ではなく、元気に生きるためのヒントになるポイントにしぼって紹介することにしています。

 とはいっても、最小限の歴史的知識などはお伝えしておいたほうがいいでしょう。

 唯識の理論を体系化したのは、マイトレーヤ(弥勒、みろく、350-430)、アサンガ(無着・無著、むちゃく・むじゃく、395~430)、ヴァスバンドゥ(世親、せしん・せじん、400~480)という3人の仏教哲学者――「論師(ろんじ)」と呼ばれます――です。

 マイトレーヤは、伝統的には弥勒菩薩と同一視されてきましたが、現代では同名の論師がいたのであろう、ともいわれています。

 歴史的実在が確実なのは、次のアサンガ・無着からです。

 代表的な著作として『摂大乗論(しょうだいじょうろん、マハヤーナ・サングラハ)』があります。

 私は、これを漢訳から現代語訳(コスモス・ライブラリー刊、星雲社発売)しており、そのタイトルにちなんで私の研究所を「サングラハ心理学研究所」としています。

 また、その内容の概説として『大乗仏教の深層心理学――摂大乗論を読む』(青土社)を書いています。

 この入門授業を受けた後で、もっと学びたくなったら、取り組んでみてください。

 次のヴァスバンドゥ・世親は、アサンガ・無着の肉親の弟で、インド唯識学の大成者といわれます。

 たくさんの著書があるのですが、もっとも代表的なものが『唯識三十頌(ゆいしきさんじゅうじゅ)』です。

 私は、これについても、『唯識の心理学』(青土社)という入門的な解説書を書いています。

 後に、唐代の有名な訳経家・玄奘三蔵(?-664)とその弟子基(窺基、きき、632-682)が、インドで出来た『唯識三十頌』に対する10の注釈書を編集して1冊にまとめた『成唯識論(じょうゆいしきろん)』が、中国と日本の唯識を学ぶ学派である「法相宗(ほっそうしゅう)』の基本的な聖典になっています。

 このあたり、もう少しくわしく歴史的なことを知りたい方は、拙著『唯識のすすめ――仏教の深層心理学入門』(NHKライブラリー)の第1章「唯識の来た道」、さらにくわしく知りたい方は、横山紘一『唯識思想入門』(第三文明社レグルス文庫)の第1章「唯識思想の展開」などをお読みください。

 ただまとめて考えておきたいのは、2、3世紀インドに始まり、4、5世紀大成された唯識は、6、7世紀中国に伝わり、7世紀中国・唐に派遣された遣唐使の学僧たちが玄奘三蔵から学んで日本に伝え、多くの人々の努力によって現代にまで伝えられたものだということです。

 この1800年のつながりは、さらにゴータマ・ブッダまで2500年つながり、さらにホモ・サピエンスの数十万年につながり……生命40億年、地球46億年、宇宙137億年の歴史に、どこにも切れ目なくつながっています。

 これは、とても不思議なことですね。

 私にとって唯識は、137億年かけて私に届いた「コスモスからのメッセージ」のように思えることがあります。


にほんブログ村 哲学ブログへ

人気blogランキングへ

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

講座案内

2006年02月01日 | メンタル・ヘルス

  サングラハ心理学研究所
 18期オープンカレッジ ご案内


初心者のためのやさしい坐禅入門 ご案内

 みなさん、お元気ですか。今年は、久しぶりに冬らしい寒い冬になりました。

  春は花夏ほととぎす秋は月冬雪さえて涼しかりけり

という道元禅師の歌の最後の句が実感できます。寒さに負けず、学んでいきましょう。

 今年も、授業や講座を受けた方の中から、一度坐禅を体験してみたい、坐禅の仕方をおぼえたいという声がありますので、坐禅の入門講座を企画しました。

 ぜひ多くの方に体験していただきたく、昨年に続き、安い参加費にしました。

 「やってはみたいが、ちょっとこわい」「足が痛いんじゃないか」「棒でたたかれたりするんじゃないか」とこわがっておられる方のために、サングラハ式はスパルタ式と反対で、とてもソフトにご指導します。

 警策(肩をたたく棒)を使ったり、怒鳴りつけたりということは一切しません。

 また、なるべく足の痛い思いをしないように、ていねいな準備の柔軟体操もご指導します。

 「黙って坐れ」ではなく、「わかって坐ろう」がモットーで、必要な説明は十分に行ないます。

 体をととのえ、呼吸をととのえ、心をととのえる――この一見シンプルな方法は、実はとても深いもので、いったん身に付けると一生の精神的財産になるでしょう。

 といっても、あまり構えないで、まず最初は気楽に心の洗濯-リラクセーションのつもりでお出かけ下さい。

 入門者だけでなく、再入門の方も、坐禅を教えられるようになりたい方もぜひどうぞ。

●日時:2月17日(金)午後12時~5時頃

●会場:不二禅堂(小田急線普通で新宿から2駅め「参宮橋」の1つだけの改札を出た道を左、最初の2叉路を左(ゆるやかな下り坂)、その後参宮橋商店街を直進(青少年センター方面への左に直角に入る道に行かないように注意)、マルコウストアの先のT字路も左(ややきつい上り坂)、徒歩約5分で道の左側。看板がありますが、一軒手前の3階建てマンションの陰に隠れてあまり目立たないので要注意。)

●指導者:サングラハ心理学研究所主幹・岡野守也

●参加費:一般2000円、会員1500円、学生・準学生1000円

●テキスト:『サングラハ実践の手引き』『サングラハ第78号』(『坐禅義』講義)。お持ちでない方には当日配布します。

●持参品:筆記用具、軽い運動のできる服装


A講座:「ストレスを軽減する智恵論理療法etcを人生の現場で使えるようにするためのコース」

                          於 ヒューマン・ギルド(地下鉄東西線神楽坂) 
                           1/17, 31   2/14, 28  3/14, 28 火曜日全6回 

 生活の中で思いどおりにならないことがあると、私たちは「ストレスを感じる」という心の状態になりがちです。

 しかし論理療法では、私たちがどんな程度のストレスを抱えるかは、外側の状況よりも、自分の心のあり方・物の取り方に大きく左右されるのであり、心のあり方を変えれば、すべてではないにしても、相当にストレスを軽減できる、といいます。

 これは、実際にやってみると驚くほどの「相当程度」であることを、筆者も経験してきました。

 今回は、すでに学んできた方と初めての方のどちらにも、実用的・日常的に使えるところまで身につけていただくための特別コースです。

 ぜひ、お出かけください。論理療法+αもあります。

テキスト:岡野守也『唯識と論理療法』(佼成出版社)


C講座:「『禅宗四部録』を読む」

                           於 不二禅堂(小田急線参宮橋)

                           1/13, 27   2/3, 17  3/3, 17 金曜日全6回

 中級講座では、基本的には大乗仏教の深層心理学・唯識の学びを持続してきていますが、合間に、禅の古典なども学びます。

 現在は、『摂大乗論』の学びを一区切りで中断して、禅の入門的な古典『禅宗四部録』を学んでいます。

 今期は、中国禅の三祖・僧璨(そうさん)のものとされる『信心銘(しんじんめい)』の講読を行ないます。

 これは、鈴木大拙が「『信心銘』は堂々たる哲学詩で、禅旨の大要はこれで尽きている」ときわめて高く評価した名著です。

 これは研究所主幹がはじめて講義するものです。どうぞ、ご期待ください。

 なお、講義の前に30分程度の坐禅を行ないますので、坐禅のできる服装をご用意下さい。

テキスト:コピーを配布します。

●受講料は、一回当たり、一般3、5千円、会員3千円、専業主婦・無職・フリーター2千円、学生1千円×回数分です。

都合で毎回出席が難しい方は、単発受講も可能です。

●申し込み、問い合わせは
 サングラハ心理学研究所・岡野へ、E-mail: okano@smgrh. gr. jp 
または Fax0466-86-1824で。
 住所・氏名・年齢・性別・職業・電話番号・メールアドレス(できるだけ自宅・携帯とも)を明記してください。


人気blogランキングへ

ブログランキング・にほんブログ村へ
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする