梅と春と世界と

2006年02月15日 | 生きる意味

 毎年この季節になると思い出すのは、道元の『正法眼蔵』「梅華」の巻です。

 全体が実に美しい文章ですが、特に次の個所がとても深くてとても美しくて、初めて読んだ時からずっと心に残っています。

 老梅樹の忽(たちまち)開華のとき、華開世界起(かかいせかいき)なり。華開世界起の時節、すなはち春到(しゅんとう)なり。

 訳すと、「老いた梅の木にたちまち花が開く時、花が開いて世界が起こるのである。花が開いて世界が起こるというその時、すなわち春が来るのである」といったところでしょうか。

 私たちの常識では、まず梅とは別に全体としての世界が存在しており、その世界が春になり、そこで老いた梅の木にも花が咲く、ということになります。

 ところが、徹底的にすべてのものの一体性を覚っておられる道元禅師の目には、梅の花が咲くことと世界がそこで新たに生起することと春になることもまた一つのことです。

 無我であり無常である世界は、一瞬一瞬、新たに起こるのであり、それは梅の花として起こったり、春として起こったり、さまざまな区別できるものとして生起しながらも一つです。

 コスモスには、一瞬一瞬、新たな創発が起こっています。

 よく考えると、古い木(と私たちには思えるもの)に梅の花が咲くことも、実はコスモスの新たな創発だというほかありません。

 そして、梅の花が開くことにおいて、「春」と名づけられた新しいかけがえのない時が起こっているのです。

 早春、梅の花が咲くというごく当たり前のことをこんなに深く体験することは、私たちの心の発達段階ではできません。

 ただ憧れと崇敬の思いで道元禅師の言葉の深さと美しさを味わうだけでいい、といえるかもしれません。

 けれども、つながり-かさなりコスモロジーを学んできた私たちには、少なくとも論理としては解釈できますので、とりあえず私にできる解釈で味わってみました。


 今日、散歩に出ると、まだ若い梅の木の昨日はようやく開きはじめた蕾だったのが、まさに「たちまち」という感じに開いていました。

 初々しく清楚な白さが何ともいえず好ましい、と感じたことです。


にほんブログ村 哲学ブログへ

人気blogランキングへ

↑よかったらクリックして協力してください。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

坐禅入門講座

2006年02月15日 | 心の教育
●いよいよ明後日になりました。めずらしく今回はまだ余裕がありますので、今からでもお申し込みいただけます。

    初心者のためのやさしい坐禅入門


 今年も、授業や講座を受けた方の中から、一度坐禅を体験してみたい、坐禅の仕方をおぼえたいという声がありますので、坐禅の入門講座を企画しました。

 ぜひ多くの方に体験していただきたく、昨年に続き、安い参加費にしました。

 「やってはみたいが、ちょっとこわい」「足が痛いんじゃないか」「棒でたたかれたりするんじゃないか」とこわがっておられる方のために、サングラハ式はスパルタ式と反対で、とてもソフトにご指導します。

 警策(肩をたたく棒)を使ったり、怒鳴りつけたりということは一切しません。

 また、なるべく足の痛い思いをしないように、ていねいな準備の柔軟体操もご指導します。

 「黙って坐れ」ではなく、「わかって坐ろう」がモットーで、必要な説明は十分に行ないます。

 体をととのえ、呼吸をととのえ、心をととのえる――この一見シンプルな方法は、実はとても深いもので、いったん身に付けると一生の精神的財産になるでしょう。

 といっても、あまり構えないで、まず最初は気楽に心の洗濯-リラクセーションのつもりでお出かけ下さい。

 入門者だけでなく、再入門の方も、坐禅を教えられるようになりたい方もぜひどうぞ。

●日時:2月17日(金)午後12時~5時頃

●会場:不二禅堂(小田急線普通で新宿から2駅め「参宮橋」の1つだけの改札を出た道を左、最初の2叉路を左(ゆるやかな下り坂)、その後参宮橋商店街を直進(青少年センター方面への左に直角に入る道に行かないように注意)、マルコウストアの先のT字路も左(ややきつい上り坂)、徒歩約5分で道の左側。看板がありますが、一軒手前の3階建てマンションの陰に隠れてあまり目立たないので要注意。)

●指導者:サングラハ心理学研究所主幹・岡野守也

●参加費:一般2000円、会員1500円、学生・準学生1000円

●テキスト:『サングラハ実践の手引き』『サングラハ第78号』(『坐禅義』講義)。お持ちでない方には当日配布します。

●持参品:筆記用具、軽い運動のできる服装

●申込みは 
 サングラハ心理学研究所・岡野へ、E-mail: okano@smgrh. gr. jp 
 または Fax0466-86-1824で。
 住所・氏名・年齢・性別・職業・電話番号・メールアドレス(できるだけ自宅・携帯とも)を明記してください。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする