里山の野草と花木 宮城県北トレッキング

宮城県北部の山野を歩き回り、季節ごとの草花や果実を撮影し、その特徴や自生地の環境等について記録する。

クソニンジン マラリア特効薬

2017-02-19 | 日記
タイトルを入れる際に戸惑ってしまいますよ。
こんな汚名を植物の標準和名にするとは、明治の植物学者たちには社会性とか
文学的センスなどは無かったのだろうと、今更ながらに呆れてしまいます。
ヘクソカズラには多少の滑稽さがありますが、いきなり「クソ・・」とくるとは (>_<)

南三陸町の田束山頂からは車道経由で下山することにし、日当たりの良い沿道の、
草花や木の実を観察しながら、長い道のりを下って行きます。
しばらく下ると、山側法面の全面にヨモギらしき植物が群生しています。
明るい色の花穂が目立ってきましたから、「そろそろ秋の花粉症の季節か」などと呟き
ながら草姿や葉の形状を観察すると、ヨモギとは違う植物のようです。
葉がヨモギとは別物で、何となく外来種のブタクサに似ています。
この時点では正体が判りませんから、帰宅後に調べるしかないでしょう。




                             二枚とも2016.8.26撮影

草姿がヨモギに似ているので「ヨモギ属」だろうと見当を付け、ヨモギ属の植物を
検索で呼び出し、写真を見比べるという方法をとりました。
イヌヨモギ、イワヨモギ、カワラヨモギ、クソニンジン、ケショウヨモギ・・・
それで写真が合致したのが「クソニンジン」だったんですよ。
名の謂れは、全草に特有な悪臭があることと、葉がニンジンの葉に似ていることから。

このクソニンジンですが、中々の優れものでマラリア特効薬の原料なのだとか。
中国では黄花蒿と呼んで、全草を解熱薬として、結核性の熱や慢性の間歇熱、黄疸、
神経性熱病などの慢性熱病に用いられてきました。
近年、この植物から新たに坑マラリア活性を持つアルテミシニンと言われる化合物が見つ
かり、その誘導体がキニーネ耐性のマラリアにも有効であることが知られて、マラリアの
特効薬「アーテミシニン」として西アフリカなどの地域で使用されています。
これを開発したのが中国人女性化学者のトゥ・ヨウヨウ氏で、2015年ノーベル生理学・
医学賞を受賞しています。


                                 2016.8.26撮影

キク科ヨモギ属の一年草で、アジア~東ヨーロッパ原産の帰化植物。
古い時代に薬用として中国から渡来し、現在は北海道~九州に分布する。
道路法面や荒地に生え、草丈は1.5〜2m。近年は道路の法面緑化用種子に混じって
吹き付けられているようで、各地で増殖し、駆除の対象となっている地域もある。
全体に無毛で株元は木化し、多くの枝を分ける。若い枝は緑色だが、生長すると黄褐色。
茎葉は互生し、2~3回羽状深裂、裂片の先はやや尖る。上面は緑色で下面は黄緑色。
葉軸の両側には狭い翼があり、茎上部の葉は上に行くほど小さくなり、分裂も細かくなる。
葉を揉むと、ヨモギにラベンダーを加えたような特有の強い香りがあるものの、決して
糞臭のような悪臭ではない。英名スイートアニー(sweet Annie)もそれを裏付けている。
花期は8~10月で、茎や枝の上部に円錐状の花序を出し、花径1.2mmほどの小さな
黄緑色の頭花を無数に付ける。果実は痩果で長さ0.6mほど、冠毛は無い。


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