茨城県大洗町から神栖市までの海岸線、ここには南北60kmにわたり砂浜が続いていて、
その中間地点に鎮座する鹿島神宮に因んで、鹿島砂丘と呼ばれています。
単に渚に砂浜が続くのみならず、一段高い3~4mあたりにも砂地が広がっていたり、更
に高い5~6mあたりにも低木が茂る藪が広がっていたりします。
そのような構成から砂丘と呼ばれているのではないでしょうか。この砂丘地の一部には工
業港や大規模プラントが造成されているものの、それ以外の場所は広範囲に構造物の無い
砂浜が続くので、各種海浜植物が自生しています。
茨城県鉾田市、人気のない海水浴場の駐車場に車を置き、身支度を整えて砂丘を北へ向か
います。しばらく行くとハマヒルガオやハマニガナの間に、光沢のある濃緑色の葉をロゼ
ット状に広げた植物を見つけました。ロゼット状の葉の中心あたりには、セリ科の植物ら
しき白い複散形花序が付いています。たぶん、ハマボウフウでしょうね。
私が歩いた範囲には、20株ほど自生していました。
宮城県内の砂浜では採取や津波被害で絶えてしまったのか、全く見たことがありません。
三枚とも2024.6.5撮影
ハマボウフウは大都市圏の沿岸部に限らず、全国的に見ても自生地が減少しており、環境
省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
自然度の高い砂浜が減少しているのが最大の要因でしょうが、それ以外にも山野草好きな
人たちによる盗掘や、山菜としての採取などもあるようです。
ハマボウフウは癖が少ないので生でも食べられ、刺身のつまやサラダなどに利用されるよ
うです。また茹でたものは酢の物、おひたしなどにしても食べられているようです。
このように人気のある野菜ですから、埼玉県、茨城県、鳥取県、島根県などで盛んに栽培
されているようです。また根には薬効があって、生薬名が浜防風。
細かく刻んで乾燥させたものを煎じて飲用することで、かぜの発熱、頭痛、関節痛などに
効果があるとされます。
二枚とも2024.6.5撮影
セリ科ハマボウフウ属の多年草で、日本全土に分布する。草丈20~70cm。
海岸の砂地に自生する。根はゴボウ状の直根で、黄色を帯びて長い。
海風が吹き付けるため、砂地に張り付くようにロゼット状の根生葉を広げる。
葉は1〜2回3出羽状複葉で、長さ10~20cm、厚くて光沢がある。
小葉は長さ1.5〜6cmの倒卵状楕円形で不ぞろいの鋸歯がある。
茎の上部、花序、葉柄には長い軟毛がある。
花期は6~8月、茎の先に複散形花序をだし、白色の小さな花を密につける。
散形花序の直径は1~2cm、花序柄は長さ2~6 cm。複複散形花序の直径は10~15cm、
花は白色の5弁花。雄しべは5個で花糸は長く花冠から出る。葯は赤紫色。
雌しべは2個で、柱頭は少し内曲する。
果実は広楕円形の分果、果皮はコルク状に肥厚し、側隆条は張り出す。
コルク状の果皮は水に浮かび、潮流に乗って散布される。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます