なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

肺癌の転移・播種

2024年11月14日 | 呼吸器疾患

 11月12日(火)の午後にCVカテーテル挿入のために放射線科に行った。ちょうど造影CTを行っていて、肝臓内に多発性腫瘤(転移)があった。

 内科外来からのオーダーかと思ったが、市内のクリニックからの造影CT依頼だった。画像だけの依頼なので、撮影後は画像をCDに入れて依頼先にお返しするだけになる。

 患者さんは70歳代半ばの男性で、依頼内容は「最近胸が苦しいという訴えで胸部X線検査を行った。胸水貯留と左横隔膜挙上を認める。左上腹部腫瘍の疑いがある。」というものだった。

 当院では胸部単純X線を行っていない。通常のX線撮影でどこまでわかるかだが、CT画像から推定すると、良く見れば左肺門の腫瘤が指摘できるかもしれない。左胸水貯留からは通常は肺炎・胸膜炎を疑うところだが、発熱がないことから悪性腫瘍を疑ったということらしい。

 造影CTの結果は、「左肺門部癌があり、胸膜播種・胸水貯留・多発性肝転移を認める」だった。放射線科の読影レポートは遠隔診断で数日かかるが、その日は週1回放射線科医が病院で直接読影する日に当たっていて翌日には読影レポートがFAXで送られた。

 おそらく地域の基幹病院かがんセンターに紹介となるのだろう。年齢を考慮すると一度は高次医療機関に紹介しなければならない。当院には緩和ケアとなったところで紹介されてくるかもしれない。

 

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COPDの肺炎

2024年11月11日 | 呼吸器疾患

 11月10日(日)は日直だった。休日当番医の内科医院から肺炎の患者さんの入院治療を依頼された。

 60歳代半ばの男性で、高血圧症で別の内科クリニックに高血圧症・高尿酸血症で通院している。11月4日から微熱と倦怠感があり、11月8日にそのクリニックを受診した。コロナの迅速検査は陰性で、胸部X線検査を受けて肺炎といわれたそうだ。

 抗菌薬の点滴と内服薬で治療が開始された。そこの先生は外来での抗菌薬はメロペネムを使用するので有名だった。内服薬はレボフロキサシンだった(COPDとしては適切)。

 11月11日解熱して食欲も良好だが、労作時の息切れがあり、当番医を受診したという経緯だった。酸素飽和度は92%(室内気)と低下している。

 胸部X線・CTで確認すると両側肺野に気腫性変化があり、主に右肺炎だが左肺炎もあった。

 20歳から50歳代まで30年の喫煙歴があり、ふだんでも坂道などでは息切れを感じているという。これまで別の病院で慢性閉塞性肺疾患(COPD)といわれたことがある。要するにCOPDの肺炎による増悪だった。

 酸素吸入(2L/分)と抗菌薬(セフトリアキソン)を開始した。肺炎像からは非区域性の病変で、肺炎球菌肺炎が疑われる。

 

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4か月ぶりの救急搬入~COPD

2024年11月07日 | 呼吸器疾患

 7月から受診を中断していたCOPDの70歳代半ばの男性は、11月2日(土)に救急搬入されていた。日当直で来てもらっている外科医(大学病院からのバイト)が受けて、その日内科当番だった別の先生の担当になっていた。

 昨年9月にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の増悪で入院した。それも妻の説得によってしぶしぶの入院だった。入院した日から退院したいと主張して、結局1週間もしないうちに退院してしまった。入院すると喫煙できないのも我慢できなかったらしい。

 その後は外来通院していたが、妻も同じに外来に来るので、仕方なく来るという形だった。診察室に入って来てもすぐに出て行こうとする。

 妻も気管支喘息(ACO)・心房細動・心不全で通院いている。心房細動・心不全となった時に入院を勧めたが拒否して、やむなく数日連続の外来治療となった方だった。

 

 今年の1月に突然の呼吸困難があったが、それでも翌日になってから(症状が続くのでやむなく)受診した。COPDの増悪にしては変だと思ったら、右気胸だった。胸腔ドレーンで吸引しただけでは難しく、胸膜癒着術を要すると見込まれたので、地域の基幹病院呼吸器内科に搬送した。

 無事軽快退院してきて、また診察室に1分もいないという受診が続いていた。その後、7月からは妻にいわれても受診しなくなった。それでも妻が処方薬だけ(内服と吸入薬)もらっていくと、継続はしていたようだ。

 

 動けなくなってきている、食事摂取が少ないが飲酒だけは続けている、と妻から報告があった。病院を受診すること、また以前から勧めていたの在宅酸素の導入が好ましいこと、などを伝えてもらったがまったく応じなかった。

 今回はまったく動けなくなって、妻が救急要請して搬入となった。拒否する力もなかったのだろう。検査で脱水症と低カリウム血症を認めた。明らかな肺炎像はないが炎症反応上昇があり、気道感染によるCOPDの増悪もある。

 入院後に治療で回復はしているが、廃用が進んでいる。

 

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この肺炎は何か

2024年11月06日 | 呼吸器疾患

 またよくわからない肺炎の患者さんが入院していた。40歳代後半の男性で、肺炎の原因が不明だった。

 10月7日から咽頭痛と咳・痰があった。10月12日に咳がひどくなって地域の内科医院を受診した。15日には胸部X線検査を受けて、肺炎はないといわれている。

 10月20日から脱力感・ふらつきがあった。10月23日に受診して、その時には肺炎らしいといわれて点滴を受けたそうだ。血液検査では白血球17800・CRP3.17と炎症反応が上昇していた。(検査結果を渡されたもの)

 ずっと以前に弟が当院でマイコプラズマ肺炎と診断されたことを思い出して(小児期)、症状が似ているということで10月27日(日)の夜間に当院の救急外来を受診した。(住所は当市の3つ隣の町)

 当直だった内科医が画像検査を行うと、左下葉に肺炎像を認めた。週明けの翌日月曜に内科外来を受診してもらうことにしていた。(時間外は簡易検査・特定の迅速検査しかできない)

 その先生が当直明けの月曜日に検査を行った。肺炎マイコプラズマのPCR検査は陰性だった。白血球5400・CRP0.4と内科医院の検査結果よりは軽快していた。発熱はなく、経過中も微熱はあったかもしれないが、自覚的には発熱なしだった。

 症状が辛いのもあるが、入院しないと会社に休みをもらえないということで、入院になった。

 マイコプラズマの検査が陰性で(PCRも100%ではないが)、合わない点(白血球増加)もあるが、マイコプラズマは否定できないと考えたようだ。炎症反応的には治癒に近いが、セフトリアキソン点滴静注とミノマイシン内服を開始していた。

 10月31日に呼吸器外来に来てもらっているいつもの先生に相談された。肺陰影からはマイコプラズマあるいはコロナが考えられるとしていた。トータルにはマイコプラズマかという判断だった。

 症状に対してはプレドニゾロンの短期使用もあるとされ、30mg/日から漸減してはという見解だった。実際は20mg/日から開始された。胸部CT再検では陰影は軽減している。

 その後まだ咳は続くが、前よりは軽減してということで本日退院となっていた。プレドニンの漸減もあり、外来予約となっていた。

 行うとすると古典的な?マイコプラズマの抗体価の変化になるか。PCR検査で出てくれるとわかりやすいのだが。

 

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肺炎は肺炎

2024年11月03日 | 呼吸器疾患

 10月30日(水)に60歳代後半の女性が咳・痰で受診した。発熱・咳で発症していたが、すでに解熱していた。

 10月26日(土)に前日から発熱・咳があるとして救急外来を受診した。日直は消化器科医だった。

 胸部X線でははっきりしないが、胸部CTで見ると両側の上肺野に斑状影が散在していた。血液検査はしていない。軽度肺炎としてアジスロマイシン内服を処方していた。

 アジスロマイシンはマイコプラズマが流行しているからかと思ったが、そうではなかった。世話をしている孫2人が風邪症状があり、そのうち1人は肺炎といわれたという。それでマイコプラズマを想定したようだ。

 28日には解熱したが、咳・痰が続き食欲もあまりないので、30日に受診していた。血液検査をするので、点滴も1本入れた(採血→点滴と同時にできるので)。

 結果は白血球4500・CRP1.5とごく軽度の炎症反応上昇があった。マイコプラズマのPCR検査は陰性。26日の受診時はもっと高かったのかもしれない。鎮咳剤・去痰薬を1週間分追加して経過をみてもらうことにした。

 

 実はこの方は、10月21日に腰痛と右側腹部痛で内科外来を受診していた。整形外科か内科か迷ったそうだ。腹部の所見は有意なものはなかった。

 胸腰椎の骨条件も見たいので、胸腹部CTで確認していた。特にこれといった所見はなかった。その時点で肺に異常はまったくない。腎臓も含めて内臓の疾患はないのと、体動時痛なのでアセトアミノフェンで経過をみて、後日整形外科受診としていた。(内科の検査が終わった時には整形外科の外来が終わっていた)

 1週間後に予約を入れたが、肺炎球菌尿中抗原も検査した方がよかったか。孫からマイコプラズマがうつったが、検査は偽陰性?。

 

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肺炎の陰影?

2024年11月02日 | 呼吸器疾患

 糖尿病で通院している50歳代半ばの女性が、健診の胸部X線で二次検査になって受診した。右肺下肺野に浸潤影とあった。紙の画像コピーだが、はっきるわかるくらいの陰影だった。

 この患者さんは8月22日にデイサービスで発熱を指摘されて、内科外来を受診した。呼吸器症状は自覚していなかった。新患担当の内科の若い先生が担当した。胸部X線・CTで右上葉に浸潤影を認めた。

 白血球18300・CRP5.2と炎症反応の上昇もあった。担当医は抗菌薬としてアジスロマイシンを処方していた。マイコプラズマ肺炎ではなさそうで(検査はしていない)、症状が続いて再受診するかと思ったが、順調に軽快した。

 9月11日再受診時には症状は消失して、白血球6000・CRP0.2と正常化していた。胸部X線で右上葉の陰影は消失して治癒したものと判断したようだ。

 後から胸部X線を見返すと、以前の胸部X線(年1回の健診)と比較して右下葉に陰影があるように見える。今回の院外の健診は9月26日で、指摘された陰影はこの時の陰影が進行したものだろうか。

 

 呼吸器症状はないが、胸部X線健診での二次検査なので、胸部CTで確認した。すると、指摘された部位に異常遺影はなく、両側肺全体に異常所見はない。

 後で放射線科の読影レポートを確認するが、呼吸器科外来に来てもらっている先生にも相談することにした。

 

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急性肺炎

2024年10月31日 | 呼吸器疾患

 10月29日(火)の午前8時過ぎに車で病院に来ると、ちょうど救急車が搬入されるところだった。前日の当直は整形外科医で、転倒・骨折なのかと思ったが、後で確認すると肺炎だった。

 患者さんは当院に血液透析で通院している70歳代前半の男性だった。朝に入浴したところ脱力で動けないという訴えでの救急要請だった。体温が38.5℃で(入浴後だが)、酸素飽和度も低下して酸素吸入(3L/分)で飽和度95%になっていた。

 肺炎疑いで胸部X線・CTが行われて、右中葉下葉にまたがる肺炎像があった。非区域性分布だと肺炎球菌肺炎が疑われる。

 午前8時前の救急搬入要請で、検査しているうちに内科医も透析医も出勤して来るので、受けやすい時間帯ではあった。透析医に引き継がれて入院となった。透析日だったので、透析終了後の入院・抗菌薬投与になった。

 

 透析後は血圧が変動しやすく、針跡からの細菌感染(シャント感染)を防ぐために、透析後の入浴はしないことになっている。(どうしてもの時も、シャワー浴程度に留める)

 透析前の朝風呂というのは指導の想定外なのかもしれない。患者さんとしては、透析後はできないので、透析前に入浴するということなのか。透析時の血圧変動に影響する可能性があると思われるが。

 

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肺炎の本

2024年10月30日 | 呼吸器疾患

 「診療所で診る市中肺炎」藤田次郎著(日本医事新報社)は、140ページの薄い本の中に肺炎診療をまとめている。日本医事新報社なので「診療所で診る」となっているが、「病院で診る」にも参考になる。

 画像は足りないし(胸部X線や胸部CTの本で補えばよい)、治療についても詳しくは記載していないが(治療メインの本ではない)、肺炎全体をおおざっぱに理解するにはいいと思う。

診療所で診る市中肺炎

 

 非専門医が見やすい肺炎そのものの本というのは意外に少ない。「肺炎診療」青島正大著(羊土社)、「jmed 60 最新侮れない肺炎に立ち向かう!」山本舜悟編著(日本医事新報社)、「亀田流 市中肺炎診療レクチャー」黒田浩一著(中外医学社)くらいしか思い当たらない。

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 患者数からみれば肺炎は圧倒的に多い疾患なので、もっと呼吸器内科の専門医が競って出してもいいと思う。

 「成人肺炎診療ガイドライン2024年」は会員限定で(購入は可)、呼吸器学会はclosedなのだった。循環器病学会のガイドラインは誰でも見られる。

 

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誤嚥性肺炎

2024年10月28日 | 呼吸器疾患

 10月24日(木)は皮膚科の先生が当直で、内科当番は当方だった。午後10時過ぎに連絡がきた。

 90歳代の男性が自宅で転倒して、前額部の切創と鼻出血で救急搬入されていた。軽度の外傷と思って受けたそうだ。

 搬入されると発熱と酸素飽和度の低下があり、胸部CTで両側肺炎があった。酸素吸入4L/分で酸素飽和度は94~95%になっているが、抗菌薬はスルバシリン(ABPC/SBT)でいいでしょうかという。点滴と抗菌薬の入力をお願いして、内科で入院にしてもらった。

 

 翌日に出勤して病棟に診に行った。酸素吸入3L/分で酸素飽和度は96~98%になっていた。開眼していて簡単な会話はできるようだ。同じく90歳代の妻と2人暮らしで、室内は何とか歩行器(シルバーカー)を使ってトイレまで行けるくらいのADLだった。

 聴覚言語療法士(ST)に嚥下評価をお願いしたが、少しむせるようで、来週また評価します、となった。(朝食が全粥刻み食で出されて、むせったのでやめたていた)

 介護保険申請はしていたが、要支援2ということだった。それだと認知症がなくて、ADLほとんど自立になるが、別居の家族は再申請をしようとしていたらしい。

 

 転倒して外傷として救急搬入される高齢者が最近目立つ。救急隊は軽度の外傷として搬入依頼してくるが、来て見ると発熱・酸素飽和度低下があって、転倒は感染症による体調不良の結果だったというパターンだ。

 救急隊としては軽度外傷は搬入依頼をしやすいかもしれない。救急車収容時には外傷が結果であることには気づいているのだろう。

 発熱・酸素飽和度低下といわれとる、皮膚科医は受けないこともある。翌朝の通常業務開始に近い時間帯だと(午前7時~8時半)、検査しているうちに内科が出勤して来るので受けているようだ。

 

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マイコプラズマ肺炎のマクロライド耐性

2024年10月26日 | 呼吸器疾患

 2011~2012年の肺炎マイコプラズマの流行時には8割がマクロライド耐性だったが、その後は耐性率は低下しているそうだ。

(ほとんど忘れていたが、当方が感染症学会・化学療法学会に行っていた時期で、確かにマイコプラズマのマクロライド耐性のセッションがあった。)

 肺炎マイコプラズマはP1タンパク遺伝子の違いで、1型と2型があり、1型はマクロライド耐性遺伝子の保有率が高く、2型は耐性遺伝子保有率が低い。流行時は1型が多かったが、その後は2型が多くなったので、マクロライド耐性株の比率が低下した主因ということだった。なるほど。

 基本的に治療薬の第1選択はマクロライドで、アジスロマイシン(ジスロマック®)500mg1日1回を3日間あるいは2g/日を1日1回だけになる。クラリスロマイシンは200mgを1日2回朝夕になる。

 48~72時間で解熱しなければ、テトラサイクリン系のミノサイクリン(ミノマイシン®)1回100mgを1日2回、またはキノロン系のたとえばレボフロキサシン(クラビット®)500mg1日1回になる。投与日数はアジスロマイシン以外は7~10日間。

 マイコプラズマ学会から「肺炎マイコプラズマ肺炎の治療指針」2017年が出ていて閲覧できる。

 

 キノロンはマイコプラズマに耐性を誘導しやすい。テトラサイクリン系はマイコプラズマに対する耐性誘導が起こりにくい。

 テトラサイクリン系の使用経験のある実地臨床医は少なく、臨床研究も少なくエビデンスに乏しい、とある。当方は昔の医者なので、マイコプラズマ肺炎にミノマイシンは使い慣れていて効果も実感している。

 

 下の図はCareNetの倉原優先生の記事に載っていた。

 

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