なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

CareNeTV GLP-1受容体作動薬

2023年12月18日 | CVC

 もっぱらデュラグルチドを使用していた。セマグルチドはほとんど使用していないが、今後は使用例を増やしたい。

 

プライマリ・ケアの疑問
Dr.前野のスペシャリストにQ
糖尿病アップデート編 岩岡秀明先生

第4回 GLP-1受容体作動薬

GLP-1受容体作動薬
▸注射薬
・1~2回/日、皮下注
・1回/週、注射薬
血糖降下作用はDPP4阻害薬よりも強い(HbA1c1.5~2.0%)
体重減少作用
・副作用
  ごくまれに急性膵炎
  胆石症胆嚢炎胆管炎には注意

GLP-1受容体作動薬の分類
▸ヒトGLP-1由来製剤
心血管イベントを有意に抑制するエビデンスがある
デュラグルチド(トルリシティ)1回/週
リラグルチド(ビクトーザ)1回/日
セマグルチド(オゼンピック)1回/週
▸Exendin-4(トカゲの毒)由来製剤
心血管イベントを抑制するエビデンスがない→使用されない
・エキセナチド(バイエッタ)
・リキシセナチド(リスキミア)

▸ヒトGLP-1由来製剤
心血管イベントを有意に抑制するエビデンスがある
・リラグルチド(ビクトーザ)1回/日
→LEADER試験(2016)n=9340
・セマグルチド(オゼンピック)1回/週
→SUSTAIN-6試験(2016)n=3297
・デュラグルチド(トルリシティ)1回/週
→REWIND試験(2019)n=9901

セマグルチド週1回皮下注の投与量
開始用量0.25mg4週間→維持用量0.5㎎4週間以上→治療の強化0.5㎎または1.0mg個々の状態に合わせて
消化器症状が出現する場合は増量しない(悪心・嘔吐、腹痛、下痢)

注射を忘れた場合
▸次の注射予定日まで48時間以上の場合
・気づいた時点ですぐに忘れた分を打つ
・その後はあらかじめ決められた指に注射する
▸次の注射予定日まで48時間未満の場合
・忘れた分は打たずに、次の投与予定日に1回分を打つ
▸倍の量を投与するなどは行わない

経口セマグリチド(リベルサス)
 MACEは非常劣性心血管死・総死亡は約50%減少
 PIONEER6試験 n=3138
  ※MACE:心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中
 経口セマグルチドに含まれる吸収促進剤(SNAC)
  胃液中の蛋白質分解酵素活性を抑制し胃粘膜でのセマグルチド吸収を促進する
 使用方法
  開始量量
   1日1回3mgから開始
  維持用量
   4週間以上投与した後、1日1回7㎎に増量
  治療の強化
   1日1回7㎎を4週間以上投与しても効果不十分な場合には1日1回14㎎に増量することができる
 注意点
  1日の最初の食事・飲水前空腹の状態で
  120ml以下の水とともに服用
  服用後少なくとも30分は飲食・ほかの薬剤の経口摂取を避ける
 経口セマグリチド
  2型糖尿病であれば腎機能障害、肝機能障害、65歳以上であっても使用できる

注射薬の使い分け
▸基本的に心血管イベントを抑制するエビデンスがある
 →週1回製剤を選択する
若年~中年までの肥満型患者
 →注射セマグルチド(血糖降下作用と体重減少作用が強い)
高齢で肥満がない患者
 →注射デュラグルチド(血糖降下作用は中等度で体重をほとんど減らさない)
減量が必要な肥満の患者で、かつ注射薬の導入が難しい場合                               経口セマグルチド
 ※服用方法を遵守できる患者に限る

肥満症治療薬としてのセマグリチド(ウゴービ)
・2023年1月承認、11月薬価収載
・2型糖尿病治療薬のオゼンピックと同じ成分
・最大量2.4mg(オゼンピックの2倍以上)
※米国では2021年6月に承認
 STEP6試験
 ▸対象
  日本人を中心とした東アジアの肥満症患者401例(年齢51歳、体重87.5kg、BMI31.9kg/㎡)
 ▸結果
  68週時のプレセボ群の体重減少は2.1%
 セマグルチド2.4mg/週の投与群は13.2%
 高度肥満への治療効果が期待できるが、まだ専門医が注意して使用する段階

チルゼパチド
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(マンジャロ)
 GLP-1、GIP同時に作用する週1回皮下注
 SURPASS試験
  メトホルミンに追加した際のチルゼパチドによる血糖降下および体重減少
 ▸対象
  メトホルミン単剤療法(1500mg/日以上)で効果不十分な2型糖尿病患者1878例(年齢56.6歳、HbA1c8.28%、体重93.7kg、BMI34.2kg/㎡)
 投与40週時
  HbA1c2.30%低下
  体重11.2Kg減少
  専門医が使う薬

 

Dr.前野のここがポイント
GLP-1受容体作動薬の使い方

心血管イベントを有意に抑制するGLP-1受容体作動薬
セマグルチド
 →肥満のある若年~中年
デュラグルチド
 →肥満がない高齢者

経口セマグリチド
・減量が必要な肥満患者で注射薬の導入が難しい場合に使用する
・飲み方には注意が必要

持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドは現時点ではまだプライマリケアで使う薬ではない

 

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大腿静脈穿刺mid thighアプローチ

2023年11月06日 | CVC

 jmed 88 「エコーガイド下CVC完全マスター」渡部修著(日本医事新報社)を購入した。他にもCVCの本は持っているが、単著なので分かりやすく、さまざまな工夫が記載してあるので購入した。

 下記のmid thighアプローチを今度やってみようと思う。

 

 感染対策上、大腿静脈からはできるだけCVカテーテルを挿入しないことが推奨されているが、様々な理由で選択せざるをえない状況がある。

 大腿静脈穿刺は簡単な穿刺とみなされているが、動脈穿刺と血腫の頻度が他の穿刺部位と比べて高い

 それは2点で誤認しているためだという。

 1点目は、大腿動脈のすぐ内側に大腿静脈は位置して、大腿静脈は鼠径部から末梢まで並走している、という誤認。2点目は、最適な穿刺点は鼠径靭帯から2~3横指尾側、という誤認。(鼠経溝が正しい)

 鼠径溝付近では大腿動脈のすぐ内側に接して大腿静脈は並走しているが、そこから末梢へ進むにつれて、大腿静脈は大腿動脈の裏側に入り込み、大腿動脈と大腿深動脈の間を抜けて、さらに大腿静脈よりも外側に出て走行している。

 要するに、大腿動静脈は交差している

 この交差を逆手にとった、mid thighアプローチがある。大腿静脈が大腿動脈の外側に出たところを穿刺する手法だ。

 これだと穿刺部位がオムツの外になるので、感染防御の点で鼠径部より有利になる可能性がある(データはない)。ただ通常のCVカテーテルを挿入すると、先端が下大静脈まで届かず、最大でも総腸骨動脈レベルにとどまる可能性が高い。(PICCを留置することも選択肢になる)

 ただこのアプローチだと、静脈は細くなり、より深部を走行している。プレスキャンでよく見て、できそうな症例から試していくのがいいのだろう。

 

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