今日の日直は循環器科の若い先生だったが、高熱と嘔吐でできないと昨夜連絡が来た。代わりに日直となったが、もともと学会出張明けで内科の当番でもあるので、昼前に病院に来て、そのまま泊まることにしていた。
救急車は3台搬入された。一人は高血圧症で内科医院に通院している68歳男性だった。体調不良なのに、農作業をしようとしてビニールハウス内で倒れたそうだ、救急隊到着時に酸素飽和度が70%に低下していたが、酸素吸入3L/分で93~4%になった。1週間前から発熱・咳・痰が続いていて、肺炎だろうと予想された。昨日かかりつけの内科医院を受診して、インフルエンザと診断されたという(処方はイナビル吸入らしい)。日曜で問い合わせができないので、当院でも検査するとインフルエンザA型だった。1週間前にインフルエンザの孫を預けられたというので、うつったのだろう。胸部の聴診でrhonchiが聴取された。1日20本の喫煙者でCOPDが疑われた。痰を出してもらうと、黄色(黄土色)の痰が出た。
胸部X線・CTで右中葉を中心に右上葉・下葉にも散布する陰影を認めた。白血球数4000、CRP30。肝機能障害とCK上昇、腎機能障害がある。ベースの値がわからないが、今回の病気によるのだろう。尿中抗原は肺炎球菌が陽性、レジオネラは陰性だった。インフルエンザ自体の肺炎やレジオネラ肺炎も気になるが、搬入後は案外元気にしゃべっているので、まずは当院で入院治療を開始することにした(改善しなければ転送も考慮する)。
もう一人は、発熱で身体の脱力で動けなくなった71歳男性で、当院の循環器科に高血圧症・虚血性心疾患で通院している。年齢の割には整形外科的にな問題でもともと動きが悪いそうだ。搬入時は体温39℃。インフルエンザ迅速試験でB型陽性と出た。胸部X線で肺炎はなく、もともと排尿障害があるので、尿路感染症の併発を疑ったが、はっきりしなかった。ラピアクタ点滴静注と点滴に、セフトリアキソン1gの点滴静注も数日使用して経過を見ることにした。
三人目は38歳男性でインスリン注射をした後に、意識が朦朧とした。低血糖とすぐわかる。救急隊員に血糖が測定できますかと訊くと、測定できる隊員はいなかった。5分もかからず病院に来れるというので、そのまま来てもらった。搬入時、呼びかけても開眼せず、両手を動かしていた。血糖は19mg/dl(血清の生化学検査では28mg/dl)。すぐに5%グルコース入りの点滴を開始して、50%グルコースを静注すると、意識は戻った。1型糖尿病で、ヒューマログ毎食直前とランラス就寝前のインスリン強化療法としている。HbA1c6.5%とすばらしい血糖コントロールだった。主治医は糖尿病センターのある病院の高名な先生で、当地域で糖尿病の講演会にお招きしたことがある(その時は座長を務めた)。
低血糖はほとんど起こしていないそうだ。今日は昼食前にインスリン注射をした直後に仕事が入って、それを30分していて低血糖になった。それはなるでしょう。すっかり症状がとれて、職場の同僚(患者さんはトヨタの販売店の整備士)が昼食の弁当も持ってきていたので、点滴ルームに移って食べてもらった。2時間後に血糖測定して180くらいだった。今回はたまたま食事をとるのが遅れただけなので、夕食からは通常通りの治療をしてもらうことにした。超速効型は10分で効き始めるので、食事が目の前にある状態で注射することや、場合によっては食食後に打ってもいいことを改めて説明した。