なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

Pasteurella multocida

2018年10月31日 | Weblog

 昨日のASTでPasteurella multocidaが検出されたという報告があった。先々週の日曜日で、その日は内科日直で出ていた日だが、外科日直の先生が、猫に右手を咬まれた62歳男性を診察していた。

 猫に咬まれたのは前日で、受診した時には右手が発赤腫脹して前腕にまで及んでいた。直接咬まれた部位は悪臭の膿が出ていた。外科医は創部の培養を提出して、局麻後に切開排膿・コメガーゼ挿入を行った。抗菌薬の点滴静注と破傷風トキソイドの投与をしていた。抗菌薬内服はオーグメンチンが3日分処方された。

 翌日の月曜日は創部処置に来て、悪化はなくそのまま外来治療となった。翌々日(大学病院のバイト医担当)には手・前腕の発赤は軽減していた。セフトリアキソン1gの点滴静注も3日間していたが、その後の抗菌薬内服はケフラールが7日分処方された。1週間後の昨日も外来を受診して、発赤は軽快消失して、治療は終了となった。

 「プラチナマニュアル」によれば、治療は以下の通り。Pasteurella multocidaはペニシリンに感受性があるが、口腔内嫌気性菌と混合感染があり、咬傷や軟部組織感染症でβラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンのAMPC/CVA、ABPC/SBTを用いる。ペニシリンアレルギーではMINOやST合剤、キノロン系。蜂窩織炎によく使用される第一世代セフェムやCLDMが無効であることに注意。

 青木眞先生の本を見ると、第二世代・第三世代セフェムは代替薬になるので、少なくとも単独菌では効果がある。

 外科医は猫咬傷でのPasteurella multocidaは考えていなかったようで、菌種の報告には何を使えばいいんだと言っていた。先生正解です。

 

 

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5-ASA製剤

2018年10月30日 | Weblog

 今日は胆管癌で経過をみている82歳男性が入院になった。7月に地域の基幹病院腫瘍内科から紹介されていた。消化器内科で胆道ステント挿入(入れ替えも)を行って、一時的に癌化学療法も行ったが、その後緩和ケアのみとなった。

 胆管炎を繰り返していて、先月は入院したが、何とか退院できた。外来で抗菌薬内服でやっていたが、炎症反応上昇・断続的な発熱が続いていた。黄疸も進行している。奥さんには退院できないかもしれないと説明した。奥さんは抗精神薬で夜間せん妄がなくなったことを喜んでいた。癌に関してはそろそろダメですかねえと淡々と話していた。

 

 消化器科医は、外来日ではないが外来で診療していた。2年前から潰瘍性大腸炎で外来治療をしている49歳男性が腰痛・背部痛で受診していた。血便もあって、潰瘍性大腸炎自体が悪化しているようだ。炎症性腸疾患関連の脊椎炎を疑っていた。炎症反応が上昇していて、化膿脊椎炎も否定できないとして血液培養2セットと提出している。この患者さんは最新のリアルダ錠4800mg/日を内服していた。

 潰瘍性大腸炎(一部クローン病)の基本治療に5-ASA製剤(5-アミノサルチル酸=一般名メサラジン)が使用される。5-ASA製剤には、サラゾピリン・ペンタサ・アサコール・リアルダがある。

 サラゾピリンを使用していた古い世代だが、今は使用されないだろう。サラゾピリンは5-ASA製剤にサラゾスルファピリジンが結合していて、これが大腸で切断されて5-ASA製剤が大腸病変に効く。

 ペンタサは時間依存性5-ASA製剤徐放剤で、小腸上部から大腸にかけて効く。遠位大腸まで到達する量が少なくなるので、ペンタサ注腸や坐薬の局所製剤で補う必要がある(こともある)。

 アサコールはpH依存性5-ASA製剤で、回腸末端から遠位大腸まで効くので、局所製剤を使わなくて済む。ただし溶けずに肛門から出てしまうこともあるそうだ。

 リアルダは5-ASA製剤が大腸全域に持続的に放出される放出制御製剤ということだ。服薬回数も1日1回なので他剤と比べて服薬コンプライアンスが良い(ただし1錠1200mgを4錠内服)。

 このうち小腸~大腸で効くペンアサだけがクローン病の適応がある(まあ当然そうだろう)。

 当方は今たまたま潰瘍性大腸炎の患者さん(高齢者)にペンタサを処方しているが、ほとんどUCの患者さんは診なくなった。昔は、5-ASA製剤単独か比較的少量のプレドニンで軽快する患者さんはちょっとだけ診ていた。専門医が診るべき疾患なので、今は基本的に全部紹介している。UCの治療は、ステロイド・免疫抑制剤・抗TNFα抗体製剤・血球成分除去療法と難しくてもうわからない。

 

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時間差?

2018年10月29日 | Weblog

 昨日の日曜日の朝に、内科日直の先生(外部の先生のバイト)から連絡が来た。82歳男性が脱力を訴えて(その後改善)受診したが、喘鳴が聴取されるという。蜂に刺されてからだった。

 吸気時喘鳴なのでStridorで、上気道狭窄だった。聴診器を使わなくても聴取されるくらいの音と表現された。発疹は出ていないらしい。デカドロンを点滴静注していた。休日に耳鼻咽喉科で診てもらえるところは大学病院くらいしかなかった。大学病院に搬送してもらうことにした。

 午後の早い時間にまた連絡が来て、大学病院で診てもらった結果、特に緊急性を要する状態ではないと帰宅となっていた。喘鳴は消失していた。デカドロンが効いたのだろう。経過をみるのに入院させたいが、老夫婦の二人暮らしで、妻はひとりで生活できないので、社会的入院で2人いっしょではという。特に問題がないのでそれで了解した。

 その日は内科当番なので、急ぐことがなければ午後から病院に行って、そのまま泊まって待機する予定だった。病院に来るとその老夫婦は帰宅になっていた。奥さんが入院はいやだと言って帰りましたという。月曜日にまた受診することになっていた。

 今日その患者さんが受診したので、経緯を訊いた。金曜日に左手掌を蜂に刺された。黒っぽい蜂だったというが、スズメバチかどうかはわからない。刺されて部位がちょっと腫れたので、市販のムヒを塗っていた。日曜日の朝に刺された部位が腫れて、手掌全体に広がった。それと同時に喘鳴が始まったそうだ。

 呼吸困難ではなく、身体がだるいいう訴えで当院を受診したのだった。肥満があり、睡眠時無呼吸がありそうな体型だが、普段喘鳴はない。大学病院に行った時は喘鳴は消失していた。当院を受診した際に、横臥させてCTを撮影していた。呼吸が苦しくならなかったか訊いたが、大丈夫だったそうだ。喉頭蓋の腫脹はなく、あるとすれば声門浮腫だった。今日は症状がなくなっていて、嗄声ともいえなかった。抗アレルギー薬を3日分処方して経過を診てもらうことにした。

 それにしても2日後に悪化したという、この時間差は何だろうか。二相性の変化がちょっと遅れて発症したということ?。このバイトの先生は1年弱毎月来ていたが、今月までと急に連絡が来ていた。どこかもっと楽なバイト先を見つけたのだろう。

 

 「日本史のミカタ」が面白いので繰り返し読んでいる。現在でも位階は残っていて、叙勲後に正・従何位という位階がもらえるそうだ。総理大臣になると正あるいは従二位になるが、中曽根康弘元総理大臣は従一位と高位。

日本史のミカタ (祥伝社新書)

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本当のPBC

2018年10月28日 | Weblog

 火曜日に大学病院から非代償性肝硬変・肝細胞癌・肝不全/肝性脳症の65歳女性が転院してきた。肝疾患は原発性胆汁性胆管炎で、無症候性が多いので病名は変ったが、この方は本当の原発性胆汁性肝硬変だった。

 20年以上前から治療していて、ウルソ以外にベザフィブラート、ステロイド、さらには免疫抑制剤も使用されたが、効果はなかった。何度も発生してくる肝細胞癌に対しても、内科的治療が繰り返して行われていた。

 生体肝移植の予定が立てられていた。ドナーの息子さんの移植に使う肝臓が小さいという問題、病状が悪化して移植のための免疫抑制剤に耐えられないという問題もあったが、最終的には患者さん本人が移植はしないと決断したそうだ。

 当地域に居住しているので、終末期を付き添いのしやすい当院で過ごしたいと家族が希望された。連絡が来た時点で血清ビリルビンが20mg/dl。大学病院では、予後1カ月で急変もありうると言われての転院だった。転院した時点でとても1か月もつとは見えず、そのまま大学病院にいたほうがよかったのではと思われた。

 転院の時点で血清ビリルビン26mg/dlで全身浮腫があった。転院した日に昼食を少しだけ食べたが、夕食からは食事が取れなかった。全身浮腫で末梢からの点滴は不可能なので、翌日CVカテーテルを挿入した。腹痛・苦悶の表情があり、オピオイドを極く少量使用して、苦しそうな表情は柔らかくなった。結局土曜日に亡くなられたので、当院の入院は5日間と短かかった。

 

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腰椎穿刺

2018年10月27日 | Weblog

 水曜日に、内科外来の看護師さん(35歳女性)のことで、その日内科新患を診ていた内科の若い先生(地域医療で来ている専攻医)から相談された。

 日曜日に頭痛があり、月曜日から発熱(38℃以上)が出現した。月曜日の内科新患の先生(大学病院から出張=バイト)からアセトアミノフェンの処方を受けている。頭痛・嘔気・発熱が続き、食欲不振で水曜日にも外来を受診したのだった。

 項部硬直はないが、jolt accectuationは陽性。白血球数は正常域(減少気味)でCRPが4.0だった。意識は清明。外来処置室で点滴を受けていて、さすがにぐったりしている。小さな子供はいるが、症状がつらいので入院したいという。

 ウイルス性髄膜炎疑いだがどうしましょうかという相談だった。神経内科医もいたので、相談すると、やりましょうということになった。若い先生が自分でしますという。

 他の外来患者さんの検査結果を見るというので少し時間がかかる。その前に頭部CTと思ったが、妊娠していませんとはいうが、頭部MRIにした(異常なし)。髄液検査ではリンパ球有意の細胞を認めた。

 入院して点滴とアセトアミノフェンの点滴を受けていたが、金曜には解熱して食事摂取もできるようになった。それにしても、若い先生が腰椎穿刺は100回はやってますから、というのには驚いた。神経内科志望とはいえ、初期研修でそんなに実施するもの?。医療センターの初期研修はすごい。

 

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気管支喘息

2018年10月26日 | Weblog

 日曜日の日直の時に40歳女性が気管支喘息発作で救急外来を受診した。1年前に気管支喘息発作で入院した時に担当した方だった。普段は近くの内科小児科クリニック(内科医と小児科医の夫婦)に通院していて、退院時は診療情報提供書を出していた。

 ふだんの発作の時はクリニックで点綴をしていた。休日でそちらに行けないのもあるが、程度がひどかったので受診しても入院依頼で当院に回されるだおる。会話は途切れ途切れで横臥できない。中等度以上だった。ふだん会社にもサルタノールを置いているが、隣の部屋にあるサルタノールにたどり着くのも苦しい時もあるという。

 現在の処方はと見ると、発作時のサルタノールだけもらっていた。退院した時は、ICS/LABAのシムビコートにテオフィリンとシングレアの内服を出して、症状が軽快すれば、テオフィリンさらにはシングレアも休止可能だが、シムビコートは継続して下さいと書いていた。

 ご本人が昔から使いなれているサルタノール吸入があればいいと思っているらしい。コントローラーとリリーバーの説明はしていたはずだが、伝わっていない。それに喫煙者でもあった。

 外来で点滴とネブライザーを使用したが(刺激にならないように、ステロイドを入れてからネブライザー)、喘鳴は軽度になったが続いていた。入院は嫌がっていたが、結局入院になった。

 デカドロン注初日8mg(6.6mg)を2回、翌日8mg、その後2日は4mg(1.65mg×2)、その後2日2mg(1.65mg)で中止した。3日目に喘鳴が消失して、吸入ステロイドを開始した。

 SMART療法があるので、発作時にもシムビコートを使うのもある(前回入院時はそう説明した)。この方は別にした方がよさそうなので、最近院内採用になったICS/LABAレルベアにした。今日で点滴は終了して、明後日退院予定だ。とにかくレルベアは1日1回・1回1吸入なので、これだけは続けるよう何度も説明した。

 禁煙もするよう説明したが(BA+COPDへの道)、どうなるか。子供さんも喘息だそうだ。持たせる診療情報提供書にもレルベア継続処方をお願いした。

 ICS(ISC・LABA)の普及で喘息の入院は本当に少なくなったが、いまだにβ2吸入薬のみという人がいるのだった。

 

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AAH?

2018年10月25日 | Weblog

 昨日外科医に相談された。97歳女性が自宅で転倒して受診していた。頭痛・背部痛・胸部痛を訴えたので頭部CT・胸腹部CTを施行していた。骨折はなく、頭蓋内出血もなかった。心電図も異常はない。

 両側肺にすりガラス結節(ground glass nodeles)が多発していた。これは何でしょうという。発熱はなく、炎症反応も陰性だった。通常の肺炎とするには奇異な形だった。

 緊急性はないので、翌日の呼吸器外来(大学病院から出張=バイト)で診てもらうことにした。それで今日診てもらったところ、多発性の異型腺腫様過形成(atypical adenomatous hyperplasia:AAH)でしょうと言われた。年齢的に精査の適応はないので、経過観察になった(かかりつけのクリニックに報告のみ)。

 胸部X線の本(初心者向けの)にも記載されていたが、多発することもあるのか。

 

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体重減少

2018年10月24日 | Weblog

 火曜日に体重減少で47歳男性が内科医院から紹介されてきた。4か月で4Kgの体重減少があったそうだが、その後体重は維持されていた。食欲もあり、特に困った様子はない。話ぶりも元気だった。

 医院で行った検査では異常がなかった。糖尿病もなく、甲状腺機能も正常だった。きちんと健診(胸部X線、胃透視を含む)を受けていて、検査項目はまったく異常なし。

 うつ状態とも思えないが、生活で何か変わったことがないか訊いてみた。仕事は事務職で、昨年12月から電車とバスで通っていたのを、電車を降りてから早足で歩くことにしたそうだ。20分程度かかるという。体重が減少したのはその後からだった。

 それまでしなかった運動を取り入れて、余分な脂肪がとれて身体が引き締まったということらしい。むしろそれまでよりも健康になったのだった。

 追加の検査について相談すると、体調もいいので経過をみたいと希望された。周囲からやせたと言われたので、受診しただけで、自分で体調不良で受診したわけではない。さらに体重が減少したり、気になる症状があった時にまた受診してもらうことにした。

 

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多発性脳塞栓

2018年10月23日 | Weblog

 昨日内科新患の先生(大学病院から出張=バイト)から連絡が来た。78歳女性が先週の金曜日(3日前)に右視力低下で眼科外来を受診していた。右網膜動脈閉塞症と診断されて、昨日眼科から頭部MRIがオーダーされていた。多発性脳梗塞があり、多発性塞栓症と判断された。

 眼科から、腫瘍転移・血管炎・感染症について検索して下さいという紹介だった。患者さんは視力低下以外には症状がない。発熱はなく、血液検査で炎症反応は陰性だった。腫瘍・血管炎・感染症は否定的だ。

 心電図は正常洞調律で心房細動はなかった。近くの内科医院から骨粗鬆症の処方を受けているが、これまで心房細動を指摘されたことはないそうだ。心エコー(胸壁)で心腔内に明らかな血栓は指摘できなかった。

 MRAは頸部から撮影されていて、神経内科医にも診てもらったが、狭窄はない。発作性心房細動かなあという。抗凝固薬を使用して経過をみることになった。

 あと検査としては頸動脈エコーはしてみる。循環器科医から、上行大動脈にびらん病変ができてそこに血栓がつくこともあるので造影CTをお勧めしますということだった。放射線科の診断はまんまshower emboli。

 患者さんはもともと左眼の視力低下があり、右眼の視力低下にすぐに気づいた。幸い金曜日より右眼の視力は少し戻ってきているそうだ。

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ツツガムシ病

2018年10月22日 | Weblog

 午前中内科再来を診ていると、病棟の看護師さんから報告があった。昨日高熱で入院した49歳男性は、今日になって全身に皮疹が出ていた。昼前になったが、外来のきりのいところで病棟に診に行った。

 確かに全身に発疹が出ていて、軽度にかゆみがあり、引っ掻いて数か所は傷になっている。Tシャツを脱いで両腕を上げるもらうと、左腋窩に比較的小さ目さが、黒色の刺し口があった。ツツガムシ病だった。

 皮膚科の先生が毎年数例診ているので、病室で診てもらった。なるほどと、皮膚科的な皮疹の表現を言いながら、使い慣れた一眼レフで写真と撮りまくっていた。昨日の生化学検査の検体が残っているので、それで抗体検査(Kato、Karp、Gilliam)を提出された(保険で3種までらしい)。

 昨日は普通の点滴だけで抗菌薬は使用していなかった。さっそくミノマイシン点滴静注を開始した。

 ところでお仕事はと訊くと、山の斜面にコンクリートを貼ったり、網かけをする仕事で、ほとんど山にいるそうだ。まあ最初から訊けよという話だが、会社の寮に住んでいるというので製造業と思い込んでいた。

 

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