なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

皮膚筋炎~抗TIF1-γ抗体

2024年12月08日 | リウマチ膠原病

 12月2日(月)に消化器科外来に通院している70歳代半ばの男性が内科外来を受診した。1週間前から右半身の脱力があるという。

 この方は50歳前後で脳梗塞(右放線冠)が発症して、左半身不全麻痺がある。もともと短距離の杖歩行だった。

 7月に胃癌の手術を消化器病センターのある専門病院で受けている(腹腔鏡下幽門側胃切除術)。stageⅠAとなっていた。術後のフォローは入っている。

 11月25日に頭部CT・MRIで右硬膜下血腫を認めて、地域の基幹病院脳外科に紹介された。右脳を圧排しているが、血腫は被包化されていて、ずっと以前からのものと診断された。治療適応はなく、経過観察となったそうだ(家族の話。正式は診療情報提供書はまだ来ていない)。(この時検査したのは、最近むせ込みが強いという症状でだった)

 

 さらに10月から顔面~頭部の皮疹(紅斑)・浮腫があり、発赤は頸部にも及んでいる。皮膚科を受診したが、病名は付かず対照的にステロイド軟膏が出されていた。あまり効果はできていないらしい。

 以上のような様々な疾患があり、新患受診の多い月曜日に来たこともあり、診察・検査は午後から夕方に及んだ。

 

 右上肢・下肢は挙上できるが以前のようではないという。左半身麻痺があるので、評価し難いが、要は両側の筋力低下なのだろう。

 頭部CTで出血はなく、新規の脳梗塞も指摘できなかった。右硬膜下血腫は前回と同様だった。頭部MRIでも新規脳梗塞はなかった。

 食事摂取が低下しているといい、唾液の貯留があった。胸部X線でははっきりしないが、胸部CTで両側肺野に軽度の肺炎像が散在していた。嚥下障害からの誤嚥が疑われた。

 顔面~頸部は全体的に発赤・腫脹(浮腫状)があるが、頸部はVネック徴候に見える。両手の指関節伸側が発赤していて、ゴットロン徴候と思われた。

 皮膚筋炎を疑って抗核抗体や皮膚筋炎分類のマーカーを提出した。炎症反応は、白血球8000・CRP3.6だった。筋原性酵素はCK 310・AST 48・LDH 278と軽度の上昇だった。

 自宅で動けなくなっているので、入院して点滴・抗菌薬で治療を開始した。入院してみると、常に唾液が貯留して飲み込みにくいので自分でティッシュにとっていた。

 

 抗核抗体の結果が出ていないが、11月に消化器科で提出した時は40倍だった(Speckled 40倍)。皮膚筋炎のマーカーの方が先に判明して、抗TIF-γ抗体が強陽性だった。皮膚筋炎で悪性腫瘍を合併するタイプだった。

 皮膚筋炎に対して嚥下障害というのは、これまで意識していなかった。高頻度で合併して、四肢脱力よりも急を要するのだった。

 内科の若い先生(昨年大学病院から赴任)に知り合いの大学病院リウマチ膠原病科の先生に連絡してもらった。精査・治療のため大学病院に転院搬送となった。

 

 

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多発性筋炎・間質性肺炎

2024年07月28日 | リウマチ膠原病

 7月25日(木)の呼吸器外来に71歳男性が受診していた。膠原病肺(多発性筋炎・間質性肺炎)のフォローで半年に1回診ている。

 ちょっと驚いたのは、多発性筋炎は現在無治療で経過観察となっていることだった。2018年からプレドニンが中止となった。

 

 2002年に多発性筋炎が発症して、内科から脳神経内科に紹介になった。外来からそのまま大学病院に紹介された。ステロイドパルス療法からプレドニン60mg/日で開始して、症状軽快後に漸減となった。

 2009年に潰瘍性大腸炎が発症して、当院消化器科に入院となった。プレドニンだけでは経過が思わしくなかった。大学病院から内視鏡の応援に来ていた先生に相談して、消化器内科と外科が炎症性腸疾患を扱っている病院に紹介となった。白血球除去の治療が行われたが、反応がなく、結局外科手術となった(術式の詳細は不明)。

 2010年には多発性筋炎が再燃して、当院の脳神経内科に入院した。大学病院と同じメニューで治療して軽快している。外来でプレドニンの漸減と糖尿病(ステロイド糖尿病)の治療が行われた。そして2018年からはプレドニンが中止となり、そのまま安定して状態を保っている。

 発症当初から胸部X線・CTで間質性肺炎(両側下肺野背側に間質性陰影)を認めて、当院呼吸器内科外来(現在は非常勤)でフォローしていた。現在はこのくらいの陰性で当初よりは陰影が増加しているが、経過観察となっている。

 脳神経内科は昨年春に担当医が退職して閉科となった。現在は地域の基幹病院脳神経内科に通院している。膠原病肺のフォローは当院になっているが、これも先方の病院に紹介した方がいいのだろう。

 多発性筋炎はリウマチ膠原病科か神経内科かという問題もあるが、今だとリウマチ膠原病科に紹介になるのが主流だと思う。あと、当時はあまりいわれなかったが、今だと多発性筋炎のどのタイプかということになる。

 

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自信の持てないPMR疑い

2024年05月25日 | リウマチ膠原病

 3月31日に記載した83歳女性のその後。右大腿骨頸部骨折の保存的治療となり、当院リハビリ病棟に転院してきた。

 1型糖尿病があり、内科で血糖コントロールをすることになった。Cペプチドは測定感度以下で枯渇していて、抗GAD抗体は陰性だった。

 

 この患者さんは1型糖尿病以外にも問題があった。先方の病院の退院近くから軽度の炎症反応上昇が続いていた。(先方では整形外科ということもあり、気にされていなかった)

 CRP5前後で白血球数は正常域にある。入院後に何度か再検しても同様だった。CRPは5~8mg/dL台で推移していた。体温は平熱から37.2℃くらいの間にある。

 肺炎、尿路感染症、胆道感染症などの感染症は否定的で、血液培養2セットは陰性だった。膠原病のマーカーも特に異常値を呈するものはなかった。血沈が100近くに上昇していた。M蛋白は検出されない。

 もともと自宅でもぼとんど動かない方だそうだ。今回は右大腿骨頸部骨折があり、亀背で常に左側臥位になっているが、自分で右側臥位にもなる。それでも動かされる時に右下肢以外も痛がります、ということだった。

 リウマチ性多発筋痛症(PMR)疑いとして診察を繰り返したが、診察上は確診が持てなかった。痛いといったり、痛くないといったり、自覚症状・他覚症状の判断がつかない。

 

 たまたま37.5℃くらいの発熱があった時に、内科の別の先生(偉い先生)が診て、血液・尿検査と画像検査をオーダーしていた。単純に肺炎か尿路感染症かと思ったらしい。その後は何もいわれなかったので、これまでに経過をみたらしい。

 通常ならばプレドニン15mg/日で診断的治療を試みる。しかし何しろ、1型糖尿病で血糖が不安定で糖尿病専門医がいる病院で手術をやめた人だ。 

 ずっと診断的治療を躊躇っていたが、そろそろ自宅退院を考慮する時期になってきた。ある程度の決着をつける必要があり、プレドニン10mg/日を開始してみた。

 血糖は持効型インスリンを少量増量しただけで、今のところあまり変わらないようだ。病棟看護師さんの話では、動かしたときの痛がり方が軽快しているという。炎症反応は軽減してきた。もう少しプレドニンで経過をみることにした。

 

 (3月31日の記載)

 3月27日(水)に右大腿骨頸部骨折の83歳女性が地域の基幹病院から転院してきた。先方の整形外科から当院の整形外科への紹介だが、骨折は保存的治療となっていた(整形外科としてはあまりやることはない?)。

 1型糖尿病で先方の病院の糖尿病科に通院している。インスリン強化療法をしているが、それでも血糖の上下が極端だった。内科に血糖コントロールを依頼された。

 経過は2月13日から発熱があり、翌日にCOVID-19と診断された。その後、自宅で転倒骨折が起きたが、受診を控えていた(受けてもらえなかった?)。隔離解除の2月下旬になって、病院に連絡して、2月28日に入院となった。

 当初は手術を予定していたそうだ。しかし、血糖が40~600mg/dl以上と変動していたこと、もともとのADLが自宅でやっとトイレに行くことから、保存的治療となった。

 

 問題の1型糖尿病は2017年に発症していること、自己インスリン分泌能が高度に低下していわゆるブリットルな血糖変動、と記載されていた。食事量も不安定なので、食後に超速効型を使用していた。

 76歳の1型糖尿病というのは何だろうか。1型は急性発症、緩徐進行型、劇症とあるが、どれに相当するのか。本人に訊いても、若い時は糖尿病がなかったらしい、ということしかわからない。発症の経緯も、どこの医療機関を受診してきたかも覚えていないという。

 可能性としては緩徐進行型で、インスリン依存状態になってから受診して、糖尿病専門医へ紹介されたということではないか。

 息子と二人暮らしだが、日中は一人になる。昼のインスリン注射はヘルパーさんの手助けでしているという。単位だけ合わせて本人に手渡すのだろうが、押す力がないと注射できない。本人の手を添えてヘルパーさんが押しているのかもしれない。

 抗GAD抗体と血中Cペプチド測定を外注で提出した。

 

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関節リウマチの胸水

2024年04月13日 | リウマチ膠原病

 関節リウマチで内科外来(大学病院から応援の専門医担当)に通院している91歳女性が3月半ばに入院していた。倦怠感・息切れがあった。

 胸部X線・CTで両側胸水が貯留して、心嚢液も軽度にある。炎症反応は入院時に軽度上昇していたが、その後は陰性だった。利尿薬投与(ループ利尿薬+MRA)でも胸水貯留が改善せず(漸増)、担当の先生が困っていた。

 関節リウマチの処方は、タクロリムス(プログラフ)1.5mg/日・ブシラミン(リマチル)200mg/日・プレドニゾロン5mg/日だった。リウマチの症状は抑えられている。

 不整脈や有意な心臓弁膜症もなく、EFは68%だった。心エコーで見ると、心臓はむしろhyperkineticだった。心不全としてはBNPが20~40pg/mLとさほど高くはない。

 低蛋白血症(5.1g/dL→4.2g/dL)・低アルブミン血症(3.1g/dL→2.4g/dL)が影響している可能性がある。低流量の酸素吸入をしているが、食事摂取は良好だった。

 

 この患者さんは整形外科外来(リウマチ専門医)で関節リウマチの治療を受けていたが、その外来がなくなり、2023年9月から現在の内科のリウマチ膠原病外来に通院している。抗リウマチ薬を変更するにあたって、胸腹部CTを撮影していたが、その時から軽度の胸水・心嚢液貯留はあった。

 担当の先生は原疾患自体の併発症や処方薬の影響について専門医に相談したが、そんなはずはない、といわれた。言い方がきつかったので?、担当の先生としては面白くないようだ。

 とりあえずは、心不全としての治療を強化するしかないか。リウマチ自体あるいは併発症としての胸膜炎・心膜炎の可能性が残るが、よくわからない。

 

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顕微鏡的多発血管炎(MPA)

2024年01月18日 | リウマチ膠原病

 ちょっとずつかかわった患者さんだが、肺病変がよくわからない。

 2022年8月に市内のクリニックから右足~下腿の蜂窩織炎として64歳女性が紹介されてきた。当時在籍した内科の若い先生(自治医科大の義務年限)が担当していた。

 胸部CTで右下葉に浸潤影とも腫瘍ともとれる陰影を認めた。肺炎・蜂窩織炎として治療を開始していた。

 担当の先生は週1回ホスト病院である医療センターに勉強に行っていた。その不在の日に患者さんに喘鳴があると病棟看護師さんから相談された。

 胸部CTを確認すると、問題の腫瘤様陰影の他に気管支の狭窄?を認めた。喘鳴は喘息症状の可能性もあるが、それによる可能性も否定できなかった。幸いに、デキサメサゾン4mgを点滴静注すると喘鳴は軽快した。

 肺癌疑いで気管支鏡検査を要するということで、地域の基幹病院呼吸器内科に転院となった。(後で確認すると、返事は電子カルテ上には見当たらない。患者さんの話では、そのうち良くなるでしょうといわれたという(?)。

 

 その後、2023年3月に両側の下腿の蜂窩織炎として皮膚科の外来で治療していたが、喘鳴・痰も認めるようになって来た。胸部CTで前年に指摘された腫瘤様陰影は縮小していたが、まだあった。不思議なことに、気管支狭窄は改善していた。内科の別の先生(もともとは外科医)が担当で入院となった。

 感染症として抗菌薬を替えたりしていたが、炎症反応は悪化して、腎機能障害も認めてきた。担当の先生から相談を受けた。

 両側下腿の病変は、蜂窩織炎様のところもあるが、紫斑の散在がある。血管炎が疑われる。喘息症状・肺浸潤影を認めることから、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)が疑われたが、好酸球増加がなかった。

 血液培養2セットの提出と膠原病のマーカー提出を勧めた。血液培養は(予想通り)陰性だった。MPO-ANCAが陽性だった。(前年の入院時に若い先生が提出した時は陰性)

 リウマチ膠原病外来に来てもらっている先生に相談した。EGPAは好酸球増加がないことから否定され、顕微鏡的多発血管炎(MPA)とされた。大学病院入院は厳しい(入院数の問題)ということで、腎臓内科の扱い(大学病院の腎臓内科から来ている先生が担当)にして、当院で治療を開始することになった。

 その時の胸部CTで両側肺野にすりガラス陰影が広がっていた。MPAだと肺胞出血や間質性肺炎を認める。画像的には肺胞出血のようだが、血痰はなかった。

 ステロイドパルス療法とその後のステロイド投与で症状は軽快していった。ただ1か月経過して、治療に対する反応がいまひとつということで、結局大学病院に転院となった。

 内容は難しすぎてわからないが、分子標的薬や免疫抑制剤が使用されて、プレドニンは漸減された。現在はプレドニン6mg/日で安定しているようだ。あの右肺S10の腫瘍様の陰影もほとんどわからないくらいになっている。

 

 病名としてはMPAなのだろうが、EGPAの要素もあったということ?。リウマチ膠原病外来の受診者を確認していたら目についたので記載した。以前にも記載したような気がするので、だぶっているかも。

 

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側頭動脈炎

2010年06月24日 | リウマチ膠原病

 開業医からの紹介で不明熱の84歳男性が当院内科外来を受診した。新患担当医師から2週間前から発熱と体動困難の患者さんと連絡があり、おそらくリウマチ性多発筋痛症だろうと見当をつけて外来に行ってみた。
 診察すると、確かに両側上肢の挙上困難と蹲踞からの立ち上がりが困難があり、リウマチ性多発筋痛症は間違いないと思われた。
 この病気に合併する側頭動脈炎の症状を確認しようと、頭痛の有無を聞いたところ、2週間前から左側頭部の疼痛があり、左側頭動脈の走行に沿って軟膏を塗っていた。軟膏が髪の毛に付いて白い。それを見た瞬間に側頭動脈炎の診断が確定した。病名の看板を付けて受診したようなものだ。白血球増加・CRPの上昇・血沈の亢進を認めたが、念のために確認したというだけだった。
 年齢の割に元気な方で、外来治療でもいけそうだったが、もともと糖尿病があり、混合型インスリン朝夕計48単位使用で、HbA1cが8.7%と血糖コントロールが悪く、側頭動脈炎の治療で使用するプレドニンでさらに血糖が上昇するため、入院とした。
 プレドニン30mg/日内服で、症状はすみやかに軽快した。あとは教科書通りに漸減するだけで、血糖コントロールが主な仕事になった。

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