なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

肺炎で搬送

2024年11月30日 | 呼吸器疾患

 11月13日に記載した30歳代前半の女性のその後。

 COVID-19からARDSとなり、地域の基幹病院から大学病院に搬送となった。ECMO装着で改善したが、廃用でベット上寝たきり状態になって、基幹病院に戻った。

 リハビリ病院ではないので、すぐに当院回復期リハビリ病棟に転院依頼が来た。それでも当院転院までの1週間の間に、食事摂取(自力+介助)はできるようになっていた。しかし、両下肢はほんのわずか挙上できるかというくらいだった。

 それに元々睡眠時無呼吸症候群で大学病院呼吸器内科に通院していて、夜間は人工呼吸器(CPAP)を装着している。なかなか厳しい患者さんではあった。

 11月16日(土)の夜間から発熱があり、17日(日)には高熱になった。18日の胸部CTで両側肺下葉、特に左肺下葉に浸潤影を認めた。酸素吸入1~2L/分を開始して、抗菌薬(PIPC/TAZ)を開始した。

 いったん解熱していい感じだったが、21日の夜間から喀痰が増加して、酸素吸入も4L/分を要した。

 特に夜間は喀痰吸引頻回になり、CPAPは装着できなくなっていた。回復期リハビリ病棟は病状安定の患者さんを診るところなので、かなり頑張った看護をしてくれたことになる。

 週末とてもここでは診られませんとなった。なにしろ筋力低下で自力での喀痰排出ができない。といって、体型的に気管挿管が難しい患者さんだった。

 基幹病院呼吸器内科に連絡すると、ちょうど紹介された先生が出られた。病状をお伝えすると、週明けでいいですかといわれた。申し訳ありませんが、今日お願いできませんかとお願いすると、ベットを確認していうことになった。その後連絡があり、搬送となった。

 リハビリ病棟の看護師長さんが基幹病院の知り合いの看護師さんに訊いたところでは、到着してすぐに気管挿管となり、人工呼吸器管理になったという。

 

 その後返事が来て事情がわかった。救急車内では酸素4L/分で飽和度を保っていたそうだ。到着してすぐに飽和度がぐっと下がって、気管挿管となった。胸部X線・CTで確認すると、左肺が無気肺になっていたという。喀痰が気管支の中枢側で詰まったらしい。「迅速な搬送でよかった」と記載されていた。

 抜管後に当院に戻されても大変そうだ。気管切開がないと、とても対応できない(気管切開があっても自信がないが)。

 

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食道裂孔ヘルニア・続き

2024年11月29日 | 消化器疾患

 昨日(11月28日)の続き。

 11月27日入院して、点滴とPPI注(オメプラール1Aを1日2回)で経過をみて、夜間から28日朝にかけて嘔吐はなかった。前胸部がすっきりした、という。

 胸腹部CTで確認すると、食物と消化液が充満していた胸腔内胃は、内容物が流れて来ていた。これなら内視鏡ができるということで、午後から消化器科医に診てもらった。

 食道から胃にかけての食物残留はなくなっていた。食道中下部から胃にかけて発赤とびらんを認めたが、出血はなかった。 

 胃の大部分が胸腔内の入り込んでいるが、胃底部が垂れ下がっているので、そこが充満すると遠位部が圧迫されて排出できなくなるようだ。餅がそもそもまずかったのかもしれない。

 29日朝から食事が出たが、食べても症状は生じなかった。通院している病院のPPIをP-CAB(タケキャブ20mg)に変更して、効果はわからないが消化管運動薬(モサプリド)も追加してみた。

 

 消化器科医は週末他県で親の法要(13回忌)があるので、この患者さんの入院主治医になってほしいといわれた。同じ年に当方と消化器科医の母親が亡くなっていた。当方の13回忌は10月始めに済んでいる。

 

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食道裂孔ヘルニア

2024年11月28日 | 消化器疾患

 11月27日(水)に前日から嘔吐が続く90歳女性が受診した。前日の昼に餅を食べたそうだ。午後から嘔吐が続き、吐物は黒色(コーヒー残渣様)となっていた。

 患者さんは外来の処置室に横臥していた。意識清明で普通に会話ができる。認知症はないようだ。吐物は確かに黒色だった。

 隣町の病院に通院していて、PPI(ランソプラゾール15mg)とスタチンが処方されていた。食道裂孔ヘルニアといわれているという。結膜を見ると貧血かもしれない。

 前日から30回は嘔吐している、と問診票に記載していた。腹部は平坦・軟で圧痛はなかった。腸閉塞ではない。食道裂孔ヘルニアのためか、幽門狭窄による嘔吐が疑われた。

 単純X線では確かに胃の大部分が胸腔内に入り込んでいる。胸腹部CTで確認すると、胃内に食物と消化液が充満している。高濃度に見えるのは餅かもしれない。

 消化器科医に相談すると、この状態で内視鏡を入れるのは危ないといわれた。入れて吸引してもすぐに吸引口が詰まってしまう。そもそも入れた時に嘔吐して誤嚥性肺炎を来す可能性が高い。経鼻胃管(NGチューブ)を入れるのも同じことが起こるかもしれない。

 点滴をしてPPI注を行っていたが、その後は嘔吐しなくなった。絶食・点滴・半座位で腸管への流出があるか1日経過をみてから、処置を決めることになった。

 

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踵骨骨折

2024年11月27日 | 整形外科疾患

 11月25日(月)の内科再来に90歳女性が受診した。定期の予約日だが、その日は異常があった。前日に洗濯物を干そうとして、段差のあるところで転倒した。左足首をひねったようになったそうだ。

 その後から左足関節から足の外側にかけて腫脹と皮下出血が出てきた。ふだんは腰曲がり(亀背)はあるが、普通に歩いている。転倒後は痛くて這って動いていた。

 翌日に外来予約があるので、その日は受診しなかったという。ただ日曜日に救急外来を受診しても、X線検査と鎮痛薬の処方で月曜日に整形外科受診となる。

 整形外科外来担当の外来看護師に連絡すると、X線撮影を入れてから回してくださいという。再来予約の診察が終わって、新患を診始めたところだった。足関節~足指のX線をオーダーして紹介状を記載した。

 整形外科医から、左踵骨骨折で手術することになったと伝えられた。X線でもわかるようだが、CTで確認していた。

 翌日に無事手術が行われた。1週間寝込むと、短期間のリハビリは要する。

 

 この患者さんは高血圧症などで診ている。今年の7月に両下腿から足の浮腫が生じてきた。心臓自体の問題はあまりなさそうだが、現役の喫煙者だった。今でも1日5~6本は吸っている。やめる気はなく、家族も今更やめさせなくてもということだった。

 COPDからの右心不全なのだろうか。降圧薬のARBをARNIに変更して、アゾセミド少量入れると浮腫は軽減している。

 昔から胃薬のマーズレンが処方されていて、そのまま継続していた。院内にはないので、レバミピド(ムコスタ)にしたが、「青い粉が入ってなかった」といわれた。錠剤は何が何の薬かわかっていないと思うが。

 

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鼠径ヘルニア

2024年11月26日 | 外科疾患

  11月22日(金)の当直の時に、嘔吐が続く90歳代初めの女性が受診した。家族が救急要請したが、救急隊到着時には嘔吐が治まっていた。歩行もできることから不搬送となり、家族の車での受診となった。

 腹部は平坦・軟で圧痛もなかった。しかし車で来る途中にも嘔吐があり、病院到着後も少し嘔吐していた。腹部X線を省略して腹部CTを撮影したが、単純X線も撮っておいた方がよかった。

 左鼠経ヘルニアが写っていた。腸管の拡張と腸管内消化液もある。一時的に腸管の流れが悪くなったのが嘔吐の原因らしい。それにしても、腹部を診た時にズボンの下げ方が足りなかったのだった。

 腸管をゆっくり押し込むと戻った。整復?後に腹部CTを再検すると、腸管は腹腔内に戻っている。それでも脂肪組織らしいものがまだ残っているように見える。土日に当院で経過をみるのも外科の対応ができないので、躊躇われる。

 家族にヘルニアの話をすると、地域の基幹病院外科に紹介されて診察を受けていた。経過観察となったが、何かあったら(嵌頓したらということ)、受診するようにされていた。経過をみていいのか判断がつかないので、紹介することにした。連絡すると診ていただけるということだった。

 

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両側肺炎

2024年11月25日 | 呼吸器疾患

 11月22日(金)は当直だった。23日(土)午前5時に救急搬入依頼がきた。3つ隣の町にある施設に入所している80歳代半ばの男性の発熱・酸素飽和度低下だった。

 前日の夜間から酸素飽和度低下があり、施設内で酸素吸入3L/分を開始していた、朝方になって飽和度がそれでも80%台前半と上がらず、施設で救急要請した。

 認知症・廃用の患者さんの誤嚥性肺炎が疑われる。気管挿管・人工呼吸は行わない方針になるが、家族はどう考えているのだろうか。訊いてみると、ちょっとお待ちくださいといわれたが、すぐにそこまでの延命処置は希望しません、という。

 救急隊で施設職員に訊いただけのようで、家族の考えではないかもしれない。搬入後に改めて相談になるが、来てもらうことにした。(地域の基幹病院の近くだが、最初から搬入依頼しないことになっているので、おそらく連絡はしていない)

 酸素吸入3L/分のままで搬入された。酸素飽和度が80%代後半になっていた。血液ガスでは二酸化炭素分圧が高く、基礎にCOPDがあるようだ(喫煙歴あり)。酸素吸入量を上げたが、酸素飽和度は90%前後(88~92%)を目標にした。

 胸部X線・CTで両側肺の背側に浸潤影を認める。食事で明らかなムセはなかったというが、急な発症と肺炎像の分布からは誤嚥性肺炎が疑われる。体温は37.5℃で、高熱を来す体力はないのだろう。

 施設には昨年5月に入所したので、施設生活は1年半になる。右大腿骨頸部骨折で手術した既往がある。やせていて、介助で車いすの生活だった。

 行うとすればNPPVだが、それも装着されるのは苦しい(喀痰吸引も困難になる)。装着後に最期まで外せなくなる可能性がある。病院に来た妻と相談して、酸素吸入・抗菌薬・点滴で経過をみることにした。

 

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頚椎腫瘍

2024年11月24日 | 整形外科疾患

 整形外科の先生が医局のパソコン画像で頚椎のMRI像を出していた。第7頚椎がつぶれていて、周囲にはみ出して見えた。患者さんは40歳代始めの女性で、整形外科クリニックからの紹介だった。

 5月から左鎖骨部の痛みで通院していた。そのクリニックはMRIがあることを「売り」にしている。おそらくMRIを撮像したはずだ。当初の所見はどうだったのだろうか。

 NSAIDsや神経障害性疼痛の処方(ミロガバリン)で治療をしていたが、左上肢と肩甲骨部にも疼痛が伸展したために、紹介となっていた。

 整形外科医はまず単純MRIを行っていた。第7頚椎に腫瘤と溶骨性変化を認めた。さらに造影MRIを行っていた。第7頚椎の骨腫瘍で、放射線科の読影レポートでは「動脈瘤性骨嚢腫疑い」となっていた。

 

 腫瘍は扱えないので、大学病院整形外科に紹介となった。放射線科の読影レポートは「肺、乳腺には明らかな腫瘍は見られません」とあって親切なのだった(骨転移する原発巣の有無への言及)。

 

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脳梗塞

2024年11月23日 | 脳神経疾患

 11月10日(日)は日直で、その日の当直は腎臓内科の若い先生だった。11日(月)の午前中に、「やっぱり脳梗塞だった」という声が聞こえた。同量のさらに若い先生に解説していた。

 60歳代半ばの女性が10日午後7時に当院救急外来を受診した。その日の昼(午後0時)から右半身のしびれを自覚していた。

 5年前に右上肢のしびれで地域の基幹病院(整形外科だろう)を受診して、頸椎ヘルニアといわれたという既往がある。ただしその時より症状は強く、その時は右下肢のしびれはなかった。

 意識は清明でバイタルはまったく異常がない。右半身の麻痺があるかどうかだが、わずかに右上下肢で麻痺があると判断していた。右上肢のバレー徴候で第5指徴候(右第5指が離れる)があり、右下肢の軽度の動揺性があると記載している。

 頭部MRIの拡散強調画像で、左延髄のわずかな高信号域とADCで同部位の低信号がある、とみていた。

 脳梗塞(左延髄梗塞)として基幹病院に紹介した。先方の再検で脳梗塞が確定したと報告が来た。「お見事でした」、なのだった。

 

 放射線科の読影レポート(遠隔診断)では、MRIで「新規病変なし(脳梗塞は認めない)」となっていた。(時々読影結果に問題のある先生)

 

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精巣上体炎

2024年11月22日 | 泌尿器科疾患

 11月21日の午前1時過ぎに60歳代前半の男性が、睾丸痛で救急外来に救急搬入された。当直は小児科医(当院小児科は外来だけで入院はとらない)だった。

 ふだんは、前立腺肥大症で県庁所在地の総合病院泌尿器科に、心房細動で市内の循環器科クリニックに通院している。1週間前から睾丸の違和感があったらしい。前日(20日)の午後から睾丸(右側)が腫脹・熱感・疼痛が出現して、体温も38℃と上昇した。

 21日に泌尿器外来の予約があったためか、痛みを我慢していたが、耐えきれず救急要請した。経過と所見からは精巣(睾丸)の捻転ではなく、精巣上体炎が疑われた。腫脹した睾丸の大きさを6×8cmと記載していた。

 ジクロフェナク座薬(50mg)挿入と抗菌薬投与(セフトリアキソン1g)を行って、症状は搬入時より軽減した。帰宅してその日予約のある泌尿器科外来受診となった。

 睾丸痛(急性陰嚢症)は精巣捻転と精巣上体炎の鑑別とよく救急の本にある。精巣捻転疑いで受診した小児を泌尿器科へ紹介したことはあるが、精巣上体炎は見たことが1例くらいあったかなかったか記憶にない。

 精巣上体炎の治療は抗菌薬投与になる(と鎮痛薬)ようだ。性感染症からの波及の可能性があれば、その精査・治療になる。

 睾丸痛は小児でみるので、小児科医は案外得意なのだろうか。21日は当院も泌尿器科外来(非常勤)があるので、そちらに回せると思って受けたのかもしれない。

 

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水疱性類天疱瘡

2024年11月21日 | 皮膚疾患

 11月14日(金)、全身に皮疹のある50歳代前半の男性が皮膚科入院となった。紅斑と水泡があり、薬疹・多型滲出性紅斑・天疱瘡などが疑わるそうだ。

 尋常性天疱瘡のマーカーである抗デスモグレイン1抗体・抗デスモグレイン3抗体と、類天疱瘡のマーカーである抗BP180抗体が提出された。結果は抗BP180抗体が陽性で、水疱性類天疱瘡と診断された。プレドニン30mg/日で治療開始となっていた。

 この患者さんは糖尿病で市内のクリニックに通院している。処方はエクメット配合錠HD2錠分2で、HbA1c6.3%と血糖コントロールは良好だった。

 プレドニン開始で食前血糖が250mg/dl~400mg/dlと上昇して、単なるヒューマリンRのスケール対応では間に合わないため、内科に血糖コントロールの依頼が来た。

 エクメットはDPP4阻害薬エクアとメトホルミンの合剤で、DPP4阻害薬は類天疱瘡の原因になる可能性があり、中止された。(メトホルミン単剤にして継続)皮膚科的にはDPP4阻害薬による天疱瘡は特徴があり、この患者さんは違うそうだが、それで処方継続とはならない。

 初期量(30mg/日)はどのくらい継続されてから漸減が始まるかと訊くと、「勢いが治まるまで」ということだった。漸減中止になることもあるが、維持量継続になることもあり、経過をみないとわからない。

 インスリン強化療法を初期量(ヒューマログはスケール、トレシーバは固定)で開始して、血糖をみて漸増とした。年齢的にはインスリン注射は習得できるだろう。

 病室にその旨を伝えに行ったが、急性期の皮疹が広がってまだ痛々しかった。皮疹を避けてのインスリン注射になる。

 

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