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千葉大GMカンファランス2016
診断方略
・imagine a patient
・Draw a big picture
・Key word abstraction
・Early hypothesis generation
・Bear heuristic bias in mind
・Increase prbability by exclusion
症例1 24歳男性 急に暴れ出す
・X-1年1月、会議中に耐えがたい眠気と両下肢の落ち着かない感じが出現、いてもたってもいられず大声で叫んだ。休憩室で休まされ、約10分で症状は軽減した。
・X-1年3月、勤務中にシュレッダーをかけていた際に眠気が出現。その場にうずくまった後、何とかしたいと思って階段を駆け下りた。王かけてきた上司に呼びかけられてハッと我に返った。
・X年2月、職場で同様の症状が出現。大声をあげてロッカーを叩くなどの行動をとっていたところを同僚に制止され、5-10分で症状は軽減した。
社会歴・嗜好:
独身、実家暮らし
2年前に就職
タバコ5本/日、機会飲酒
既往歴:
なし
内服薬:
定期内服や健康食品の使用なし
身体診察
体温36.8℃、血圧122/72mmHg、脈拍60回/分、意識清明
身長162cm、体重79.6kg、BMI30.3
頭頚部・胸腹部・四肢・筋骨格系・神経系は異常なし
血液検査
末梢血、生化学は異常なし
追加の問診
・いずれの発作も年度末の多忙な時期で、昼食を十分に摂れなかった日の夕方か~夜にかけて発症していた。
・数年前の学生時代から、空腹時や運動後にボーッとなることを自覚しており、摂食によって症状が軽快することを経験的に学んでいたが、病的なものとは考えていなかった。
・この1年で13kgの体重増加があった。
食事に関係している。
低血糖の症状が疑われる
インスリノーマ?。
追加の検査
食後5時間(無症候時)
・血糖47mg/dl
・血中インスリン(IRI)33μIU/mL
補食していないのに回復している。
うずくまった後に階段を駆け下りている。
インスリノーマに合わない?。
腹部Dymnamic CT
膵尾部にインスリノーマ
72時間絶食試験
24時間で血糖43mg/dl
インスリン、Cペプチドは出続けていた
遊離脂肪酸、ケトン体が増加しなかった(正常では脂肪を燃焼するので増加)
グルカゴン負荷で血糖が上昇
(正常では絶食でグリコーゲンを使い切るのでグルカゴンで血糖は上昇しない)
診断
インスリノーマ
若年発症の内分泌腫瘍で考えるべきこと
・インスリノーマの発症年齢は40歳以上が多い
多発性内分泌腫瘍症(MEN)1型
・原発性副甲状腺機能亢進症
・膵・消化管内分泌腫瘍
・下垂体腫瘍
のうち2つ以上を有する
・インスリノーマの6%がMEN1型
・islet tumorは多発傾向
・MEN1型の90%の症例で副甲状腺機能亢進症が初発症状
→血清Caとintact PTHの測定を推奨
その他の検査結果
・intact PTH 42pg/mL
・下垂体ホルモン すべて異常なし
・甲状腺エコー 副甲状腺腫大なし
・頭部MRI 下垂体腫瘍を認めず→MEN1型は否定的
その後の経過
・腹腔鏡下脾温存膵尾部切除術
→術後は血糖100-120台で推移
症状の再燃は認めていない
インスリノーマ解説
・低血糖発作が主症状
-発汗、震え、動悸、悪心など
(低血糖に気づいて回復行動をとることができる)
・中枢神経症状
-複視、混迷、異常行動、忘却、意識障害など
・しかし、低血糖に繰り返し暴露されると、交換死刑刺激症状の発言が鈍化して低血糖を自覚できずに、いきなり中枢神経症状で発症するようになる→無自覚性低血糖
(精神疾患、てんかん、認知症などと誤診される)
インスリノーマと食事との関係(低血糖)
・空腹時のみ73%
・空腹時および食後21%
・食後のみ6%
→低血糖を想起できない恐れあり
Take Home Massage
・インスリノーマは精神症状が多い
・発作的な眠気の鑑別に低血糖を考える
・食後に低血糖を引き起こすインスリノーマがある
・若年発症の内分泌腫瘍はMENを除外する
症例2 71歳男性 熱(39~40℃)、脈が高い
主訴:熱(39~40℃)、脈が高い
現病歴:
2月20日夜間に突然の胸痛を自覚し、総合病院循環器科へ救急搬送。血液検査、心電図、心エコー、胸部CT施行。症状が軽快したため帰宅。
2月21日発熱が出現し、かかりつけ診療所を受診
3月22日その後も発熱と頻脈が持続し、当院紹介。独歩来院。
既往歴:
後縦靭帯骨化症(11年前、椎弓形成術)、大腸癌(9年前、S状結腸切除術)、前立腺肥大症、脂質異常症、不眠症、便秘症
内服薬:
プレガバリン(75㎎)2Cap分2
フェソテロジン(4㎎)2錠分2
タダラフィル(5㎎)1錠分1
プラバスタチン(5㎎)1錠分1
ゾルピデム(5㎎)1錠分1
ルビプロストン(24μg)2Cap分2
嗜好歴:
禁煙、禁酒(9年前から)
家族歴:
特記事項なし
胸痛のOPQRST
O:突然発症(睡眠中、24時頃)
P:増悪・緩解因子(-)
Q:表現できない激痛
R:
部位:前胸部正中から心窩部、漠然とした範囲
放散痛:(-)
関連症状:悪心(+)
S:再入眠困難あり、痛みでのたうち回る
T:数分でピークに達し横ばい、5時間程度で軽快(完全に消失)
のたうち回るのは内臓痛(どこが痛いかわからない)
体性痛ではじっとしている(動くと痛い)
発熱のOPQRST
O:急性発症(2/21~)
P:NSAIDsが有効
Q:弛張熱(27~40℃、朝から発熱)
R:深吸気時に右脇腹の痛み、悪寒・戦慄(+)、食欲低下(+、1/3程度)
S:生活生活可能、犬の散歩を30分程
T:横ばい
右脇腹痛のOPQRST
O:急性発症(2/21~)
P:増悪-深吸気時、寛解-左側臥位
Q:ズキズキした痛み
R:部位-右側胸部、手拳大
放散痛(-)
S:ADL障害なし
T:深吸気時のみ、横ばい
急性胆嚢炎で破裂
→(腹腔内へ)腹膜炎
または
→(肝床部へ穿通)肝膿瘍
診断
穿通性肝膿瘍
(急性胆嚢炎、胆嚢穿通、肝膿瘍)
胆嚢穿孔/穿通
・リスク
胆嚢炎、悪性腫瘍、外傷、ステロイド、血流障害
・穿孔時は”突然”疼痛が軽減
※胆嚢内圧の低下による
・合併症
内胆汁瘻(十二指腸・結腸への穿孔)
胆汁性腹膜炎(腹腔内へ穿孔)
肝膿瘍(肝実質へ直接穿通)
※胆嚢底部は血流が乏しく、肝床分は漿膜を欠く
肝膿瘍
症状:
発熱(90%)、腹痛(50-75%)、肝腫大(50%)、右季肋部の圧痛、黄疸
感染経路:
経胆道性(約半数)、経門脈性、経動脈性、直達性
起炎菌:
Klebsiella pneumoniae(最多)
E.coli、Streptococcus(milleri、aureus、pyogenes)、Peptostreptococcus、Fusobacterium、赤痢アメーバ(稀:細菌性の1/20)
その後の経過
・スルバクタム/アンピシリン(12g/日)
・血液培養陰性・経皮的肝膿瘍ドレナージ→Klebsiella pneumoniae検出、細胞診(-)
・約4週間で改善
・胆摘は待機的に施行
Take Home Message
・胸痛の鑑別に胆石発作を含める
・肝膿瘍の原因に胆嚢穿通がある
・突然改善する疼痛は穿孔/穿通を疑う
膿瘍は割と元気
細菌との戦いに痛み分け
症例3 15歳女性 激しい頭痛
現病歴:
8/22就寝中に激しい頭痛、および悪心・嘔吐が出現。約30分で軽快。翌朝までに同様の頭痛が2回あり。
8/23近医で血液検査・頭部CT、脳外科で当部MRI、いずれも異常なし。その後も頭痛(+悪心・嘔吐)を繰り返した。
9/10神経内科クリニック受診。抗区暗躍とNSAIDs(座薬)を処方されて以降、頭痛の出現頻度は減少。
10/3神経内科クリニックより当部へ紹介。
治療歴:
8/23-25ミグシス、デパケン、マクサルト、イミグラン、ゾーミック、ロキソニン、ミオナール
8/29ナウゼリン、ロキソニン
8/31マクサルトRPD
9/10ソラナックス、カロナール、ボルタレン
アレルギー歴、既往歴:なし
頭痛のOPQRST
O:突然発症(就寝前)
P:誘因なし
Qガンガンする、最悪の頭痛
R:初期は後頭部痛→次第に右側頭部痛に
随伴:悪心・嘔吐、過呼吸、発汗、動悸
前兆:顔色が悪くなってくる(母親談)
S:七転八倒。学校にいけない。
T:約30分で治まる。症状の出現頻度はひどい時で1時間ごと
身体所見:
体温36.20℃、脈拍72/分、血圧110/72、神経系を含めて明らかな異常所見なし
一般血液・生化学検査:
異常なし
この段階でフロアの3名の先生は正解した
Short-lived headache
数分以内、長くとも1時間未満
・cough headache、coital headache、寒冷刺激頭痛、入浴頭痛(bathe-related headache)
・thunderclap headache:1分以内にピークに達し数分から通常数時間(時に数日)続く
CT、LP陰性 ※sentinel headacheの可能性あり
・cf.SAH(sentinel headacheを含む):2時間以内に完全消退することはまれ
三叉神経・自律神経性頭痛(trigeminal autonomic cephalalgias:TACs)
・群発頭痛
・発作性片側頭痛
・SUNCT
TACsは
・顔面に出る(三叉神経領域)。
・片側に出る。右か左。
検査
24時間蓄尿
カテコラミン3分画
アドレナリン42.6μg/日(3.4~27μg/日)
ノルアドレナリン650.3μg/日(49~168μg/日)
ドーパミン755.6μg/日(365~962μg/日)
メタネフリン2分画
メタネフリン1.05mg/日(0.04~0.19mg/日)
ノルメタネフリン3.28mg/日(0.09~0.33mg/日)
腹部エコー、CT、MRI
左副腎に腫瘍
褐色細胞腫による頭痛
診断基準
A.間欠的で連続性のない頭痛発作で、以下の特徴の少なくとも1項目と、CおよびDを満たす
1.発汗
2.動悸
3.不安
4.顔面蒼白
B.生化学検査、画像診断または手術のいずれか1つ以上で褐色細胞腫が確認されている
C.頭痛は血圧の急激な上昇と同時に発現する
D.血圧が正常に戻ると、1時間以内の頭痛が消失ないし著明に改善する
褐色細胞腫による頭痛
・褐色細胞腫の患者の51-81%に発作性頭痛が起こる。
・重要な特徴は、患者の50%で15分未満、70%で1時間未満と発作が短時間であること。
・恐怖感、不安、死の切迫感、振戦、視覚障害、腹痛または胸痛、悪心・嘔吐などを伴う。
・発作中、顔面は蒼白になることも紅潮することも
甲状腺エコー
左葉に腫瘤
追加検査所見
・カルシトニン1500pg/mL(49pg/mL前後)
・CEA3.2ng/mL(<5.0ng/mL)
・intact PTH 50pg/mL1(10~65pg/mL)
褐色細胞腫をみたら
・遺伝性褐色細胞腫を考慮する
-全褐色細胞腫患者の約25%は遺伝性
多発性内分泌腫瘍症(MEN2)
・癌原遺伝子RETの変異(MEN患者の98%で同定)
・甲状腺髄様癌、褐色細胞腫、副甲状腺機能亢進症など
・MEN2Aおよび2B
-60~80%に褐色細胞腫を伴う(20~40歳代発症)
-悪性褐色細胞腫は少ない
⇒褐色細胞腫の患者をみたら、甲状腺エコー(カルシトニン)によるスクリーニングを考慮
(甲状腺髄様癌が先行)
Take Home Message
・短時間で軽快する発作性の頭痛は、褐色細胞腫を鑑別する
・褐色細胞腫を見たら遺伝性の可能性を考える(特に35歳以下の若年発症、両側性、副腎外)
・甲状腺をチェックする(髄様癌を早期発見)
MEN2は
2C:calcinoma、catecholamine
MEN1は
PPP