なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

COPDの増悪

2024年12月28日 | 呼吸器疾患

 年始の1月6日(月)に入院予約が入っていた。大学病院からの転院予定だった。当院としては、受けるのは年明けにしてもらったということのようだ。

 12月16日(月)に発熱・呼吸困難で当院に救急搬入されていた。ふだんは2つ隣の町の診療所に慢性閉塞性肺疾患(COPD)で通院している。当院としては初診だった。

 夕方に搬入されて、救急当番だった先生が搬送先を探していたのを見かけた記憶がある。患者さんはインフルエンザに罹患して、肺炎も併発していた。肺炎自体は重症ではないが、COPDの増悪・CO2ナルコーシスになっていた。

 血液ガス分析で、PaO2 92.2・PaCO2 137.0・pH 7.018と著明な呼吸性アシドーシスに陥っている。(投与酸素量が多すぎるのはある)

 何とか大学病院救急部で引き受けてもらって救急搬送となった。道中よく無事だったものだ。

 大学病院では到着後すぐに気管挿管・人工呼吸となっていた。その後感染症は改善したが、すぐには人工呼吸器離脱ができず、12月25日に気管切開を置いていた。何度か離脱を試みたが、できなかったという記載がある。

 当院転院後は、「人工呼吸離脱に向けてのウィーニングをお願いします」とあった。搬送した先生の担当になるが、転院後もかなり大変なのだった。

 

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間質性肺炎NSIP

2024年12月26日 | 呼吸器疾患

 12月20日(金)は副直をしていた。副直というのは、当直が外部の先生の時に、自分の病院の勤務先から来るので、当院に到着するのは午後7時ということになる。5時15分から時間外になるので、そこから午後7時まで病院に残って救急対応などを行う。

 その日は80歳代前半の女性がめまいで救急搬入された。日中自宅で片付けものをしていて、回転性めまいが発症したということだった。

 搬入時、意識は清明で普通に会話はできる。特に麻痺はなかった。症状は軽減していたが、一人暮らしなので週明けまでの入院とした。頭部CTは異常がなく、小脳脳幹部病変は積極的に疑うほどではないので、頭部MRIは症状継続時に考慮とした。

 

 問題は肺にあった。入院時検査として胸部X線(臥位)を行ったが、放射線技師さんと同時に「あっ、汚い」となった。両側肺野に肺炎様の陰影が広がっていた。

 「間質性肺炎」らしい。胸腹部CTを追加して確認することにした。

 

 2017年に市内の内科医院から胸部CTの画像検査依頼があり(画像だけの依頼)、放射線科の読影レポートは、「(2013年の腹部症状での受診時に撮影された胸腹部CTと比べて)右肺の後側胸膜下の蜂窩線状網状像は増強している」とあった。

  

 今回のCTの放射線科読影レポートは、「両側肺に網状影が広範に広がっている。分布は気管支血管束に親和性があるように見え、NSIPパターンの間質性肺炎/肺線維症疑い。また右肺中葉上葉などにconsolidationがあり、炎症細胞浸潤や肺炎合併が疑われる。」とあった。

 確かにUIP/IPFではないように見え、細菌性肺炎併発を疑う浸潤影様のところがある。納得の読影レポートだった。血液検査でごく軽度(CRP1.3~1.8)の炎症反応があり、他に原因がないことから入院後にセフトリアキソンを使用した。

 搬入時から発熱はなく、結果的には細菌性肺炎併発は否定的だった。これで酸素吸入は要しない。

 患者さんの話では、地域の基幹病院呼吸器内科の外来に通院していたこともあったらしい。経過観察が途中で中止になった?。改めて紹介することにした。

 

 

 

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健側のしびれ

2024年12月19日 | 整形外科疾患

 12月10日(火)に地域の基幹病院脳神経内科から脳梗塞の70歳代後半の男性がリハビリ転院してきた。左放線冠の脳梗塞で右半身はほぼ完全麻痺だった。

 麻痺の程度からは歩行は不可能で、リハビリとしては介助で車椅子移乗程度になる。構語障害・嚥下障害があり、食事摂取ができなくはないが、進まなかった。

 12月16日(月)の朝に右上肢のしびれと脱力を訴えた。頭部MRIを行ったが、対側に新規の脳梗塞はなかった。翌日は左肩関節周囲炎の症状を訴えた。脱力自体は疼痛で力が入らないようだ。

 頸椎MRIで確認すると、C5/6~C6/7レベルに前縦靭帯骨化症と考えられる低信号構造があり、頚髄を右前方から圧迫していた。濃厚梗塞による右半身麻痺があるので、頚髄由来の症状はわからないかったようだ。

 健側の症状はBrown-Sequard症候群に相当するようだ。翌日整形外科で診てもらったが、しびれは軽減していた。脱力が左肩痛で評価し難いので、肩の治療(ステロイド局注)が行われた。

 症状の進行といっても右半身麻痺なので、左側のしびれの程度で判断するしかない。あるいは頚椎MRI再検になる。

 脳神経内科の診療情報提供書にはっきりとは記載されていないが、放線冠の脳梗塞ではあるが、もう少し動いてもいいのにという感じがみてとれる。脳梗塞の症状に頚髄圧迫の症状も加わっていたのだろう。

 

 

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急性腎盂腎炎の疑い

2024年12月17日 | 感染症

 12月16日(月)の内科外来に、発熱外来から60歳代後半の女性が回されてきた。12月14日から倦怠感があり、15日に39℃の発熱があった。悪寒もあったが、悪寒戦慄まではなかった(らしい)。

 強皮症でリウマチ膠原病の専門クリニックに通院しているが、ステロイドは使用されていない。便秘症・甲状腺機能低下症で当院の消化器科外来に通院していた。

 発熱外来の担当医は新型コロナとインフルエンザの迅速検査が陰性で、アセトアミノフェンを屯用で処方していた。帰宅させようとしたが、思い直して内科外来に回したらしい。

 上気道炎の症状はない。意識清明で会話は普通にできる。一昨日から食事摂取が低下していた。診察して、左CVAに叩打痛はなかったが、後で左背部の重苦感があるといっていた。

 点滴と血液・尿検査をすると、白血球10300・CRP12.5と炎症反応が上昇している。尿検査は亜硝酸塩(2+)・白血球反応(1+)で、沈査は赤血球10-20/HPF・白血球10-20/HPF・細菌(3+)だった。沈査の結果が思ったより軽度だったが、尿路感染症(急性腎盂腎炎)が疑われる。

 尿路並閉塞の有無をみるためもあり、CTで確認した。左水腎症があるが、以前から指摘されていて、腫瘍や結石による閉塞はなかった。腎盂腎炎になりやすいのはあるかもしれない。尿路感染症は除外診断なのと、菌血症の有無をみるため血液培養2セットを提出した。

 入院のベットがないといわれて、地域包括ケア病棟で翌日に空く予定のところに入院予約とした。夕方になって急性期病棟がやりくりして空けてくれたので入院とした。夫が亡くなって現在一人暮らしだったので入院の閾値は低い。

 

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転院依頼

2024年12月16日 | 腎疾患

 11月13日、30日に記載した30歳代前半の女性のその後。(その後といっても当院には来ていない。)

 11月12日(火)に地域の基幹病院から当院回復期リハビリ病棟に転院してきた。COVID-19に罹患して先方の病院に入院したが、ARDS(Acute Respiratory Distress Sydrome:急性呼吸窮迫症候群)となり大学病院に搬送された。

 先天性の脳外科疾患で手術歴がある。また睡眠時無呼吸症候群でもともと大学病院の呼吸器内科外来に通院していた。夜間はCPAPを装着していて、肺胞低換気症候群で高二酸化炭素血症もある。

 ECMOを使用して救命されたが、治療経過で廃用症候群となり、寝たきり状態となった。リハビリ目的で基幹病院に戻ったが、すぐに当院にリハビリ転院の依頼が来た。

 当院に転院して来ると、確かに寝たきり状態で、両上下肢は少し挙上できるが、実用にはならない(食事も介助)。週末の11月16日(土)から発熱があり、抗菌薬内服を開始した(末梢血管がほとんで見えない。わずかに手背だけ少しある。)

 11月18日(月)に胸部X線(ポータブル)を見ると、肺炎を来していた。そのまま内服(キノロン)でいけるかと思ったが、20日(水)に再度発熱があり、酸素吸入2L/分を要した。なんとか点滴をして抗菌薬点滴静注を行った。

 解熱したが、21日(木)夜間から酸素飽和度低下があり、酸素吸入4L/分を要した。22日に基幹病院に連絡して、最初は週明けといわれたが、お願いしてその日に転院搬送としてもらった。

 基幹病院到着後に急に酸素飽和度が低下して、無気肺を併発していたそうだ。リハビリ病棟の看護師長さんが基幹病院にいる知り合いの看護師さんに訊くと、到着後に気管挿管・人工呼吸器管理になったという。

 

 先週、当院に転院依頼が来たが、内容をみると、まだ酸素吸入(2L/分)と抗菌薬投与が続いていた。人工呼吸は脱したが、結局気管切開はしていなかった。自力での喀痰排出が困難で、吸引でも十分には排痰できない。

 前回は1週間で肺炎が悪化して転送となったが、その時よりも病状はよくない。現状では転院後数日で悪化が危惧される。時間外に緊急で当院で気管挿管を要する可能性があるが、当院だと当直医によってはできない。年齢的に、適切な対応ができなければ医療訴訟になるだろう。

 気管切開していれば、自力排出・喀痰吸引もできるし、すぐに人工呼吸器を装着できる。(耳鼻咽喉科医も複数おられるので実施は容易だと思う。)

 基幹病院からの転院依頼は、基本的に断らないことになっている。個人の判断ではできないので、基幹病院との協力体制について尽力されている先生(実質的に内科系のリーダー)に相談した。結論としては、この状態では受けられない、ということになった。

(紹介状には、「転院後は当院は終診とします」とあった。急変時は大学病院へ直接搬送するようにということだろう。)

 

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COVID-19肺炎

2024年12月15日 | COVID-19

 12月12日(木)に訪問診療をしている診療所から、コロナの患者さんの入院依頼が来た。進行性核上麻痺で寝たきり状態の80歳女性だった。(関節拘縮あり)

 12月7日に発熱39℃があり、新型コロナの迅速検査が陽性だった。12月10日に酸素飽和度が低下して在宅酸素療法を開始して、抗菌薬(セフトリアキソン)の点滴もしていた。

 12月12日介護していた家族(娘)も新型コロナに感染して、介護ができなくなったそうだ。急性呼吸不全は在宅酸素の適応はない。そのまま介護ができれば最期まで自宅でみるつもりだったのだろうか。

 酸素吸入2L/分で行っていて、救急隊もそのまま搬送してきたが、搬入後の酸素飽和度は90%に満たない。酸素吸入5L/分で94%になった。発語はない。手関節・足関節が拘縮して屈曲していた。

 血液検査では白血球7000・CRP35.2と著明に上昇していた。胸部CTでは右肺に広範に陰影が広がっていて、左肺にもあった。

 搬入前から人工呼吸までは希望していないことを訪問診療医が確認していた。自力で喀痰を排出できない。末梢の静脈はまだ見えるので点滴は可能だった。

 電話で家族に連絡して、できるだけの治療はするが、急変の可能性ありと伝えた。

 

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エムポックス

2024年12月14日 | 感染症

 12月12日(木)に感染対策合同カンファランスが地域の基幹病院であった。当院は感染対策加算2の病院で、感染対策加算1の病院の指導を受ける立場だ。

 年に4回のカンファランスと1回の実技に参加することになっている。ただ当院は感染対策加算1の病院2か所と連携しているので、それぞれとカンファランス2回+実技2回参加している。

 11月に別の病院の実技に参加したので、今回は出席しなくてもよかった。テーマがエムポックスで大学病院感染症内科の先生の講義と実技を行うというので、参加することにした。(発熱・皮疹の患者さんが受診した時の対応を具体的に考える、というもの)

 エムポックスは、以前サル痘monkey poxとされていたが、本来の感染主はげっ歯類(ネズミ、リスなど)だ。たまたまアカゲザルでウイルスが発見されたためにサル痘となって、サルも迷惑な話なのだった。

 エムポックスは主に接触感染だが、空気感染もあるそうだ(詳細は不明)。2022年は男性同性愛者に広まって、性感染症の様相を呈した。その後は家族内感染などがあり、フェイズが変わってきている。

 症状は、発熱の頻度は約50%で、皮疹が90%という。ただ感染後の日数により症状が変化するので、ウイルス感染の非特異的な症状(倦怠感、頭痛、関節痛など)だけだとこの疾患を想起できない。

 検査は保健所対応なので、鑑別の水痘帯状疱疹ウイルス・麻疹・風疹の検査も含めた検体を保健所に送ることになる。検体は皮疹(水泡内液・水疱底の擦過・かさぶた)と血液・尿を採取して、既定の梱包(3重に)で送る。

 県内ではまだ1例も出ていない。疑いを持った段階で検査も含めて、大学病院に紹介する方がよさそうだ。

 

 講義と実技(具体的な対応を参加者に訊いてから、正解を開設)は笑いありの楽しいものだった。とりあえず、「エムポックス診療の手引き 第2.0版」をダウンロードした。

 

 (ひまわり医院ホームページから)

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脳梗塞

2024年12月13日 | 脳神経疾患

 12月10日(火)に地域の基幹病院脳神経内科から、脳梗塞の70歳代後半の男性が転院してきた。

 11月13日の夜間に右半身麻痺が発症した。病院に搬入されて、11月14日午前1時に頭部CTが行われた。脳出血はなく、脳梗塞はまだ描出されていない。午前2時に頭部MRIが行われて、拡散強調画像で左放線冠に新規の脳梗塞を認めている。FLAIR画像ではまだ描出されていない。

 入院してその日の午後5時前に頭部CTが行われていて、CTでも脳梗塞は描出されている。

 入院翌日の11月15日午前11時に頭部MRIが再検されていて、搬入時よりは梗塞巣がやや増大していた。これは進行の度合いを見たのだろう。

 転院時にCDに入っていた画像で、入院後の変化がよくわかる。転院時に画像添付なしというのはほとんどないが、どのくらいの画像を入れるかは担当医によって違う。

 

 ラクナ梗塞になるが、場所が悪く、右半身麻痺はほぼ完全麻痺だった。リハビリをしても歩行はできないので、介助で車椅子移乗までになる。構語障害・嚥下障害もあるが、なんとか食事摂取はできる。

 転院翌日の血液検査で炎症反応の上昇(白血球15000・CRP15)があって、発熱はなかったが、ちょっと驚いた。胸腹部CTで確認したが、肺炎(誤嚥性)はなかった。尿カテーテルが留置されていて尿混濁があり、除外診断にはなるが、尿路感染症を反映しているらしい。

 陳旧性心筋梗塞の既往があり、抗血小板薬を2剤内服していた状態で脳梗塞を発症している。CTで冠動脈3枝の石灰化が目立ち、動脈の走行がわかるくらいだった。家族には入院中の脳梗塞、心筋梗塞がありうることをお伝えした。

 

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COVID-19肺炎治療後

2024年12月12日 | COVID-19

 12月7日に記載したCOVID-19肺炎の80歳代半ばの男性のその後。

 11月27日に発症して、11月29日に発熱・酸素飽和度低下で入所している施設から救急搬入された。白血球9100・CRP7.9と炎症反応の上昇があった。胸部CTで肺野に淡い陰影が散在している。酸素吸入2L/分と、レムデシビル点滴静注(5日間)と抗菌薬(セフトリアキソン)で開始した。

 12月3日の検査で解熱はして、酸素吸入量は同程度で経過は悪くないかと思ったが、白血球7700・CRP21.4とぐっと上昇した。胸部CTで確認すると、両側肺野にすりガラス陰影と浸潤影が広がっていた。

 もともと施設では嚥下調整食3を食べていて、嚥下は良くない。喀痰がからみ、頻回の吸引を要した。両側下肺野の陰影は誤嚥性肺炎の可能性があり、抗菌薬をゾシン(PIPC/TAZ)に変更した。

 すりガラス陰影はコロナそのものの肺炎像に見える。呼吸器外来に来ている先生(大学病院感染症内科で、COVID-19を多数診ている)に相談して、デキサメサゾン8mg(6.6mg)/日を使用開始した。

 ゾシンへの変更だけで白血球6600・CRP7.4となっていたので、細菌性肺炎の要素が多かったことになるか。デキサメサゾンは8mgを5日間使用して、その後は4mg(1.65mgX2)に漸減した。酸素吸入は漸減中止できた。

 12月11日には白血球9900(ステロイド投与による)・CRP2.2と改善していた。胸部CTではすりガラス陰影・浸潤影の軽減を認めた。

 デキサメサゾンは8mgを5日間、4mgから2mgに漸減する予定だった。予定はそのままだが、全体で予定の10日間よりは少し長くすることにした。

 肺炎は改善したが、嚥下障害で経口摂取が難しい。そもそも姿勢は首が後屈して嚥下し難い。STさんに頼んでいるが、経口摂取は難しいかもしれない。

 

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肺血栓塞栓症

2024年12月11日 | 循環器疾患

 12月6日(金)の当直の時に、7日午前2時過ぎに70歳代後半の女性が救急搬入された。トイレに行って戻る時に倒れたということだった。救急隊到着時に血圧が70/50mmHgと低下していた。

 搬入中に血圧が170mmHgまで上がったというが、搬入時は107/87mmHgだった。酸素飽和度は92~94%(室内気)。意識は清明で普通に会話ができる。体温36.3℃。手足の冷感があって、寒いと訴えた。

 

 この患者さんは内科医院に高血圧症・慢性腎臓病で通院していた。今年の1月に腎機能の悪化で当院の腎臓内科に紹介されている。多発性嚢胞腎polycystic kidneyがあった。家族(娘2人)の検査も行われていた(なかった)。血清クレアチニンは3mg/dL台でいずれ悪化した時は透析予定となっている。

 胸痛や呼吸苦の訴えはなかった。心電図は洞調律で右脚ブロックだけで虚血性変化はなかった。(以前は右脚ブロックはなかった)血圧低下なので脳血管障害は否定的だが、念のため撮影して異常はなかった。胸腹部CTで心拡大はあるが、肺野に異常はなかった。

 血液検査(試験紙使用の簡易検査)では白血球10300・CRP3.2と軽度の炎症反応上昇を認めた。肝機能は異常なかった。CTで以前から肝臓の左葉を中心に小嚢胞の多発があるが、前回と同様だった。(時間外は凝固検査はできない)

 家族の話では腎盂腎炎を繰り返しているということだった。(入院はしていないので膀胱炎くらいなのか、発熱を伴ったのか詳しくはわからない。

 尿路感染症疑いとして、入院で点滴・抗菌薬で経過をみることにした。入院すると、午前8時に病棟から血圧が80mmHg台と連絡がきた。呼吸苦は訴えないが酸素飽和度も90~92%だった。

 酸素吸入2L/分を開始して、補液1000ml追加で血圧は100~110台になって、通常の持続点滴だけ(1500ml/日)で安定した。尿路感染症からの敗血症性ショックになった可能性を考えていた。

 発熱が見られないのは感染症としての重症度が高いのかもしれない、尿路感染症を繰り返していて起炎菌は通常の菌種ではなく、難治の大腸菌ESBLなどかもしれない。抗菌薬をセフトリアキソンからメロペネムに変更した。

 そのまま週末を過ごして、バイタルは同様だった。12月9日(月)に病棟に診に行った、血圧は100~110mmHgだが、元々高血圧症なので血圧が低下していることになる。手足の冷感はまだあった。

 

 外来で診ている腎臓内科の若い先生と相談していたが、別の内科の若い先生が、CTで肺動脈内に血栓があるようだと指摘してくれた。見直すと右肺動脈と左肺動脈の分枝に血栓を示唆する高濃度物質を認める。血液検査で凝固検査も提出していたが、Dダイマーが18.7と上昇していた。(もっと高値でもいいくらいだが)

 肺血栓塞栓症だった。心エコー検査を検査室に緊急で依頼すると、右房・右室の拡張を認めた。(当院の心エコーは他院の検査技師が月曜日だけ来て行っている)

 多発性嚢胞腎による慢性腎臓病(今回は血清クレアチニン4.4mg/dL)もあり、そこに肺血栓塞栓症が発症している。全身管理になると思われて大学病院救急科に連絡した。

 若い(声で判断)女性医師が出られて、それは循環器内科でしょうといわれた。親切に循環器内科の先生に回してくれた。病状を説明して、地域の基幹病院は受け入れ不可だったことを伝えると、受けてくれた。家族にも連絡して救急搬送となった。

 

 改めて両下肢を確認したが、腫脹・疼痛はなかった。深部静脈血栓症があるはずだが、診察上はわからない。多発性嚢胞腎で下大静脈に影響が出るのか。

 トイレに行って突然倒れたことから、その時に発症した可能性もある。ただその日の昼から体調が悪く、昼食摂取はわずかで、夕食は食べられなかったという。救急車内で急に血圧が上昇したということもある。肺動脈内の血栓が詰まりかけたり、外れたり(あるいは末梢に流れたり)と変化した可能性がある。週末急変しかったのは運が良かった。

 

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