なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

高浸透圧高血糖症候群

2024年09月25日 | 糖尿病

 9月24日(火)の午後4時頃に救急外来を診ていた腎臓内科の若い先生から連絡がきた。

 救急搬入された70歳前半の男性の血糖が高く(636mg/dL)、高ナトリウム血症(169mmol/L)もあるということだった。輸液をどうしましょうかという。

 救急室に行ってみると、血清カリウムが3.2と低下しているのもあるが、それより血圧が70mmHg台だった。高浸透圧高血糖症候群(HHS)で脱水からの血圧低下が起きている。

 (酢酸)リンゲル液を全開で流した。1本目が終わるころには血圧が90mmHgになり、2本目になってからは100mmHgになってきた。

 普段は消化器科の外来に通院していて、DPP4阻害薬とSGLT2阻害薬の合剤が処方されている。血液ガスはPaO2 246・PaCO2 57.3・pH 7.396(酸素吸入あり)とアシドーシスは起きていない。

 別の救急搬入も入ったところで、困っていた。可能ならば糖尿病科のある地域の基幹病院に依頼してみては、と勧めた。連絡すると受けてもらえることになり、救急搬送となった。

 当院は時間外は検査技師が不在なので、POCTと試験紙利用の簡易検査だけで診療している。血液ガスの器械を使用して、管理できなくはないが、マンパワーのある病院にお願いする方が救命のためにはいい。

 

 若い先生は大学病院腎臓内科の所属だが、内科専攻医でまだ今年で3年目の先生だ。高ナトリウム血症でのリンゲルの大量投与に躊躇していたが、脱水による血圧低下状態であり、リンゲル液自体のナトリウム濃度は患者さんのナトリウム値より低いので問題はない。

 今回はカリウムの補充が最初から必要な値だった。3本目からは点滴速度を落として塩化カリウム混合でいくか、カリウムなしの点滴との併用になるだろう。またHHSは補液優先になるので、ある程度点滴してからインスリン投与になる。(はず)

 

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高浸透圧高血糖症候群

2024年09月18日 | 糖尿病

 施設入所中にCOVID-19に罹患した90歳代前半の男性は、隔離解除後も食事摂取が進まなかった。

 末梢静脈からの点滴を続けていたが、むしろしだいに摂取量は低下した。聴覚言語療法士(ST)も経口摂取は難しいとの判断になった。

 高カロリー輸液に切り替えて、昼だけの嚥下訓練を続いてはいた。9月17日の早朝から発熱があり、喀痰が増加していた。嚥下訓練自体が誤嚥性肺炎のリスクになる。

 感染症の評価として血液検査を行うと、炎症反応の上昇があった。ところが、それ以外の異常があり、血糖583mg/dl・血清ナトリウム173・BUN64.6と高値になっていた。

 血液ガスでアシドーシスはなく、尿ケトン体も陰性で、高浸透圧高血糖症候群だった。

 入院時のHbA1は5%台で糖尿病はなかったことで油断していた。血液検査の間隔がちょっと空いていた。

 急速に3時間点滴を行って(超高齢なので規定よりはゆっくり)、血糖は400mg/dl台になった。インスリンは点滴静注も考慮してポンプを用意したが、皮下注を1回して反応をみることにした。夕方には血糖が200mg/dl台まで下がった。

 メインの点滴をソリタT3に切り替えて、(酢酸)リンゲル液を側管から入れて脱水症の補正を行った。18日には血糖が160~180mg/dlで推移した。血清ナトリウムはまだ高く、Na含量の少ない点滴に調整した。

 セフトリアキソンで解熱したので、広域抗菌薬には切り替えないで継続することにした。もともと問いかけにはひとこと簡単な返事をするくらいだが、昨日はもごもごした声で聞き取りにくなっていた。

 病状が落ち着けば、療養型病床のある病院への転院になるが、しばらくは無理なようだ。高カロリー輸液の時は、定期的に(週1くらいは)検査を1か月先くらいまであらかじめ入れておく方がいいのだった。

 

 

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「漢方薬を試してみたい」

2024年09月13日 | 糖尿病

 内科外来に通院している60歳代初めの男性は、別の病院の看護師をしている。DPP4阻害薬とメトホルミンにSU薬少量を処方して、HbA1cが7%の前半から後半で推移していた。

 SGLT2阻害薬を勧めていたが、処方の変更(追加)を希望しなかった。キッパリ断るというのではなく、のらりくらりと話を逸らすという感じだった。

 受診のたびに勧めていたので、一時使ってみることになったが、頻尿多尿で仕事にならないと、数日でやめてしまった。飲み始めの症状で少し我慢して続けてみてはと勧めたがだめだった。

 GLP-1受容体作動薬でもインスリンでも、する気になれば職業上すぐにできるはずだが、注射はいやということだった。

 そのうち何かで見たのか使っている人の話を聞いたのか、SGLT2阻害薬を使ってみると自分から言った。外来で2回(2か月処方)だして、HbA1cが7%台前半で推移していた。しばらく継続して、それで改善しない時は、GLP-1受容体作動薬かGIP/GLP-1受容体作動薬も勧めてみる予定だった。

 

 今週外来に来た時は、予約の取り直しをしての受診で、薬は2週間ほどなくなっていたはずだった。HbA1cが7.7%と上昇していた。まずはきちんと再開してと思ったが、別の話が出た。

 通信販売で購入した漢方薬を試しているので、糖尿病薬を中止したいという。漢方薬の名前を訊いたが、通常の漢方薬名ではなかった。「糖尿病でも高血圧症でも何でも効く」と主張する。

 病院の治療に自分で追加するなら構わないが、糖尿病薬を中止するとHbA1cが9%かもっと上昇して悪化すると伝えた。数回繰り返して伝えたが、とにかく一度試してみたいのでと聞き入れなかった。

 高脂血症と高尿酸血症の薬は出していいそうで、それだけ処方して、2か月後(希望で)の外来予約とした。もし高血糖の症状が出る時は予約日前に受診するように伝えた。

 その漢方薬は1か月1万円ちょっとするそうだ。こういうものは、数千円では安すぎて信用されない、といって1か月5万円では購入されない。ちょうどいい高めの金額である1万円から2万円に設定されている。

 

 何代か前の糖尿病の教授は、いわゆる民間薬が大嫌いだった。患者さんがそれを使うというと、もう診察はしないことにしていた。大抵の糖尿病の先生は、病院の治療にプラスして使用する分には黙認というスタンスだろう。

 

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GIP/GLP-1受容体作動薬

2024年09月08日 | 糖尿病

 9月7日(土)にGIP/GLP-1受容体作動薬の「マンジャロ」の講演会に行ってきた。すでに長期処方可能になっているが、まだ使用していなかった。

 GLP-1受容体作動薬は、以前からのトルリシティ(デュラグルチド)をずっと使用していて、オゼンピック(セマグリチド)も使用していなかった。

 コロナ禍でMRさんとあまり会わなかったり、講演会に出ることもなかったがということもあるが、自分でも糖尿病治療に関して遅れてきていると思っていた。

 製品の方でも、1回1本使い切りと使用しやすいアテオス製剤が品薄で手に入りにくかったという事情もあった。遅ればせながらだが、専門医の講演を直接聴いて、使い始めようと思っての出席だった。わかりやすい内容で、「当たり」の講演会。

 

 マンジャロ(チルゼパチド)はGIP/GLP-1受容体作動薬で、開始は週1回2.5mgを4週間投与して、その後は週1回5mgを皮下注する。他のGLP-1受容体作動薬と比較してHbA1c低下も体重減少も上回る。

 その代わり、副作用の嘔気・嘔吐や下痢も出やすい、かと思っていたが、GLP-1の副作用をGIPが相殺するのでそれほどではないそうだ。値段はGLP-1受容体作動薬より1000円ほど高い。

 GLP-1受容体作動薬を使用していなかった患者さんほどではないが、GLP-1受容体作動薬からの切り替えでも上乗せ効果がある。今後は積極的に使用しようと思う。

体重減少効果を持つ糖尿病新薬:マンジャロ|糖尿病内科(千船 ...

 

 マンジャロの適応は2型糖尿病だけだが、オンライン診療では肥満薬として薬価より高い値段で使用されている。マンジャロで検索すると、楽天市場が出てきたが、これはキリマンジャロだった。

 

 

世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「マンジャロ皮下注 ...

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1型糖尿病

2024年06月29日 | 糖尿病

 当院の糖尿病外来は、週1回大学病院の糖尿病代謝科の先生に来てもらっている。糖尿病外来に通院している54歳女性が、手指の痛みで一般内科の外来に紹介されていた。

 リウマチ膠原病外来も大学病院のリウマチ膠原病科から隔週で来てもらっている。紹介を受けた常勤の先生はリウマチのマーカーの提出だけして、そちらの外来へ回していた。

 

 画面で見ると糖尿病の治療はインスリン注射だけなので、ひょっとしたらと思って確認したが、1型糖尿病だった。18歳時に発症となっていた。

 現在はインスリン強化療法(超速効型毎食前3回+持効型1回)になっている。ずっとそうなのかというと、意外に今年になってからだった。

 当院が新築移転した2002年からの記録した確認できない(患者さんは発症10年目)。その時は一般内科外来で、インスリンはペンフィル30R(速効型30%+中間型70%)の朝夕2回打ちだった。

 その後2005年にはペンフィル50R(速効型50%+中間型50%)朝夕+ヒューマログ(超速効型)昼になった。2006年はヒューマログ50ミックス(超速効型50%+中間型50%)朝夕+ヒューマログ(超速効型)昼に変更している。

 そこからは担当医が何度か変わったが同じ治療だった。1型糖尿病ならばインスリン強化療法になると思われるが、この患者さんはHbA1cが7.0%前後と血糖コントロール良好な状態で推移していた。優秀な患者さんで、あえて変更しなくてもよかったのだろう。

 2010年に外注検査を提出していて、血中Cペプチドは感度以下で、抗GAD抗体は陽性だった(発症28年目の検査)。

 速効型と中間型しかなかったころからの世代としては、これまでのインスリン製剤の変遷(発展)を思ってしまった。

 

 

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低血糖(血糖20mg/dL)

2024年05月26日 | 糖尿病

 5月22日(水)の午後3時からICT(感染管理チーム)のラウンドをしていた。ICTラウンドは、毎週水曜の一つの項目だけを確認する短いラウンドと、月1回第3木曜日の感染症専門医が来た時の院内の各部署を詳しく見るラウンドがある。

 その日は点滴台のチェックをしていた。最後はリハビリ病棟だった。ラウンドが終わって引き上げようとすると、看護師長さんが患者さんをストレッチャーに乗せてナースステーションに運び込んだ。

 「低血糖です」という。てっきり入院の患者さんかと思ったが、そうではなかった。入院している母親の面会に来た50歳男性だった。

 

 名前を聞いてすぐに思い出した。1型糖尿病で以前は当院に通院していた患者さんだった。血糖コントロール不良と低血糖などで10回くらい入院している。内科の別の先生(人情派)が苦労して診ていた。最後は10年ちょっと前で、外科に入院して下肢の切断術(壊疽が治らなかった)を受けていた。

 現在は地域の基幹病院の糖尿病科に通院して、インスリン強化療法を受けている。昨年12月にも当院に低血糖で救急搬入されていた。ブドウ糖点滴静注+静注ですぐに回復して、帰宅している。

 

 今回も血糖20mg/dLと低下していて、最初はしゃべっていたが、すぐに傾眠となり内服はできなくなった。グルコース入りの点滴を入れて、50%グルコース20mLを静注すると、すぐにしっかり開眼して普通にしゃべり出した。もともと饒舌な方なので、分かりやすい。

 その後、外来の処置室に移動して、30分後、1時間後と血糖を測定した。売店で購入した軽食(パンと飲み物)をとってもらって帰宅とした。

 

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1型糖尿病の血糖変動

2024年04月10日 | 糖尿病

 3月31日に記載した1型糖尿病の83歳女性のその後。転院後2週間経過した。

 基本的には先方の病院の糖尿病専門医の指示で継続している。持効型インスリン(トレシーバ9単位)を昼に固定した単位で皮下注する。超速効型インスリンは朝=昼>夕(ヒューマログ8-8-4-0単位)と単位が調整してあった。それをさらに食事摂取量が少ない時は減量する(食直後に皮下注)

 朝の血糖が75~117mg/dLで持効型はそのまま継続とした(一時朝が高めでトレシーバを2単位増量したが、また戻した)。昼・夕・就寝前に血糖は115~202mg/dLで推移していた。

 4月4日に発熱があり、膝関節炎らしかった(肺炎・尿路感染症はなかった)。偽痛風かと思われたが、膝関節内に石灰化はなかった。転院時から高尿酸血症があり、治療を開始していたがまだ高値だった。NSAIDs(セレコキシブ)を開始して、解熱して膝痛も軽快した。

 4月7日(日)の就寝前が血糖422mg/dLと高値で、8日(月)朝も450mg/dLで、昼はHi(血糖600mg/dL)と出てしまった。(意識低下はなく、食事摂取も普通)

 血糖高値の時は2単位増量としていたが、あまりに高いので病棟看護師からどうしましょうと連絡がきた。高い時(>300m/dLは2単位増量、さらに高い時(>400mg/dL)は4単位増量とした。夕は412mgdL、就寝前は287mg/dLとしだいに低下してきて、9日の朝は168mg/dLとまだ高いが改善してきた。

 外注検査では抗GAD抗体陰性で、血中Cペプチドは測定感度以下だった。抗GAD抗体は最初から陰性で劇症1型だったのかもしれない。

 

 「糖尿病診療ハンドブック」第6版(Ver.6)が出た。初版から購入しているが、第5版ではなんでもかんでも記載という大分厚い本になっていた。第6版はそれを反省してか、大事なことだけ記載するというわかりやすいすっきりした内容になった。

ここが知りたい!糖尿病診療ハンドブック Ver.6

 

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高齢の1型糖尿病

2024年03月31日 | 糖尿病

 3月27日(水)に右大腿骨頸部骨折の83歳女性が地域の基幹病院から転院してきた。先方の整形外科から当院の整形外科への紹介だが、骨折は保存的治療となっていた(整形外科としてはあまりやることはない?)。

 1型糖尿病で先方の病院の糖尿病科に通院している。インスリン強化療法をしているが、それでも血糖の上下が極端だった。内科に血糖コントロールを依頼された。

 経過は2月13日から発熱があり、翌日にCOVID-19と診断された。その後、自宅で転倒骨折が起きたが、受診を控えていた(受けてもらえなかった?)。隔離解除の2月下旬になって、病院に連絡して、2月28日に入院となった。

 当初は手術を予定していたそうだ。しかし、血糖が40~600mg/dl以上と変動していたこと、もともとのADLが自宅でやっとトイレに行くことから、保存的治療となった。

 

 問題の1型糖尿病は2017年に発症していること、自己インスリン分泌能が高度に低下していわゆるブリットルな血糖変動、と記載されていた。食事量も不安定なので、食後に超速効型を使用していた。

 76歳の1型糖尿病というのは何だろうか。1型は急性発症、緩徐進行型、劇症とあるが、どれに相当するのか。本人に訊いても、若い時は糖尿病がなかったらしい、ということしかわからない。発症の経緯も、どこの医療機関を受診してきたかも覚えていないという。

 可能性としては緩徐進行型で、インスリン依存状態になってから受診して、糖尿病専門医へ紹介されたということではないか。

 息子と二人暮らしだが、日中は一人になる。昼のインスリン注射はヘルパーさんの手助けでしているという。単位だけ合わせて本人に手渡すのだろうが、押す力がないと注射できない。本人の手を添えてヘルパーさんが押しているのかもしれない。

 抗GAD抗体と血中Cペプチド測定を外注で提出した。

 

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CareNeTV メトホルミン・イメグリミン

2024年02月29日 | 糖尿病

CareNeTV

プライマリ・ケアの疑問
Dr.前野のスペシャリストにQ
糖尿病アップデート編
岩岡秀明先生

第5回 メトホルミン・イメグリミン

メトホルミンが第1選択
メトホルミンが優先される理由

ASCVD(動脈硬化性心血管疾患)、心不全、CKD患者
第1選択薬はSGLT2阻害薬
(米国糖尿病学会ガイドライン) となっているが、日本では

1.日本人の心血管疾患リスクは米国人よりも低いためSGLT2阻害薬によるベネフィットも小さい
2.SGLT2阻害薬のエビデンスの大半はメトホルミンへの上乗せ効果を示している
3.SGLT2阻害薬の長期的な効果、安全性が未確立
4.SGLT2阻害薬は高価

メトホルミンの適正使用に関するRecommendation
1.透析患者を含む腎機能障害患者
・メトホルミンの使用に当たっては腎機能をeGFRで評価する
eGFRが30mL/分/1.73㎡未満の高度腎機能障害の患者ではメトホルミンは禁忌である
eGFRが30~45mL/分/1.73㎡の場合にはリスクとベネフィットを勘案して慎重投与とする
eGFRが30~60mL/分1.73㎡の中等度腎機能障害の患者では腎機能に応じて添付文書上の最高用量の目安を参考に用量を調整する
(日本糖尿病学会 メトホルミンの適正使用に関するRecommendation.2020.)

2.脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取などの患者への注意・指導が必要な状態
・すべてのメトホルミンは、
 脱水状態が懸念される下痢・嘔吐などの胃腸障害のある患者
 過度のアルコール摂取の患者
 で禁忌である
・利尿作用を有する薬剤(利尿薬、SGLT2阻害薬など)との併用時には、とくに脱水に対する注意が必要である

3.心血管・肺機能障害、手術後、肝機能障害などの患者
・すべてのメトホルミンは
 高度の心血管
 肺機能障害(ショック、急性うっ血性心不全、急性心筋梗塞、呼吸不全、肺塞栓などの低酸素血症を伴いやすい状態)
 外科手術前後の患者(飲食物の摂取が制限されない小手術を除く)
 には禁忌である
・軽度~中等度の肝機能障害には慎重投与である

eGFR 60以上 
 造影CTの時休薬しなくてよい
eGFR 30~60の場合
 造影剤投与後48時間はメトホルミンを休薬
 腎機能悪化が懸念される場合はeGFRで腎機能を評価した後に再開

最高投与量の目安
 30≦eGFR<45:750mg/日
 45≦eGFR<60:1500mg/日
※とくに「30≦eGFR<45」の患者では治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ使用

岩岡先生
eGFR 30~45の場合
 eGFR 30~45では新規に処方しない
 万一処方する際は腎機能を定期的に確認し、750mg/日までに留める

メトホルミンを上手に使うポイントは
500mg/日から開始し、1500mg/日までは漸増する
1日2回、朝・夕の投与とする
夕食時の飲み忘れがある場合、胃腸症状がなければ「1000mg/日、1回朝のみの投与」も可能
※1日2回投与と比較して血糖降下作用に遜色はない

第2選択薬
メトホルミンが禁忌の場合
▸SGLT2阻害薬
(心血管イベント抑制と神保g作用のエビデンスがあるもの)
エンパグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジン→ASCVD、心不全、CKDのいずれかがあるorハイリスクの場合
▸DPP4阻害薬
→これらの合併症がない場合


イメグリミン(ツイミーグ)
▸メトホルミンと似た構造式
▸2つの作用で血糖降下させる
膵作用
ミトコンドリアを介してグルコース濃度依存的にインスリン分泌を促す
膵外作用
肝臓、骨格筋での糖代謝を改善してインスリン抵抗性を改善する

▸TIMES1試験:イメグリミン単独投与(1000㎎1日2回)
→投与24週時点のHbA1c変化量
 イメグリミン-0.72%
 プラセボ投与群+0.15%
▸TIMES2試験:ほかの血糖降下薬とイメグリミン(1000㎎1日2回)併用
→投与52週間後のHbA1c変化量を観察
 DPP4阻害薬と併用-0.92%(一番低下)
 GLP1受容体作動薬と併用-0.12%のみ(理由は不明)

▸1回2錠(500㎎×2=1000mgを1日2回、朝・夕に投与
eGFR 45mL/分/1.73㎡未満の腎障害患者への投与は推奨されない
メトホルミンとの併用は避ける
・作用機序の一部が共通している可能性がある
・両薬の併用で消化器症状を多く認めたため
▸インスリン製剤、SU薬、グリニド薬と併用する場合→低血糖リスクを避けるため、適宜減量する

プライマリケアで、メトホルミンから切り替える必要はない
現時点では糖尿病専門医が使用すべき薬剤

 

Dr.前野のここがポイント
メトホルミン
・禁忌を除きメトホルミンが第一選択薬
・eGFR 60以上あれば造影CT時の休薬は不要
メトホルミン使用のポイント
・1日500mgから開始し、漸増する
・1日2回、朝・夕の投与とする

イメグリミン
・「膵作用」と「膵外作用」の2つで血糖を低下させる
・プライマリケアでは使用せず、エビデンスの集積を待つ

 

 メトホルミンの投与法で朝のみ500mg~1000mgも可能というのは、あまり記載されていないので参考になる。

 イメグリミンは10例弱で使用している。講義では現時点では専門医が慎重に使用する薬とされているので、本当はよくないのかもしれない。市内のクリニックでは新薬好きの先生が使用していた。

 下記の本を始め、岩岡先生の本が次々に出るので、購入することにした。

プライマリ・ケア医のための新・糖尿病診療

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CTでコロナと診断

2024年02月14日 | 糖尿病

 2月13日の午後に地域包括ケア病棟の看護師長さんから、入院している86歳男性がコロナ(COVID-19)を発症した、と報告が来た。

 別の内科の先生が1月9日から入院治療をしていて、すでに1か月以上入院している。13日にリハビリ病棟でコロナ罹患と判明した患者さんはずっと家族の面会がないが、こちらの患者さんは時々家族が面会に来ていた。

 

 1月9日は尿路感染症として入院した。抗菌薬投与(セフトリアキソン)で解熱軽快して、炎症反応も軽快していた。明らかな肺炎像がなく、胆道感染症なども否定的で、除外診断としての尿路感染症だった。

 CRPが入院時の26.4が、10前後に低下したが、その後横ばいとなったのを気にしていたようだ。尿培養はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS)が検出されている。多分コンタミで起炎菌とはし難いが、疑心暗鬼的になり、バンコマイシン投与を開始していた。

 平熱~微熱で推移して、改めて感染症の有無を検索しようとして、2月13日に胸腹部CTを行っていた。すると、胸膜直下に散在する、いかにもコロナ(COVID-19)という陰影が描出された。

 SARS-CoV-2の迅速PCR検査を提出すると陽性だった。食欲低下もあり、抗ウイルス薬はレムデシビル点滴静注を開始した。

 右肺に胸水貯留があり、無気肺像を伴っている。心不全というよりは感染症(肺炎・胸膜炎)が疑われる。炎症反応がくすぶっていたのは、これが原因だったのかもしれない。こちらは誤嚥性肺炎に準じた抗菌薬投与となる。

 

 別な病棟で関連はない。それぞれの病棟スタッフで発熱など症状がある人はいない。無症状感染者は検査をしないと把握できない。(厳密には全員検査になってしまう)

 2か所の病棟でCOVID-19の患者さんが出ると、入院が制限されて困ったことになる。

 

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