なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

脳幹梗塞

2024年10月04日 | 精神科疾患

 10月3日は当直だった。午後4時過ぎに隣町の診療所から80歳代後半の女性が紹介されて来るので、診てほしいと地域医療連携室からいわれた。

 施設に入所していて、午前4時過ぎに転倒して後頭部を打撲していた。意識障害も麻痺もなかった。診療所を受診して、当院に頭部CT撮影の依頼が来た。

 診察の依頼はなく、画像だけの依頼だった。以前の放射線科医がいたころは、すぐに読影して画像と読影レポートを返していた。放射線科医がいなくなってからは、放射線科の読影は遠隔診断になった。画像の依頼は画像を撮影・撮像してCDに入れて返すだけになっている。

 紹介した診療所では、頭部CTで頭蓋内出血はないと判断したようだ。その日の午後になって、身体が右に傾くようになった。すでに診療所の医師は帰ってしまっていた。電話での指示かもしれないが、病院に連れていくように、となった。

 隣町といっても山間部なので、救急要請して当院に約40分かかって到着した。意識は清明で会話はできるが、認知症はある。両肩が少し拘縮して麻痺の左右差はよくわからないが、症状からは右半身の軽度の脱力があるのだろう。施設職員と家族はいつもより喋り方が少し呂律がまわらないようだという。

 頭部MRIを行うと、左脳幹の橋に梗塞を認めた。脳幹梗塞だった。その目でみてしまうが、日中に撮影して頭部CTでも同じ部位に低濃度があり、脳梗塞が示していた。

 朝方に転倒した時には脳梗塞が発症していた(夜間に)ということのようだ。高齢で施設入所者だが、脳幹梗塞ということで地域の基幹病院に連絡した。

 急性期の治療をお願いすると受けてくれたので、ありがたく救急搬送した。

 

 画像だけの依頼を受けて、撮影・撮像だけして返すというのはまずいのだはないか。

 

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嘔気があり、泣いています

2024年06月11日 | 精神科疾患

 6月8日(土)は当直だった。救急搬入はなかったが、喘息発作や脳梗塞の患者さんが受診して午前1時まで断続的な診療となた。

 朝から嘔気が続いているという19歳女性が受診した。大学病院の精神科に通院して向精神薬が処方されていた。

 日中に2回嘔吐していた。心窩部に若干痛みがあり、腹部は平坦・軟だが心窩部に軽度に圧痛があるかもしれない。下痢はしていないという。水分はとっていた。

 診察室に入ってきた時から泣いている。痛みや嘔気がひどくてというのではないらしい。母親の話ではこれまでも同様の症状が続くとずっと泣いているという。

 

 小学生の時から当院の小児科医(定年退職後も継続勤務していたが一昨年退職)に頻回に受診していた。感冒症状が多いが、腹痛や頭痛もあった。

 中学3年の時に自宅が火事で全焼した。その後から悪夢にうなされるようになり、不登校となり、昼夜逆転の生活となった。高校2年の時に、このままではどうにもならないと判断して大学病院精神科に紹介していた。心的外傷後ストレス障害(PTSD)としていたが、その前から心身症的な愁訴があったようだ。

 大学病院では向精神薬が処方されている(クエチアピン50mg/日、イフェクサー112.5mg/日、トラゾドン25mg/日)。こういう症状の時は安定剤+SSRIのような処方かと思ったが、抗精神薬もしっかり入っていた。

 点滴をして制吐剤(メトクラプラミド=プリンぺラン)の注射と、P-CAB(タケキャブ)の内服をしてもらった。経過を見たが、母親は泣き止まないので何とかしてほしいという。 

 芸がない気がしたが、いつものヒドロキシジン(アタラックスP)の点滴静注を行うと、ちょっとうとうとしたらしい。悲しげな表情がなくなって泣き止んでいた。

 嘔気も治まったので、点滴が終わったところで帰宅とした。翌日(日曜日)に調子が悪い時はまた点滴に来てくださいと伝えた。あとで確認すると、受診いていて日直の先生が同じ点滴をしていた。

 月曜日は受診しなかったので、良くなったのか、他の病院を受診したかだろう。受診した日はふだんの薬を飲んでいなかったので、嘔気が治まった時にきちんと飲むよう伝えていた。

 

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妄想・異常行動

2024年06月04日 | 精神科疾患

 5月29日(水)に一人暮らしの84歳女性が救急搬入された。市営住宅に住んでいるが、同じ住宅の住人が患者さんの玄関前に血痕があるのに気付いた。

 不審に思って市役所に通報して、そこから警察にも通報された。左頭頂部に血腫があり、血液が頭髪に付着していた。閉眼しているが呼びかけると開眼して会話は可能だった。転倒して頭部打撲したのだろうが、そのままにしていたのだった。

 当院に救急搬入された。救急当番は非常勤外科医だった。頭部CTで右頭頂葉に小出血を認めたが、保存的に経過を見るくらいだった。

 長男の話では、1か月前から意味不明の言動があり、徘徊して近隣住民とトラブルになっていたそうだ。内科の常勤医が担当となって入院した。

 被害妄想があり(毒が入れられている?)、食事摂取しようとしないので、点滴をしていた。当日は特に問題なく過ごしていた。翌日になると、点滴を抜いて点滴セットの先端(点滴ボトルに刺入するところ)を看護師に向けてきた。

 看護師4名で対応して、体幹抑制をしたが、すり抜けて病棟内を徘徊していた。担当医が市役所の係(以前から近隣住民とのトラブルで介入していた)に連絡すると、市内の保健衛生で来ている精神科病院の先生が診察に来た。

 認知症のテストでは案外正答できて、明らかな認知症とはいえないらしい。妄想と異常な言動は若い人ならば統合失調症だが、この年齢だとそうもいえない。若い時から未治療できた統合失調症というのでもないそうだ。病名はどうなるのか。

 もう1名別の精神科医の診察もあり、措置入院となった。数か所の精神科病院に当たったが、軽度だが脳出血があることなどもひっかかった。やっと入院できる病院が決まって、入院翌々日の5月31日に転院となった。

 

 以前、市内の精神科病院の先生に隔週できてもらって、主に認知症の患者さんの対応(処方など)を診てもらっていた。あまり対象になる患者さんがいなかったのと、先方の先生も忙しくなり、精神科回診はなくなってしまった。

 もっともあまり薬を使わない方針の先生だったので、院内の先生の期待(せん妄、BPSDを何とかしてほしい)通りにいかなかったというのもあった。

 

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抗精神薬の投与法

2024年04月06日 | 精神科疾患

 40歳代後半の女性が大学病院から当院の回復期リハビリ病棟に転院してきた。胸髄黄色靭帯骨化症の術後だった。

 担当は整形外科になるが、内科で処方の管理をすることになっている。つまり高血圧症や糖尿病の治療薬を継続したり、少し変更したりという作業になるが、この患者さんは違った。

 鎮痛薬(アセトアミノフェン)以外は、精神科処方だった。統合失調症で精神科病院に通院していて、転院日の翌日が外来予約日になっていた。転院してからそれが判明して、病院の持ち出しになるので、地域医療連携室のMSWが慌てていた。

 抗精神病薬はブロナンセリンの内服が入っていたが、患者さんに話を訊くと、4週間に1回の受診時ごろにアリピプラゾール注射(持続性水懸筋注)を受けているという。こういうものは、治療を中断しやすい患者さんで使用されると思っていたので意外だった。(きちんと通院継続しそうな雰囲気)

 

 「精神診療プラチナマニュアル」第3版が出た。今回疾患名がちょっと変わったこともあり、新たに購入した。

 統合失調症では非定型抗精神病薬から選択される。今どきは、パリペリドン(インヴェガ)・アリピプラゾール(エビリファイ)・ブロナンセリン(ロナセン)が選択されるようだ。

 さらに「効果と忍容性が確認できたら、持効性注射剤への変更を検討する」とあり、基本的に患者さんは治療中断するものとして治療しているらしい。

精神診療プラチナマニュアル Grande 第3版

 

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統合失調症、治療中断

2024年03月19日 | 精神科疾患

 3月16日(土)は当直だった。日付が変わる直前に47歳男性が救急搬入された。

 症状は動悸ということだったが、統合失調症で治療を中断しているという。身体的な評価は行うが、統合失調症の入院治療はできないことを家族に確認してもらった。

 以前にも受診したことがあり、要注意の印が付いていた。「暴力団の一員だと名乗っている」とあった。(病状的にとても勤まらない)

 搬入されると、救急隊が伝えてきた動悸があるわけではない。正常洞調律だった。搬入後、体温が37℃台だったので、コロナとインフルエンザの迅速検査を行ったが陰性だった。(発熱のある患者全員にすることになっている)

 「周囲の人に(悪意をもって)見られている」という。「兄弟とゲームをして心臓が血だらけになる」とも言っていて、主訴動悸というのはそのことらしい。妄想の内容だった。

 血液検査と心電図、それに症状がつかめないので胸腹部CTを行ったが異常はなかった。頻繁に10~20秒くらい急に笑うことを繰り返した(空笑)。

 

 隣県の精神科病院に統合失調症で通院していたが、服薬はしたくないと思っていて、実際に中断していた。体調不良(というか生活ができない)で当地の実家に戻って来ていた。

 父親が、通院している病院に1~2度処方を取りに行ったが、それ以上は本人が受診しないと出せないといわれた。当地の精神科病院にも行ったが、やはり本人が受診しないと処方できないといわれた。

 処方はアリピプラゾール(エビリファイ)12mg錠1錠と単純なものだった。当院にはアリピプラゾール3mgの内用液が入っていた。

 前の前の薬局長が、リスペリゾンより副作用が少ない?というのを何かの講演会で聞いて入れていた。通常はリスペリゾンが処方されるので、ほとんど処方されていなかった。

 当直看護師に薬局から持ってきてもらい、3mg内用液を4包飲ませた。せっかく当院に来たのだから、当院の薬は飲んでほしいと伝えると、拒絶はしなかった。

 父親に身体的には異常がないこと、妄想があり、このまま治療中断が続くと精神科病院入院になることを伝えた。アリピプラゾール2日分を持たせて、週明けには精神科病院に連れて行ってもらうことにした。本人にも、このまま治療を中断すると、したくない入院になってしまい、拘束されてしまうことを伝えた。

 受診や服薬を拒否して、そのまま中断が続く可能性もあるが、そうなると精神科病院のような拘束は一般病院ではとてもできない。認知症のBPSDでの身体拘束は、体力の低下している高齢者だからできるので、40歳代男性には到底無理だ。

 

 父親が気の毒になってくるが、この父親も妻に対する家庭内暴力で、しばしば自宅に警察のパトカーが行っていたはずだ。

 

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ふつうに通販で買える

2024年02月18日 | 精神科疾患

 エチレングルコールで事件が起きている。そういえば当院でもあった、と思い出した。

 

 2018年11月1日(土)の午後5時過ぎに18歳男性が倦怠感・脱力で受診した。祖父がおぶっての受診だった。当時在籍していた内科専攻医の若い先生(自治医大の義務年限)が診察していた。

 血圧は120/75で体温は35.8℃だが、頻脈(122/分)と頻呼吸(30回以上/分)が見られた。会話はできるが、見当識障害があった。

 血液検査で白血球31700・Hb18.8と炎症反応の上昇・血液濃縮があり、血清クレアチニンは1.75mg/dlと上昇していた。LDHも313と異常値だった。

 血液ガスで、pH6.924・PaO2 137・PaCO2 10.6・HCO3 2.2・BE -27.9と著しい代謝性アシドーシスを認めた。本人からの聴取が困難で原因は不明だったが、若い先生は高次医療機関で治療を要すると判断して、大学病院救急科に搬送した。(内科専門医のホスト病院は医療センターなので、大学病院がだめならそちらに交渉したのだろう)

 大学病院救急科からの返事には、もともと統合失調症があること、エチレングリコールによる急性腎不全と診断して、血液濾過透析を行ったこと、深部静脈血栓症を来してDOACを処方していること、が記載されていた。

 大学病院の精神科に通院していて、抗精神薬(オランザピン)や安定剤が処方されていたようだ。

 

 2019年8月22日には心肺停止で当院に救急搬入された。大学病院精神科に入院していたが、その前日に祖父の家に外泊に来ていた。室内を歩いていて、急に倒れて意識がなくなった。

 救急隊到着時は心室細動を認めて、AEDを使用したが反応せず、心静止となった。心肺蘇生・アドレナリン静注で搬入され、蘇生術を続けたが反応はなく、死亡確認に至った。救急当番の女性外科医(当時)が対応したが、その後は外科のトップの先生が、警察との対応を行った。

 Autopsy imagingでは両側肺に肺水腫を認めた。警察の検視のあと解剖のため大学病院に送られることになった。

 

 祖父の話では、3日前にアマゾンから本人宛に荷物が送られてきていたそうだ。中身はわからない。解剖の結果は来ていないので不明だが、前回のことも考えるとエチレングリコールかもしれない。

 エチレングリコールは、アマゾンでもモノタロウでもふつうに購入できる。

 

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アルコールの人

2023年12月03日 | 精神科疾患

 11月29日(水)当直の時に、アルコール多飲の55歳男性が自宅で動けなくなっていると救急隊から搬入依頼が来た。

 酸素10L/分の肺炎を入院させていた。その日整形外科で脊椎の手術をした患者さんでちょっと問題があり、病棟に戻るのが時間外になっていた。病棟が嫌がるだろうとは思ったが、引き受けた。

 

 若い時からアルコール多飲があり、焼酎をかなり飲むそうだ(はっきり量は言わなかった)。1か月前に仕事を辞めていて、一人暮らしをしている。

 後で訊いたところでは、妻とは随分前に離婚していた。息子2人のうち、市内に住んでいる長男が手つづきに来てくれていた。両親と住んでいたが、亡くなってからは一人暮らしだった。

 飲酒量は同じだが、数日前から食事はとれなくなっていた。腹痛はなく、嘔気は若干あるのかもしれないが、食欲がわかなかったそうだ。

 

 血液検査では炎症反応は陰性だった。血清カリウムが2.8と低下していたので、脱力に関係したかもしれない。肝機能は普通のアルコール性肝障害だった。

 CTで見ると、肝臓は脂肪肝になっている。表面の凹凸ははっきりしないが、アルコールの量と期間からみれば肝硬変でもおかしくない。

 ビタミンB1欠乏というのでもないようだが、点滴・電解質補正・ビタミン投与で経過をみることにした。就寝前にはジアゼパム内服を数日続ける。

 

 5年くらい前に吐血で地域の基幹病院に入院していた。嘔吐しているうちに吐血ということだと、マロリーワイスだったか。その後(昨年?)アルコール性と思われる低血糖で意識障害を呈してまた入院した。

 精神科医が嫌酒薬(おそらく)を処方して少し続けてやめてしまったそうだ。精神科外来はないはずなので(院内のリエゾン精神科)、よく診てくれたと思う。

 離婚は正確の不一致、仕事を辞めたのは気に入らなかったからということだが、事実はアルコールがらみ?。息子さんに訊かれたので、県内のアルコール依存の専門病院を教えると、スマホで確認していた。

 

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