なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

転院依頼

2024年12月16日 | 腎疾患

 11月13日、30日に記載した30歳代前半の女性のその後。(その後といっても当院には来ていない。)

 11月12日(火)に地域の基幹病院から当院回復期リハビリ病棟に転院してきた。COVID-19に罹患して先方の病院に入院したが、ARDS(Acute Respiratory Distress Sydrome:急性呼吸窮迫症候群)となり大学病院に搬送された。

 先天性の脳外科疾患で手術歴がある。また睡眠時無呼吸症候群でもともと大学病院の呼吸器内科外来に通院していた。夜間はCPAPを装着していて、肺胞低換気症候群で高二酸化炭素血症もある。

 ECMOを使用して救命されたが、治療経過で廃用症候群となり、寝たきり状態となった。リハビリ目的で基幹病院に戻ったが、すぐに当院にリハビリ転院の依頼が来た。

 当院に転院して来ると、確かに寝たきり状態で、両上下肢は少し挙上できるが、実用にはならない(食事も介助)。週末の11月16日(土)から発熱があり、抗菌薬内服を開始した(末梢血管がほとんで見えない。わずかに手背だけ少しある。)

 11月18日(月)に胸部X線(ポータブル)を見ると、肺炎を来していた。そのまま内服(キノロン)でいけるかと思ったが、20日(水)に再度発熱があり、酸素吸入2L/分を要した。なんとか点滴をして抗菌薬点滴静注を行った。

 解熱したが、21日(木)夜間から酸素飽和度低下があり、酸素吸入4L/分を要した。22日に基幹病院に連絡して、最初は週明けといわれたが、お願いしてその日に転院搬送としてもらった。

 基幹病院到着後に急に酸素飽和度が低下して、無気肺を併発していたそうだ。リハビリ病棟の看護師長さんが基幹病院にいる知り合いの看護師さんに訊くと、到着後に気管挿管・人工呼吸器管理になったという。

 

 先週、当院に転院依頼が来たが、内容をみると、まだ酸素吸入(2L/分)と抗菌薬投与が続いていた。人工呼吸は脱したが、結局気管切開はしていなかった。自力での喀痰排出が困難で、吸引でも十分には排痰できない。

 前回は1週間で肺炎が悪化して転送となったが、その時よりも病状はよくない。現状では転院後数日で悪化が危惧される。時間外に緊急で当院で気管挿管を要する可能性があるが、当院だと当直医によってはできない。年齢的に、適切な対応ができなければ医療訴訟になるだろう。

 気管切開していれば、自力排出・喀痰吸引もできるし、すぐに人工呼吸器を装着できる。(耳鼻咽喉科医も複数おられるので実施は容易だと思う。)

 基幹病院からの転院依頼は、基本的に断らないことになっている。個人の判断ではできないので、基幹病院との協力体制について尽力されている先生(実質的に内科系のリーダー)に相談した。結論としては、この状態では受けられない、ということになった。

(紹介状には、「転院後は当院は終診とします」とあった。急変時は大学病院へ直接搬送するようにということだろう。)

 

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溢水

2024年08月13日 | 腎疾患

 8月11日(日)は日直だった。病棟に血液透析で通院している60歳代半ばの男性が入院していた。

 その日の午前5時過ぎに、呼吸が苦しいという訴えで、自分で車を運転して受診した。10日(土)の当直だった内科医が対応した。

 酸素飽和度が88%(室内気)と低下していて、血圧は224/122と高値だった。胸部X線・CTで両側胸水貯留があった。炎症反応は陰性。

 ふだんでも軽度に胸水が貯留していて、8月9日(金)の透析後の胸部X線でも同様だった。それが悪化した溢水状態だった。

 9日にCOVID-19の患者さんが入院していたので、病棟に診に行くと、連絡を受けた腎臓内科の若い先生が来ていた。緊急透析ができるかMEさんと交渉していた。

 11日日直の仕事が終わるころに、その日の当直看護師の透析部門の看護師長さんが来た。どうなったか訊くと、その日透析はできず、12日(月)にすることになったという。酸素吸入と血圧はペルジピン持続点滴でコントロールして経過をみていた。

 

 11日の日直の夕方にも、血液透析を受けている90歳代前半の女性が酸素飽和度低下で救急搬入された。施設にショートステイ入所していたそうだ。血液透析とショートステイの関係がわからなかったが、ショートステイ入所の状態で透析に通院しているのだった。

 酸素飽和度が室内気で70%台だということで、救急隊は酸素4L/分を投与していた。来院時は酸素飽和度が98~100%だったので、2L/分まで減量できた。血圧は150で多少高めくらいだった。

 こちらも胸部X線・CTで胸水と肺うっ血を認めた。腎臓内科の先生(午前中病棟に来て帰った)に電話連絡すると、酸素吸入だけで経過をみていいということだった。翌月曜日の透析で調整をするようだ。

 

 当院の血液透析は溢水で入院になることはあまりなく、1日に2名入院したのは珍しい。当院の血液透析は、月・水・金コースと火・木・土コースで、前者は午前・午後・夜間とやっている。

 

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全身浮腫その後

2024年05月24日 | 腎疾患

 5月23日(木)病棟で電子カルテを見ていると、「お世話になりました」と患者さんが病棟看護師さんに挨拶して退院するところだった。

 4月19日に記載した全身浮腫の患者さんだった。4月17日に40歳代後半の女性が当院内科外来を受診したが、全身浮腫で著しい腎機能障害(血清クレアチニン9.59mg/dL)を認めた。

 市内の内科医院に糖尿病で通院していて、HbA1c8.4%と血糖コントロールは良くないが、血清クレアチニンは1mg/dL程度(尿蛋白は3+)だった。急性上気道炎症状(咽頭痛)や下痢が続いていたことが、急性増悪のきっかけになったと考えられた。

 利尿薬の投与では無理と判断されて、カテーテルを挿入して緊急透析となった。その後、地域の基幹病院血管外科の先生に依頼して透析用のシャント造設が行われた。3日間転院となって造設後はすぐに当院に戻った。

 今週からシャントを使用しての透析となり、カテーテルは抜去された。

 

 ちょうど担当していた腎臓内科の若い先生がいて、経緯を教えてくれた。入院した時は助かるかどうかという病状だったが、うまくいってよかったという。基幹病院との連携もうまくいっていて、最近は血管外科の先生といい関係ができているという。

 透析のシャントは造設後2週間は使用できないそうで、今週やっと使用できるようになり、維持透析の見込みがついたので退院になったのだった。

 入院時にASO高値が見られて溶連菌感染が関与したかもしれないこと、下痢が続いていて腎前性の要素があったことはわかるが、緊急透析で腎機能が戻るかもしれないという期待は外れたといっていた。(胸部X線は左が4月17日、右が5月20日)

 

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全身浮腫

2024年04月19日 | 腎疾患

 4月17日(水)の午後に救急室で発熱外来をみていた。すると、救急担当の看護師さんたちが、今から腎臓内科の先生が緊急透析になる患者さんのカテーテルを入れる、と慌てていた。

 患者さんは48歳女性で糖尿病で市内の内科医院に通院していた。4月3日に風邪症状があり、医院から処方を受けていた。その10日後から身体のむくみが出現して、同院で利尿薬の処方を受けたが効かなかった。

 その日は息苦しさもあり、当院を受診した。全身の浮腫があった。胸腹部CTで肺うっ血・胸水・腹水貯留を認めた。皮下の浮腫も目立つ。血清クレアチニンが9.19mg/dLと著明に上昇していた。

 外来で診た内科の先生が、腎臓内科の若い先生に診療を依頼して、緊急透析となった。

 

 10年前に流産で産婦人科に入院した際に、糖尿病を指摘された。HbA1c10.6%で、内科に糖尿病治療が依頼されて当方が担当した。当時はHbA1cの表記が、JDSとNGSPの両者でされていて、過渡期だったようだ。(懐かしい)

 DPP4阻害薬から開始して、メトホルミンの追加、SU薬の少量追加(グリクラジド20mg)で、いったんHbAc1は6.7%まで改善した。そこから、HbA1cが7.2→7.8→8.1%と上昇していた。(当時はSGLT2阻害薬・GLP1受容体作動薬はなく、この3種が標準治療)

 インスリンの話などをしたのかもしれないが、当院の電子カルテは2016年からなのでわからない。(検査のオーダリングだけできた)1年ちょっと通院して中断していた。(市内の開業医の先生に紹介はしていない)

 こちらの診療が気に入らなかったのか、現在通院している内科医院は定評のある先生なので(最近代替わりした)、そちらがいいと思って通院先を替えたのかもしれない。

 2019年にたまたま尿管結石で当院を受診した時は血清クレアチニン0.73mg/dLで、2023年10月医院での血清クレアチニンは0.97mg/dLで尿蛋白(3+)だった。糖尿病性腎症はしだいに進行していたが、今回は急激に悪化している。

 腎臓内科の先生はacute on chronicと表現していた。急激な悪化の引き金は何だろう。回復の可能性はあるのだろうか。

 

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