精神科病院から紹介した患者さんが入院したという報告書がFAXで送られてきていた。今年の2月から4月まで脳梗塞で入院していた74歳女性で、認知障害と不穏で在宅介護が困難だった。
市内の内科医院に糖尿病・高血圧症で通院していた。2018年5月に一過性(?)意識消失で当院の神経内科に紹介になった。実際は、SU薬増量後の低血糖だった。
グリメピリドがそれまでの3mg/日から6mg/日といきなりの増量だった。当時でもグリメピリドは0.5mg錠1錠か1mg錠1錠で使用されていて、0.5mg錠半錠での使用もあった。ずいぶん昔はグリメピリドの3mgが1錠か2錠で使用されていたが、最近はまず見ない。
同年6月に糖尿病の治療目的で当院内科に紹介されてきた。SU薬・DPP4阻害薬・メトホルミン・α-GIが処方されていて、HbA1cが8%台だった。
SU薬は減量して、SGLT2阻害薬を追加したが、血糖コントロールは不良であまり変わらなかった。GLP-1受容体作動薬やインスリンの注射は拒否されて、教育入院も拒否なので、治療の工夫が難しかった。
血糖コントロールが良くない話をすると、ちょっとがっかりした様子を見せる。かといって変更の提案に同意はせず、ささっと帰っていった。後から思えば、認知力自体が低下してきていたと思われる。
2023年2月10日に視野障害(同名半盲)と軽度の左不全半身麻痺で、夫と娘といっしょに受診した。(夫とふたり暮らしで娘は別居)いつもひとりで診察室に入って来ていて、家族はその時初めて見た。
外来を診ていた先生が頭部MRIを行い、右後脳動脈領域の脳梗塞散在とMRAで右後大脳動脈を認めた。梗塞巣が広がっていくものと判断された。
入院を勧めたが、症状が一時的に少し軽快していたこともあり、入院を拒否された。家族といっしょに説得したが、やはり拒否された。
金曜日だったので、月曜日には必ず外来に来てもらうことにして、抗血小板薬を開始した。土日も受診可とした。
症状が進行して2月12日日曜日に受診した。日直だった消化器科医が頭部MRIを再検すると、右後大脳動脈領域に脳梗塞が広がっていた。入院にして翌日までの指示を出していたので、月曜日に引き継いだ。
麻痺自体は軽度だったが、同名半盲は固定した。それでも家庭でも生活できるくらいのはずだったが、不穏がひどかった。難聴もあるせいで、特に声が大きい。病棟に声が響いてしまい、抗精神薬の投与を要した。
抗精神薬が少し効きすぎると、ぼんやりとしてしまうので、微調整を要した。脳神経内科医(6月で退職)が、この脳梗塞でここまで認知障害・不穏がひどくなるのかといっていた。(といって他に原因もない)
自宅退院の希望が強く退院したが、ふたり暮らしの夫は癌で通院治療中だった。夫の予後も問題もあり、精神科病院に入院を希望された。
市内の病院を受診したが、認知量の入院待ちが多数いて数か月かかるといわれた。その病院のMSWが他の精神科病院に紹介してはといってくれて、そちらに紹介した。
すぐには入院できないが早期入院の見込み、と返事がきていた。そして今回入院となったのだった。