なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

CO中毒じゃないだろう

2012年02月29日 | Weblog
 70歳台前半女性。急性大動脈解離。
 昨日当直だった外科医に聞いた話。昨日当直帯が始まって間もなく、救急隊からCO中毒の患者ですと連絡が入った。自宅でマキで風呂沸かしていて意識消失したという。それにしても今時どんな風呂なんだろうか。既往としては高血圧症で内科医院に通院している。当院には高圧酸素療法の設備があり、臨床工学士を待機させた。
 病院搬入時、意識は戻っていた。腹部不快感を訴えたが、患者さんは昼食に食べたおにぎりせいだと言っていた。胸痛・背部痛はなし。CO-Hbは正常域だったが、念のため2回測定したという。心電図は異常なし。バイタルサインは正常域。頭部MRIも異常なし。胸腹部CTは単純撮影のみで、異常がないように見えた。入院して経過をみることになった。
 入院後、腹部のモヤモヤ感が強くなり、改めて胸腹部CTを見直すと、大動脈がおかしいと思われた。造影胸腹部CTを撮り直すと、急性大動脈解離で、両側の内頚動脈も巻き込み、胸部大動脈から腹部大動脈に広がっていた。幸い心タンポナーデはなかった。その時点でもバイタルサインは安定していて、胸痛・背部痛は何度聞いてもなかったそうだ。午前1時過ぎに心臓血管外科医のいる高次病院に救急搬送となった。
 今日お昼にその外科の先生に医局のラウンジで会ったので直接経緯を聞いたが、まさしくあの有名な「日々是よろずER診療」にある時間外診療に潜む地雷症例であった。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

改善してきた慢性閉塞性肺疾患

2012年02月28日 | Weblog
 80歳台半ば男性。慢性閉塞性肺疾患急性増悪。
 感染を契機に悪化した慢性閉塞性肺疾患だが、喘鳴が目立ち気管支喘息重責発作ともとれる。酸素吸入(高炭酸ガス血症なし)
・ステロイド大量・気管支拡張剤・抗生剤で強力に治療したが、反応が悪かった。これは助からないかもしれないと思われ、家族にその旨を伝えた。患者さん自身もダメかもしれないと言っていた。人工呼吸器は使用しない方針としていた。
 1週間以上粘って治療していたが、昨日からやっと喘鳴が軽減して、今日から食事を開始した。ステロイドも漸減することにした。ステロイドはコハク酸エステルの問題があり、ふだんはデカドロンを愛用しているが、ステロイドの種類を変更すると効くことがあるとされているので、2種類使用してみた。ステロイド使用についてもっと詳しい指針がほしいが、エビデンスとしてないのだろう。
 今年の冬は呼吸器科のある病院から、退院させたいが家族が暖かくなるまで入院を希望している患者さんや、もう治療は限界で増悪したら最期で退院の見込みがない患者さんの紹介が多かった。
 私の内科は「看取り内科」とでも称すべきもので、癌の治療していて限界となった患者さんの緩和ケアや、超高齢の誤嚥性肺炎の患者さんが多い。したがって、入院患者さんの致死率は病院で一番高い。

(医学書)
 医学書院から筑波大の前野先生が編集した「帰してはいけない外来患者」が出た。ケアネットから出た前野先生のDVDは、目からウロコの症候診断の考え方を述べていて、驚いたものだった。前野先生に総合診療の本を出してほしいと思っていた。
 DVDが出たころにはあまりなかったが、その後総合診療や症候診断の本が続々と発刊されたので、今回の本は内容はとても良いが目からウロコとまではいかなかった。
 それにしても、本の装丁・印刷には不満がある。印字が薄くて、視力低下してきた私には読みにくい。特に症例提示のところは、灰色のバックに黒の印字なので、かなり見にくい。医学書院はA5版のきれいな医学書を作る出版社なのだが、この本の装丁・印刷はひどい。以前に出た医学書院の「臨床推論ダイアローグ」はきれいな本だったが、今回はいったいどうしたんだろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

いきなりこんな状態で

2012年02月27日 | Weblog
 70歳半ば女性。肝硬変・肝癌
 下肢の浮腫で内科クリニックを受診した。胸部X線で胸水を認め、心不全として利尿剤の投与を受けて、心エコーの予約をしたそうだが、受診しなかった。浮腫の悪化と息切れで、そのクリニックを再受診したが、外来でみられる状態ではないため、当院循環器科に連絡があり、救急搬入された。胸水と腹水と全身浮腫があり、心嚢液も貯留していたが、心機能は良好だった。
 黄疸・肝機能障害があり、HBs抗原が陽性で、腹部エコーおよび腹部CTで肝右葉に巨大な腫瘤を認めた。肝臓自体の辺縁は凹凸があった。B型肝炎からの肝硬変・肝癌と診断された。門脈腫瘍塞栓もありそうだ。末梢血管が浮腫で見えず、CVラインを挿入して消化器科に入院となった。
 ふだんは病院に行ってなかったそうだ。ここまで進むと治療はむずかしいだろう。胸腹水や浮腫を多少でも軽減させることができるだろうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

どこまで治療するか

2012年02月27日 | Weblog
 70歳台半ば女性。筋委縮性側索硬化症・嚥下性肺炎
 土曜日の救急外来に救急搬送されて入院した。神経内科に通院中で、食事摂取できないため胃瘻による経管栄養を受けていた。両側下肺野に浸潤影を認め、嚥下性肺炎の診断で入院した。神経内科のカルテには人工呼吸器は装着しない方針となっていた。
 抗生剤投与で解熱したが、喀痰を自力で排出できないため、頻回の喀痰吸引を要する。はたして治せるかどうかわからない。気管切開をすれば喀痰吸引は容易になるが。
 50歳台であれば、気管切開をして、肺炎が悪化すれば人工呼吸器装着となるのだろうが、70歳台ではどうなのだろう。普通はしないような気がするが、家族が希望すればするのかもしれないし、家族がよほど反対しなければそこまでやる方針の病院もあるのだろう。ふだん患者さんとかかわっていない親戚が、それまでの経緯を無視して無理なことを言い出して、家族が迷い出すこともある。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

息切れは心不全ではなくて

2012年02月26日 | Weblog
 昨日の土曜日の日直と当直は大学からの応援医師だった。入院は3名あって、1名の重症肺炎は高次病院へ救急搬送してもらった。今日は入院した患者さんを診察するために病院へ行ってきた。
 
 80歳台後半の男性。
 心房細動と僧帽弁閉鎖不全で当院循環器科に入院した既往がある。内科循環器科のクリニックへ通院していた。今月になって息切れを訴えるようになり、在宅酸素療法を導入していた。それでも息切れがとれず、土曜日の昼前ということもあり、心不全の悪化として当院へ紹介された。受診時の採血でHbが5g/dl弱と著名な貧血を認めた。消化性潰瘍の既往はなく、NSAID内服もない。直腸指診で明らかなタール便・血便はなかった。慢性心不全ではあるが、浮腫はなく心不全の悪化ではない。これでMCVがで小球性ならば慢性の出血なので安心だが、MCVは82と低めの正球性なので、急性出血の可能性があるので油断はできない。輸血(濃厚赤血球)単位を2日間入れて、消化管精査とした。
 今日自分で直腸指診をしたところ、薄い墨色の便だった。病院に入院していたアルコール性肝硬変・食道静脈瘤破裂の60歳台女性が、また吐血して消化器内科医が緊急内視鏡をするところだった。内視鏡検査担当の看護師も来て準備していた。それが終わってから、続いて上部消化管内視鏡をすることにする。のぞいてみると、胃内には出血はなかった。胃角部小弯に胃潰瘍があり、潰瘍底に1か所赤点があったが飛びだした露出血管とはいえない。止血処置まではいらないと判断して検査を終了した。抗血小板剤を2種類内服しているので、良悪性鑑別のための生検は後日とした。
 昨日2単位の輸血が入っているが、それでも眼瞼結膜は明らかに貧血だった。息切れの原因は、心臓・肺・貧血なので、鑑別は難しくないはずだが、慢性心不全として通院していると、心不全の悪化と思い込んでしまうのかもしれない。明日の採血結果をみて、もっと輸血を追加するかどうか決めよう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

呼ばれた消化器内科医

2012年02月25日 | Weblog
 一昨日、病院で一番忙しい消化器内科医が救急外来がら2回呼ばれた。

 60歳台男性。肝硬変・脳出血。
 肝硬変で入院歴がある。C型肝炎があるが、アルコール性でもあり、これまでの受診時の言動からは病院では良くない印象を持たれている方だそうだ。JCS3桁の意識障害があり、救急担当医は食道静脈瘤破裂・肝性脳症を考えたのかもしれない。
 確かに血中アンモニアが高かったが、頭部CTで脳室穿破した脳出血と判明した。貧血はほどんどなく、吐血は食道静脈瘤破裂ではなく、脳出血によるCusing潰瘍のような機序による、急性びらん性胃炎か浅い胃潰瘍であろうと推定された。自発呼吸がいつ止まってもおかしくない状態で、内視鏡検査の適応はない。脳外科に入院になり、消化器内科医は予定検査の詰まっている内視鏡室へ戻って行った。

 70歳台男性。腸閉塞・肺炎。
 吐血した患者さんが来ているということで、また救急外来から呼ばれた。骨髄異形成症候群で他院の血液内科に通院中で、大動脈弁閉鎖不全で本来は手術適応があるらしい。こちらは嘔物の一部が血性ということで、消化管出血としては大したことがなかった。嘔吐した原因を検査することになったが、腹部X線で小腸が拡張してガスと消化液が大量に貯留していた。腹部手術の既往があり、癒着性腸閉塞と診断された。嘔吐した時に誤嚥したようで、右肺に肺炎も起こしていた。腸閉塞として、イレウスチューブを挿入して外科に入院した。
 
 夕方医局で診断書や情報提供書を書いていると、その消化器内科医が来て、日中に呼ばれた話をしてくれた。入院患者もかなり多く診ている先生なので、自分の科で診なくていい患者さんたちだったのでホッとしたという気持ちが顔に出ていた。ほんとに毎日お疲れさまです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

心肺停止というよりは

2012年02月24日 | Weblog
 83歳女性。来院時心肺停止。
 陳旧性心筋梗塞・慢性心不全で循環器科に通院していた。家族と昼食を食べて、自室で寝ていたという。家族が出かけて、午後3時過ぎに帰宅したが、呼びかけても反応がないのに気づいて救急要請した。救急隊到着時、心肺停止・瞳孔散大であった。心肺蘇生術を施行して当院に救急搬入された。すでに体温が低下して冷たくなっていた。心肺蘇生術にまったく反応なく、心肺停止してから相当時間が経っていたと判断された。家族に話をして、心肺蘇生術を中止して、死亡確認した。
 頭部CTで脳出血などはなく、胸腹部CTで著明な心拡大・肺浮腫があり、蘇生術の影響を割り引いても、心不全の悪化が明らかだった。心肺停止には違いないが、実際は心不全の悪化で死亡していたのを発見したという状況だった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

健診は受けたものの

2012年02月23日 | Weblog
 63歳男性。糖尿病・高血圧症。
 転倒して頭部を打撲してので、脳神経外科の外来を受診した。頭部CTで特に頭蓋内出血はなく、単なる打撲と診断された。まあ3か月後に慢性硬膜下出血にならないとも限らないので、注意して下さいで脳外科としては終了だ。
 ところが外来で測定した血圧が200mmHg以上あり、緊急に高血圧症の治療が必要なため、循環器科に紹介となった。早速降圧剤が開始されたが、循環器科で採血したところ、血糖490mg/dl・HbA1c11%と著明な高血糖があると判明した。糖尿病の治療のため、さらに内科に紹介となった。症状はなんともないと言っていたが、よくよく聞くと、それほどは困ってはいないものの頻尿・口渇があるらしい。
 外来で治療してもいいくらい元気だったが、一人暮らしでもあり、入院治療とした。亡くなった父親が糖尿病だったそうだ。3年前くらいの健診で随時血統は200mg/dlを超えていたというので、何年も前から糖尿病を放置していたことになる。
 入院後は糖毒性解除のため、インスリン強化療法で治療を開始した。健診を受けても、受けただけでは何にもならないが、病院に行くのが面倒なのか、病気と断定されるのがイヤなのか。今回頭部打撲がなければ、さらに放置したままになっていたと思われるが、その時はどんな病状で受診するようになったのだろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

なぜ腸閉塞に

2012年02月22日 | Weblog
63歳男性。腹痛・嘔吐・腹部膨満。
 昨日内科新患を受診した。担当の医師(大学病院からの応援)から診察して、私に腸閉塞の患者さんが来てますと連絡がきた。一昨日の昼から上腹部違和感があり、午後7時に上腹腹痛がひどくなり、腹部膨満もあった。近くの病院を受診して痛み止めを処方されて帰宅したが、症状が悪化した。昨日の午前2時に嘔吐(食物と消化液)して、腹部膨満は軽減した。
 中学生の時に虫垂切除術を受けている。腹部全体に圧痛があるが、腹膜刺激症状はなかった。白血球が軽度上昇していたが、生化学検査はほぼ正常域。腹部X線でニボーを認め、腹部造影CTを行った。小腸が拡張して消化液の貯留を認めた。大腸は拡張していない。上行結腸外側に少量の腹水がある。回腸の回盲部近傍に壁肥厚を認めたが、閉塞はしていない。
 昨年12月に大腸癌検診で二次検査となり、大腸内視鏡検査で大腸ポリープが見つかり、内視鏡的に切除(EMR)されている。したがって腸閉塞をきたす大腸癌はない。虫垂切除術後の癒着性腸閉塞とも思われたが、本当にそれでいいいのか。以前、内ヘルニア(回盲部ヘルニア)の患者さんを経験したが、その時はCT画像で診断されており、今回の患者さんの画像は違うようだ。
 外科医に診てもらって腸閉塞として外科病棟に入院になった。入院後に腹痛が悪化して、絞扼性腸閉塞疑いとして腹腔鏡下手術になった。回腸の回盲部近傍は絞扼されたような所見があったそうだが、手術時には絞扼されていなかった。虫垂切除術による索状物もない。腸管壊死もないので腸切除は行わず、そのまま閉腹となった。その後腹痛はないという。絞扼性腸閉塞の手術をすると、全身麻酔によって腸管の緊張がとれて、開腹した時にはすでに治っていることもあると以前聞いたが、そういうことなのか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

同じ薬ですが(薬疹の疑い)

2012年02月21日 | Weblog
 74歳男性。薬疹の疑い。
 全身に発疹(紅斑)が出現して、かゆみもひどく、皮膚科を受診した。内科に高血圧症などで通院していて、皮膚科医から内科宛てにメールが来ていた。内科の処方薬で最近変更したのは降圧剤のみなので、その薬が原因ではないか。変更してほしいというものだった。ただ、1~2年処方しているミカルディスとアムロジンから、両者の合剤であるミカムロに変更したので、薬としては同じものであった。変更依頼なので、中身は同じものであることをメールで返信して、降圧剤を変更した。その後、ステロイド少量の内服もあり、発疹自体は軽減してきた。

 80歳男性。肺癌。
 一昨年に検診で肺癌が発見され、がんセンターで抗がん剤治療を受けた。しかし薬剤性間質性肺炎をきたし、その後は治療を中止して経過観察となった。がんセンターへの通院も大変なのと、実際にやれることも限られているということで、当院内科へ紹介された。
 できるだけ自宅で過ごして悪化した時に入院するという方針で、外来でステロイドや医療用麻薬を使用してきた。数日前から喘鳴・呼吸苦があり、今日は予約外で受診した。2か月前よりも腫瘍が大きくなっていた。いったん入院すると退院の見込みはないことを家族に改めて説明して入院とした。
 病棟には慢性閉塞性肺疾患の急性増悪で、治療にあまり反応しない86歳の高齢者(前立腺の骨転移あり)がいる。なんとか持ちこたえているが、かなり厳しい。病棟看護師からは、個室使用の問題もあり、どっちが早いですかと聞かれた。家族には聞かれたくない話だが、病室のやりくりも大変なのだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする