発熱で入院した89歳女性は、血液培養2セットから黄色ブドウ球菌(MSSA)が検出された。明らかな感染巣は指摘できず、今年の7月に心臓ペースメーカー植え込み術を受けていることから、ペースメーカーデバイス感染(リード感染)が疑われた。心エコーでは明らかな疣贅は指摘できないが、経胸壁でもあり否定はできない。
入院後は抗菌薬点滴静注で解熱して、炎症反応も順調に軽快してきた。抗菌薬投与で2週間経過して、これからどうするかということになる。とりあえず、血液培養の再提出は行った。
6~8週間の抗菌薬点滴静注を継続するべきか。経食道心エコーを行ったり、疑われれば心臓ペースメーカーの交換になるが、適応はなさそうに思われる。デバイス感染で除去しないのであれば、抗菌薬継続投与になる。C型肝硬変で肝右葉に肝細胞癌があり、こちらも治療適応にはならないと判断される。浮腫はサムスカを使用して軽減している。
患者さん本人は退院して、お正月を自宅で過ごすつもりでいる。最後のお正月の可能性があり、家族に病状をお話して、抗菌薬内服に切り替えて外来で経過をみることを勧めた。同居している娘さん(血液透析で通院)の同意を得て退院した。
慢性腎臓病もあり、単純CTだけなので腫瘍がわかりにくいが、腹部エコーで見ると高エコーと低エコーが混在した腫瘤で、肝細胞癌らしく描出される。AFPも右肩上がりに上昇していた。