岡秀昭先生の「新型コロナウイルスCOVID-19特講2021」(中外医学社)が出た。講義編の、疫学・ウイルス学、感染予防、診断、治療は前著よりもコンパクトになった。症例検討編として5症例が載っている。
COVID-19の基本的なテキストとして繰り返して読むつもりだが、少々わかりにくいところがある。重症度が、FDAの重症例で記載しているところと、厚労省の「手引き」の軽症・中等症・重症に合わせたところが混在している。
当院は中等症までの対応なので、重症例(低酸素血症で酸素吸入5L/分以上、人工呼吸管理の対象)は高次医療機関に搬送になる。治療は抗炎症としてのデキサメサゾン(さらに免疫抑制剤)と抗凝固としてのヘパリン投与になるのだろう。
軽症と中等症Ⅰ(酸素吸入なし)は対症療法になる。問題は中等症Ⅱ(酸素吸入あり)だ。感染早期(7日~10日)の治療は抗ウイルス薬による治療になり、使用できるのはレムデシベルだ。
当院はレムデシベルの使用経験はない。中等症Ⅱ(酸素投与あり)でデキサメサゾンを投与した患者さんは、入院時感染早期を過ぎてから悪化した症例と、慢性腎臓病がある症例だったので使用しなかった。
今後感染早期で中等症Ⅱ相当の患者さんにはレムデシベルも使用したいと考えている。ただ申請すると届くのは翌日で、申請が午後1時以降になると翌日の受付になるので翌々日に届くそうだ。
レムデシベルは1本25万円で、5日間投与(1日目に2本200mg、2日目から1本100mg)なので150万円になる。申請すれば国から無償提供だが。
デキサメサゾンは投与時期の問題がある。感染早期のウイルス増殖期に使用すると、ウイルス増殖を助長してしまい、かえって病状が悪化するそうだ。発症後7日~10日後から使用になるが、7日なのか10日なのかはわからない。
「呼吸器ジャーナル」の別冊に、病院別の治療法が載っていた。「デキサメサゾンは発症7日までは使用しないで、8日目から使用する」と記載している病院があり、すごく参考になった。
金曜日に退院した中等症(Ⅱ)の患者さんには、デキサメサゾンを早く投与したかった。しかしウイルス増殖期に使用したくないので、数日待って8日目から開始した。
当院に指導に来ている感染症専門医の先生は、感染早期にデキサメサゾンを開始するとかえって悪化すると教えてくれた(実際に悪化したそうだ)。さらに感染早期を過ぎても、線状の要素が加わった(ちょっと硬い感じの)陰影にはいいが、淡いすりガラス陰影が新たに出現しているとそちらは悪化させるかもしれないとも言っていた。
このデキサメサゾンの投与開始時期についての規定がないので、自信を持って使うことができない。病院判断とされても困ってしまう。
デキサメサゾン投与は6mg/日10日間になる。経口薬だと6mg/日でいいが、点滴静注ではどうなるのか。静注薬の力価は経口薬の3割増しになる。デキサメサゾン注1.65mgは経口薬2mg相当なので、1.65mg3アンプル(経口薬6mg相当)でいいのか。
呼吸器ジャーナルの病院別治療法には、デキサメサゾン6.6mg注(経口薬8mg相当)を使用していると記載している病院があった。このデキサメサゾンの使用法も詳しい記載がない。臨床試験のRECOVARY試験ではどっち?。
岡先生の本にもその辺の細かいことについての言及はなかった。ちょっと残念。