なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

精巣上体炎

2024年11月22日 | 泌尿器科疾患

 11月21日の午前1時過ぎに60歳代前半の男性が、睾丸痛で救急外来に救急搬入された。当直は小児科医(当院小児科は外来だけで入院はとらない)だった。

 ふだんは、前立腺肥大症で県庁所在地の総合病院泌尿器科に、心房細動で市内の循環器科クリニックに通院している。1週間前から睾丸の違和感があったらしい。前日(20日)の午後から睾丸(右側)が腫脹・熱感・疼痛が出現して、体温も38℃と上昇した。

 21日に泌尿器外来の予約があったためか、痛みを我慢していたが、耐えきれず救急要請した。経過と所見からは精巣(睾丸)の捻転ではなく、精巣上体炎が疑われた。腫脹した睾丸の大きさを6×8cmと記載していた。

 ジクロフェナク座薬(50mg)挿入と抗菌薬投与(セフトリアキソン1g)を行って、症状は搬入時より軽減した。帰宅してその日予約のある泌尿器科外来受診となった。

 睾丸痛(急性陰嚢症)は精巣捻転と精巣上体炎の鑑別とよく救急の本にある。精巣捻転疑いで受診した小児を泌尿器科へ紹介したことはあるが、精巣上体炎は見たことが1例くらいあったかなかったか記憶にない。

 精巣上体炎の治療は抗菌薬投与になる(と鎮痛薬)ようだ。性感染症からの波及の可能性があれば、その精査・治療になる。

 睾丸痛は小児でみるので、小児科医は案外得意なのだろうか。21日は当院も泌尿器科外来(非常勤)があるので、そちらに回せると思って受けたのかもしれない。

 

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尿管結石

2024年10月05日 | 泌尿器科疾患

 10月3日(木)の当直の時、翌日午前0時過ぎに救急搬入依頼がきた。50歳代前半の男性が右背部痛を訴えているという。

 この患者さんは昨年は左尿管結石で受診している。さらに2018年、2019年にも尿管結石で受診している。救急隊もまた尿管結石でしょうということだった。

 午前10時頃に突然右背部痛が生じて、昨年処方されたジクロフェナク座薬(50mg)を使用したが、痛みは変わらないという。痛みは波があるが軽減しても消失はしない。痛みはしだいに右側腹部に下がってきたようだという。

 腹部エコーで診ると、右水腎症を認めた。腹部CTを行うと、右腎層内と左腎臓内に小結石がある(尿管結石予備軍)。右尿管の膀胱入口部に小結石があるようだ。

 ジクロフェナク座薬を使用して2時間後なので、アセリオ1000mg点滴静注を行ったが、少し効いたくらいという。ジクロフェナク座薬を使用して3時間後だった、体重が80kgなのでもう1回使用してみた。

 朝まで外来で経過をみて、翌日の泌尿器科外来(非常勤医)に回すつもりだった。朝に、別の救急搬入患者を診る合間にいくと、すっかり痛みは消失していた。排石したらしい。

 泌尿器科外来受診は希望せず、ジクロフェナク座薬だけ追加で持っていたいと希望されたので、5回分渡した。

 

 

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両側水腎症

2024年09月04日 | 泌尿器科疾患

 9月1日(日)の夜間に、前日からの下腹部痛を訴えて70歳代半ばの男性が救急外来を受診していた。

 当直の内科医が腹部単純CTで確認すると、両側水腎症(右>>左)を呈していた。膀胱内に尿が大分貯留しているが、完全に尿閉になってはいなかった(尿排泄が多少はある)。

 尿カテーテルを挿入すると、1100mlの尿排出があり、下腹部痛は軽減した。これで水腎症が改善すれば尿閉による症状となる。

 90分後に腹部CTを再検して、両側水腎症の程度は変わりなかった。

 当直医はがんセンターに連絡を入れた。先方の当直は内科系の先生で、今来てもらっても対応できないので、日中に御紹介下さいということだった。

 

 この患者さんは昨年9月に、がんセンターで直腸癌の手術を受けている(人工肛門造設術)。退院直後の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患して、退院直前に面会に行った家族が罹患していたことが判明した。

 当院に入院して、がんセンターにもその旨が報告されている。特に問題なく治癒して退院していた。

 

 膀胱・前立腺疾患による尿閉・水腎症なのか、直腸癌と関連しているのかはわからない。翌月曜日にがんセンターを受診したはずなので、それは先方での判断になる。

 

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精巣上体炎

2024年08月23日 | 泌尿器科疾患

 8月19日(月)に80歳代前半の男性が内科外来を受診した(予約日)。高血圧症・うっ血性心不全・気管支喘息で通院していて、息切れや下腿浮腫の確認になる。

 その日は別の話をされた。8月17日(土)入浴中に陰嚢が腫れているのに気付いた。37.8℃の発熱もあった。18日(日)は36.9℃で、19日は36.6℃だった。

 ご本人は鼠径ヘルニアではないかという。触診すると、左精巣自体が腫れているようだった。腸管が脱出しているようではない。自発痛はほとんどなく、触診しても圧痛はわずかだった。

 エコーで診る自信がないのと、ヘルニア否定もあり、腹部CTで確認した。ヘルニアはなかった。精巣炎より精巣上体炎がよく精索捻転との鑑別で記載されているが、そうなのか。要はよくわからない。精索捻転のような緊急性はないのだろう。

 抗菌薬はどうしようかと思ったが、セフトリアキソンを入れて、翌日20日の泌尿器科外来に紹介とした。尿路感染症が波及して精巣上体炎を来したものと診断された。セフトリアキソン点滴静注とオーメンチン内服が処方されていた。

 泌尿器科医に、抗菌薬投与前に尿培養を提出するように、といわれた。ふだん見ない場所の炎症なので、培養が思い浮かばなかった。

 

 プラチナマニュアルによれば、「急性精巣上体炎は35歳未満では性感染症(淋菌、クラミジア)を強く疑う。処方はセフトリアキソン1g静注単回+ドキシサイクリン内服200mg分2を10日間」。

 「高齢者の精巣上体炎は通常の尿路感染症同様に大腸菌を代表とした腸内細菌が主である」。

 

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尿管結石

2024年07月15日 | 泌尿器科疾患

 7月12日(金)の午前4時に左下腹部痛の62歳女性が救急搬入された。午前3時ごろ就寝中に突発した痛みなので、当直の若い内科医は尿管結石を想定したようだ。

 7月5日に同居の娘がコロナ(COVID-19)に罹患して自宅療養していた。発熱はなく、呼吸器症状もないが、コロナの迅速検査をするところから始まった。

 搬入時は疼痛が軽減してきて、診察時には消失していた。腹部は平坦・軟で圧痛なし。腹部CTで確認すると、膀胱内に結石を認めた。尿管膀胱移行部に引っかかっている可能性もあるが、おそらく膀胱内に落ち込んでいる。

 尿管結石による疼痛発症の平均的時間帯なので仕方がないが、この時間の搬入はつらい。うまく自然排石(膀胱内に落ちれば後は出るだけ)してきたので、その点は幸いだった。(この後午前6時に90歳代女性も搬入されて、入院になっていた。)

 

 若い先生だと当直しても回復は早い。当方は年齢的に1回当直すると、調子が戻るまで3日かかる。

 

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尿道結石(嵌頓)

2024年07月03日 | 泌尿器科疾患

 6月30日(日)の日直の時に地域の当番医の内科医院から連絡が入った。71歳男性が尿閉で受診したが、尿カテーテルを挿入しようとしたが入らないという。

 地域の基幹病院に連絡したが、近くのたとえば当院で診てもらうようにといわれたそうだ。尿カテーテル挿入に特別な工夫ができるわけでもないので、紹介されてもと思ったが、「よろしく」ということだった。(当院の常勤医だった先生のお兄さん)

 

 患者さんが紹介状を持って受診したきた。これまで尿が出にくいことはなかったらしい。急な尿閉だった。特に尿閉を来すような薬を飲んだわけでもない。

 腹痛や陰部痛はない。下腹部に圧痛というほどの所見はないが、腹部エコーを当てると、膀胱内の中等度の尿貯留を認めた。

 普通に16Fr.の尿カテーテルを挿入していみると前立腺部で止まってしまう。細径の12Fr.の尿カテーテルでも入らなかった。前立腺肥大ではなく、前立腺癌の浸潤だったりするとまずいと思った。(最近の消化器病研究会で前立腺癌の直腸浸潤の症例があった)

 最初から腹部CTで確認すればよかったと思いながら、撮影してもらった。尿道の前立腺部に結石があった。両側腎結石もあり、一部は珊瑚状になっている。尿管結石の既往もある人だった。

 これは泌尿器科に対応してもらうしかない。泌尿器科常勤医のいる基幹病院に連絡すると、外科系の日直医は耳鼻咽喉科の先生だったが、受けてくれた。

 内科医院から連絡があったかもしれませんが、と伝えた。すると、心肺蘇生術をしていた患者さんが安定して病棟に上がったので、今なら診られるということだった。

 内科医院から連絡がいった時は、心肺蘇生術の真っ最中だったらしい。内科医院への返事にはそのことも記載しておいた。

(後日記)

 泌尿器科からの返事は。「ブジーで尿道結石を膀胱内まで押し戻し、尿カテーテルを留置しました。膀胱結石除去術を予定します。」だった。

 

 

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血管筋脂肪腫

2024年06月06日 | 泌尿器科疾患

 5月30日(木)内科クリニックから泌尿器科外来(非常勤医)に左腎腫瘍の42歳女性が紹介されてきた。

 たまたま腹部エコーを行ったところ、左腎臓の下極寄りに高エコーの腫瘤を認めていた。自覚症状はない。

 担当医が腹部造影CTを行うと、ほとんどが脂肪で構成された腫瘤で隔壁構造が所々にあった。放射線科の診断は「血管筋脂肪腫」だった。血管筋脂肪腫angiomyolipoma(AML)にも種類があるが、腫瘤内に脂肪成分を同定できるので「古典的血管筋脂肪腫」になる。

 

 この患者さんは6年前に腹痛(心窩部痛)で受診歴があり、腹部単純CTが行われていた。同部位に同じ病変が描出されていた。内部にわずかに隔壁様の構造があり、放射線科の診断は「血管筋脂肪腫の疑い」となっていた。

 心窩部痛を説明できる所見がCTで認められなかったので、上部消化管内視鏡検査が予約されたが、患者さんが来院しなかったので、そのままになってしまったようだ。

 良性腫瘍なのでサイズが小さければ(<4cm)、経過観察になるだけなので、結果的には問題なかった。今回も「サイズは前回より増大しているが、悪性とはいえない」とも記載されていた。

 病名は聞いたことがあって、CT画像の本にも載っているが、これまで見たことはなかった。

 

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閉塞性腎盂腎炎

2024年03月27日 | 泌尿器科疾患

 3月26日(火)の午前中に医院からの紹介患者さんの腹部CTを入れた。各科から緊急のCTがいっぺんに入って、かなり待たされることになった。

 

 泌尿器科(非常勤医師)は、内科医院から紹介の76歳女性のCTを依頼していた。6年前に左尿管結石による腎盂腎炎で地域の基幹病院の泌尿器科に紹介した既往がある。尿管ステントを留置してその後、ESWLが行われた。

 今回は、3日前の3月23日から発熱と左背部痛があったが土日なので我慢していたらしい。3月25日(月)に内科医院を受診して、26日当院泌尿器科紹介となった。(泌尿器科は非常勤で火・水・金の週3回)

 3日経過していたが、幸い発熱以外のバイタルは問題なかった。白血球9800・CRP12.7と炎症反応が上昇して、尿検査は白血球>100/HPF・細菌(3+)だった。

 も急性腎盂腎炎だが、また左尿管結石からの閉塞性腎盂腎炎だった。左腎は腎盂の鋳型状に結石があった。また基幹病院へ紹介となった。

 

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尿管結石

2024年02月21日 | 泌尿器科疾患

 2月17日(土)の当直の時に、午前中に救急搬入された尿管結石の患者さん(45歳女性)が嘔気が続いて再受診したい、と連絡が入った。疼痛はないそうだ。来てもらって点滴・制吐剤の投与を行うことにした。

 その日朝食後にトイレにいった後に出てこないので、母親が見にいくと、うつぶせに倒れていて、左腰部を抑えて苦しんでいた。救急要請して当院に搬入された。

 当院の呼吸器外来(大学病院からの応援医師担当)に気管支喘息で通院している。別の病院の精神科にも統合失調症で通院している。(雰囲気はBPD様)

 日直は別の内科の先生だったが、患者さんがベット上で転げまわるように痛がった、と記載していた。点滴を入れて、鎮痛薬を使用した。ソセゴン(ペンタゾシン)15mg筋注、アセリオ注(アセトアミノフェン)1000mg点滴静注、そしてソセゴン15mg静注と使用して疼痛が軽減した。

 胸腹部CTで左尿管の腎盂から出てすぐのところに結石を認めた。大きさ的には自然排石を期待できるものだった。他には異常所見はない。症状とも合致する。

 尿管結石を判明してからジクロフェナク座薬50mgも使用していた。気管支喘息はあるが、NSAIDsは大丈夫な方だった。疼痛軽快して帰宅した。

 

 帰宅してから、午後3時にまた同様の疼痛があり、ジクロフェナク座薬を使用して軽快していた。ただその後から嘔気が続いて食事がとれないという。朝からずっと食べていないといっていた。

 腹部所見は特に異常なかった。点滴とプリンペラン(メトクロプラミド)静注をした。他の患者さんたちを診て忙しかったので、次に診にいったときには点滴が終わりかけていた。嘔気は治まっていて、あっさり帰宅となった。

 

 日直の先生が市内の泌尿器科宛に診療情報提供書(画像のCD付き)を持たせていたので、2月19日に受診していた。結石はやはり自然排石を期待できるので、経過をみて1か月後となったそうだ。

 2月20日(火)は午前5時にまた左腰部痛が発症して、ジクロフェナク座薬でいったん治まった。午前7時にまた痛んで当院救急外来を受診していた。当直だった整形外科医がアセリオ注を行って、腹部CT・血液検査・尿検査をオーダーした。

 午前中の救急当番だったので、申し送られた。尿検査は当然だが血尿を認めた。CTで見ると、尿管結石は初診時より数cmだけ下がっていた。

 尿管結石がちょっとだけ動いたの画像で確認することは珍しい。検査結果が出て診に行った時には症状は軽快していて、そのまま帰宅とした。

 

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敗血症性ショック

2024年01月24日 | 泌尿器科疾患

 1月17日(水)の当直の時に、施設入所中の83歳男性が救急搬入された。

 日中から発熱があり、施設を運営している市内の病院(同じ法人)を受診していた。点滴を受けたそうだが、詳しくはわからない。発熱だけで呼吸器症状はなかった。もっとも認知症の要介護状態なので、訴えは把握しがたいか。そちらの病院は時間外対応はほとんどできない。

 救急隊の搬入依頼の時は、40℃の高熱と血圧低下(70台)ということだった。肺炎というよりは尿路感染症・胆道感染症かもしれないと思った。

 血圧は搬入時にも70台で、急速に輸液を開始した。一時は98mmHgくらいになった。胸腹部CTを行うと、肺炎像はなかった。右腎は水腎症を呈していて、尿管結石があった。両側腎盂内と膀胱内にも結石がある。

 尿管結石による閉塞性腎盂腎炎で、敗血症性ショックと判断される。泌尿器科救急になるので、泌尿器科常勤のいる病院への搬送が好ましい。

 地域の基幹病院に連絡したが、満床でだめだった。だめもとで県庁所在地の県内有数の市立病院にも連絡してみたが、やはり満床でだめだった。他も厳しいのだろう。

 いったん家族に説明することにした。家族といっても、独身で妻子はいないので、甥が責任者になっていた。なんでも患者さんは高齢になって他県から急に戻ってきたのだという。他に頼める親戚もないので、(仕方なく)面倒をみているということだった。

 病状を説明して、当院でできるだけの治療はするが、とお話した。それでいい、ということだった。

 夜間は検査技師がいないので、血液培養はとっておいていいが、他の培養は技師がいる時になる。末梢静脈が虚脱して点滴がやっとだったので、血液培養2セットは動脈から採取した。

 施設入所者なので第4世代セフェムで治療を開始した。多めの輸液(ただし心房細動・心不全あり)とノルアドレナリン持続静注でどれだけ反応するか。

 翌日までは血圧低値が続いて、乏尿にもなったが、翌々日から解熱して血圧が安定してきた(100~120)。輸液の調整とノルアドレナリンの漸減・中止を行い、22日(月)には尿も出始めて小康状態となった。

 胸腹部CTの再検で確認すると、右尿管結石は自然排石していた。それは良かったが、両側肺に胸水貯留があり、浸潤影を伴っているようだ。

 今度は誤嚥性肺炎の治療(抗菌薬をゾシンに変更)と心不全の治療(ループ利尿薬と抗アルダクトン薬の静注)も開始した。(その後、尿培養でProteus mirabilis ESBLが検出されて、メロペネムに変更)

 

 当院の第4世代セフェムは、セフォゾプラン(ファーストシン)が入っている。これの入荷が難しく、今週初めから処方停止となった。(2月は入荷できるらしい)といって、本来の第4世代であるセフェピム(マキシピームのジェネリック)も入荷は困難らしい。

 院内発症や尿カテーテル留置例の尿路感染症など、緑膿菌などのいわゆるSPACEをカバーして嫌気性菌まではカバーしなくていい場合は、セフェム系第4世代を使用する。それがないとなると、代替薬としてはゾシンかカルバペネムになってしまう。

 

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