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プライマリ・ケアの疑問
Dr.前野のスペシャリストにQ
糖尿病アップデート編
岩岡秀明先生
第5回 メトホルミン・イメグリミン
メトホルミンが第1選択
メトホルミンが優先される理由
ASCVD(動脈硬化性心血管疾患)、心不全、CKD患者
第1選択薬はSGLT2阻害薬
(米国糖尿病学会ガイドライン) となっているが、日本では
1.日本人の心血管疾患リスクは米国人よりも低いためSGLT2阻害薬によるベネフィットも小さい
2.SGLT2阻害薬のエビデンスの大半はメトホルミンへの上乗せ効果を示している
3.SGLT2阻害薬の長期的な効果、安全性が未確立
4.SGLT2阻害薬は高価
メトホルミンの適正使用に関するRecommendation
1.透析患者を含む腎機能障害患者
・メトホルミンの使用に当たっては腎機能をeGFRで評価する
・eGFRが30mL/分/1.73㎡未満の高度腎機能障害の患者ではメトホルミンは禁忌である
・eGFRが30~45mL/分/1.73㎡の場合にはリスクとベネフィットを勘案して慎重投与とする
・eGFRが30~60mL/分1.73㎡の中等度腎機能障害の患者では腎機能に応じて添付文書上の最高用量の目安を参考に用量を調整する
(日本糖尿病学会 メトホルミンの適正使用に関するRecommendation.2020.)
2.脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取などの患者への注意・指導が必要な状態
・すべてのメトホルミンは、
脱水状態が懸念される下痢・嘔吐などの胃腸障害のある患者
過度のアルコール摂取の患者
で禁忌である
・利尿作用を有する薬剤(利尿薬、SGLT2阻害薬など)との併用時には、とくに脱水に対する注意が必要である
3.心血管・肺機能障害、手術後、肝機能障害などの患者
・すべてのメトホルミンは
高度の心血管
肺機能障害(ショック、急性うっ血性心不全、急性心筋梗塞、呼吸不全、肺塞栓などの低酸素血症を伴いやすい状態)
外科手術前後の患者(飲食物の摂取が制限されない小手術を除く)
には禁忌である
・軽度~中等度の肝機能障害には慎重投与である
eGFR 60以上
造影CTの時休薬しなくてよい
eGFR 30~60の場合
造影剤投与後48時間はメトホルミンを休薬
腎機能悪化が懸念される場合はeGFRで腎機能を評価した後に再開
最高投与量の目安
30≦eGFR<45:750mg/日
45≦eGFR<60:1500mg/日
※とくに「30≦eGFR<45」の患者では治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ使用
岩岡先生
eGFR 30~45の場合
eGFR 30~45では新規に処方しない
万一処方する際は腎機能を定期的に確認し、750mg/日までに留める
メトホルミンを上手に使うポイントは
▸500mg/日から開始し、1500mg/日までは漸増する
▸1日2回、朝・夕の投与とする
▸夕食時の飲み忘れがある場合、胃腸症状がなければ「1000mg/日、1回朝のみの投与」も可能
※1日2回投与と比較して血糖降下作用に遜色はない
第2選択薬
メトホルミンが禁忌の場合
▸SGLT2阻害薬
(心血管イベント抑制と神保g作用のエビデンスがあるもの)
エンパグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジン→ASCVD、心不全、CKDのいずれかがあるorハイリスクの場合
▸DPP4阻害薬
→これらの合併症がない場合
イメグリミン(ツイミーグ)
▸メトホルミンと似た構造式
▸2つの作用で血糖降下させる
・膵作用
→ミトコンドリアを介してグルコース濃度依存的にインスリン分泌を促す
・膵外作用
→肝臓、骨格筋での糖代謝を改善してインスリン抵抗性を改善する
▸TIMES1試験:イメグリミン単独投与(1000㎎1日2回)
→投与24週時点のHbA1c変化量
イメグリミン-0.72%
プラセボ投与群+0.15%
▸TIMES2試験:ほかの血糖降下薬とイメグリミン(1000㎎1日2回)併用
→投与52週間後のHbA1c変化量を観察
DPP4阻害薬と併用-0.92%(一番低下)
GLP1受容体作動薬と併用-0.12%のみ(理由は不明)
▸1回2錠(500㎎×2=1000mgを1日2回、朝・夕に投与
▸eGFR 45mL/分/1.73㎡未満の腎障害患者への投与は推奨されない
▸メトホルミンとの併用は避ける
・作用機序の一部が共通している可能性がある
・両薬の併用で消化器症状を多く認めたため
▸インスリン製剤、SU薬、グリニド薬と併用する場合→低血糖リスクを避けるため、適宜減量する
プライマリケアで、メトホルミンから切り替える必要はない
現時点では糖尿病専門医が使用すべき薬剤
Dr.前野のここがポイント
メトホルミン
・禁忌を除きメトホルミンが第一選択薬
・eGFR 60以上あれば造影CT時の休薬は不要
メトホルミン使用のポイント
・1日500mgから開始し、漸増する
・1日2回、朝・夕の投与とする
イメグリミン
・「膵作用」と「膵外作用」の2つで血糖を低下させる
・プライマリケアでは使用せず、エビデンスの集積を待つ
メトホルミンの投与法で朝のみ500mg~1000mgも可能というのは、あまり記載されていないので参考になる。
イメグリミンは10例弱で使用している。講義では現時点では専門医が慎重に使用する薬とされているので、本当はよくないのかもしれない。市内のクリニックでは新薬好きの先生が使用していた。
下記の本を始め、岩岡先生の本が次々に出るので、購入することにした。