なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

胃噴門部癌

2016年05月31日 | Weblog

 病棟で電子カルテに入力していると、内科の先生から術前検査として行う心エコーの入力について訊かれた。91歳男性の胃噴門部癌だった。噴門をほぼ全周性に取り巻いて腫瘍があり、食道胃接合部を越えて食道にちょっとだけ浸潤していた。この患者さんは前立腺癌でがんセンターの泌尿器科に通院していた。今回は嘔気・食欲低下での入院だった。

 今年の2月に総胆管結石・急性胆管炎で当院消化器科に入院した。高齢なので保存的に治療を開始したが改善せず、内視鏡処置(ESTによる総胆管結石摘出)のため、がんセンターの消化器科に転院していた。そちらは治療されて治癒した。その時のCTにも腫瘍は写っているが、単純CTだったので正常胃と濃度が同じでわかりにくい。今回は造影CTなので指摘できる。

 ESTの時に気づかないかと訊かれたが、ここは素通りしてしまうのだろう。胃内で内視鏡を反転してそこまで観察している余裕はなさそうだ。急性胆管炎は閉塞性化膿性胆管炎から敗血症性ショックになる可能性があり、採石術が最優先になる。外科に紹介になるが、手術はできるのだろうか。

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18歳の糖尿病

2016年05月30日 | Weblog

 昨日の日直の時に、当院の看護師さんが18歳の娘を連れてきた。看護学校に行っているそうだ。学校の健診で尿糖(3+)という結果で、病院で血糖とHbA1cを測定するように言われたという。自覚症状は特にない。健診の二次検査だが、日曜日に来たのは、学校を休ませたくないから。身長168cm、体重80KgでBMIが28。とにかくごはんをいっぱい食べるんですと母親が言う。その母親は5年前に妊娠糖尿病になり、、産婦人科医から治療を依頼されてインスリン注射を出していたことがある。

 空腹時血糖180mg/dl、HbA1c9.6%とりっぱな糖尿病だった。尿糖(4+)で尿ケトン体は陰性。脂肪肝と思われる軽度の肝機能障害もあった。母親自身、今糖尿病の治療を受けているのか、そもそも家族歴はどうなっているのか、他の患者さんもいて時間がないので、詳しくは訊かなかった。学校が休みになる7月に再受診したいので、それまで食事で何とかしますと言って帰った。顔も体型もそっくりな親子で、母親の指導で改善する気がしなかったが。1型ではなくて、2型糖尿病が早期に出現したのだろう。明日の提出にはなるが、抗GAD抗体と血中Cペプチドを検査して、問題があれば呼び出すことにした。カロリー制限はできなさそうなので、甘いソフトドリンクは極力さけることと、ご飯半分でおかず(イモ類はさけて)はそのままのゆるいゆるい糖質制限にしてみること、体重を毎週測定することを伝えた。

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水と脂肪が溜まっていた

2016年05月29日 | Weblog

 今日は日直で病院に出ている。糖尿病で通院している76歳女性が全身浮腫で受診した。糖尿病腎症があり、尿蛋白陽性で血清クレアチニン1.3mg/dl。インスリン強化療法にしているが、ご本人は脳梗塞後遺症・血管性認知症があり、インスリン注射は夫がしていた。

 無痛性に心筋梗塞が発症してうっ血性心不全になったか、ネフローゼ症候群を呈したか、と考えながら検査をした。腎機能は普段と変わらず、ネフローゼでもない。胸部X線・胸腹部CTで見ると。両側胸水貯留と肺うっ血はあるが、腹部は腹水がなく著明な内臓脂肪だけだった。心電図では普通の洞調律で、肢誘導で低電位差があるが、虚血性変化はなかった。BNP80で、肝機能・甲状腺機能は正常。心不全状態ではあるが、予想したよりは検査結果としてたいしたことがなかった。低ナトリウム血症はないが、水をかなり飲んでいて、食事摂取も多かったそうだ。体内の水と脂肪が増加した状態を、どう表現するのか正しいのか。今日は利尿剤静注で経過をみて、明日心エコーをみてもらうことにした。

 昨日は糖尿病の講演会に行った。小林哲郎先生(沖中記念成人病研究所)が1型糖尿病の話をされた。劇症1型糖尿病ではTh1(細胞性免疫)が関与して、緩徐進行型1型糖尿病はTh2(液性免疫)が関与する。したがって、前者では自己抗体がほとんど検出されず、後者は自己抗体が検出される。急性発症1型糖尿病(普通の1型糖尿病)はその中間に位置する。

 緩徐進行型1型糖尿病では膵管上皮の過形成のよるムチン産生が起こり、それによって膵島と外分泌組織が障害を受ける。つまり慢性膵炎様の障害。ただし膵島の障害は自己免疫の機序が起きることで生じるそうだ。緩徐進行型1型糖尿病では膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の発症が多いという。

 劇症1型糖尿病ではウイルス感染によって1週間以内に膵島炎が起きて、急性発症1型鵜糖尿病では同じくウイルス感染によって数か月で膵島炎が起きる。後者では、膵島炎が進行して糖尿病が発症する前に治療を開始すると(相当困難な条件だが)、糖尿病発症を予防できる可能性があるという。小林先生は山梨大学名誉教授で、そういえば山梨大学では膵臓の組織の研究をしていたと思い出した。昔大学で膵臓の組織構築をやっていたので、ちょっとうれしくなる話だった。

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肺線維症の気胸

2016年05月27日 | Weblog

 肺線維症の77歳男性が地域の基幹病院呼吸器科から転院してきた。先月に気胸で入院して、なかなかリークが止まらなかったらしい。紹介状には奇跡的に止まったとある。送られてきた画像を見ると、見事な蜂巣肺でブラの集合と表現した方がしっくりくる。もうどこが破れてもおかしくなかった。左肺が胸腔ドレナージでかろうじて広がった後に、右肺にも気胸が生じた。軽度であり、もうそちらはドレナージはしなかったそうだ。気胸の起こり方(両側同時、片側でも急激な緊張性気胸ということか)によっては急死する可能性があることを、家族に伝えてあるという。

 自宅に帰しようもなく、一昨日当院に転院してきた(いつもの下請け業)。昨日胸部X線・CTを確認すると右の気胸は吸収されていたが、左肺には軽度の気胸があり、一か所は紐状に胸壁と癒着していた。経過をみて治療を決めることにした。今日の午前1時に冷汗と呼吸苦を訴えた。左肺に呼吸音がまったくないと連絡が来た。気胸の悪化だった。間に合わないかもと思いながら病院に来たが、なんとか持ちこたえていた。急いで胸腔ドレナージを行って、症状は軽減した。肺がうまく広がってこないかもしれないと思ったが、案外広がっていた。はたしてこのドレーンは抜けるのだろうか。

 今月末から6月にかけて、製薬会社主催の講演会が続々とある。特に糖尿病の講演会が多くて、4つの案内をもらった(河盛先生など)。最近の治療を聴くのはいいが、どれに出るか迷ってしまう。

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トルリシティ注0.75mgアテオス

2016年05月26日 | Weblog

 48歳女性が糖尿病教育入院で治療中だ。10年前に他の病院に通院していたが、糖尿病を担当していた先生が辞めて開業した時に当院に移ってきた。その頃からインスリン強化療法になっていた。この方は肥満があり、血糖コントロール不良で教育入院すると、外来処方のままで、食事療法のみですぐに改善した。インスリン量がどんどん減量となって、ほとんどいらないくらいになった。

 退院サマリーを見ると、最初の入院の時は嘔気嘔吐がひどくて、食事摂取できなかった。肥満で末梢血管が見えず、中心静脈カテーテル(鎖骨下静脈)を挿入していた。血糖上昇のためもあるが、精神的に不安定で、心因性の要素が大きかった。糖尿病で通院していた病院には、精神科外来があり、そちらの通院は継続していた。結局抗うつ薬で安定した。

 その後も当院に何度か糖尿病教育入院になった。入院して食事療法で血糖改善して、退院すると悪化を繰り返した。最近は、椎間板ヘルニアで、その病院(整形外科で有名)に入院を繰り返して、退院して戻ってくると血糖は良好というパターンになった。HbA1cは7~8%前後。今回はHbA1cが悪化というより、連休ごろから血糖が300台になることがあり、体調不良ということだった。どちらかというと、血糖を測定して高めの値に精神的にショックを受けるようだ。

 インスリンは整形外科で入院した時の、そちらの病院の内科の先生が調整した量で継続になっていた。1日合計50単位を越えて、肥満ホルモンを大量に入れるのも良くないが、といって経口薬は増やせないくらい出ている。トルリシティ注が長期処方可能になったら、DPP4阻害薬から切り替える予定だった(基本的に長期処方可能にならないと新薬は使用していない)。ちょっと患者さんにそのことを話したら、2週間に1回でも外来に来ますということで、今週から開始した(ジャヌビアと交換)。結果は、入院後少し経過して、いつもの食事療法が効いてきたころとかぶるが、血糖が低下しているようだ。

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上腸間膜動脈解離

2016年05月25日 | Weblog

 昨日の当直帯が始まってすぐに66歳女性が突然の心窩部痛で救急搬入された。当直医は外科医だった(外科のトップ)。腹部造影CTで上腸間膜動脈解離と診断して、血管外科医に主治医が依頼された。幸いに腸管の血流は保たれ、保存的に経過をみることになった。

 昨日帰る時に救急外来をちらっと見ると、すでに患者さんが数人受診していて、さらに救急車の音が聞こえた。忙しい当直だなと、思いながら帰った。そのほかにも大腸憩室出血や閉塞性黄疸(胆管癌)も受診していた。幸いに深夜帯の受診はなかったようだが、お疲れ様でした。

 突然の腹痛だから、「詰まる、破れる、ねじれる」病気の発症を考えることになっているが、自分だったらはたして診断できたかどうか、心もとない。「ユキティのER画像Teaching File」メジカルビュー社に上腸間膜動脈解離の症例が載っていたので確認した。

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COPDというか老衰というか

2016年05月24日 | Weblog

 COPDの75歳男性が内科再来を受診した。昨年の12月31日に、自宅で動けなくなっているのを、訪問した息子が発見して救急要請した。もともとこの方は日中こたつに入って過ごしていて、夜もこたつに入ったまま寝る生活だった。タバコと飲酒はかかさないが、食事摂取はわずかだった。こたつとトイレの間しか動かないので、同居の妻は病状の悪化と認識していなかった。搬入後の検査で、両側肺野に気腫性変化があり、右肺に肺炎をきたしていた。肺炎発症から大分日にちが経過していたらしく、胸水も伴っていた。低酸素血症だが、二酸化炭素は正常域だった。外見は骨と皮で体重は39Kg。

 入院後は点滴と抗菌薬投与で肺炎は治癒した。低酸素ではあるが、酸素吸入はすぐに外してしまう。酸素が低いので、中止するわけにもいかない。病棟の看護師さんにどうするかと訊かれたが、病室に行ってはずしている時は必ず付け治すことにして、すぐ外すのは気にしないことにした。入院中はベットの脇に酸素が流れていた。在宅酸素は意味がないので、導入しなかった。

 1か月入院して退院した。MSWが介入して訪問看護の手続きをした。退院後はタバコをやめた。正確には、タバコを買ってもらえなくなった。奥さんは頼まれれば買ってきてしまうので、訪問看護の指導のたまものかもしれない。飲酒は継続していた。

 その後は、家族が薬だけ取りに来たりして、ご本人の外来受診は2回目だった。食事摂取はさらに減少してきたが、食べないわけではない。低酸素は相変わらずで、入院してはどうかと勧めたが(入院からのなし崩し的な在宅酸素導入狙い)、それは拒否した。外来での在宅酸素の手続きの話をしたが、妻はどうせ付けないからいらないという。飲酒(ウイスキーだそうだ)をやめたくないらしい。死ぬなら自宅で死にたいという希望もある。

 外見はすっかり老衰という感じになっている。今時の75歳はもっと色艶がいい。本当にそのうち自宅で亡くなりそうなので、妻と息子にその際は当院の救急室で看取るという話までした。往診で対応してくれる開業医がないし、当院は訪問診療や往診はしていない。

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長い施設待ち

2016年05月23日 | Weblog

 土日休みだと、月曜日に調子が出ない。週末病棟から89歳男性のことで連絡がきていた。自宅で倒れているところを、訪問した息子さんが発見して救急搬入となった方だった。認知症が進行して、一人暮らしは困難になっていたが、それまで具体的なイベントはなかったので、そのまあにしていたのだった。搬入後の検査で、肺炎と判明した。頭部CTは脳萎縮が目立つのみだった。普通に肺炎の治療をして軽快治癒した。だいぶ筋力低下があったが、リハビリで不安定ながら歩行できるようになった。

 この機会に退院後は自宅に戻さず、施設に入所させたいということで、入院継続となっていた。ただ、当初の期限がずるずると伸びていた。大人しくすごしてもらえれば、多少入院が長くなってもいいいが、しだいに認知症の行動異常が出てきた。同室者の飲食物を勝手にとってしまう。指摘すると、世話をしてやっているからいいんだと言う。同室者が文句を言うと、一見穏やかなおじいさんなのに、態度が豹変して過激に逆切れする。同室者から怖いので病室を変えてほしいと要望が出た。看護師さんも慣れているので、機嫌に応じてかかわってきたが、急に怒り出して殴りかかろうとしたこともあった。

 今日息子さんに、施設入所の状況を訊いたが、うまくいって来月の初めだという。治療はすっかり終わって、単に下宿状態でいるので、あまり入所まで長くなる時は、いったん自宅退院にしますよ、とちょっとだけプレッシャーをかけた。病棟の看護師さんには申し訳ないが、もうしばらくお付き合い願うことになる。

 今日は他の病院から腎障害の91歳女性が転院してきた。転院しても病状が改善するとは思えないので、その旨を伝えていたが、家族の希望で転院となった。当院の整形外科に骨折で入院した既往があった。その時から尿蛋白・尿鮮血が強陽性だった。ここ数か月で腎機能が悪化してきていたが、認知症の91歳に透析の適応はないだろう。腎生検の適応もないと判断される。血清マーカーを出せるだけ出してみた。今日の腎機能はさらに悪化している。発作性心房細動に対して、ワーファリンが処方されていて、腎障害の進行でPT-INRが5になっていた。厳しい病状であることを繰り返してお話したが、理解してもらえただろうか。

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春季生涯教育セミナー

2016年05月22日 | Weblog

 今日はプライマリ・ケア学会の春季生涯教育セミナーに出た。午前中は「膠原病・循環器」、午後は「皮膚粘膜疾患のみかた/考え方」。

 膠原病の前半は、開業されている高橋祐一先生が、外来初診での症状や検査所見のとり方を講演された。関節リウマチ疑いでは、リウマトイド因子と抗CCP抗体を測定するが、早期リウマチでは抗CCPは半数でしな陽性にならない。RFが陽性(健診でチェックされたなど)でも無症状ならば現時点ではRAではないと言える(症状があれば受診へ)。抗CCP抗体が陽性の時は、現時点で無症状でも将来RAになる可能性が高いので、半年ごとにフォローする(RF以外での陽性率は低いが結核では30%以上あるので要注意)。抗核抗体は160倍以上が有意なので、無症状でも年1~2回はフォローする。ただし、SLE,シェーグレンは40倍、80倍と低いこともある。

 膠原病の後半は、東北大学の石井智徳先生が「こんなことになったら死んじゃいますよ」のような、ぶっちゃけ話的な口調の講演だった。短い時間の講義で膠原病が診れるようになるわけはないので、診かたのコツが少しでも掴めれば十分だ。リウマチ膠原病は慢性疾患の11%を占めて、とても専門医だけでは診きれないので、一般の先生方に協力をお願いしますということだった。

 緊急性のある病態はあるが、それ以外はたとえ高熱が続いていたとしても、感染症で敗血症性ショックをきたすのとは違って診断をつけるまでに待てる。慌ててステロイドを投与して診断が困難になるような対応はしないようにという。緊急性のある病態とは、1)肺・心・脳・腎といった重篤な臓器障害、2)末梢神経障害から麻痺をきたすような不可逆性の病態(SLEの横断性脊髄炎など)、3)重篤な多臓器障害をきたす病態(TTP、膵炎・腸管穿孔など)。原因では、1)治療中に出現する原病の活動性と無関係の障害、2)原病の悪化による障害、3)薬剤による障害の3つ。薬剤の例として、MTXでは骨髄不全、感染症、間質性肺炎(0.5~2%)、肝障害、悪性腫瘍が起こりえる。

 リウマチ膠原病は多発関節炎を呈するが、全身症状が10%程度と少ない関節リウマチか、他の全身症状をきたす疾患か、をまず鑑別する。全身症状としては、レイノー症状、皮疹、筋痛、麻痺(脱力)などをチェックする。

 皮膚粘膜疾患は、自治医大さいたま医療センターの出水俊郎先生が、多数の皮疹のスライドを見せてくれた。テーマは、顔面の腫脹のみかた、口腔粘膜のみかた、薬疹のみかたの3つ。問題は重症薬疹で、薬剤性過敏症症候群(DIHS)、Stevens-Johnson症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(TEN)など。DIHSは特定の薬剤、抗てんかん薬(カルバマゼピン・アレビアチン・エクセグランなど)・アロプリノール・ミノサイクリンなどで起こる。多形紅斑に粘膜疹(口腔粘膜・外陰部・結膜)と伴うと、SJS・TENの可能性がある。多形紅疹の輪郭がぼやっとしていると重症に進展する。以前は皮疹が10%未満でSJS、30%以上でTENだが(10~30%はSJS/TEN)、最近は10%以上でTENとするそうだ。口腔粘膜病変の本を2冊進められていたので、どちらかを購入しよう。

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心因性非てんかん性発作

2016年05月21日 | Weblog

 今日は「非器質性・心因性疾患を身体診察で診断するためのエビデンス」を読んでいた。何だか長いタイトルだが、あの洛和会丸太町病院の上田剛士先生の本だ。130ページなので、3時間弱で読めた。症状が心因性かどうか鑑別するための身体所見について、文献検索している。そもそも研究しにくい分野だから、さすがに文献数は少なくようだ。精神科医の推薦の辞にある通り、よくぞここまでと感心(感服)してしまう。

 自分は心因性かどうか、それほど気にしないで(困らないで)診療している方だ。それは受診者がほとんど高齢者なので、器質的疾患のことが多いからだろう。また田舎の病院なので、都会の病院とは患者層が違うのだろう。心因性の動悸を訴える患者さんはまたに来るが、筋力低下で受診した方は診ていない。別の症状で受診した若い女性の前腕にリストカットの痕、というのは数例あった。

 心因性非てんかん性発作はあった。6~7年くらい前に、他の病院にてんかんとして通院している30歳くらいの女性が痙攣発作で入院した。抗痙攣薬はデパケン(たぶん)。担当は別の内科医だった。数日経過をみて、痙攣の再発はなかった。病棟では、失礼ながらちょっとキャラクターが変だという印象はもっていた。退院予定だった日の午後に、また痙攣が起きた。たまたま午後から担当医が不在だったので(当直明けで帰った)、病棟から呼ばれて診にいった。全身の強直性痙攣だった。生食で血管確保、セルシン静注と指示しているうちに、痙攣は治まった。

 そして痙攣が治まるとすぐに携帯電話でメールを打ち始めた。発作後のpost-ictal stateがないことになる。患者さんに言っても仕方ないと思って、看護師さんに向かって「これは本当のてんかんではないんだね」と言った。褒められた対応ではないが、患者さんは予定通り退院していった。本来ならば、そういう症状を引き起こしした事情などを訊いて、精神科へ繋げるべきだろうとは思ったが、とても自分には手に負えないようなオーラを持つ患者さんだった。

 その後、何度か痙攣発作で救急搬入された女子高校生がいた。この方の痙攣は、発作中に目を閉じていて、左右交互の運動というわかりやすいものだった。痙攣様の動きが治まると意識障害様だったが、左右から話かけると、眼が話かけている方の反対を向いた。変な不随意運動様の動きをしていたこともある。両親は離婚していて、(子供が4人くらいいて)仕事で忙しい母親にかまってもらえないという事情があった。1年くらい時々来ていたが、そのうちに精神的に落ち着いたらしいという話だった(又聞きだが)。

 てんかん講座の中里教授の本や講演では、専門医でも判断が難しい心因性非てんかん性発作もあるらしい。

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