なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

パキロビッドパック

2022年04月30日 | Weblog

 新型コロナウイルスに対する抗ウイルス薬、「パキロビッドパック」があまり使われていないというニュースが出ていた。

 発売されてからのコロナ発症者325万人のうち4千人(0.12%)にしか使用されていないという。この薬は重症化リスクがないと、使用できないので、それは当然ではある。感染者の比率が多い若年者や小児は適応がないので、使用できない。

 

 65歳以上の高齢者は年齢だけでも処方できるが、65歳未満だと基礎疾患がないと処方できない。基礎疾患として、COPDなどのいかにもリスクという疾患と、高脂血症のようにどうかなという疾患がある。

 パキロビッドパックは併用禁忌薬が多く、頻用薬も入っているので、全部確認しなければならない。うっかり見逃して処方すると責任問題なので、処方し難いのだろうか。(当院は併用禁忌薬をA3版に印刷したものが、病棟と外来に置いてある。何例か処方すると慣れる。)

 保健所から当院の感染病棟に入院依頼があるのは、80歳以上の高齢者になる。肺炎がないか、あってもわずかで酸素飽和度の低下がない軽症から中等症Ⅰ相当では、パキロビッドパックを処方している。

 問題は腎機能で、eGFR<60だと、腎不全用の処方になる。通常は1回にニルマトレルビル2錠とビトナビル1錠(それを朝夕2回内服)だが、腎不全用だとニルマトレルビルが1錠になり、薬局でパックから1錠を外して、そこをシールでふさいだパックが出てくる。

 ニルマトレルビルもリトナビルもそれなりに錠剤が大きくて、欧米サイズだ。飲めなくはないが、処方するのは高齢者なので、分割しないと難しいこともある。

 eGFR<30だと、パキロビッドパックは処方できないので、腎機能が問題にならないラゲブリオになるが、こちらのカプセルも大きい。(カプセル外しや、簡易懸濁法は推奨されていない)

 レムデシビル(ベクルリー)点滴静注もeGFR<30だと推奨されない(使用できない)と記載されているが、実際は使用できるらしい。

 

ファイザーのコロナ飲み薬を特例承認、厚労省 - CBnewsマネジメント

 ピンクがニルマトレルビル、白がリトナビル。通常はピンク2個と白1個の計3個を朝夕に内服(5日間)。

 

 パキロビッドパックの調査に協力いただけますかと、製薬メーカーの蘭連会社から連絡がきた。薬局で記載してくれれば、確認してサインだけすればいい?らしい。それなら協力します、と答えた。

 使用数が少なくて、まだ有意な副作用は出ていない。

 

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家族でコロナ

2022年04月29日 | Weblog

 水曜日の午後に、救急搬入要請があった。新型コロナウイルスと確定した37歳女性だった。

 夫と上の子が新型コロナに罹患して、ホテル療養になっていた。濃厚接触者として月曜日に保健所のPCR検査を受けて、翌火曜日に陽性と判明していた。同日に行った下の子のPCR検査は陰性だった。

 住所は地域の基幹病院の近くだが、PCR検査は当院に回されていた。先方の人数がいっぱいだったのだろう。

 子供も陽性だと一緒にホテル療養になるが、陰性なのでそのまま自宅静養になるのだろう。あるいは、保健所の調整待ちだったかもしれない。

 火曜日から子供も37℃台の発熱と下痢があり、水曜日にPCR検査の再検になった。その日の午後に、子供の検査を受けに車を運転して当院に向かっていた。途中から呼吸困難感と両手指のしびれが出現して、近くのコンビニに車を停めて、救急要請したという経緯だった。

 救急要請の連絡が来て、症状からは過換気症候群のように思われた。搬入を受けて来てもらうと、救急車の後ろが空いて、防護服を着た救急隊員が降りてきた。患者さんんはストレッチャーに座っていた(横臥より楽だったのだろう)。

 落ち着いてきていて、ちょっと呼吸が速いが、普通に会話は可能になっていた。手指のしびれは軽減していた。子供(4歳女児)が一緒に乗っていたので、予定されていたPCR検査を行った。

 その日の保健所のPCR検査はすでに終わって、検体回収の係も行ってしまった。院内でできる迅速PCR検査を行ったが(感度は保健所の検査より落ちる)、陰性だった。

 母親は微熱で酸素飽和度も問題ないが、新型コロナの外来アセスメントを行うことにした。胸部CTで肺炎像はなく、血液検査はCRPが1.6とちょっとだけ上昇していたが、重症化指標は正常域だった。

 採血の時に点滴も同時にいれていた(普通のソルラクト500ml)、点滴が半分入ったところで、検査結果を説明した。肺炎がないと伝えると、「あ~、よかったあ~」と声を上げた。肺炎を相当心配していたようだ。

 保健所の指示でホテル療養の夫と上の子が自宅に戻ってくることになり、車で病院まで来ていた。点滴を途中で抜いて、アセトアミノフェンを持たせて帰宅とした。(下の子は、他院からの処方があり、当院ではスポーツドリンクを飲んでもらっただけ)

 そのまま一家で自宅療養となったのだろう。翌日特に連絡はなかった。

 

 先週の金曜日に感染病棟に入院した78歳男性は、住所が栃木県になっていた。2月に妻が亡くなり、認知症でひとり暮らしができないので、当地の息子の家族と同居するようになったそうだ。

 その日は一人で歩いてスパーマーケットに買い物?に行き、帰る途中で両下肢の脱力で動けなくなり、近くの人(スーパーの職員かも)が救急要請した。救急隊が到着すると、発熱もあることがわかった。

 当院に救急搬入されて、発熱外来扱いとなり、新型コロナ定性検査を行うと陽性だった。内科の別の先生が診ていたが、ちょうど当方も保健所のPCR検査が終わって書類記載で救急室の診察室にいた。

 コロナだったという話が聞えたので、後は引き受けることにした。胸部CTで肺炎像はなく、炎症反応もごく軽度だった。発熱による脱力と判断された。感染病棟が開いていたので、保健所に報告して、そのまま入院とした。

 入院後は、パキロビッドパック内服で経過をみて、解熱していた。内服していた認知症薬のドネペジルによると思われる徐脈があり、中止した。

 今週の月曜日に同居している息子一家(妻と子供3人)が、濃厚接触者として保健所依頼のPCR検査に来た。結果は全員陽性で、一家でホテル療養になったそうだ。(息子さんは50歳代だが、妻は20歳年下で、子供たちはまだ幼児)

 

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帯状疱疹ワクチン

2022年04月28日 | Weblog

 水曜日に病棟で、看護師さんから帯状疱疹のワクチンについて訊かれた。コマーシャルを見たそうだ。自分も50歳を過ぎたので帯状疱疹ワクチンを接種したい、という。

 グラクソ・スミスクライン(GSK)で新しい帯状疱疹ワクチン「シングリックス」を販売している。こちらの宣伝だろう。

 以前から(2016年)、乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」を、「50歳以上の帯状疱疹の予防」として使用できることになっていた。シングリックスは「帯状疱疹の予防」として使用できる。(2018年承認)知らなかったが、2月28日から3月6日まで「帯状疱疹啓発週間」になっていたようだ。

 もっとも外来患者さんで帯状疱疹ワクチンを受けに来た人はこれまでいなかった。診療科としては、皮膚科を受診しているのかもしれないが。

 

 効果はシングリックスの方が高いが、値段が乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」の8000円(1回)に対して、44000円(22000円×2回)と大分高い。帯状疱疹後神経痛が残ると、症状に苦しみ治療費も相当かかるので、かえってお得かもしれないが。

 

 帯状疱疹ワクチンを受けようかと思っていたら、数年前に帯状疱疹(左側胸部~背部)になった。東京(東京ドームホテル)で感染症の学会に出席している時に、チクチクと痛痒くなり、翌日になっても続いた。ホテルに帰って、服を脱ぐと散在程度だが疱疹が出ていた。

 最終日に病院まで戻ってきて、日直だった外科医に薬(バルトレックス)を出してもらった。神経痛は残らなかった。

 

 ひまわり医院(東京都江戸川区)のホームページで、帯状疱疹ワクチンについてわかりやすくまとめていた。

2022年度版】帯状疱疹ワクチン(弱毒生水痘ワクチン・シング ...

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戻ってきた肺癌

2022年04月27日 | Weblog

 火曜日に、地域の基幹病院呼吸器内科からの紹介で、肺癌の90歳男性が外来を受診した。診察室に入ってきた付き添いの家族(二男の嫁)が、「やっと戻ってきた」と言っていた。

 市内のクリニックに高血圧症などで通院していた。精神科病院にもレビー小体型認知症として通院している。

 もともと喫煙者でCOPDがあるが、昨年12月から息切れが目立つようになり、クリニックの胸部X線で右下葉に陰影を認めた。発熱はなかった。

 3月下旬に、クリニックから当院の放射線科に造影CTの依頼が来ていた。読影レポートは肺感染症、肺癌の疑いとなっている。

 クリニックではがんセンター呼吸器内科に紹介した。数回通院して、肺癌と思われるが、年齢的に精査(気管支鏡検査)・治療の対象にはならないとされた。まあ、普通そうだろう。

 がんセンターでは、今後のフォローと緩和ケアを地域の基幹病院呼吸器内科に依頼した。呼吸器内科医は、よく患者さんを送ったり、戻されたりという関係でよく知っている。

 一番近い当院に回したいと家族に伝えて、当方の名前を出したそうだ。家族はすぐに、「それでお願いします」、と言った。

 この患者さんは妻と姉と同居している。その102歳の姉は、うっ血性心不全で当方の外来に通院していて、この家族が外来に連れて来ていた。

 

 酸素飽和度が86~92%(室内気)と変動する。現在も喫煙しているので、がんセンターでも基幹病院でも、在宅酸素の適応はないと言われていた(認知症でじっと酸素を付けていないだろうとも予想された)。

 咳・痰があり、動くと息切れはするが、案外歩き方は素早い。食欲は良好だった。現時点でご本人も家族も入院は希望していない。

 できるだけ自宅で過ごして、自宅でみれなくなったら当院入院で対応することにした。家族だけ診察室に残ってもらって、DN(A)Rの書類にサインしてもらった。次回予約は姉の予約日に合わせたが、6月始めなので、その前に入院になる可能性はある。

 

 4月半ばのCTを見ると、右下葉の腫瘤様の陰影は3月よりも進んでいる。やはり診断は肺癌でいいのだろう。

 クリニックで当院の外来に最初から回していれば、当院で家族と相談して診るので、遠方まで行かなくても良かった。高次医療機関の専門医に診てもらわないと納得しない家族もいるが、この家族は当院の説明でも納得してくれたと思う。

 

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誤嚥性肺炎

2022年04月26日 | Weblog

 先週の木曜日の午後に、嘔吐・発熱の67歳女性が救急搬入された。

 外科医が不在になって、大学病院から外科外来にバイトで来てもらうことになっていた。外科外来を受診する患者さんは少ないので、救急当番も兼ねるという契約になっている。

 その日来ていた外科医が対応した。検査を行った後に、本来腎臓内科だが一般内科も診ることになっている若い先生に引き継いでいた。

 

 患者さんは精神遅滞があり、長年施設に入所していた。これまで直腸癌、胆嚢結石、総胆管結石での手術歴があり、腸閉塞の既往もあった。

 その日は昼過ぎに嘔吐して、その後発熱したために、救急要請している。すぐに搬入されたので、胸部X線を撮影したのは嘔吐後1時間に当たる。肺炎像はなかった。腹部は単純X線のみ撮影して、外科医は診察の結果、腸閉塞ではないとしていた。

 尿検査で尿混濁を認めたので、尿培養を提出して、尿路感染症として入院としていた。点滴を継続して、セフトリアキソンを開始した。

 入院後も嘔吐があり、発熱が続いていた。翌日の金曜日の胸部X線(ポータブル)で両側肺炎(右肺が広範に)を認めていた。その後も嘔吐が続くので、夕方に相談された。

 腸閉塞の既往があり、嘔吐が腸閉塞の症状かどうかが気になる。入院時の腹部X線が臥位なので、判読し難い。基本的に腹部疾患は単純X線だけではほとんど情報がなく、CTで見ないとわからない。処置としてはNGチューブ挿入になる。

 後は抗菌薬は胃液だけではなく、胆汁や腸液もあるので、抗菌薬はゾシン(PIPC/TAZ)の方がいいと思うとも伝えた。

 週末病状が悪化して、若い先生は日曜日当直だったので、検査や治療を修正していた。胸部X線(ポータブル)では陰影が広がっていた。

 最初の嘔吐から腸閉塞が始まっていたと推定される。外科医の診察よりも、CTの方が確かだと思う。

 

 

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肝細胞癌

2022年04月25日 | Weblog

 昨日の日曜夜間に、右側腹部痛の65歳男性が救急外来を受診した。微熱があったので発熱外来扱いになったが、コロナではない。(腫瘍熱か)

 腹部単純CTで肝臓の右葉に不整な腫瘤様の病変が描出されていた。脾腫がもあり、基礎に肝硬変があるのかもしれない。

 内科医院に高血圧症・高尿酸血症で通院していた。軽度の肝機能障害は脂肪肝とされていたようだ。精査のため、日中に受診するようにとされた。

 今日は消化器科の外来を受診した。慢性腎臓病があり、造影CTは躊躇われてる(できなくはない)。腹部エコーで肝右葉に高エコーの不整腫瘤が多発していた。

 血液検査でHCV抗体陽性で、慢性C型肝炎だった。血清AFPは15000と高値を呈してる。肝硬変、そして肝細胞癌と進行していたようだ。

 当院での対応は困難なので、専門医のいる病院へ紹介になるはずだ。輸血歴のない、この年齢のC型肝炎だと、感染経路は何だろうか。

 

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化膿性椎体炎

2022年04月24日 | Weblog

 水曜日に腰痛の65歳男性が整形外科を受診しようと来院した。当院整形外科の外来に定期的に通院している。右肩腱板断裂の術後のフォローと腰椎椎間板ヘルニアがあった。

 発熱があったために、発熱外来扱いとなり、新型コロナの抗原定性検査陰性を確認後に内科新患に回された。内科の若い先生が担当していた。

 4日前から腰痛~臀部痛があった。下肢のしびれがあるが、それはふだんの症状と変わらないという。

 腰椎MRIの脂肪抑制T2強調画像で、L5・S1椎体に高信号を認めた。化膿性椎体炎疑いとして、血液培養2セットを提出後に内科入院となった。

 バンコマイシンとセフトリアキソン併用で治療して、入院後は解熱傾向にある。整形外科外来は3か月に1回の受診で、ちょうど来週に予約が入っていた。その日に整形外科コンサルトとしていた。

 高信号の椎体の棘突起にも高信号があり、放射線科の読影レポートでは「限局性液体貯留あり」となっていた。緊急性の神経症状がなければ、来週まで待ってもいいだろうか。

 

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バンコマイシンMIC2問題

2022年04月23日 | Weblog

 内科の若い先生が75歳女性を担当していた。大腿骨頸部骨折術後で、リハビリ文句的で当院に転院してきた。担当は整形外科だったが、食欲不振が続き、外科医に担当が変わっていた。(整形外科医は73歳くらいで高カロリー輸液などの処置ができない)

 3月で外科医が退職したので、内科の若い先生に主治医交代となったという経緯だった。右大腿静脈からCVカテーテルが挿入されていた。

 

 高熱が続いて、血液培養・尿培養を提出していた。抗菌薬はゾシンで開始していたが、血液培養でグラム陽性球菌が検出されたという報告がきて、バンコマイシンも開始した。

 その後、菌名と感受性の報告がきた。血液培養2セットからStaphylococcus epidermidis(MRSE)が検出されていた。バンコマイシンは感受性があるが、MIC2となっていた。

 若い先生はMIC2ではバンコマイシン通常投与量では効果を期待できないため、他の抗菌薬に変更としていた。ただ検出されたのは、MRSAではない。(バンコマイシンからミノマイシンに変更していたが、検査上で感受性があっても使用するとすぐに耐性化してしまう)

 MRSAでバンコマイシンの感受性試験でMIC2だと、通常投与量だと治療困難という問題がある(異論もあるようだが)。MRSEだとどうなのか、わからなかった。

 昨日ちょうど院内の感染管理で、大学病院の専門医が来ていたので、訊いてみた。MRSEの場合はMIC2でも問題なくバンコマイシンが使用できる、ということだった。

 血流感染でMRSAが検出されて、バンコマイシンのMIC2の時はどうしますかとも訊いた。血流感染の時は、ダプトマイシン(キュビシン)を使用して、肺炎の時はリネゾリドを使用する、という(ダプトマイシンは肺胞サーファクタントで失活するので肺炎には使用できない)。

  

 末梢静脈からの点滴が困難のため、左大腿静脈からCVカテーテルをしていたが、右大腿静脈からのCVカテーテル抜去前に挿入したので、確認のX線には両側大腿静脈からCVカテーテルが挿入された(ちょっと不思議な)画像が出ていた。

 可能ならば、CVカテーテルを抜去して、(末梢静脈からの点滴に切り替えて)血液培養再検で陰性化を確認してからCVカテーテルを挿入するのが好ましい。

 

 カテーテル先端培養からは、Staphylococus hominisが検出されていた。細菌検査技師さんから、Staphylococcus epidermidishominiscapitalisは、菌名鑑別の試験の微妙な違いで判定していて、その結果が違う菌種となっても実際は同じ菌だと思う、といわれた。カテーテル関連血流感染であることは間違いないようだ。

 

 

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感染性心内膜炎

2022年04月22日 | Weblog

 高熱で内科の先生が入院させた78歳男性は、感染巣がはっきりしなかった。尿混濁が軽度にあり、尿路感染症として尿培養を出して抗菌薬を開始したが、血液培養は出していなかった。

 肺炎はなく、胆道感染症でもなかった。右膝頭に境界明瞭な発赤があり、顔面であれば丹毒とするような病変だった。抗菌薬投与で赤みは薄れてきていた。

 尿培養からメチシリン感受性ブドウ球菌(MSSA)が検出されたという。例外的な菌以外はブドウ球菌が尿培養で検出されることはないので、血流感染からの検出と考えられるのでは、と答えた。

 解熱傾向にあり、少しずつ食事摂取できるようになって病状は軽快していた。そのままの治療でいけると判断されたようだ。

 急に血圧が低下して、右肺炎を併発していた(誤嚥性肺炎か)。呼吸回数が30回/分以上となり、気管挿管・人工呼吸管理となった。昇圧薬も投与された。

 抗菌薬投与も継続されて(カルバペネムに変更)、病状はしだいに回復していった。いったん抗菌薬を休止して、また高熱があった。

 今度は血液培養を2セット提出した。すると、グラム陽性球菌が検出されたという報告があり(この時点でバンコマイシン追加された)、数日してメチシリン感受性ブドウ球菌(MSSA)が検出された。

 心尖部に収縮期雑音が聴取されていた。病室に器械を持ち込んでもらって、心エコー検査をしてもらうと(当院の検査技師のエコー検査は優秀)、僧帽弁に疣贅を認めた。

 人工呼吸は自発呼吸補助になっていて、抜管できる状態だった。昇圧薬も中止できている。心臓血管センターのある専門病院に連絡して、救急搬送となった。(気管挿管は抜管せず、担当医が同乗して搬送)

 先方の病院では、心機能自体は良好なので、経過中に発症した心内膜炎ではないか、と言われたそうだ。当初の尿培養の結果をみると、最初からあったと思うが。

 

 時間外だったり、多忙な時など、血液培養の提出がつい省略されることがあるが、感染症では基本的に血液培養検査が重要ということだった。

 搬送した病院では、院内ルールで内服以外の抗菌薬使用時は、必ず血液培養を提出することになっている。医師の指示がなくても、看護師さんが自動的に採取するそうだ。

 

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声門下喉頭炎

2022年04月21日 | Weblog

 昨日、バセドウ病と糖尿病で通院している51歳女性が受診した。体調不良?だと受診しないため、予約日の2~3回に1回くらいしか受診しない。それ以外は家族が薬だけ取りに来ていた。

 9年前から当院外科甲状腺外来に通院して、数か月後から糖尿病で内科にも通院するようになった。他院での通院から当院通院になったと言う経緯だった。翌年からは甲状腺の薬も内科でまとめて処方するようになった。

 当初はHbA1cが6~7%台だったが、翌年には9~10%台になった。その後は経口血糖降下薬を追加していったが、値は同じだった。(甲状腺機能は正常域だが、治療薬はメルカゾール15mg/日とほどんど初期量)

 インスリン注は拒否していた。インスリンではないということで、GLP-1受容体作動薬の注射は受け入れたが、血糖改善には至らなかった。100kg近い体重も変わらない。

 いろいろ言われるのはいやなのだろう。特に訴えもなく、血液検査の結果を聞くとすぐに診察室を出るという受診だった。

 

 昨日は予約日だったが、珍しく症状を訴えた。2週間前から喉が痛くて、37℃台の発熱も続いているそうだ。同じ時期から嗄声も続いている。精神医療センターを受診した時に、それを伝えたら抗菌薬が3日分処方されたが、症状は変わらない。

 嚥下痛があるが、口を開けてもらって観察してもまったく異常はなかった。頸部リンパ節腫脹はなく、頸部に圧痛はない。喉頭の問題と思われる。唾液も飲めないような状態ではなく、夜間は横臥できるらしい。

 肺炎ではないが、胸部X線と頸部X線をとってから耳鼻咽喉科に紹介することにした。胸部X線は異常がなく、頸部X線側面で喉頭蓋が正常より肥厚しているように見える。

 耳鼻咽喉科で喉頭鏡で検査すると、声門と声門下に浮腫状の腫脹があり、内腔が狭窄していた。喉頭蓋の腫脹はなかった。声門下喉頭炎と診断された。

 子供だといわゆる仮性クループになる。大抵はウイルス性だが、細菌性もある。症状の長さなど疑問点はあるが、とにかく声門周囲の腫脹・狭窄はある。

 耳鼻咽喉科医は高次医療機関に紹介することにした。悪化すると気管切開になるので、当院入院は避けたいという。

 最初に相談した病院はベットがなく、別の病院になった。内科診療についての診療情報提供書を記載して、いっしょに持たせた(血糖コントロール不良です、と記載するしかない)。

 

 耳鼻咽喉科に紹介する時は、新型コロナの抗原定性検査(6分で結果が出る)をしてから回した。紹介先の病院からは新型コロナのPCR検査をしてから紹介するようにといわれて、院内の迅速PCR検査(約1時間で結果が出る)をしてからの紹介になった。

 

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