新型コロナウイルスに対する抗ウイルス薬、「パキロビッドパック」があまり使われていないというニュースが出ていた。
発売されてからのコロナ発症者325万人のうち4千人(0.12%)にしか使用されていないという。この薬は重症化リスクがないと、使用できないので、それは当然ではある。感染者の比率が多い若年者や小児は適応がないので、使用できない。
65歳以上の高齢者は年齢だけでも処方できるが、65歳未満だと基礎疾患がないと処方できない。基礎疾患として、COPDなどのいかにもリスクという疾患と、高脂血症のようにどうかなという疾患がある。
パキロビッドパックは併用禁忌薬が多く、頻用薬も入っているので、全部確認しなければならない。うっかり見逃して処方すると責任問題なので、処方し難いのだろうか。(当院は併用禁忌薬をA3版に印刷したものが、病棟と外来に置いてある。何例か処方すると慣れる。)
保健所から当院の感染病棟に入院依頼があるのは、80歳以上の高齢者になる。肺炎がないか、あってもわずかで酸素飽和度の低下がない軽症から中等症Ⅰ相当では、パキロビッドパックを処方している。
問題は腎機能で、eGFR<60だと、腎不全用の処方になる。通常は1回にニルマトレルビル2錠とビトナビル1錠(それを朝夕2回内服)だが、腎不全用だとニルマトレルビルが1錠になり、薬局でパックから1錠を外して、そこをシールでふさいだパックが出てくる。
ニルマトレルビルもリトナビルもそれなりに錠剤が大きくて、欧米サイズだ。飲めなくはないが、処方するのは高齢者なので、分割しないと難しいこともある。
eGFR<30だと、パキロビッドパックは処方できないので、腎機能が問題にならないラゲブリオになるが、こちらのカプセルも大きい。(カプセル外しや、簡易懸濁法は推奨されていない)
レムデシビル(ベクルリー)点滴静注もeGFR<30だと推奨されない(使用できない)と記載されているが、実際は使用できるらしい。
ピンクがニルマトレルビル、白がリトナビル。通常はピンク2個と白1個の計3個を朝夕に内服(5日間)。
パキロビッドパックの調査に協力いただけますかと、製薬メーカーの蘭連会社から連絡がきた。薬局で記載してくれれば、確認してサインだけすればいい?らしい。それなら協力します、と答えた。
使用数が少なくて、まだ有意な副作用は出ていない。