今日は日直で病院に出ている。そのまま病院に泊まるのもここ数年の恒例行事になっている。
今年は病院の経営問題でもめた1年だった。市が病院に出している予算が2年連続で減額されて、半額以下になった。病院経営のコンサルト会社が出してきた方針は、1番が廃業で、2番が民間売却、3番が立て直し。取り合えず銀行からの借金で賄うことになったが、来年からの運営は厳しい。
どの自治体病院も経営は大変なのだろう。医師確保の問題もあるが、お金の問題の方が大きい。
県の方針で、当院はベット数を削減(2/3)して慢性期病院となった。ほとんど手術のない病院になるので、麻酔科・外科系医が相次いで退職する見込みだ。
4月以降はどうしようか、という年の暮れになった。
12月27日金曜日に、内科クリニックから消化器科に貧血・体重減少の68歳男性が紹介されてきた。検査を受けるつもりで絶食で来院したので、その日はまず上部消化管内視鏡検査と造影CTが行われた。
上部消化管内視鏡検査では異常を認めなかったが、造影CTで上行結腸に腫瘤(癌)を認めた。年明けに下部消化管内視鏡検査が予定された。
この患者さんは8月に内科クリニックを胸やけ・腹部膨満感で受診した。春ごろと比べて3Kgの体重減少もあった。そのクリニックは上部・下部内視鏡検査も行っている。検査を勧めたが患者さんは希望せず(拒否して)、PPIで経過をみることになった。
次に受診したのは10月で、腹鳴を訴えていた。血液検査でHb9g/dlと貧血(小球性)を認めた。癌の可能性があるとはっきり告げて、内視鏡検査を勧めたが、どれでも同意しなかったそうだ。
そして12月25日に三度目の受診をした。嘔気と食事をとれなくなるという訴えになっていた。体重はさらに3kg弱減少。Hb7g/dlと貧血も進んでいた。これはもう病院での検査として、当院消化器科に紹介になった。結局最後は内視鏡検査に同意した。
はからずも、4か月間癌の自然経過をみたことになる。肺転移・肝転移はないので、下部消化管内視鏡検査の後に手術になるのだろう。この方は腫瘍マーカー(CEA/CA19-9)が陰性だった。
80歳代後半から90歳代の高齢者が体重減少・食欲不振で紹介されることがあり、見るからに内視鏡検査をするのも躊躇われるような虚弱な患者さんの場合、単純CTと腫瘍マーカーを含む血液検査だけして、家族とその後の検査をするかどうか相談するというパターンがある。
消化管の精査としてCTでは不十分だが、上部はともかく下部の内視鏡検査まではというような患者さんでは、そのまでの検査でいいかと思っている。
今回の患者さんでは、内視鏡はいやでも、CT検査ならば同意したかもしれない。CTで当たりをつけて、ここに癌が疑われるとお話すれば、内視鏡検査に同意したかもしれない(しないかもしれないが)。