土日はサイエンス漢方の講演会(ツムラ主催)に出席した。講師は井齋偉矢先生。
「かぜとインフルエンザ」
通常のかぜ薬は、かぜ症状の持続時間を短縮するのみで、かぜの治癒期間を短縮しないし、合併症発症率も死亡率も減少しない。漢方薬は、かぜ症状の持続時間を短縮するだけでなく、かぜの治癒期間を短縮できて、合併症発症率も死亡率も減少させる。
「桔梗湯」「桔梗石膏(コタローのみ販売)」 咽頭炎に特化した処方。急性(発症2~3日以内)の咽頭のみの症状で使用。咽頭の色はきれいな赤。ツムラ桔梗湯7.5g分3.症状が強い時は3~4時間おきに服用。水に溶かして水薬にしてのどに5秒以上なじませる含み飲みを推奨。イソジンガーグルは、イソジンは消毒作用があるが薄めては効かないし、かえって粘膜を痛める。
「小柴胡湯加桔梗石膏」 炎症が咽頭周囲に広がって、咳が出始める時期(発症4~5日以降)で使用。咽頭の色がマグロの赤身。ツムラ小柴胡湯加桔梗石膏7.5g分3。
「桂麻各半湯」 悪寒があり、タラッと流れる鼻汁。鼻が詰まったり、ムズムズしたりの鼻かぜ。かぜの初期や回復期で使用できる。かぜの常備薬。ただし東洋薬行でしか販売してない(ツムラではなぜか販売してないそうだ)。東洋桂麻各半湯4.5g分3。
「麻黄湯」 悪寒・発熱・頭痛・関節痛があり、発汗がない(無汗)時に使用。ツムラ麻黄湯7.5g分3。ただし実際は1~2時間おきに、発汗するまでどんどん飲む。発汗したら、そこでやめるので、1日分の処方になる。麻黄湯は通常量の10倍まで大丈夫という(もともと日本の漢方薬の量は中国の1/3~1/5の量)。インフルエンザの初期で使用。
「辛夷清肺湯」 鼻腔から副鼻腔に進展して、頬部に熱感があり、後鼻漏でむせる(特に就寝中)時に使用。要するに副鼻腔炎。ツムラ辛夷清肺湯7.5g分3。作用を増強したい時じは、ツムラ葛根湯加川芎辛夷7.5g分3を追加(併用)する。副鼻腔の排膿には、ツムラ排膿散及湯7.5分3に変更。 (自分もかぜがこじれる(長引く)とこうなる。葛根湯加川芎辛夷だけを飲んでも全く効かなかった。辛夷清肺湯だったか。)
「麻黄附子細辛湯」 平熱が低く(免疫能も低下)、とにかく冷えて冷えてしまう人のかぜに使用。ツムラ麻黄附子細辛湯7.5g分3。苦くてまずいので、コタローではカプセルを販売している。コタロー麻黄附子細辛湯6Cap分3。
インフルエンザの時、麻黄湯を使用するが、インフルエンザウイルス増殖抑制効果がある。井齋先生の病院では、インフルエンザに推奨される処方をセットにして外来に置いているそうだ。推奨処方は、
イナビル吸入粉末薬20mg2個吸入をして、
無汗でサラサラしていたら、1)ツムラ麻黄湯7.5g+ツムラ越婢加朮湯7.5g分3を1日分(2時間毎に)。
発汗したら、または最初から発汗していたら、2)ツムラ桂枝湯7.5g分3+ツムラ麻杏甘石湯7.5g分3を1日分(2~3時間毎に)
解熱したら、東洋桂麻各半湯4.5g分3+ツムラ補中益気湯7.5g分3を2~3日分。
1)と2)は、それぞれ2剤合わせると、大青竜湯に近似するそうだ。
回復期の食欲不振・倦怠感には、補中益気湯がよい。インフルエンザ流行時の予防にも使えるという。
井齋先生の病院では漢方薬を150種類置いていて自由に使っているそうだ。普通の病院ではそそこまでできないので、代表的なエキス剤を選んで使用するしかない。麻黄湯はふだんのインフルエンザ処方に追加している。外来でかぜ薬下さいと言われて、かぜをひいた時のためにPL顆粒を出している(これが案外人気がある)。桂麻各半湯の方がいいと思うが、院内に入れるのも難しいし、周辺の調剤薬局では置いていないだろう。