9月半ばに食べられない・動けないという93歳男性が救急搬入された。左肺背側に浸潤影を認めて、誤嚥性肺炎として入院した。救急で診た内科の若い先生がそのまま主治医になった。
型通りのスルバシリン(ABPC/SBT)で肺炎は軽快したが、食事摂取は難しかった。経管栄養は家族も希望せず、こちらとしても93歳にする気にはなれない。頑張るとすれば、高カロリー輸液を行って、病状が安定していれば療養型病床のある病院にお願いすることになる。
先週初めから高熱が出没して、血圧も不安定になった。院内の感染症発症として、血液培養2セットと尿培養が提出された。胸部X線で明らかな肺炎再発はなかった。
血液培養2セットと尿培養からカンジダ(Candida albicans)が検出された。相談されて、てっきりカテーテル関連血流感染かと思ったが、まだCVカテーテルは挿入されておらず、末梢静脈からの点滴だった。
すると血流から尿の経路でカンジダが検出されたのではなく、尿から血流への感染と考えるしかない。尿培養からのカンジダ検出は通常は定着菌だが、今回は起炎菌と判断される。尿閉で尿カテーテルが挿入されているが、入れ替えはできるが抜去は難しい。
ファンガード(ミカファンギン)150mg/日が開始されて、解熱して血圧も安定してきている。培養提出時から開始していた通常の抗菌薬(院内感染なのでゾシンPIPC/TAZ)をどうするかだが、カンジダ以外の菌は検出されていないので、中止してもいいようだ。あとは眼内炎のチェックと心内膜炎のチェックになる。
当初誤嚥性肺炎としてスルバシリンを投与したことが引き金になったのだろう。ゾシンやカルバペネムを使用したわけではないので、これでカンジダ感染を起こされてもと思うが、起こったことは仕方がない。
別の患者さんで腹腔内の悪性リンパ腫と判断される患者さんでも、血液培養2セットからカンジダが検出されていたので、2例続いたことになる。こちらもCVカテーテルはまだ挿入されていなかった。尿からでもなく、どこから入ったかは不明だった。